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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第52話 ユニコーンの心臓

「なぁ……それ本当に上手くいくのか?」


「多分」


「多分たぁ何だ多分たぁ……」


「それ以上何と言えば良いのかしら?」


「そんな事いったってよぉー」


「……」


 俺とヘリミアとチグリス少年はトボトボとした歩みの馬車の荷台に乗り、あのユニコーンの居る迷わずの森へと向かっている。チグリス少年は相変わらず暗い表情のまま指をくるくると回していじけたような仕草をしている。うん、気まずいね!


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ヘリミアが提案した方法は、ユニコーンから心臓を抉り出した後、ユニコーンが心臓を再生させるまでの間はチグリス少年をユニコーンの心臓代わりにする事。水魔法に長けたチグリス少年だから出来る事だとも言われた。


 そして、俺はその心臓を再生するまでの時間、この聖剣でユニコーンの再生を邪魔する悪いエネルギーをひたすら追い払う……んだと。どうやって追い払うのか全くわからねぇ。聞けば、取り敢えず微かにでも闇のエネルギーが見えたら斬れと。全然分からねぇ。


 そんな困惑した空気の中でも刻一刻とユニコーンの居る場所には近付いている。迷わずの森。要所要所で立て札が立っているんだから迷いようが無いよな。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 俺達は最短ルートを通って神秘の湖の前に立つ。



「よう、ユニコーン。心臓貰いに来たぞー。出てこいー。何だったら心の中を覗いてみろー。事実だぞー」


 《ユニコーンさん。僕の心を覗いてみてください……これが真実です。どうにか心臓をいただけませんか?》


「私の心も読んでも良いですが、空気も読んでいただけると嬉しいですわぁ」


 ヘリミアだけ、不遜な態度で切り株に腰掛けている。


「……不死王か……。また難儀な封印を解きおって……」


 湖の中から1頭の一角馬が現れる。


「おー、ユニコーンさんか。心は読んだみたいだな。どうにか助けてくれないか?」


 《お願いします!》


「……ヘリミアとやらよ」


「はぁい?」


「本当にその策(・・・)は成功するのか?」


「うーん。みんなの成長率次第だと思いますわぁ」


「……信じて良いのだな」


「……命に代えても成し遂げて見せるわ」


「わかった。では心臓をくれてやろう」


「え? 良いのか? そんな簡単に?」


 ジョンは両手を広げて軽い調子を見せる。


 《何を話していたのですか……?》


 チグリスは額にシワを寄せている。


「お前らには語らずとも良い事。それより、急げ。これより24時間かけて心臓を再生する。それまで私の命を預けるぞ……」



「いきなりだなぁ」


 《絶対に成功させます!》


 ◇ ◇ ◇ ◇


 俺はユニコーンに聖剣を突き刺して、心臓を抉り取る。その間ユニコーンは無表情だった。少し怖い。そして抉り出した心臓をヘリミアが凍結させる。


「チグリス君出番よ、呪いは中和してあげるから全力で詠唱して大丈夫よ」


「喋れる……。よし!○×◇△●◇……!」


 チグリス少年はユニコーンの心臓を抉り出した隙間に両手を差し込んで呪文を唱えている。


 おー、順調みたいだな。


「ちょっと、ジョンさん? 闇のエネルギーが近付いてますよ。早く祓って下さらない?」


 ヘリミアの指差す方向に目を凝らすと、うっすらとした黒い歪みが見えた。


「あれを斬れば良いのか?」


 俺は聖剣を近付けて、チョンとつつくとその歪みは露と消えた。


「これで良いのか?」


「先ずはね、これを延々と24時間やり続けるのよ」


「マジかよ……」


「ほらほらそこ少し歪んでる!」


「これかっ!ってこんな僅かなエネルギーも駄目なのか!?」


「当たり前でしょう!? ユニコーンを何だと思ってるのっ!」


「ちぇえええいっ! そこだぁあああ!」


「そこ7つ位見逃してるッ!」


「ここか? 分かるかこんなんぅああああ!」


「ああ! 下手くそ! ちゃんと見なさい!」


 ◇ ◇ ◇ ◇


◇ ◇ ◇ ◇


「はぁはぁ……そこおっ!」


 眼だけギラギラと輝いているジョンは、疲れた身体を猫背に構えひたすら闇を斬り続ける。



(これって……不死王対策にもなりそうね。僅かなエネルギーの流れを感知出来る聖剣使いがいるなら……、不意打ちの対策にもなるし、不死王の技の幾つかは対策になりそう)


 ヘリミアの目に光が宿る。


「だりゃああああっ!」


 ジョンの眼はうっすらと光を帯びて、ほんの僅かな闇を察知するに至っていた。



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