第85話 妹のいる場所
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐と殺人の濡れ衣を着せられたリナと慎吾は、警察の銃とパトカーを奪い逃走。
そして、2人は黒幕の藤岡を追って、目黒基地に辿り着いた。
何とか基地の中に侵入したが・・・
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第85話 妹のいる場所
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月19日(水)、21時3分。湾岸警察署。
後藤「何故!? 今も必死で藤岡を追ってる段階ですよ!?
この取り調べの時間ですら、惜しいというのに!!」
取調室の中・・・後藤は正面に座る別の捜査官に、怒鳴り散らした。
男「源さん・・・ あなたはこの数年、藤岡を相棒として仕事をしてきた。
その藤岡が、この連続殺人事件の主犯格だと言うじゃないか・・・
聞くが源さん・・・ 藤岡の不審な行動に気づかなかったのか?」
後藤より2つ年上の捜査官は、眉をひそめながら後藤に質問する。
後藤「気づかないさ! あいつ程頭のキレるヤツ・・・
敵にしたら怖いと思っていたんだから!」
後藤は目の前の机をバンと叩いて、不機嫌さをアピールした。
男「・・・。 はっきり言うが・・・ 源さん。
あなたは、疑われているんだよ」
後藤「な、何!? ・・・ 疑われてる!?
携帯電話やアタッシュケースの爆薬を見つけたんですよ!」
男「源さんの携帯に・・・ 藤岡が爆発物を仕込んだという証拠がない」
後藤「ちょっと待ってください!
機械音痴な自分に、そんな事、出来るわけがない!
アタッシュケースの爆薬で・・・半径100mは吹っ飛ぶんですよ!
あのまま護国寺に行けば、どれだけの人が死んだと!?」
男「さぁな・・・」
後藤「護国寺での大規模なテロを阻止したのに、疑われる!?
あの爆薬を指摘しなければ・・・ 多くが死んだ!!」
男「・・・ ・・・」
捜査官はじっと後藤を睨み付けた後、再び口を開いた。
男「昼3時に、警察署に届いたFAX。
あのFAXは・・・ 後藤捜査官・・・
あなたのIDでログインしたPCから、送られていたんだ」
後藤「それも藤岡の仕業ですよ! 私は機械音痴なんですから!」
男「残念ながら・・・ まだ源さんが犯人と示す物があるんだ」
その捜査官はノートパソコンを操作し、ある画面を後藤に見せた。
男「これは・・・ 堂島から渡されたUSBに入っていたファイルだ」
その画面には・・・ 後藤がこの連続殺人、そして誘拐事件に関わっている証拠の数々が映っていた。
後藤「は! それも藤岡のでっちあげに決まってるでしょう!!」
男「問題はこれだよ・・・」
捜査官は1つの音声ファイルをクリックした。
【警視庁サイトに不正侵入して、情報を流すヤツがいる・・・
警察の中にそんなヤツがいるなんて・・・
本人以外、絶対思わねぇよな】
男「これは・・・源さん本人の声だ」
後藤「こ、これは・・・ 藤岡との会話の時・・・」
藤岡に・・・警視庁のサーバに侵入しているヤツがいると言われた後藤。そして、その事はしばらく黙っておくように言われていた。
男「もう1度聞くか?
