第75話 2人の容疑者
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐事件から5日目。慎吾は府中本町で見た不審な男を追いかけ、大学まで辿り着く。しかし、男と接触した時・・・
唯一の武器パワーストーンを奪われ、銃を撃たれてしまった。
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第75話 2人の容疑者
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月18日(火)、午後7時35分。都立病院の一室。
後藤「本当に・・・ あの2人がこの事件に絡んでいると?」
藤岡「間違いありません。その書類が何よりの証拠」
後藤「・・・ ・・・」
後藤は渡された書類を、無言でチェックする。
後藤「どこでこれを?」
藤岡「彼の部屋です」
後藤「だとしたら・・・ 令状無しで得た物か・・・。
証拠としては認められんぞ?」
藤岡はニヤリと笑った。
藤岡「それは、これから取ればいいだけの事。問題はありません」
後藤「だ、だが・・・」
藤岡「迷う余裕はありません。その書類は・・・
彼が犯行グループの一味である事を、確実に示している。
そして放っておけば・・・ また誰かの命が狙われる・・・」
後藤「・・・ ・・・」
しばらく間を取った藤岡は、患部をさすりながら話し始める。
藤岡「俺は、ナイフで刺されて倒れた時・・・
薄れる意識で、そいつを見ました」
後藤「府中本町に・・・ あいつがいたってぇのか?」
藤岡「えぇ。駅の防犯カメラで調べさせてください。
調布駅の時と同様、彼が映っているはずです」
後藤「わかった。すぐに調べさせてみる」
後藤は携帯電話をポケットから取りだそうとした時、思わずそれを落としてしまった。
カシャン。
後藤「おっとっと・・・ 慌てると、手元からスルリと落ちやがる」
藤岡「・・・ ・・・」
後藤は携帯を拾い上げ、すぐに署に電話を入れる。
府中本町・駅構内の防犯カメラに・・・あの大学生らが映っていないかを調べさせた。
藤岡「・・・ ・・・。でも、俺が生きててよかったですよ。
これで連続殺人は、【F】で止められたわけですから」
携帯を切った後藤を見ながら、藤岡が言う。
後藤「・・・ ・・・」
ゆっくりと携帯をポケットにしまう後藤。
藤岡「犯人は【F】で名前が始まる俺を・・・
【F】で始まる府中本町で殺そうとした。
そして失敗した・・・。これは連続殺人を止めた事に・・・」
藤岡の言葉を後藤が遮った。
後藤「あぁ・・・。その事なんだが・・・。
どうせお前もすぐわかる事だから、言っておこう」
藤岡「・・・ ・・・」
後藤「実は布田駅でも、ロッカーが爆破される騒ぎがあってな。
その騒ぎで、警察がロッカーに集まるのを狙っていたんだろう。
深田文江という女性の遺体が・・・
トイレの中で見つかったんだ」
藤岡「何ですって!?」
驚いたような声をあげる藤岡。
後藤「まだ、詳しい事は捜査中だが・・・。腹部を刺されたようだ」
藤岡は大きなため息をついた。
藤岡「じゃ、じゃぁ・・・。とうとう【ABCDE】・・・【F】まで?」
後藤は無言で頷いた。
藤岡「6人・・・連続で、殺されたって事ですね・・・。
どこまで続くんだ、この殺人は・・・」
後藤「全くだ・・・」
藤岡「源さん! すいませんが、もう1度、署にかけてもらって・・・。
布田駅での防犯カメラもチェックさせてください」
後藤「すでにチェックしているさ」
藤岡「いえ、だから・・・ あの大学生らが映っていないかですよ!」
後藤「布田駅にも?」
藤岡「えぇ、そうです。今日は、府中本町と布田で爆破騒ぎがあり・・・
府中本町では身代金の受け渡し、布田では殺人。
もし、どちらにもあいつらがいたら・・・
それらの映像は、立派な証拠になります」
頷いた後藤は再び携帯を取り出した。
後藤「そうか。正体のわからぬ不審人物を、捜すには時間がかかるが・・・。
特定の人物を捜すとなれば・・・」
再び署にかけた後藤。布田駅構内の防犯カメラに、例の人物達が映っていないかを調べさせた。
藤岡「明日の【G】駅殺害・・・何としても阻止せねば!」
藤岡は横に置いてあった自分のカバンの中からノートパソコンを取り出し、起動させる。そして【G】駅を検索し始めた。
外苑前、学芸大学、学習院下、銀座、銀座一丁目、
豪徳寺、護国寺、五反田、五反野 (50音順)
藤岡「9駅もある・・・。多すぎる・・・」
後藤「9駅・・・ これでは警備も分散せざ・・・」
言い切る前に後藤の携帯電話が鳴った。すぐに電話に出ようとポケットから携帯を取り出すが・・・
またしても携帯を落としてしまう。
カシャン。
藤岡「・・・ ・・・」
後藤は慌てて携帯を拾い、電話に出る。
後藤「後藤だ! うん。うん・・・。そうか、わかった!
