第72話 【Unknown】の目的
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐事件から5日目、犯人の代わりにリナの妹が身代金受け渡しの場所を指示する。翌日午後5時、府中本町駅。
捜査官の後藤、藤岡、そして慎吾は・・・府中本町で、午後5時を待つ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第72話 【Unknown】の目的
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月18日(火)、午後4時49分。府中本町駅。
慎吾はトイレの個室に入っていたが・・・
警察が入れ替わり立ち替わりで、トイレの様子を探っているのが、個室の中からでもわかる。
慎吾「・・・ ・・・」
5分程個室にこもっていると、コンコンと扉をノックされた。
慌ててノックを返す慎吾は、
(慎吾「長居はできない・・・」)
トイレの水を流して、個室の外に出る。案の定、外には警察官が立っていた。特に声をかけられる事はなかったので、手を洗ってトイレの外に出る。
(慎吾「どこもかしこも・・・ 警察だらけだ・・・」)
ふと駅構内の時計を見ると、4時50分。犯人が身代金受け渡しに指定した時間まで、あと10分。
売店でお茶とおにぎりを買い、ゆっくり食べる。
(慎吾「5時まで時間を潰すのが・・・ 苦しい・・・」)
犯人の指定したタクシー乗り場に、今すぐにでも行きたいが・・・そこに行けば自分を疑っている後藤と遭遇する。
(慎吾「後藤さんを避けて・・・
どうやって犯人を見つければいいんだろう・・・」)
おにぎりを頬張りながら、その時に備えて知恵を振り絞る。
ちょうどその頃、瞳を乗せたパトカーがタクシー乗り場に到着した。午後4時51分。予定より1分遅れの到着だ。
後藤がパトカーに近寄り、警戒しながら後部座席を開ける。
後藤「どうぞ・・・」
瞳「・・・ ・・・」
瞳は無言で、パトカーから降りた。
後藤「犯人がどのような形で現れるかは・・・ まだ不明です」
瞳は腕時計を見た。指定された時間まで10分もない。深呼吸をして、落ち着くように努力する。
府中本町駅。周りは人がまばらに歩いているが・・・ もうすぐ帰宅する人でごった返す時間だ。
・・・ ・・・。
午後4時57分。路線図を見ながら、2個目のおにぎりを頬張り、ペットボトルのお茶を飲む慎吾。
慎吾「・・・ ・・・」
ふと、背後に何かの違和感を感じた。すぐに後ろを振り返り、その違和感の出所を探る。
慎吾「・・・ ・・・」
少しずつ増え始めた駅構内の人達に、視線を突き刺してゆく。
慎吾「 !? 」
そしてある人物をロックオンした。
(慎吾「あ・・・ あの男だ!」)
過去、慎吾が目撃したコートにサングラスの不審な男・・・ その男が今回は濃い青のスーツを着け、左手にコートを持った姿で現れた。大きめのサングラスはつけている。
(慎吾「ま、間違いない・・・」)
犯人の指定した時刻は午後5時。それに合わせてやってきたのだろう。
男は携帯を取り出し、何かを操作しながら静かにタクシー乗り場へ向けて歩いて行く。
慎吾は慌てて、その男の背後を目指して小走りに移動した。その時・・・
ドッゴォォオオーーン!!
慎吾「な!?」
精算所の横にあったコインロッカーが、爆音と共に吹き飛んだ。慎吾が視線を移すと、中央のロッカーが炎と煙をあげて燃え上がっている。
慎吾「・・・ ・・・」
構内にいた客は大声をあげ、我先にと出口に向かって走り出す。警備員がすぐに警戒しながら、ロッカー付近に近寄り、パニックになった客を誘導した。
「落ち着いて出口に向かってください! 走らないで!!」
「慌てないで! 前の人を押さないように!!」
しばらくすると、警備にあたっていた警察官や警備員が集まってくる。
「負傷者はいないか!?」
「周りに不審な人物は!?」
「ロッカーだけじゃなく、周りも警戒せよ!」
駅構内は、わずか数秒で異様な雰囲気に包まれていた。
(慎吾「ま、また、ロッカーが・・・」)
布田駅に続いて、府中本町でもロッカーの爆発に遭遇した慎吾は・・・
慎吾「しまった!」
例の男を見失っていた。
・・・ ・・・。
タクシー乗り場にいた後藤。慌てて大勢の人が出口から走り去るのを見て、構内で何かが起こったと察知する。すぐさまインカムを通じて情報が入ってきた。
「コインロッカーの1つが爆発!」
後藤「・・・ ・・・」
中に入るわけにはいかない後藤。約束の5時まであと1分だ。
(後藤「これも・・・ 犯人の仕業か・・・?」)
ちらりと後ろを見ると、藤岡も緊張した様子で見守っている。さらにその後ろでは、羽鳥瞳も動揺した表情を浮かべていた。
後藤は数名の捜査官と共に、羽鳥瞳の側で警護している。瞳の元を離れるわけにはいかない状況だ。
ちょうどその時・・・
混乱した客よりも一足早く出てきた・・・慎吾が追いかけていた謎の男が、タクシーに乗り込んだ。
・・・ ・・・。