自分の声かどうかぐらい・・・ わかるだろう?」
【警視庁サイトに不正侵入して、情報を流すヤツがいる・・・
警察の中にそんなヤツがいるなんて・・・
本人以外、絶対思わねぇよな】
あの時、藤岡に・・・確かにそう話した。それをいつの間にか録音されていたようだ。
男「科捜研でくわしく調べてもらった。あなたの声紋と一致している。
本人だと、ほぼ断定できると言っていたよ」
後藤「こ、これも藤岡の・・・」
男「この音声ファイルは・・・
あなたと藤岡が、裏で何かを企てていたという立派な証拠だ」
後藤「し、しかし・・・ 藤岡が・・・」
声のトーンが小さくなっていく後藤。
男「あれも藤岡。これも藤岡・・・か・・・」
後藤「だが、それが真実だ!」
一転して、腹の底から声を出した。
男「正直、我々も源さんが事件に関与しているとは思いたくない。
だが、それは藤岡も同じだった。
あいつがこの事件の主犯だとは・・・今でも到底思えない」
後藤「それが真実だと言ったろう?」
男「悪いが源さん・・ あなたに不利な証拠が多すぎる。
あなたを拘束したくはないが・・・
これだけの証拠が出ているのに、あなたを自由にすれば・・・
周りがうるさいんだよ・・・」
後藤「ぐ・・・」
後藤は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
男「それについさっき、ICPOやSISからも問い合わせがあってな。
そちらに渡す報告書の作成に・・・付き合って貰いたい。
拘留するが、留置所には入れない。現状を考えると・・・
留置所に入らないだけでも、マシな状況なんだよ」
後藤「・・・ ・・・」
冷静に、そして客観的に考えれば・・・ 目の前の捜査官の言う事はスジが通っている。
真実は自分にあるのに・・・それを周りが認めるような状況ではない。
(後藤「あの大学生等も・・・ 同じ目に合っていたのか・・・」)
ここにきて初めて・・・慎吾とリナの苦しい立場を理解出来た。
1日前・・・同じ立場にあった2人を追い詰めたのは後藤本人。
しかし今は・・・皮肉にも、後藤自身が追い詰められる側だ。
後藤「・・・ ・・・」
藤岡の手際の良さは・・・ 完璧のように思えた。
後藤「わかった・・・ だが、藤岡を絶対捕まえてくれ!」
大きな絶望感の中・・・
後藤はあの大学生2人の安否を、心から気にしていた。
(後藤「まさか今頃・・・ あの凶悪犯の所へ行ってねぇよな・・・」)
・・・ ・・・。
21時43分。目黒基地内・・・地下。
慎吾「・・・ ・・・」
慎吾とリナは1時間近くかけて、地下のある部屋の前まで辿り着いた。
リナ「こ、ここ・・・?」
リナはノートパソコンの画面を見つめて呟く。その画面を慎吾も覗き込んだ。
慎吾「こ、ここです・・・。間違いない・・・」
地図画面上では、何も存在していないはずの場所だが・・・2人の目の前には、確かに部屋がある。
リナ「な、中は・・・?」
慎吾「ま、待って下さい。今すぐ・・・」
慎吾はポケットに入っていたパワーストーンを取り出すと、強く握りしめ、意識を集中する。
慎吾「・・・ ・・・」
慎吾の霊能力はこのパワーストーンを介して増幅される。
慎吾「います・・・ 誰か部屋の中にいます・・・」
パワーストーンを握りしめたまま、小さな声でリナに声をかけた。
リナ「ど、どっちが!? 雛の方!?」
慎吾はパワーストーンに集中する。
慎吾「いるのは・・・ 若い女性・・・
このオーラは・・・ 間違いない・・・」
リナ「だ、だから? 雛なの!?」
慎吾「えぇ。リナ先輩と似た感じのオーラです。
妹さんで、間違いないと思います」
リナ「や、やった・・・」
慎吾「いるのは1人だけ・・・です、はい!」
リナ「・・・ み、見張りとか・・・ いないの?」
慎吾「・・・ ・・・」
パワーストーンを強く握りしめ、意識を集中するが・・・
近場に誰かのオーラを感じる事はない。
慎吾「い、いないようです・・・」
リナは頷くと、ドアノブを見る。ノブの横には直方体の銀色のBOXのような物が設置されていた。
1から9までの数字ボタンがあり、電子ロックがかかっているのがわかる。
リナ「見張りがいないのは・・・ これがあるからか・・・」
暗証番号を入れなければ、中に入れない仕組みだ。
慎吾「ど、どうやって暗証番号を・・・」
リナの眼鏡がキラリと光る。
リナ「ふん。私にかかれば・・・」
特殊なコネクタを、BOX横にあった差し込み口に挿入し、反対側はパソコンをつなぐ。そして右手だけでキーボードを操作し、何かのプログラムを走らせた。
ガチャリ。
リナ「よし!」
わずか10秒で、扉が開く音を確認したリナ。ノブをゆっくり握り・・・ドアを開ける。
リナ「・・・ ・・・」
