第92話 ラストゲーム
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
リナと慎吾は、黒幕が藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまう。
慎吾達は藤岡の提案で、2人はロシアンルーレットをすることになる。5発連続弾が出ず・・・残り1発でリナに順番が回ってきた。
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第92話 ラストゲーム
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月19日(水)、23時59分58秒。目黒基地内。
カシャーン!!
何度目かの乾いた金属音が、部屋の中に鳴り響く。
そして・・・
タイムリミットを迎えた。
リナ「・・・ ・・・」
目を閉じたままのリナ。銃声は聞こえなかったが・・・
自分に向けられた銃・・・慎吾がその銃の引き金をひいたことだけは理解した。
(リナ「い・・・ 生きてる・・・ それとも・・・?」)
藤岡「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
2人の男はにらみ合っている。
やがて慎吾が口を開いた。
慎吾「ニューナンブは・・・ 装弾数が5発。
つまり、あなたが2度目の引き金をひいた時点で・・・
5発全て・・・ 実弾など入っていなかった・・・」
(リナ「・・・ うそ・・・」)
藤岡「・・・ ・・・」
慎吾「でも、これで・・・ 【2回ずつ引き金をひく】・・・
クリアしました。
リナ先輩の妹を含め、僕たち3人は・・・
少なくとも24時間は生きながらえる・・・ですよね?」
藤岡「・・・ ・・・」
じっと慎吾を睨み付けたままの藤岡。やがて左右の手を胸元にもってくると・・・
パン パン パン ・・・
乾いた拍手をした。
藤岡「見事だ。ミスターボンド。たった1つの・・・
クリアルートを見つけるとは・・・
正直、驚いたよ」
リナ「・・・ ・・・」
ようやくリナが目を開いた。
(リナ「・・・ い、生きてる・・・」)
そして死んではいない事を理解する。
リナ「な・・・ 何があったの・・・?」
涙が枯れた目を慎吾に向けた。慎吾もリナを見つめる。
慎吾「弾は・・・ 入ってなかったんです・・・ 最初から・・・」
リナ「・・・ それを・・・ 知ってたの・・・?」
かすれる声を絞り出すリナ。
慎吾「すいません・・・」
申し訳なさそうに慎吾は、深々と頭を下げた。
リナ「・・・ ・・・」
怒りの感情はない。
(リナ「知ってて・・・ 私に銃を向け、引き金をひいた・・・」)
いつものリナなら、怒り狂うところだろう。しかし何かしらの感情が沸いてくるほど、心はまだ安定していない。
リナ「どうして・・・ 弾がない事・・・
教えてくれなかったの・・・?」
たどたどしく、聞きたい事を口にした。
慎吾「そ、それは・・・」
藤岡「俺が説明してやろう」
不意に藤岡が、2人の間に入り込んできた。
藤岡「ミスターボンドは、俺がゲームに興ざめする事がないよう・・・
その銃に実弾が入っていない事を、君に黙っておいた。
俺がゲームに覚めたら・・・ 君らを殺すかもと思ったんだろう。
なぁ、ミスターボンド?」
小さく笑いながら、藤岡は慎吾の方を向いた。
慎吾「・・・ ・・・」
沈黙を保つ慎吾を、リナはじっと見つめている。
藤岡「俺は、絶対にクリアできないゲームを提供する事は無い。
ミスターボンドは・・・」
リナに視線を戻した藤岡。
藤岡「唯一クリア出来るルートを、確実に辿った。
ただ、それだけだ・・・」
リナの横で、再び慎吾が頭を下げる。
慎吾「ホントに・・・ ごめんなさい・・・」
リナ「・・・ ・・・」
リナには何がどうなっているのか・・・ 未だによくわかっていない。ただ、目の前にいる男2人は、この事態をよく理解しているようだ。
藤岡「これまで、何度となくこのゲームをしてきたが・・・
大抵は俺に銃を向け、射殺されるんだがな・・・。
本当に見事だよ、ミスターボンド」
再び藤岡は、手をパンパンと叩いて拍手した。
藤岡「これで・・・俺が提示した3つのゲームを、君らはクリアした。
妹も含め、君達3人の命。これから24時間、すなわち・・・
20日の24時までは保証しよう」
リナ「・・・ ・・・」
ゆっくりと、この場の危機だけは脱した事を理解する。
藤岡「・・・ ・・・」
視線をリナから、慎吾へ移す。
藤岡「ミスターボンド・・・ 君とは後で話すとして・・・」
そして再びリナに視線を戻す。
藤岡「羽鳥教授の娘、羽鳥リナ。君に・・・次のゲーム参加を要請しよう」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡の言葉が頭に入ってくるまで、時間を要した。
藤岡「君の妹・羽鳥雛子の・・・ 完全解放をかけたゲームだ」
リナ「・・・ 雛・・・」
藤岡「どうだ? 次のゲームに参加するか?
