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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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86/147

第85話  妹のいる場所

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐と殺人の濡れ衣を着せられたリナと慎吾は、警察の銃とパトカーを奪い逃走。


そして、2人は黒幕の藤岡を追って、目黒基地に辿り着いた。

何とか基地の中に侵入したが・・・


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   第85話  妹のいる場所


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月19日(水)、21時3分。湾岸警察署。


後藤「何故!? 今も必死で藤岡を追ってる段階ですよ!?

    この取り調べの時間ですら、惜しいというのに!!」


取調室の中・・・後藤は正面に座る別の捜査官に、怒鳴り散らした。


男「源さん・・・ あなたはこの数年、藤岡を相棒として仕事をしてきた。

   その藤岡が、この連続殺人事件の主犯格だと言うじゃないか・・・


   聞くが源さん・・・ 藤岡の不審な行動に気づかなかったのか?」


後藤より2つ年上の捜査官は、眉をひそめながら後藤に質問する。


後藤「気づかないさ! あいつ程頭のキレるヤツ・・・

    敵にしたら怖いと思っていたんだから!」


後藤は目の前の机をバンと叩いて、不機嫌さをアピールした。


男「・・・。 はっきり言うが・・・ 源さん。

   あなたは、疑われているんだよ」


後藤「な、何!? ・・・ 疑われてる!?

    携帯電話やアタッシュケースの爆薬を見つけたんですよ!」


男「源さんの携帯に・・・ 藤岡が爆発物を仕込んだという証拠がない」

 

後藤「ちょっと待ってください!

    機械音痴な自分に、そんな事、出来るわけがない!


    アタッシュケースの爆薬で・・・半径100mは吹っ飛ぶんですよ!

    あのまま護国寺に行けば、どれだけの人が死んだと!?」


男「さぁな・・・」


後藤「護国寺での大規模なテロを阻止したのに、疑われる!?

    あの爆薬を指摘しなければ・・・ 多くが死んだ!!」


男「・・・ ・・・」


捜査官はじっと後藤を睨み付けた後、再び口を開いた。


男「昼3時に、警察署に届いたFAX。

   あのFAXは・・・ 後藤捜査官・・・

  

   あなたのIDでログインしたPCから、送られていたんだ」


後藤「それも藤岡の仕業ですよ! 私は機械音痴なんですから!」


男「残念ながら・・・ まだ源さんが犯人と示す物があるんだ」


その捜査官はノートパソコンを操作し、ある画面を後藤に見せた。


男「これは・・・ 堂島から渡されたUSBに入っていたファイルだ」


その画面には・・・ 後藤がこの連続殺人、そして誘拐事件に関わっている証拠の数々が映っていた。


後藤「は! それも藤岡のでっちあげに決まってるでしょう!!」


男「問題はこれだよ・・・」


捜査官は1つの音声ファイルをクリックした。


【警視庁サイトに不正侵入して、情報を流すヤツがいる・・・

  警察の中にそんなヤツがいるなんて・・・ 

 

  本人以外、絶対思わねぇよな】


男「これは・・・源さん本人の声だ」


後藤「こ、これは・・・ 藤岡との会話の時・・・」


藤岡に・・・警視庁のサーバに侵入しているヤツがいると言われた後藤。そして、その事はしばらく黙っておくように言われていた。


男「もう1度聞くか?

   自分の声かどうかぐらい・・・ わかるだろう?」


【警視庁サイトに不正侵入して、情報を流すヤツがいる・・・

  警察の中にそんなヤツがいるなんて・・・ 

 

