第57話 違和感
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
前回までのあらすじ
2008年。
15歳だったリナは、新しいピアノ講師ヒロと付き合う。しかし彼はイギリス諜報機関・SISのスパイだった。
リナの父、羽鳥魁斗が開発したソフト・・・そのアルゴリズムを狙ったテロリストがいる。ヒロはそのテロリストを追うべく、羽鳥家に近づいていた。
しかし魁斗はテロリストに奪われ、後に遺体が発見される。また、リナもテロリストに襲われてしまう。ヒロはリナを守り通したが、引き替えに自らの命を失った。
4年後の2012年。
19歳のリナの妹・雛子が誘拐された。リナは霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へと戻る。
誘拐犯は1週間以内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する事になった。
誘拐犯が再び羽鳥邸に電話をした時・・・
リナは、誘拐犯が自分にメッセージを残しているという。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第57話 違和感
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月14日(金)、午後10時。 羽鳥邸、応接室。
後藤と仕事の引き継ぎをするため、藤岡が羽鳥邸に訪れた。午後10時~翌日午前10時の間、藤岡が羽鳥邸に常駐する事になっている。
後藤は誘拐犯からの連絡があった事や、逆探知が出来なかった事などを藤岡に伝えた。
藤岡「わかりました」
後藤「じゃぁ、後は頼む。また明日朝10時に」
帰ろうとした後藤を、藤岡が引き留める。
藤岡「源さん、待ってください」
玄関のドアノブに手をかけたところで、後藤は立ち止まり、振り返った。
後藤「何だ?」
藤岡「【犯人追跡GPS連携ソフト】、更新しました?」
後藤はバツの悪そうな表情を浮かべる。
藤岡「携帯端末に更新版をインストールするよう、指示が出てます」
後藤「また例のあれか・・・ 機械は苦手なんだがな・・・」
藤岡「ダメですよ。
今は効率的にホシを追い込む術が確立してるんですから。
昔ながらの【気合いで犯人を追跡する】なんて・・・
ナンセンスな時代です」
後藤「わかってるよ・・・」
頭をポリポリとかきながら、「やれやれ」といった表情を浮かべる後藤。
藤岡「いつものように・・・俺が設定しましょうか?」
後藤「あぁ、頼む・・・」
後藤はポケットから携帯を取り出した。
カシャン
後藤「おっと、いけねぇ。本庁の携帯は小さすぎるんだよな・・・」
ゆっくりと腰を曲げ、落としてしまった携帯を拾い、藤岡に渡す。
藤岡「2分で終わります」
携帯を手にした藤岡は、素早く操作して警視庁サイトへアクセスする。指定サーバからプログラムをダウンロードして、いくつかの設定を施した。
藤岡「終わりました。操作ガイドもしっかり読んでてください」
携帯を後藤に返す。
後藤「一応・・・ 目は通しておくよ」
藤岡「では、お疲れ様です。また明朝10時に」
後藤「あぁ。何かあれば電話なり、メールなりしてくれ」
小さなあくびをした後藤が、ゆっくりと羽鳥邸を後にした。
・・・ ・・・。
同時刻。都内のあるホテルの一室。
男はノートパソコンの画面を見ていた。
男「・・・ ・・・」
ひばりヶ丘を中心として、近辺の駅を検索している。
男「次は・・・ 調布駅・・・」
・・・ ・・・。
同時刻。羽鳥邸、2階。
部屋に戻った慎吾は、リナにプリントアウトしてもらった2つの事件の報告書に目を通していた。秋津駅、そして分倍河原駅での殺人事件。いずれも羽鳥邸から1時間以内でいける近場だ。