クリアすれば、君も妹も・・・
24時間などと言わず、完全に解放する」
リナ「・・・ ・・・」
じっと藤岡を見るリナ。
藤岡「・・・ ・・・」
返事しないリナを無視して、藤岡はテーブルの下からノートパソコンを取りだした。
2人の脳波DATAを見ているノートパソコンとは、別のPCだ。
藤岡「・・・ ・・・」
無言で2台目のPCを起動させる。
慎吾「・・・ ・・・」
慎吾はその様子を黙って見ていた。
やがて起動したパソコンを操作し、藤岡はあるサイトを表示させる。ノートパソコンをくるりと反転させ、リナの方に向けた。
藤岡「この2つのサイト・・・1つはウィーン大学。
もう1つはザルツブルグ・モーツァルテウム大学のサイトだ。
両大学のサーバに侵入するというのが・・・次のゲームだ」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「な、何故、その大学に侵入を・・・?」
慎吾を睨み付ける藤岡。
藤岡「その質問に応えるつもりはない。
ただ、この大学のサーバに侵入してくれれば・・・
羽鳥雛子、および羽鳥リナを完全解放する。それは約束する」
慎吾「も、もし・・・」
藤岡「ミスターボンド。君とはまた後で、話をする。
そう言ったはずだ」
そしてリナの方を向いた。
藤岡「ゲーム参加する・・・ で、いいかな?
クリアしようがしまいが・・・
これが君にとってのラストゲームになる」
リナ「・・・ ・・・ も、もし・・・」
まだボヤッとしている頭を働かせ、リナが声を出す。
リナ「・・・ ゲームを・・・ クリア出来なかったら・・・?」
ニヤリと笑った藤岡。
藤岡「【HH】を殺す」
リナ「い、妹を・・・」
藤岡「正確には、妹【も】だ」
リナ「・・・ ・・・?」
藤岡「ふ。まだ頭が動いていないようだな。
君らは、【ABC】殺人の【G】を止めた。
ならば【H】を2人殺して、帳尻を合わせようってわけさ」
リナ「ふ・・・ 2人・・・?」
藤岡「その調子だと・・・ ゲームクリアはほど遠いぞ。羽鳥リナ。
母親の名前を言ってみろ」
眼鏡をかけ直しながら、藤岡はリナに命じた。
リナ「羽鳥・・・ 瞳・・・ 」
慎吾「あ・・・ イニシャルが・・・ 【HH】だ・・・」
藤岡「旧姓も長谷川。純粋な【HH】だ」
慎吾「で、でも・・・ 今、彼女は湾岸警察署で保護されているはず」
藤岡のアジトに来る前、警視庁のサイトで確認済みの情報だ。
藤岡「くっくっく。羽鳥リナの前の彼氏は・・・
どこで死んだかお忘れかな?」
慎吾「あ・・・」
ヒロ・ハーグリーブスが、湾岸警察署内で射殺された事を思い出す。
藤岡「2つの大学サーバに侵入すれば、ゲームクリア。
羽鳥家の住人は全てセーフティ。
しかしクリア出来なければ・・・君以外の【HH】2人は死ぬ」
リナ「・・・ ・・・」
リナはゆっくり、目の前のノートパソコンを手前に持ってきた。
そして、いつものキレはないが、高速でキーボードを叩き始める。
だが・・・
リナ「・・・ ・・・」
わずか1分程で、リナはその手を止めた。
リナ「ハ・・・ ハドリアンズ・ウォール・・・」
その言葉を聞いて、藤岡は笑みを浮かべる。
藤岡「そうだ。その大学のサーバは・・・
君の父親のセキュリティが、守り通している」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「そのセキュリティの強固さは、俺もよく知っている。
だから制限時間は24時間。