ならばすぐに裁判所へ行って、逮捕状を請求してくれ!」
携帯を切った後藤は、すぐ藤岡に内容を伝えた。
後藤「今、確認出来た。
布田駅の防犯カメラに、2人とも映っていたそうだ。
ロッカーにリュックを入れ、1分後そのロッカーが爆破している」
藤岡「やっぱり・・・」
後藤「府中本町では、男の方だけが映っていた。
ロッカー爆破騒ぎ直後に、タクシー乗り場に出ている。
お前の言う通りだ。
あいつはあの時間、タクシー乗り場にいたんだ!」
藤岡「逮捕状は?」
後藤「今、請求をしている。この防犯カメラの映像は決定的だ。
間違いなく逮捕状は取れる!!」
藤岡「彼は、秋津駅・分倍河原駅・調布駅・・・
そして布田駅の4つの殺害現場にいたにもいた。
田園調布と恵比寿には現れていませんが・・・」
後藤「その時は俺がヤツを監視していたからな」
藤岡「ほぼ間違いないですね」
後藤「あぁ。しかし・・・ 動機がわからねぇ・・・」
藤岡「それはこれから調べる事です」
後藤「そうだな。だが、最初から我々は犯人を目の前にしてたのか・・・。
全く、あの野郎・・・
とぼけたフリして、バカにしてやがって!!」
非常に不愉快な表情を後藤は浮かべた。
藤岡「最初に羽鳥邸に行った時・・・源さんはあの男を疑った。
それが正解だったんですね・・・。
先輩の【刑事のカン】とでも言うべきでしょうか・・・見事です」
後藤「褒めたってちっとも嬉しかねぇ・・・。
あの時に捕まえていれば・・・
6人も死なずに済んだんだ!!」
藤岡「・・・。しかしあの時、証拠はなかった。
見た目によらず、犯人は非常に知能犯です・・・」
後藤「くそぅ・・・。過去よりも今だな。
逮捕令状が出たら、すぐに拘束してやる。
羽鳥邸に戻らなければ・・・」
藤岡「俺も行きます」
後藤「お前はダメだ。
今日1日は検査入院って事で、医者から指示が出ている」
藤岡の傷は浅かったが・・・後藤は医者に頼んで、藤岡を1日入院させるよう手配していた。
藤岡「え? 俺、もう普通に動けますよ?」
普段から睡眠時間も少なく、オーバーワークの藤岡を休ませるには強制入院しかない。
後藤「ダメだ。医者が退院の許可を出さない限り、お前はそこにいろ」
さらに後藤は犯人からのメッセージについては、藤岡に黙っていた。言えば彼は、無理にでもついてくるのを知っているからだ。
藤岡「そんな・・・ 俺だってずっと追い続けてきたヤマ。
犯人逮捕に立ち会えないなんて・・・
それにもう1人の犯人を特定してないのに・・・」
後藤「な~に。残りは俺が白状させるさ。
明日、【G】での殺人は起こらない」
コートを手にし、後藤は病室を出ようとした。
藤岡「待ってください!」
それを藤岡が引き留める。
後藤「何だ? まだ、何かあるか?」
藤岡「いえ。どうせ止めたって源さんは・・・
明日【G】駅に行くつもりでしょう?
