第87話 ロシアンルーレット
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
リナと慎吾は、黒幕が藤岡である事を突きとめ・・・
リナの妹がいる部屋の直前まで来たが、敵のトラップにかかってしまう。
藤岡は慎吾達の命を賭け、ゲームをしようと言い出した。
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第87話 ロシアンルーレット
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月19日(水)、22時31分。目黒基地内。
ドボルザークの新世界・・・
その曲が流れる部屋。
藤岡、リナ、慎吾の3人・・・そして、その周りには銃を構えた覆面男らがいる。
藤岡「簡単なゲームさ」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
2人は、藤岡の左手に握られた銃を見つめていた。部屋の時計をチラリと見た藤岡は、慎吾の方を見ながら声を出す。
藤岡「覚えているだろう? タイムリミットを。それまで後90分。
リミットを過ぎれば・・・羽鳥雛子は死ぬ。
君らは、それを阻止するためにゲームをする・・・というわけだ」
慎吾「・・・ そ、そんな・・・ 」
藤岡「味方を助けようと、敵のアジトに潜入し・・・そして捕まった。
TVゲームなら、確実に死んでるところだと思わないか?」
慎吾「・・・ ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
リナの胸が締め付けられる。
藤岡「さて・・・ 今から簡単なゲームを3つ行うとしよう」
そう言うと藤岡は・・・テーブルの上に白紙を置き、その上にボールペンを走らせる。
藤岡「君らは3人いるからな。1つクリアすれば1人の命が・・・
3つクリアすれば、3人の命が・・・ 長らえるってわけさ」
手にしていたボールペンがピタリと止まった。
藤岡「先に言っておくが・・・ 俺はルールを守らないヤツに容赦はない。
ゲームに参加しない、もしくはゲームを乱そうとする者は・・・
その場で射殺する」
藤岡は左手に握った銃を、2人にちらつかせる。
藤岡「ルールは理解したかな?」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
反論できる状況ではない・・・2人共、そう思っていた。
藤岡「よろしい。では、まずは1つめ・・・」
藤岡は先ほどペンをはしらせた紙を、リナと慎吾の前に差し出す。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
2人がその紙を覗き込むと・・・何かの数式が書かれていた。
藤岡「その方程式を解けば、ファーストゲームはクリアだ」
慎吾「な・・・」
その数式の中には、1から9までの数が1つずつが現れていた。そして慎吾の嫌いな、【x】が2つもある。
(慎吾「数学が・・・ ゲーム・・・?」)
とても解ける気がしない方程式だ。
藤岡「制限時間は3分。クリア出来ない場合は・・・」
藤岡がセリフを言い切る前に、リナはその紙を逆さまにして藤岡の方へ戻した。
リナ「1秒で十分。答えは【3】よ・・・」
藤岡「・・・ ・・・」
藤岡はリナを睨み付けた。リナも藤岡を睨み付けている。
藤岡「もし、答えが違っていたら・・・
3人の中の誰かが・・・ 確実に死ぬんだぞ?」
リナ「当たっていれば、確実に1人助かるんでしょ?」
物怖じせず、応えるリナ。その目は、自分の計算に100%自信がある事を訴えている。
慎吾「・・・ ・・・」
にらみ合う藤岡とリナを見て、慎吾がゴクリと唾を飲む。
藤岡「・・・ いいだろう。1つめは・・・ クリアと認める。
さすが羽鳥教授の娘。計算能力に関しては突出しているようだな。
普通ならもっと混乱するのだが・・・見事だ」
リナ「・・・ ・・・」
褒められても嬉しくないと言った表情のリナ。
藤岡「では、約束通り。
1つゲームをクリアしたので、1人の命を長らえるとしよう。
3人のうち誰を・・・」
リナ「妹」
慎吾「リナ先輩の妹さん」
藤岡の言葉を遮って、2人は同時に応えた。
藤岡「よかろう。羽鳥雛子の命を・・・24時間延長するとしよう」
その言葉を聞いたリナが、眉毛をつり上げる。
リナ「何ですって!? ゲームをクリアしたら、命を助けるんでしょ!?」
そして、怒りを込めた大声をあげた。
藤岡「あと90分足らずで死ぬ予定の命が・・・
24時間も生き長らえるんだ。不満なのか?」
怒り心頭のリナに対し、藤岡はあくまで冷静に声を出す。
リナ「不満に決まってるでしょ!
