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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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74/147

第73話  6人目の犠牲者

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐事件から5日目。布田駅での爆破騒ぎの後、リナは慎吾と離れて行動。


ヒロの残したサイトのパスワードを入力し・・・

謎の組織【Unknown】が、大規模なテロを起こそうとしている事を突きとめた。


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   第73話  6人目の犠牲者


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月18日(火)、午後5時3分。調布駅近くのネットカフェの1室。


携帯電話の向こうから、慎吾が慌てた口調で話しかけてくる。


慎吾「よかった!繋がって! 今、僕、府中本町にいますが・・・

    布田駅にいた時みたいに、ロッカーが爆破して・・・


    藤岡さんもタクシー乗り場で、何者かに襲われました!!」


世界同時多発テロ計画に頭を奪われていたが・・・ 


リナ「府中本町・・・」


少しずつ妹の事を意識し始める。


リナ「マ、ママは!? 身代金は渡せたの!? 妹は!?」


慎吾「お母さんはパトカーの中! そして・・・

    パトカー横の警察官が、アタッシュケースを持ってます!


    多分、身代金の引き渡しは出来てないと思います!」


リナ「・・・ ・・・」


事態が悪い方へ動いていると理解したリナ。


慎吾「れ、例の怪しい男がいました!」


リナ「あんたが・・・ 犯人かもしれないって言った男の事?」


慎吾「そうです! 1分前、タクシーに乗って駅を出ました!

    ナンバーは、★■-71! 共同タクシー!


    リナ先輩のパソコンで追跡できませんか!?」


リナ「バカ・・・ 私のパソコンは吹っ飛ばされたでしょ!」


言いながらもリナは、いったんヒロのサイトは閉じ、目の前のキーボードを高速で叩き始めた。


慎吾「あ・・・そうだ・・・

    彼を追えば、妹さんに近づけると思ったのに・・・」


リナ「でもちょうど今、私はパソコンの前にいるの! 

    府中本町駅周辺で、ネット接続できる防犯カメラ映像を探ってみる!」


慎吾「お、お願いします! 急いで!!」


リナ「私を誰だと思ってるのよ! 

    あんたはすぐにタクシー捕まえて!

  

    男が逃げた方向へタクシーを走らせるのよ!」


慎吾「え!? で、でも今、駅は大混乱で非常に混雑・・・」


リナ「ばか! そんなの知らないわよ! 唯一の手がかりよ!!

    どうにかしてタクシー捕まえなさい!!」


叫びながらも、リナは警視庁サーバへアクセス。サーバ内に確保した自分の領域から、そのまま警視庁交通管制センターに侵入した。


さらにそこを起点として、府中本町駅周辺でのライブカメラや、防犯カメラに接続できる場所を検索し始める。


午後5時前後、府中本町駅のタクシー乗り場から出るタクシーのカメラ映像を見つけた。


(リナ「どのタクシーかしら・・・」)


タクシーはひっきりなしに、駅からの客を乗せて出発している。慎吾の言うタクシーを特定するには、そのナンバーを特定したい所だが・・・


警視庁交通管制センターのコンピュータなら、高解像度の画像処理プログラムを使用できるが・・・ネットカフェのパソコンでは、100%その処理能力は発揮できない。


案の定、車のナンバーはボヤけて、はっきり確認出来なかった。


(リナ「でも・・・」)


【時間】、【男】、【★■-71】、【共同タクシー】をキーワードにしてフィルタにかける事で、最もそれに近いタクシーを絞り込む。


ナンバーはぼやけているが、4桁の数字配列を数字でなく画像で処理し、慎吾の情報とマッチングさせると・・・


リナ「あった! ナンバー★■-71の共同タクシー!」


慎吾の見たであろうタクシーを特定した。


リナ「慎吾!! タクシーに乗った!?」


肩と耳で携帯をはさみ、電話の向こうに声をかける。電話の向こうからは慌てた様子の声が聞こえてきた。


慎吾「は、はひ!! い、今乗りました!」


リナ「府中競馬場周辺のカメラに映ってた! そこから北に向かってる!」


慎吾「あ、あの・・・東京は全く知らないんですが・・・

    タクシーの運転手に何て言えば・・・」


リナ「カトリック墓地!」


慎吾「あ・・・ カトリック墓地までお願いします!」


器用に携帯を挟んだまま、リナはキーボードを叩き続ける。そして航空自衛隊の基地に設置されている周辺の監視カメラに侵入した。


リナ「対象は、小金井街道を北東に走り続けている!」


慎吾「そ、そう言われても・・・ よくわかりません・・・」


携帯を通して、慎吾の不安そうな声が伝わってくる。


リナ「カトリック墓地に着きそうになったら、また言って!