慎吾「・・・ ・・・」
殺害現場、被害者、発見者、凶器、死因・・・
報告書に書かれた内容を、一言一句逃さずに読み通す。
(慎吾「どこかで・・・ こんな事件が・・・」)
この2つの事件は、内容が似ていることから連続殺人の可能性が高い。報告書にも、同一犯の可能性が極めて高いと記されている。
(慎吾「確か・・・ ここに来てから・・・」)
羽鳥邸に来た時・・・どこかで何か感じた違和感と、この2つの事件が結びつく・・・慎吾はそう思っていた。
しかし、肝心の違和感が何だったかを思い出せない。
それに・・・
(慎吾「リナ先輩の言葉も気になる・・・」)
誘拐犯と瞳が電話で会話しているのを聞きながら、リナは確かに言った。
リナ「最後の言葉は・・・ 私に言ってる・・・」
すぐに慎吾は、どういう事かをリナに聞いたが・・・
リナ「いや・・・ ごめん。何でもない」
と、返されてしまった。
(慎吾「リナ先輩も何かを知っている・・・」)
でも、それを慎吾には言おうとしない。
慎吾「・・・ ・・・」
再び慎吾は、2つの殺人事件の報告書を読み始めた。
(慎吾「今はわからない事よりも、わかりそうな事を・・・」)
暖房の効いた部屋。ベッドの上、慎吾は報告書とにらめっこしながら・・・
いつしか眠っていた。
・・・ ・・・。
リナは警視庁のデータベースから、4年前の父親の誘拐、および殺害事件の報告書を読んでいた。
爆破、誘拐、テロ、殺害、湾岸警察署襲撃、遺体発見・・・・
映画やテレビでしか見ないような単語が、報告書の中には次次と出てくる。
この4年間、これらの事を閲覧しようと思えば出来たのだが・・・
リナ「・・・ ・・・」
リナはそれをした事がない。これらを見れば、死んでしまったヒロの事を思い出してしまうからだ。
どの報告書も、ヒロが犯人という事を前提に書かれてあった。それも心が痛む。
リナ「・・・ ・・・」
リナも慎吾同様、何かがひっかかっていた。
4年前、秋津駅で誘拐され・・・ヒロに助け出され、そして湾岸署で覆面男等との銃撃戦をくぐり抜け・・・リナは生き延びた。
しかし、ところどころの記憶を失っている。医者に言わせれば・・・そういう状況になれば、記憶を失うことは珍しい事ではない・・・そうだ。
しかし・・・
その記憶のどこかで・・・ 妹を誘拐した人物と繋がる何かがあったように思える。
(リナ「確か・・・ 確かに、この事件と関わる何かが・・・」)
自分のために命を落とした彼氏。ヒロの事を思い出すのは、心がえぐられるようにつらいし、どうしても自分を責めてしまう。しかし、妹の命まで失うわけにはいかないと、自分に言い聞かせた。
(リナ「必ず・・・ 必ず、雛は助けてあげなきゃ・・・」)
右手で左胸を押さえながら、リナは4年前の事件の報告書に目を通す。
(リナ「ヒロ・・・先生・・・」)
・・・ ・・・。
12月15日(土)、午前9時5分。羽鳥邸、2階。
コンコン。
慎吾「 ・・・ 」
コンコン。
慎吾「 ・・・ !?」
ドアをノックする音で、慎吾は目を覚ました。部屋の時計を確認すると、すでに9時を過ぎている。
慎吾「わ!! 寝過ごした!!」
慌てて寝ぐせを抑え、ドアを開けようとする。
慎吾「あ!」
ドアを開ける直前、何かを思い出した。ベッドに戻り、警察署のデータベースからダウンロードした報告書を、ベッドの下に隠す。
慎吾「い、今、開けます!!」
ようやくドアを開けると・・・羽鳥家の家政婦・新城がトーストとスクランブルエッグ、コーヒーを膳にのせて立っていた。
新城「おはようございます。
なかなか起きてこられないので、朝食をお持ちしました」
言いながら新城は部屋に入ってきた。
慎吾「あ、ありがとうございます。すいません!