騒然とする駅構内にいた慎吾は・・・ 思い切ってタクシー乗り場に出ることにした。人混みに紛れていれば、後藤に見つかる事はない・・・安易な考えかもしれないが、今はそれに賭けるしかない。
タクシー乗り場では爆発よりも、もっと大きな何かが起こる可能性があるが・・・
(慎吾「行くしかない!!」)
そして・・・
ちょうどタクシー乗り場へ出た時、慎吾はタクシーに乗って走り去る例の男を見た。
慎吾「し、しまった・・・!」
視線を右に移すと・・・
慎吾「な・・・」
視線の先では・・・ 倒れた藤岡を抱きかかえる後藤の姿があった。
後藤「藤岡!! しっかりしろ!!!」
藤岡の腰には・・・ ナイフが深々と刺さり、血がドクドクと流れているのが見える。
後藤「救急車だ!! 急げ!!」
駅構内で爆発が起こり・・・
慎吾が見た怪しい男はタクシー乗り場に出て、タクシーに乗っていった。
そして・・・
藤岡は何者かにナイフを刺されて倒れている。
慎吾「い、いったい何が・・・?」
・・・ ・・・。
数分前。
午後4時55分。調布駅近くのネットカフェの1室。
リナ「・・・ ・・・」
リナは256文字のパスワード入力後に現れたサイトを、ずっと見つめていた。
そのサイトには生前のヒロが収集した・・・秘密組織の情報が載っている。
組織の名は・・・ 【Unknown】(アンノウン)。
イタリア・フリーメイソン支部の1つであった【P2】(プロパガンダ・ドュエ)は、【P2事件】をきっかけに解散。
ジェッリという男が【P2】の表で活躍していたが、このサイトによれば【P2】を裏で率いていた男もいる。その男が【Uuknown】を立ち上げ、ごく小数のメンバーで暗躍しているという。
そして、そのサイトの後半の方には・・・
おそらく携帯から書き込んだであろう情報がアップされていた。
・ 【Unknown】は・・・数年後に大規模なテロを計画。
・ 単なるテロではない。
・ 世界同時多発テロと思われるが、くわしい事はまだ掴めていない。
・ その計画遂行のため、羽鳥魁斗を誘拐したのは確実。
・ 現在、そのテロ計画について調査中。
・ ある情報筋によれば、その世界同時多発テロで推定被害者数は・・・
(リナ「う・・・そ・・・ なに? この数字・・・」)
リナの想像を絶する数字がそこには書かれていた。
今、現在進行で起こっている連続殺人どころではない。
(リナ「このままでは・・・ 遙かに大勢が死ぬ・・・」)
そのテロ計画が本当に実行されれば・・・
(リナ「私も慎吾も・・・ 死ぬ・・・」)
呆然と・・・ただ呆然と、死んだ彼氏の残したサイトを見続ける。
さらに最後の方には、文章ではなく短い語句だけが並べられていた。
【マスター】【若い】【日本人】【もしくはアジア人】【黒い髪】
そして・・・最後の1行に書かれていたものは・・・
【2012年12月22日】
日付だった。
(リナ「よ・・・ 4日後じゃない・・・」)
最後の日付が・・・
果たしてテロが行われる日付なのかどうか・・・定かではない。
リナ「・・・ ・・・」
妹の誘拐事件が、連続殺人事件に繋がり・・・今度は世界同時多発テロという手に負えない事態にまで発展した。
(リナ「わ、私だけでは・・・ どうしようもない・・・」)
ネットカフェの1室で肩を落とすリナ。妹の事が頭に入ってくるのに、しばしの時間を要した。
・・・ ・・・。
午後5時2分。府中本町駅。
後藤「もうすぐ救急車が来る! 意識をしっかり持て!」
タクシー乗り場の中央で、意識朦朧とする藤岡を抱きかかえる後藤。藤岡は無言で、後藤に揺すられている。別の捜査官達は羽鳥瞳をパトカーに乗せ、銃を構え周囲を警戒していた。
慎吾は10m程離れた場所で、すでに倒れていた藤岡を見た。そしてタクシーに乗り、この場を立ち去る怪しい男も確認している。
慎吾「ぐ・・・」
慎吾は逡巡した後、走って男の乗ったタクシーを追いかけた。しかしそのタクシーはあっという間に加速して・・・慎吾の視界の遙か遠くへと走り去る。
慎吾「ど、どうすれば・・・」
数秒迷った後、ポケットから携帯を取り出した慎吾はリナに電話を入れた。
・・・ ・・・。
パソコンの画面を前に、目を閉じていたリナ。これからどうすればいいのか、何も考えが浮かばない。
リナ「・・・ ・・・」
ふと、横に置いてあった携帯がバイブする。
着信を見ると「歴ヲタ」・・・慎吾からだ。
しばらく放っていたが・・・
リナ「・・・ ・・・」
やがて携帯を手にして、
リナ「なに?」
小さな声で電話に出た。
慎吾「リナ先輩!! た、大変です!!!」
(第73話へ続く)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回予告
慎吾とリナは、タクシーに乗り込んだ男の追跡を開始する。
一方・・・
とうとう6人目の犠牲者が出てしまった・・・。
次回 「 第73話 6人目の犠牲者 」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