部屋の中を覗き込むが・・・ 1mほど先は壁ではばまれ、その中央に再びドアがあった。壁の向こうを見る事は出来ない。
リナ「二重扉・・・」
部屋に入ろうとするリナを、慎吾が止める。
慎吾「ま、待って下さい。リナ先輩」
リナ「何よ?」
慎吾「い、いや・・・ 何か変です。
あちらからすれば、大事な人質のはずなのに・・・
見張りもいないなんて・・・」
リナ「大丈夫よ。9桁の暗証番号を突破したのよ?」
慎吾「部屋に入った瞬間・・・
雷が落ちるとか、爆弾が爆発するとか・・・ないですかね?」
リナ「心配性ね! 絶対大丈夫だって!!」
慎吾「で、でも・・・ 何か嫌な予感が・・・ 念のため・・・」
リナ「・・・ ・・・」
今すぐにでも部屋の奥へ行きたいが・・・慎吾の不安はリナにも伝染する。
リナ「わかった・・・」
リナはパソコンを操作し始めた。警視庁のサーバを通して、目黒基地を管理しているサーバに侵入。
リナ「警視総監のID・・・ どこでも行けるわね。便利だわ・・・」
横にいた慎吾が目を丸くするが、何も聞かなかったフリをした。リナは基地内の見取り図、電力や配電関係の情報を引き出す。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾もパソコンの画面を覗き込むが、何がどうなのかを理解出来ない。
リナ「大丈夫。ここの電気関係とか調べたけど・・・
通常電力以外、特殊な電気の流れがあるとは思えない。
つまり、何かのトラップはない・・・って事ね」
慎吾「そ、そうですか・・・」
リナに言われても、慎吾は・・・ 心配が拭えなかった。
慎吾が逡巡している横で、リナは部屋の中へ入って行った。
瞬間・・・
リナ「あ・・・」
リナの右足・・・ 床を踏み込んだはずの右足が何の反応も返さない。そのままリナの体は・・・ 下へ落ちて行こうとした。
(リナ「お・・・ 落とし穴!?」)
その足場はフワフワの素材で、リナの踏み込んだ足を中心に一気に穴があく。
慎吾「リナ先輩!!」
即座に慎吾は右手を出し、リナの右手を捕まえた。
が・・・
そのままリナに引きずられ、万有引力の法則に従う。
リナの妹がいる部屋を前にして・・・2人の体は数m下へと落ちて行った。
・・・ ・・・。
慎吾「いてて・・・ リ、リナ先輩・・・ 大丈夫ですか?」
リナ「だ、大丈夫・・・」
2人は手を握ったまま、数m下に落ちていた。リナの上に覆い被さる形になっていた慎吾。
慎吾「あ、す、すいません!!」
慌てて密着した体を離し、握っていた手も引っ込める。
特に気にとめる様子もないリナは、辺りを見回した。
リナ「マットレス・・・?」
2人が落ちた先はマットレスがしかれ、落下のダメージを最小限にしていた。
慎吾は上を見上げる。
慎吾「3m・・・ぐらいですね。1つ下の階に落ちたようです・・・」
リナ「・・・ ごめん・・・」
横で申し訳なさそうにリナが声をかける。
慎吾「妹さんがすぐ側にいましたからね。気持ち、わかります。
大丈夫。すぐに出られますから・・・」
言いながら慎吾は、周りを見る。
直径2m、高さ3m程度の円柱形の落とし穴・・・2人はそこに落ちた。
下にこそマットレスがしかれているものの、壁は大理石のようでツルツルだ。
(慎吾「簡単には・・・ 出られない・・・」)
5分後・・・。
右往左往している慎吾とリナ。突如真上から、何かが落ちてきた。
その小さな物体はマットレスの上で小さくバウンドすると、コロコロと転がり、2人の目の前で動きを止める。
リナ「何?」
それはオレンジ色の、何かのフタのようだ。
慎吾「・・・ 何かの・・・ キャップ!?」
それを確認した2人は、すぐに真上を見る。
視線の先には・・・
羽鳥雛子を誘拐し、その翌日から殺人を重ねてきた男の姿があった。
藤岡「・・・ ・・・」
その男は2人を見下ろし、声をかける。
藤岡「9桁の電子コードを突破したのに・・・
単純な落とし穴に落ちるとはな・・・」
その手には、フタの取れた墨汁が握られている。
藤岡「なるほど。デジタル機器よりも、アナログの方が・・・
スパイ相手には、効果覿面というわけか」
そのまま墨汁を逆さまにし、2人のいる穴へ真っ黒な墨をまき散らした。
慎吾「・・・ ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
(第86話へ続く)
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次回予告
妹を目の前にして、藤岡に拘束された2人。
タイムリミットまで・・・ 2時間をきった。
リナの父親・魁斗は、自らの調合した薬で心臓を止めたと聞かされる。
次回 「 第86話 尋 問 」
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