    そこから先の指示をするから!」


今、妹に繋がる唯一の手がかりは・・・慎吾が追っている男だけだ。調布駅で慎吾は男に逃げられたが、ここで逃がすわけには行かない。


慎吾「もうすぐ着くそうです!」


リナ「目的地変更! 小金井市役所に向かって!」


慎吾「わ、わかりました! 

    す、すいません。こ、小金井市役所まで走らせてください」


慎吾はすぐにタクシーの運転手に伝える。


(リナ「ど・・・ どこに向かってるの?」)


都内ではここ数年、監視カメラが増えた。これらの映像が、事件解決につながる事も増えてきている事はマスコミでもよく報道されている。


(リナ「このパソコン、動画処理のパフォーマスンが厳しいわね・・・」)


慎吾の言ったナンバー★■-71のタクシーの進行方向を先回りして、接続できる監視カメラ映像を複数、自分のパソコン画面に映し出した。


動画映像のウィンドウを開けば開くほど、動画はカクカクとした動きになり、滑らかさを失っていく。


(リナ「ネットカフェだから仕方ないけど・・・ ん?」)


やがてそのタクシーが止まった。そして、スーツを着けた年配風の男がタクシーを降りる。遠すぎて男の顔は確認出来ないが、サングラスは着けているようだ。


リナ「男はコート着けてないわよ!?」


ネットカフェである事を忘れ、大声で電話の向こうの慎吾に声をかける。慎吾から聞いた話では、その男はコートとサングラスが特徴のはずだ。


慎吾「あ・・・ 今日はスーツ姿のはずです! 

    コートは手に持っていました」


リナ「それを聞いて安心したわ。運転手に、東京農工大までって伝えて!

    男はそこで降りた! あなたもそこで降りるのよ!」


慎吾「と、東京農工大までお願いします・・・

    あ、そ、そこで降りますから、はい・・・」


携帯から、慎吾がタクシーの運転手に嫌みを言われているのがわかる。何度も行き先を変えて、不審に思われたのだろう。


リナ「いい? 対象は、ガーデンヒルズの前から大学に侵入。

    残念だけど・・・ そこから先は私有地。映像がないの」


慎吾「わかりました。何とか・・・何とかその男を捜してみます!

    じゃ、電話を切りますね」


リナ「待って!」


思わず声を出したリナ。


リナ「気をつけて・・・ 妹を・・・ 」


慎吾「分かってます! 全力を尽くします!!

    何かわかったら、また連絡下さい!」


そういうと電話が切れた。


リナ「・・・ ・・・」


リナは目を閉じて椅子にもたれる。


慎吾は・・・全力で男を追いかけている。今、妹を救うために行動できるのは・・・


不審な男を目撃したという慎吾だけだ。


(リナ「違う・・・」)


リナもまた、ヒロの残した情報から犯人に近づいている。しかし、その情報では・・・


世界全体で、大規模なテロを起こそうという計画まで載っていた。


そのテロを自分の力だけで止められるとは、とても思えない。


(リナ「テロの事は・・・ 今は考えられない。でも・・・」)


リナの目がカッと見開いた。


(リナ「妹は救わなきゃ!」)


妹を救うことが・・・テロを止める事になるとか、そういう考えは毛頭無い。


(リナ「今は先の事じゃない・・・」)


ヒロ「目の前のある物を1つ1つ・・・

    後悔しないようにやるべき事をやるだけだ」


リナ「うん!」


ヒロならきっとこう言う。ヒロはどんな危険な目に遭っても、くじけずに精一杯動いてきた。


静かにキーボードに手を置いたリナは・・・


(リナ「まずは【Unknown】から・・・」)