人様の家で・・・こんな時間まで寝てたなんて・・・」
素直に頭を下げる慎吾に、笑いながら新城が返す。
新城「いえいえ。聞くところによると慎吾さん・・・
昨日殺された男の、第一発見者というじゃありませんか。
警察の事情聴取を、いつでも受けられるようにと・・・
この家に留まっているって、奥様から聞いております」
慎吾「え、えぇ・・・。その通りです・・・」
苦笑いを浮かべる慎吾。
新城「それにしても・・・」
慎吾「 ? 」
新城「リナお嬢様の彼氏さんは、いつも疑われる立場にいるのね」
机に朝食を置いた新城は、静かに出て行こうとする。
慎吾「あ、あの・・・」
慎吾が呼び止めた。
新城「何か?」
新城は、上品な笑顔を慎吾に向ける。
慎吾「あの・・・ リナ先輩の前の彼氏さんって・・・
彼は・・・ 疑われてたんですか?」
新城「えぇ。4年前にも・・・」
何かを話そうとしたが、
新城「あぁ、でも・・・
この話は、人にしてはいけないと言われてましたわ」
途中で話を止める。
慎吾「え? 何故ですか?」
新城「警視庁の方から・・・
まだ捜査は継続中だから、4年前の事は他言無用だと。
何でも、かなり大きな危機が・・・
あ、これも言ってはいけませんでしたわ」
そう言うと新城は、苦笑いをしながら静かに部屋を出て行った。
慎吾「・・・ ・・・」
しばらく、閉まったドアを見つめいてた慎吾。ベッドの下から報告書を取り出すと、机の前に座る。朝食をとりながら、再び報告書を読み始めた。
慎吾「・・・ ・・・」
昨日から、穴のあくほど読み通した事件の報告書。
(慎吾「次は・・・」)
朝食をとった後、慎吾はリナにメールした。
・・・ ・・・。
午前9時45分。羽鳥邸、応接室。
1階の応接室でノートパソコンを操作していた藤岡は、リナと慎吾が階段を下りてくるのを目にした。慎吾は朝食をとったであろう食器を手にしている。
藤岡「やぁ、おはよう。昨日は眠れたかな?」
小さく笑いながら2人に声をかけるが、リナは藤岡を無視してスタスタと1階の書斎へと向かって行った。リナの手には、ノートパソコンが抱えられている。
慎吾「え、えぇ・・・。なんか、寝過ごしちゃって」
律儀に返事をする慎吾を、リナは一瞬だけ睨み付け、そのまま書斎の中へと入って行った。
藤岡「昨日、一昨日と殺人事件の現場に君はいたからな。
万が一、今日もどこかで殺人事件が起きたとして・・・
君がその現場にいるって事はないよな?」
慎吾「ま、まさか・・・。じゃ、じゃぁ、僕はキッチンに・・・」
苦笑いを浮かべながら慎吾は、キッチンへ食器を返しに行く。
藤岡「相変わらず挙動不審な男だ」
しばらく慎吾を見ていた藤岡は、眼鏡をかけ直し、再びパソコンの画面を見つめた。
・・・ ・・・。
食器を返した慎吾は、そのまま書斎へと向かう。初めて羽鳥邸に入った時、すぐに通された部屋だ。
リナ「で? 何故こんな所に?」
慎吾より一足先に書斎に入っていたリナは、入ってきた慎吾に声をかけた。
慎吾「えぇ。この家に来てから、どこかで・・・
2つの殺人事件にからむヒントを、見たような気がしたんです。
だからまず、最初に入ったこの部屋から調べて見ようかと」
リナ「一人で調べればいいじゃん」
慎吾「いえ・・・ 物理とか数学の専門書も多いので・・・
リナ先輩がいれば心強いんです」
リナ「あっそ。じゃぁとっとと、そのヒントとやらを見つけてちょうだい」
慎吾「はい。あればいいのですが・・・」
言うと慎吾は、広い書斎の本棚を1つ1つ見ていった。
左の本棚には、会社の経営に関する書物が多く見られる。本の背表紙を1つ1つチェックしていく。
リナ「・・・ ・・・」
しばらく慎吾を見ていたリナ。やがて慎吾を背にし、奥の方へと歩いて行った。一番奥の本棚で立ち止まると、そこにはピアノの楽譜がたくさん並んでいる。
リナ「・・・ ・・・」
寂しそうな目で、1つ1つの楽譜を見つめた。4年前、ヒロにレッスンしてもらった曲の楽譜がたくさんある。ふと、何かに導かれるように1つの楽譜を手にした。
- MOON LIGHT SONATA -
全音楽譜出版社から発行されているクラシックピアノの楽譜。