私達にとって、このゲームに参加する事自体・・・」
まくしたてるリナの手を、慎吾が握った。
慎吾「リ、リナ先輩、落ち着いて・・・。ぼ、僕には見えてますから」
リナ「・・・ ・・・」
手を握る慎吾を、リナは迷いの表情で見つめる。この1週間、幾度となくこんな場面に遭遇してきた。
慎吾「リナ先輩の妹さんが、助かる未来が・・・
僕には、ハッキリと見えてます」
リナが心を乱した時、必ず慎吾が落ち着くよう諭す。
慎吾「大丈夫。妹さん、絶対助かります。僕を信じて・・・」
リナ「・・・ ・・・」
はらわたは煮えくりかえった状態だが・・・慎吾に言われると、少しばかり冷静になれた。
藤岡「・・・ ・・・」
その2人の様子を見ていた藤岡。
(藤岡「本当に・・・ 恋人同士なのか・・・」)
慎吾「このままだと90分後には、皆危険になります。
24時間の猶予は・・・
作戦を練り直すには大きいです・・・」
その間、慎吾はずっとリナの手を握りしめている。
リナ「・・・ ・・・」
ギリギリだった。慎吾がいなければ・・・この後、自分がどう行動していたか、予測も出来ない。自暴自棄な行動に出て、自分だけでなく妹の命も危険にさらしていたかもしれない。
リナ「わかった・・・」
そう言うとリナは、慎吾から藤岡へ視線を移した。
リナ「次のゲームは・・・ 妹の完全解放を望むわ」
リナは慎吾の手を握り返しながら、藤岡に要求した。
藤岡「悪いがそちらに要求する権利はない。
ゲームに参加させているだけでも、俺としては寛大な処置だ」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「2つ目のゲームを説明しよう。そうだな・・・
簡単なクイズにしよう。その数式に出てくる数字・・・
それが何を意味する数字なのかわかるか?
わかればクリアだ」
そう言うと藤岡は、再び数式の書かれた用紙を2人の前に差し出す。
藤岡「制限時間は先ほど同様・・・3分」
2人はすぐにその数式を見直した。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
全く何も浮かばない。
慎吾「リ、リナ先輩・・・ こ、この数字・・・ どういう意味ですか?」
リナ「計算すれば・・・1番左は2の12乗で4096。
次が3かける7の3乗で1029。その和が・・・5125」
慎吾「・・・ ・・・」
その数式の示す意味が・・・ 全くわからない。
藤岡「1分経過。あと2分」
思いの外、時間は早く過ぎていく。
(リナ「12ビット・・・? いや・・・
8かける2の9乗と書く意味がない・・・」)
慎吾「・・・ ・・・」
あらゆる可能性を模索するリナに対し、慎吾は全く何も浮かばない。
藤岡「残り1分だ。ヒントをやろう・・・
今、この部屋に流れている曲・・・わかるか?」
慎吾「ドボルザークの・・・?」
リナ「新世界・・・?」
慎吾「こ、交響曲の・・・確か第9番・・・?」
リナ「それが、この数式の・・・ 何と関係するのよ・・・?」
焦る2人。冷静に考えようとすればするほど、焦りが出てくる。
藤岡「あと30秒だ。答えが出なければ・・・
君らのうち、1人死ぬ・・・」
慎吾「ま、待てよ・・・ 新世界・・・ 5125・・・?