  本人以外、絶対思わねぇよな】


あの時、藤岡に・・・確かにそう話した。それをいつの間にか録音されていたようだ。


男「科捜研でくわしく調べてもらった。あなたの声紋と一致している。

   本人だと、ほぼ断定できると言っていたよ」


後藤「こ、これも藤岡の・・・」


男「この音声ファイルは・・・

   あなたと藤岡が、裏で何かを企てていたという立派な証拠だ」


後藤「し、しかし・・・ 藤岡が・・・」


声のトーンが小さくなっていく後藤。


男「あれも藤岡。これも藤岡・・・か・・・」


後藤「だが、それが真実だ!」


一転して、腹の底から声を出した。


男「正直、我々も源さんが事件に関与しているとは思いたくない。

   だが、それは藤岡も同じだった。


   あいつがこの事件の主犯だとは・・・今でも到底思えない」


後藤「それが真実だと言ったろう?」


男「悪いが源さん・・ あなたに不利な証拠が多すぎる。

   あなたを拘束したくはないが・・・


   これだけの証拠が出ているのに、あなたを自由にすれば・・・

   周りがうるさいんだよ・・・」


後藤「ぐ・・・」


後藤は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


男「それについさっき、ICPOやSISからも問い合わせがあってな。

   そちらに渡す報告書の作成に・・・付き合って貰いたい。


   拘留するが、留置所には入れない。現状を考えると・・・

   留置所に入らないだけでも、マシな状況なんだよ」


後藤「・・・ ・・・」


冷静に、そして客観的に考えれば・・・ 目の前の捜査官の言う事はスジが通っている。


真実は自分にあるのに・・・それを周りが認めるような状況ではない。


(後藤「あの大学生等も・・・ 同じ目に合っていたのか・・・」)


ここにきて初めて・・・慎吾とリナの苦しい立場を理解出来た。


1日前・・・同じ立場にあった2人を追い詰めたのは後藤本人。

しかし今は・・・皮肉にも、後藤自身が追い詰められる側だ。


後藤「・・・ ・・・」


藤岡の手際の良さは・・・ 完璧のように思えた。


後藤「わかった・・・ だが、藤岡を絶対捕まえてくれ!」


大きな絶望感の中・・・


後藤はあの大学生2人の安否を、心から気にしていた。


(後藤「まさか今頃・・・ あの凶悪犯の所へ行ってねぇよな・・・」)



・・・ ・・・。


21時43分。目黒基地内・・・地下。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾とリナは1時間近くかけて、地下のある部屋の前まで辿り着いた。


リナ「こ、ここ・・・?」


リナはノートパソコンの画面を見つめて呟く。その画面を慎吾も覗き込んだ。


慎吾「こ、ここです・・・。間違いない・・・」


地図画面上では、何も存在していないはずの場所だが・・・2人の目の前には、確かに部屋がある。


リナ「な、中は・・・?」


慎吾「ま、待って下さい。今すぐ・・・」


慎吾はポケットに入っていたパワーストーンを取り出すと、強く握りしめ、意識を集中する。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾の霊能力はこのパワーストーンを介して増幅される。