500ある作品集のなか、No.1の作品が・・・
ベートーベンの「月光」である。
リナが最初に聴いた・・・ 彼氏の演奏曲だ。じっとその楽譜を見つめていると・・・思わず涙がこぼれた。
リナ「・・・ ・・・」
ちらりと背後の慎吾に目をやり、すぐに涙を拭う。
1ページ目を何気に見ていると。
リナ「・・・ ?」
違和感を感じた。頭の中で、楽譜通りピアノ演奏をしてみると・・・
(リナ「こ、これは・・・?」)
・・・ ・・・。
慎吾「ここじゃない・・・」
必死に何かを探そうとする慎吾は、次の本棚へ移動した。今度は、物理や数学に関するであろう書物がたくさん並んでいる。
初等整数論 リーマン予想 ゴールドバッハ abc予想 暗号理論 ・・・
一般相対性理論 量子力学 シュレディンガー方程式 ナノテクノロジー ・・・
何1つ意味を理解できない慎吾。
慎吾「ここも・・・ 違うか・・・」
次の本棚に移動しようとした時・・・
慎吾「ん?」
何かの違和感を感じた。今一度、通り過ぎようとした本棚を見渡す。
慎吾「な、何か・・・ あった・・・」
背表紙を1つ1つ指で触れながら、違和感の正体を突きとめようとする。
慎吾「・・・ こ、これだ!!!」
慎吾は1つの薄い本を取り出し、奥にいたリナの元へ駆け寄って行った。
慎吾「リ、リナ先輩!! この本! この本ですよ!!」
背中から声をかけられたリナは、反射的に楽譜を閉じ、慎吾の方を向く。
リナ「ど、どれ・・・?」
慎吾が手にしていたその薄い本・・・ 「abc予想」というタイトルの本だった。
リナ「あぁ、abc予想ね。
【abc-triple】を考えて、【abc-hit】を見つけるヤツよ。
小さい頃、よくパパが話していたから覚えているわ」
リナは子供の頃、父親の魁斗に【abc予想】に関する問題を、なぞなぞのように「解いてみろ」と言われたのを思い出した。
【abc予想】の問題自体は、専門的知識がなくても、素因数分解が計算出来る程度の知識があれば理解できる。整数論である事、そして問題の内容自体は小学生でも理解できるという点では、フェルマーの最終定理もそうだ。
しかしフェルマーの最終定理と違い、それを証明した者は未だにいない。
慎吾「あ、えっと・・・」
慎吾にはリナが何を言ってるか全くわからない。
リナ「素因数分解に関する整数論未解決問題の1つよ。
もしこの【abc予想】が証明されれば・・・
フェルマーの最終定理もわずか1ページで証明が可能なの」
慎吾「ふぇ、ふぇるまー?」
リナ「あら。超有名な数学の定理よ。
聞いた事無いの? フェルマーの最終定理?」
慎吾「全く・・・」
リナ「じゃぁ、Beal予想もわからないわね。
10万ドルという懸賞金ついてる予想だけど・・・
abc予想が証明できたら、Beal予想も証明できるのよ。
・・・って、あんたに言ってもわかんないわよね」
慎吾「あ・・・ はい。数学の事はサッパリ・・・。
でも、これがずっと引っかかっていた物の正体なんです!」
リナ「・・・。わかるように言ってよ」
慎吾「アガサクリスティの【ABC殺人事件】。ご存じですか?」
リナ「名前だけは聞いた事あるけど・・・私、小説とか嫌いだから・・・」
慎吾「初めてここに来た時、思ったんです。
何で数学専門書の棚に、推理小説があるんだろうって。
でもよく見たら、数学書だったわけで・・・」
リナ「だから?」
慎吾「【ABC】殺人事件は・・・
名探偵のポアロが、連続殺人の謎を解いていく推理小説なんです。
この小説に出てくる殺人犯は・・・
頭文字【A】で始まる地域で、頭文字【A】の人物を殺害し・・・」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「次は頭文字【B】で始まる地域で、頭文字【B】の人物を。
次は頭文字【C】で・・・
って感じで、アルファベット順に・・・
次次と犯人は、殺人を犯していくんです」
リナ「・・・ 話が見えないんだけど?」
慎吾が何を言おうとしているのか、理解出来ないリナ。
慎吾「えぇ。秋津駅で、安藤さんが・・・