2012年・・・ 12月・・・」
慎吾の頭の中で、めまぐるしく情報が連結していく。
藤岡「あと10秒。9、8、7・・・」
カウントダウンが進む中、慎吾の頭で何かがひらめいた。
慎吾「わ、わかった!! わかりました!!!」
藤岡「1・・・ 0。言ってみろ。答えるチャンスは1回だ」
慎吾は深呼吸をした後・・・ 口を開いた。
慎吾「マ・・・ マヤです!」
藤岡「・・・ ・・・。続けろ・・・」
慎吾「マヤ歴は5125年を1つの時代と考えています。
今年の12月21日・・・つまり明後日で・・・
1つの時代が終わると言われています。
それが過ぎれば・・・ 新しい時代、新世界が来ると・・・」
藤岡「・・・ ・・・」
藤岡は無表情で、慎吾の説明に聞き耳を立てる。
慎吾「だ、だから・・・ この数字は・・・
マヤ歴の1つの時代の周期・・・ を、表している。
です・・・。はい・・・」
藤岡「・・・ ・・・」
しばらく慎吾を睨み付けていた藤岡。
藤岡「君は・・・ マヤ文明にくわしいのか・・・?」
慎吾「し、史学部ですから・・・」
藤岡「・・・ いいだろう。それも正解の1つ」
慎吾「じゃ、じゃぁ・・・ 2つ目のゲームも・・・
クリアって事ですね!?」
藤岡「適当に作った問題とはいえ・・・
方程式も5125も・・・あっさり解いてしまうとはな。
だが、強運も1つのアビリティ。
よかろう。2つめのゲームもクリアを認めよう」
慎吾「や・・・ やった!!」
藤岡「君達のうち、どちらか1人・・・ 24時間の命を与えよう」
リナ「慎吾よ!」
慎吾「リナ先輩で!」
同時に口を開いた2人だが・・・
藤岡「ほう・・・ 意見がわかれたな。
お互いの命をたてようとするとは・・・
お決まりの愛というヤツか」
リナ「慎吾よ! 彼の命を24時間延長して!」
慎吾「だ、ダメです! リナ先輩の命を!」
リナは手を握ったまま、慎吾を睨み付ける。
リナ「ここは年上をたてなさい! あんたが頼りなんだから!」
慎吾「ダ、ダメです! まずはリナ先輩が・・・」
珍しく引き下がらない慎吾に対し、再びリナが声をかけようとしたその時。
藤岡「痴話げんかはそこまでだ。
どちらの命を延長させるかは、次のゲームで決めるとしよう」
リナ「・・・ ・・・」
反論したいところだが・・・ 黙って藤岡の方を向いたリナ。
藤岡「次のゲームはすでに決めてある。俺が最も好きなゲームでな」
そう言うと藤岡は、左手に握っていた銃をテーブルの上に置いた。
慎吾「・・・ ・・・」
藤岡「この銃はニューナンブと言って、警視庁で配布される銃だ」
リナ「・・・ ・・・」
手を伸ばせば、銃が届く位置にある。
リナ「・・・ ・・・」
じっとその銃を見つめるリナ。ふと慎吾と繋いでいた手が、強く握られた。横を見ると、慎吾が首を横に振っている。
リナ「・・・ ・・・」
リナは首を縦に振った。
藤岡「ふふ。ここでルールを破り・・・死ぬ者もいるんだがな」
見透かした藤岡が小さく笑っていた。
藤岡「この銃に1発だけ実弾が入っている。今からこれを・・・
順序よく、それぞれのこめかみにあて・・・引き金を引く・・・」
(慎吾「ロ・・・ ロシアンルーレット!?」)
藤岡「確率は6分の1。引き金はそれぞれ・・・2度ひけばクリア」
(リナ「33%・・・」)
即座にリナは、2人共助かる確率を計算するが・・・
藤岡「もちろん唯一の弾が発射されれば、そこでゲームオーバー。
すなわち誰か1人が死ぬ。
それと同時に、1人は助かるという事でもある」
(リナ「67%は・・・ どちらかが死ぬ・・・」)
どちらかが死ぬ確率が高い事も計算した。
藤岡は銃を持ち上げ、リボルバー部分を手のひらでこする。
ジャラララララ・・・
無機質な音が流れる中・・・
回転の途中で、藤岡は銃をテーブルの上にたたきつけた。
ダン!
その音は、慎吾とリナの心に響く。思わず2人は、お互いの手を強く握り合った。
藤岡「これをクリアできれば、妹も含め・・・3人共24時間命が延びる。
クリア出来なければ、1人だけが死ぬ。その場合・・・
先にクリアした分の、2人が延命する」
慎吾とリナは、じっと銃を見つめている。
藤岡「3人とも生きながらえるか・・・1人だけが死ぬか。
2人とも死ぬ事はないゲームだぞ? わかるよな?
我ながら、実に合理的なゲームだな。ははは」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
ひとしきり笑った藤岡は、一転して厳しい表情を見せた。
藤岡「3人とも助かる道は与えたんだ。文句はあるまい?」
そしてニューナンブを・・・テーブルの上、2人の目の前へ滑らせた。
藤岡「さて・・・ どちらから行く?」
銀縁眼鏡の奥の瞳は・・・
藤岡「正体不明の謎のスパイか? IQ180・・・羽鳥教授の娘か?」
鋭い眼光を放つと共に、笑っていた。
(第88話へ続く)
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次回予告
ルールを破れば、その瞬間殺される。
銃を藤岡に向け、引き金を引きたいという葛藤・・・
その葛藤の中、リナは・・・ 藤岡に1つの要求をした。
次回 「 第88話 提 案 」
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