24時間で・・・ ハドリアンズ・ウォールの高き壁。
すなわち、自身の父を超えられるか?」
リナ「・・・ ・・・」
じっとパソコンの画面を見続けているリナ。リナはこれまで、いろいろなサーバに侵入してきたが・・・ハドリアンズ・ウォールだけは突破したことがない。
警視庁のサイトはハドリアンズ・ウォールに守られていて、リナは自由にそのサイトに出入りしているが・・・
それは警視庁がハドリアンズ・ウォールをインストールする前、警視庁サーバに自分の領域を確保していたから。すなわち、ハドリアンズ・ウォールを突破したわけではない。
藤岡「父を超えればゲームクリア。君も妹も完全解放される。
しかしクリアできなければ・・・ 妹と母親は死ぬ。
ルールは理解したな?」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「羽鳥教授もそうだったが、君らのような人種は・・・
自分の危険よりも、身内の危険の方を嫌うからな」
4年前・・・ハドリアンズ・ウォールが販売されてから、未だにそのウォールをくぐり抜けた者はいないという。
天才数学者だったリナの父親・魁斗が、素因数分解に関するある事実を示し、それを応用したと言われるセキュリティソフト。
ウォールの突破はおろか、そのソフトですら解析に成功した者はいない。
リナ「・・・ ・・・」
今の状況を考えると・・・ 選択の余地はない。リナは静かに・・・ 頷いた。
それを見た藤岡は、ニヤリと笑う。
藤岡「よし! この時点でゲームは開始された。
タイムリミットは、今日の24時まで。
今から君に別室を用意する。
そこで、ゲームクリアに励んでもらおう」
慎吾「別室に!?」
慎吾はやや焦った表情を浮かべて、声を出した。
リナ「べ・・・ 別室?」
藤岡「君の父親・羽鳥教授が・・・ 4年前に監禁された場所だ」
リナ「パ・・・ パパが・・・?」
藤岡「暖房もある快適な部屋だ。水・食事も用意する。
毒物など入れる事はないから、安心しろ」
そう言うと藤岡は指をパチンと鳴らした。
後ろに立っていた覆面男2人が、リナの両腕を抱え、席から立たせる。
慎吾「リ・・・ リナ先輩・・・」
まだ体に力は入らないリナは、男らにされるがまま、席を立つ。この部屋に入った時にかぶらされた、脳波をはかる装置を頭から外されると・・・そのままどこかへ連れて行かれた。
その様子を見届ける藤岡、そして何も言えない慎吾。
藤岡「さて・・・」
リナが部屋を出て行ったのを確認すると
藤岡「ミスターボンド。君ほどの人材・・・
なるべく、心も体も壊したくはない・・・」
不適な笑みを浮かべて、慎吾に視線を突き刺す。慎吾はゴクリと唾を飲み込んだ。
藤岡「君には聞きたい事がいくつかある。
出来れば、拷問抜きでな・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
慎吾は絶体絶命の立場にあると自覚していた。
何故ならここには・・・
(第93話へ続く)
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次回予告
リナは別室で、必死にキーボードを叩き続ける。
しかし・・・ 強固なハドリアンズ・ウォールを突破できない。
一方慎吾は、藤岡に自白剤をうたれ意識朦朧とする。
そして急に苦しみだしたかと思うと・・・
次回 「 第93話 自白剤 」
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