翌日は分倍河原駅で、板東さんが・・・
殺されましたよね?」
リナ「う、うん・・・」
リナ「駅の名前と、殺害された人物の頭文字は・・・
A→Bときています」
リナ「じゃぁ、何? 次は【C】で始まる場所で、誰かが・・・?」
慎吾「そうです。【C】で始まる駅で、【C】で始まる人が・・・
殺されるかもしれません」
リナ「で、でも偶然ってだけじゃ・・・?」
そう言いながらも、リナはこれらが偶然で起こる可能性が十分低いことを知っている。
慎吾「ただの杞憂ならいいんですよ。
でも、もし自分の感じた事が事実なら・・・
3人目の犠牲者が出ます・・・」
しばらく視線を下に落として、考えるリナ。
リナ「これも・・・ 妹を誘拐した犯人と繋がってるのかしら?」
慎吾「今はわかりません。でも、昨日も言いましたが・・・
何か繋がりがあるように思えて、ならないんです」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「だから・・・もしもこれが連続殺人だとして・・・
その犯人を捕まえる事が、妹さんを救う事に繋がるなら・・・」
リナはじっと慎吾を見つめた。
リナ「そうね・・・。まだわからないけど、動いてみる価値はあるわ。
わかった。今、【C】で始まる駅を調べてみる」
そう言うとリナは、手にしていたノートパソコンを横の机に置いて起動させた。ふと慎吾は、リナの持っていた楽譜が目に入る。
慎吾「ベートーベンの月光ですか?」
リナ「・・・。え、えぇ・・・」
慎吾「ちょっと見てもいいですか?」
慎吾が手を伸ばして、楽譜に触れようとした瞬間。
リナ「ダメ!!」
大声でリナが拒絶した。
慎吾「あ・・・ す、すいません・・・」
あまりの大声に、慌てて手を引っ込める慎吾。
慎吾「わ、悪気はなくて・・・
ただ、ステキな曲なので、どんな楽譜なんだろうと・・・」
リナ「・・・ わ、私の方こそ大声あげて・・・ ごめん・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
驚いた表情を見せる慎吾。驚いた理由は、リナが大声をあげた事に対してではない。
(慎吾「リナ先輩が・・・謝った・・・?」)
滅多な事で、謝る事のないリナが謝ったからだ。
慎吾「・・・ ・・・」
何かありそうだと慎吾は感じた。
起ちあがったパソコン・・・何かをごまかすように、キーボードを高速で打つリナ。
リナ「・・・ ここから近い駅だと・・・ 調布かな?」
慎吾「調布駅ですね! 僕、今から行ってみます!
すいませんが、もう1つ。
調布駅まで行くルート、教えてもらっていいですか?」
慎吾も、リナに何があったのかを聞こうとはしない。
リナ「わかった。あんたの携帯に、そのルート送っておくから」
慎吾「ありがとうございます!
すぐに向かいます。何もなければいんですが・・・」
リナ「私は家から出られないから・・・。
万が一、殺人犯がいるとして、用心して行くのよ。
パワーストーンは肌身離さず持っておく事ね」
慎吾「わかりました。一度部屋に戻って、すぐに準備してから出ます」
リナ「うん・・・私、もうちょっと、この書斎にいておく。
暇だし、数学書でも見ておくわ」
慎吾「そうですか。何かあればすぐにメールしますので」
そう言うと慎吾は、書斎を後にした。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾が出て行ったのを確認すると、リナは月光の楽譜を開いた。
しばらく1ページ目を見つめていたが・・・
(リナ「やっぱり、これは ・・・」)
(第58話へ続く)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回予告
調布駅の構内を、必死に歩き回る慎吾。
やがて・・・
慎吾の予想通り、第3の事件が起きてしまう。
事件直後・・・ 慎吾は怪しい男を見つけ、追いかけた。
次回 「 第58話 不審な男 」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