秘密組織についての情報を検索し始めた。



・・・ ・・・。


午後6時35分。都立病院。


都立病院に救急車で運ばれた藤岡は、すぐに手術室に運ばれた。


後藤「先生! 藤岡は!?」


わずか20分で手術室から出てきた担当医に、後藤が声をかける。


医師「大丈夫です。出血は多かったものの、命に別状はありません。

    背後からナイフを刺されてましたが・・・


    反射的にうまくよけたのでしょう。

    大きなダメージが残らない部位を刺されただけです」


大きく深呼吸をした後藤は、安堵の表情を浮かべた。


後藤「あ、ありがとうございます。

    あいつに死なれちゃ困るところでしたよ。


    いつ、彼と話せますか?」


医師「すでに意識はありますが、精密検査をしますので・・・

    そうですね。7時半には」


廊下にかけられた時計を見ながら医師は応えた。


後藤「わかりました。ではまた、7時半に!」


背中を向けようとした後藤に、医師が声をかける。


医師「あ、ちょっと待ってください。これを・・・」


医師はノートの切れ端のような物を手にし、後藤に見せた。


後藤「これは・・・?」


医師「患者を刺したナイフの先に・・・

    このビニールに覆われた、紙切れがありました」


その紙切れを後藤に渡す。紙切れの中央は切り裂かれ、ナイフが貫通した事を物語っている。


医師「見たところ脅迫文のようだし、誰か警察の方に渡すべきかと・・・」


ビニールに覆われているノートの切れ端のような物を受け取った後藤。藤岡の血がビニールに付いているものの、簡単に拭き取る事が出来た。


そこに書かれたものを見ると安堵の表情から一転、緊張した表情を浮かべる。


【今夜10時、羽鳥邸に電話する】

【羽鳥雛子を生きて返して欲しくば、必ず出ろ】


切り裂かれた部分を除いても、容易に内容が読み取れた。


誘拐犯に身代金を引き渡すはずだった府中本町駅では・・・


ロッカーが爆破し、駅構内は大パニックになった。


そして・・・その爆発に気を取られた隙に、藤岡が刺された。それに気づいた捜査官らは、すぐに羽鳥瞳の安全を第一に動き、もはや身代金を引き渡せる状況ではなくなっていた。


切れ端に書かれた内容から察するに、おそらく犯人は・・・


(後藤「改めて1億円を受け取るため、連絡をするつもりか・・・」)


後藤はノートの切れ端を調べてもらおうと、鑑識を呼ぶ事にした。携帯を取り出したちょうどその時、携帯電話が鳴り響く。


後藤「後藤だ」


今度は携帯電話の向こうから、情報が入ってくる。


「布田駅で・・・ 女性の遺体が見つかりました」


後藤「な・・・ なんだと!?」


「今日、午後3時過ぎですが、ロッカーの爆破騒ぎがあり・・・

  警察や警備の者が、そこへ集中した時だと思います」


後藤「布田駅でも、爆破騒ぎが?」


「爆破騒ぎの後、周辺をチェックしていた女子職員の1人が・・・

  トイレの中で、ホトケを発見」


後藤「なんて事だ・・・身元は? 名前はやはり【F】か?」


「詳しい身元確認はまだですが、所持していた免許証から・・・

  【深田(ふかだ)文江(ふみえ)】という女性の可能性が高いです」


後藤「・・・ ・・・。 そうか・・・ 残念だ・・・ 他には?」


「いえ。鑑識の到着が遅れてまして・・・ くわしい情報はこれからです」


後藤「わかった。何かあれば、また連絡をしてくれ」


「了解です。では・・・」


静かに電話を切った。


(後藤「結局・・・ 【F】駅で、【F】が殺された・・・か・・・」)


とうとう6人目の犠牲者が出てしまった事に、心を痛める。


藤岡が無事だった喜びは、すでに消えていた・・・。


後藤「・・・ ・・・」


そして後藤自身も・・・ 


自分の名前が【G】である事を誰よりも知っている。



・・・ ・・・。


午後7時12分。東京農工大学、工学部。


すでに大学内を歩き回って、1時間以上が経つ。時折リナと連絡を取り合うも、例の男が外に出た様子はない。


(慎吾「どこだ・・・」)


やみくもに探しても見つかるはずがない。そう思った慎吾は、右ポケットからパワーストーンを取り出した。


(慎吾「て、テレビとかだと・・・

     霊視とかいうのがあるみたいだけど・・・」)


今は亡き、日本を代表する霊能力者・江浜から譲り受けたパワーストーン。慎吾の霊能力はそれを介して力を発揮する。


(慎吾「霊視なんて・・・ やった事ないけど・・・」)


慎吾は強くパワーストーンを握りしめて・・・


(慎吾「た、確かにあの男には・・・ 特別なオーラがあった・・・

     どこかで・・・ どこかで感じた事があるような・・・」)


男に感じた特別なオーラをイメージし始めた。そして・・・


慎吾「・・・ ・・・」


何かが体に入ってくる。


慎吾「・・・ ・・・」


ふと、右手の方を見た。


慎吾「あそこだ・・・」


そして学内にある12号館に向けて走り出した。




             (第74話へ続く)

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次回予告


12号館、3階トイレ・・・。


慎吾はとうとう、男と接触する。

突然男に襲われた慎吾は・・・ 英語で詰め寄られた。


そして慎吾は・・・ 銃を向けられる。


次回 「 第74話  男との接触 」

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