語り紡がれるはずだった物語
『強欲の泉』を奪還し二ヶ月ほどの月日が流れた。戦いの傷が順調に癒えてきた頃村の拠点を『強欲の泉』の周りに移そうという話になり。ヒロタカ達は無事に拠点を移すことができた。
『強欲の泉』の効果は素晴らしかった。泉から湧き出る水をひと度地面に撒けばそこには荒れ果てひび割れた土の面影など無い土が現れる。荒廃した景色がどんどんと変わっていくさまは人々に希望を与えた。
拠点の移動が完了し、辺りの開拓が落ち着いた頃ヒロタカはアリステラの下へ訪れていた。
「なんか、久しぶりな気がしますね。アリステラさん」
「む?そうだな……言われてみればしばらく会えてなかったか……」
辺りの開拓中ヒロタカとアリステラは別々の場所を担当しており、二人とも忙しなく働いていた。
会えていなかったと言っても1週間程度だったが、ほぼ毎日顔を合わせていた二人にとっては長く感じる時間だった。
「足の調子はどうですか?」
「かなり慣れてきたよ。軽い分前より早く動けそうだ」
笑いながらヒロタカの問に答える。そんなわけ無いだろ。とツッコミを入れたかったが、ダクラに乗っ取られてる時の戦いっぷりを見るとそうも言えなかった。
改めて、アリステラの超人っぷりを実感する。
「――、それで?あの件か?」
「はい、色々落ち着きましたし。兵士たちの回復も順調。『強欲の泉』で傷回復効果のあるハーブの栽培と効果の増量もなし得ました。読みましょう、アリステラさん。あの本を」
「そうだな、早速明日読もうか。メーニン達には私から伝えておこう」
※※※※※
「連中が隠した物語……確かにあの靄、アリステラの時とそっくりね」
「よく考えてみりゃ俺達、敵のことですら知らないことだらけなのか」
「あぁ、だが向こうが隠してたんだ。期待値はかなりある」
「皆、準備はいいか?――いくぞ」
アリステラの呼びかけに三人は深く頷く。それを確認したアリステラは『強欲の泉』から汲んだ水を回しかける。すると、本を覆う黒い靄と水が相殺し、消えていった。本の表紙からは題名が浮かび上がる。
「英雄幻想……」
ヒロタカはそれを思わず口に出した。