まだ特定していない犯人を捕まえに」
後藤「・・・ ・・・」
藤岡「自分が【G】の名前だというのに」
後藤「・・・ ・・・。あぁ、もちろん」
藤岡「ズルいですよ。
俺には【F】駅に行くなと言って、自分は【G】駅に行くなんて」
後藤「ふん。すでに犯行グループの一部はわかっているんだ。
今までとは状況が違うし、俺が殺されることは絶対ない」
藤岡「しかし!」
後藤「何よりお前が、【F】駅から生還したのは事実。
それはすなわち・・ 【G】である【後藤】も死なないって事。
そして必ず・・・ホシを全員挙げてやる!」
藤岡「わかってます。ただ・・・」
藤岡は右手の平を上にして、後藤の前にさしだした。
藤岡「源さんの携帯を貸してください」
後藤「ん? 何故だ?」
藤岡「【犯人追跡GPS連携ソフト】の最新版を入れます」
後藤「それは4日前にも入れたぞ。
インストールうんちゃら、いうヤツだろ?」
藤岡「さらにヴァージョンアップしたヤツですよ。
今の所、世界一の逃走者追跡システムです」
後藤「・・・ ・・・。それ・・・必要か?」
藤岡「これは警察の義務です。
万が一、そのシステムヴァージョンアップを怠って・・・
犯人に逃げられ、それがマスコミに知られたら・・・」
後藤「・・・ ・・・」
すぐにでも仕事に戻りたいが・・・藤岡の言う事も正しい。
後藤「あぁ、わかったわかった。マスコミがうるさいのはよくわかってる。
じゃぁ、頼むよ。2分程度で終わるんだろ?」
携帯を受け取った藤岡。
藤岡「えぇ・・・」
傷の多い後藤の携帯を見ながら、言葉を続けた。
藤岡「と、言いたいですが・・・。源さんの携帯、かなり傷ついてますね」
後藤「んん? あぁ、まぁ、年寄りには小さいんだよな、その携帯。
よく、落としちまうんだよ」
藤岡「30分・・・いや、20分くれませんか?」
そう言うと、藤岡は後藤の携帯の電源を切り、裏のカバーを取り外す。
後藤「おいおい・・・。何するんだ?」
藤岡「携帯の中に、GPS機器が入ってるのはわかるでしょう?
光の速度と、複数の衛星位置との電波のやりとりを計算して・・・
位置を割り出しているです」
後藤は頭をかきだした。藤岡が専門的な事を言うときは・・・後藤が理解できない事を言うときだ。
藤岡「光速度は時速30万km。
仮に10万分の1の誤差が出たとしても・・・
3kmもの位置ズレが出るんです」
後藤は頭をかきながら、窓の方に視線を移す。
藤岡「3kmは、逃亡者を追跡するには致命的なズレ。
だから今から、GPS機器の簡単なチェックをします。
20分で終わらせますから」
後藤「あぁ・・・わかったよ。警察は常に万全の態勢で・・・だよな」
小さな笑顔を見せた藤岡は、携帯のバッテリーを取り外した。
藤岡は、後藤の携帯の内部を露出させ、いろいろな箇所をチェックし始める。
後藤「・・・ ・・・」
何もする事がない後藤は、手持ちぶさたで室内をウロウロする。それを見た藤岡が声をかけた。
藤岡「源さん・・・すいません。俺、朝から何も食ってなくて・・・。
お手数ですが、携帯をチェックしてる間、何か食べる物を・・・」
後藤「あぁ、わかった。
どうせ俺は機械に弱いし、ここにいても時間の無駄だからな。
あんパンとコーヒー牛乳でいいな? 刑事の定番メニューだ」
笑いながら藤岡は首を縦に振った。
・・・ ・・・。
午後8時11分。東京農工大学、工学部12号館。3階トイレ。
ヴーン ヴーン ヴーン ・・・
奥の個室。床に落ちた携帯が、静かにバイブしている。
ヴーン ヴーン ヴーン
やがて、その音は止まった。
・・・ ・・・
数秒おいた後
ヴーン ヴーン ヴーン ・・・
再びバイブし始める。
慎吾「・・・ ん・・・」
個室のドアにもたれかかるようにして、意識を失っていた慎吾。
慎吾「んん・・・?」
振動する携帯の音で、少しずつ意識を取り戻した。
慎吾「・・・ ・・・」
静かに目を開くと・・・ 目の高さに、フタの閉まった便器が見えた。
そして、そのフタの上には・・・携帯電話とパワーストーンが置かれてある。
ヴーン ヴーン ヴーン ・・・
頭痛がひどく、視界もボヤけている。何がどうなったのか、さっぱり状況を把握できない。ただ、目の前で携帯電話が鳴っている事だけは理解した。
意識朦朧としながら、携帯を手に取ろうとする。しかし、ボヤけた視界で2、3度取り損ねた。ようやく携帯を捕まえ、静かに着信ボタンを押し、ゆっくり耳にあてる。
突然、電話の向こうから大きな声が聞こえた。
リナ「慎吾!? 慎吾!?」
(第76話へ続く)
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次回予告
負傷しながらも、何とか無事だった慎吾。ようやく慎吾と再会したリナは、足を引きずる慎吾を見て言葉に詰まる。
羽鳥邸に戻る2人だが・・・そこで2人は、大きなピンチを招く。
次回 「 第76話 銃を向ける者、向けられる者 」
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