慎吾「います・・・ 誰か部屋の中にいます・・・」


パワーストーンを握りしめたまま、小さな声でリナに声をかけた。


リナ「ど、どっちが!? 雛(ひな)の方!?」


慎吾はパワーストーンに集中する。


慎吾「いるのは・・・ 若い女性・・・

    このオーラは・・・ 間違いない・・・」


リナ「だ、だから? 雛なの!?」


慎吾「えぇ。リナ先輩と似た感じのオーラです。

    妹さんで、間違いないと思います」


リナ「や、やった・・・」


慎吾「いるのは1人だけ・・・です、はい!」


リナ「・・・ み、見張りとか・・・ いないの?」


慎吾「・・・ ・・・」


パワーストーンを強く握りしめ、意識を集中するが・・・

近場に誰かのオーラを感じる事はない。


慎吾「い、いないようです・・・」


リナは頷くと、ドアノブを見る。ノブの横には直方体の銀色のBOXのような物が設置されていた。


1から9までの数字ボタンがあり、電子ロックがかかっているのがわかる。


リナ「見張りがいないのは・・・ これがあるからか・・・」


暗証番号を入れなければ、中に入れない仕組みだ。


慎吾「ど、どうやって暗証番号を・・・」


リナの眼鏡がキラリと光る。


リナ「ふん。私にかかれば・・・」


特殊なコネクタを、BOX横にあった差し込み口に挿入し、反対側はパソコンをつなぐ。そして右手だけでキーボードを操作し、何かのプログラムを走らせた。


ガチャリ。


リナ「よし!」


わずか10秒で、扉が開く音を確認したリナ。ノブをゆっくり握り・・・ドアを開ける。


リナ「・・・ ・・・」


部屋の中を覗き込むが・・・ 1mほど先は壁ではばまれ、その中央に再びドアがあった。壁の向こうを見る事は出来ない。


リナ「二重扉・・・」


部屋に入ろうとするリナを、慎吾が止める。


慎吾「ま、待って下さい。リナ先輩」


リナ「何よ?」


慎吾「い、いや・・・ 何か変です。

    あちらからすれば、大事な人質のはずなのに・・・


    見張りもいないなんて・・・」


リナ「大丈夫よ。9桁の暗証番号を突破したのよ?」


慎吾「部屋に入った瞬間・・・ 

    雷が落ちるとか、爆弾が爆発するとか・・・ないですかね?」


リナ「心配性ね! 絶対大丈夫だって!!」


慎吾「で、でも・・・ 何か嫌な予感が・・・ 念のため・・・」


リナ「・・・ ・・・」


今すぐにでも部屋の奥へ行きたいが・・・慎吾の不安はリナにも伝染する。


リナ「わかった・・・」


リナはパソコンを操作し始めた。警視庁のサーバを通して、目黒基地を管理しているサーバに侵入。


リナ「警視総監のID・・・ どこでも行けるわね。便利だわ・・・」


横にいた慎吾が目を丸くするが、何も聞かなかったフリをした。リナは基地内の見取り図、電力や配電関係の情報を引き出す。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾もパソコンの画面を覗き込むが、何がどうなのかを理解出来ない。


リナ「大丈夫。ここの電気関係とか調べたけど・・・

    通常電力以外、特殊な電気の流れがあるとは思えない。


    つまり、何かのトラップはない・・・って事ね」


慎吾「そ、そうですか・・・」


リナに言われても、慎吾は・・・ 心配が拭(ぬぐ)えなかった。


慎吾が逡巡している横で、リナは部屋の中へ入って行った。


瞬間・・・


リナ「あ・・・」


リナの右足・・・ 床を踏み込んだはずの右足が何の反応も返さない。そのままリナの体は・・・ 下へ落ちて行こうとした。


(リナ「お・・・ 落とし穴!?」)


その足場はフワフワの素材で、リナの踏み込んだ足を中心に一気に穴があく。


慎吾「リナ先輩!!」


即座に慎吾は右手を出し、リナの右手を捕まえた。


が・・・


そのままリナに引きずられ、万有引力の法則に従う。


リナの妹がいる部屋を前にして・・・2人の体は数m下へと落ちて行った。



・・・ ・・・。



慎吾「いてて・・・ リ、リナ先輩・・・ 大丈夫ですか?」


リナ「だ、大丈夫・・・」


2人は手を握ったまま、数m下に落ちていた。リナの上に覆い被さる形になっていた慎吾。


慎吾「あ、す、すいません!!」


慌てて密着した体を離し、握っていた手も引っ込める。


特に気にとめる様子もないリナは、辺りを見回した。


リナ「マットレス・・・?」


2人が落ちた先はマットレスがしかれ、落下のダメージを最小限にしていた。


慎吾は上を見上げる。


慎吾「3m・・・ぐらいですね。1つ下の階に落ちたようです・・・」


リナ「・・・ ごめん・・・」


横で申し訳なさそうにリナが声をかける。


慎吾「妹さんがすぐ側にいましたからね。気持ち、わかります。

    大丈夫。すぐに出られますから・・・」


言いながら慎吾は、周りを見る。


直径2m、高さ3m程度の円柱形の落とし穴・・・2人はそこに落ちた。


下にこそマットレスがしかれているものの、壁は大理石のようでツルツルだ。


(慎吾「簡単には・・・ 出られない・・・」)



5分後・・・。


右往左往している慎吾とリナ。突如真上から、何かが落ちてきた。


その小さな物体はマットレスの上で小さくバウンドすると、コロコロと転がり、2人の目の前で動きを止める。


リナ「何?」


それはオレンジ色の、何かのフタのようだ。


慎吾「・・・ 何かの・・・ キャップ!?」


それを確認した2人は、すぐに真上を見る。


視線の先には・・・


羽鳥雛子を誘拐し、その翌日から殺人を重ねてきた男の姿があった。


藤岡「・・・ ・・・」


その男は2人を見下ろし、声をかける。


藤岡「9桁の電子コードを突破したのに・・・

    単純な落とし穴に落ちるとはな・・・」


その手には、フタの取れた墨汁が握られている。


藤岡「なるほど。デジタル機器よりも、アナログの方が・・・


    スパイ相手には、効果(こうか)覿面(てきめん)というわけか」


そのまま墨汁を逆さまにし、2人のいる穴へ真っ黒な墨をまき散らした。


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」



             (第86話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


妹を目の前にして、藤岡に拘束された2人。


タイムリミットまで・・・ 2時間をきった。


リナの父親・魁斗は、自らの調合した薬で心臓を止めたと聞かされる。



次回 「 第86話  尋  問 」

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