第52話 リナが教えてくれたもの (2008年)
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。
霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。
話は・・・ 4年前の2008年。
リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。
リナと父親の魁斗は、謎の組織に狙われる。魁斗はリナとヒロを救うため、自ら囮になり、組織に捕まってしまった。
リナは湾岸警察署で、再び覆面男らの襲撃をうける。ヒロとリナはコンビを組み、敵に立ち向かう事を決意。次次と敵を倒していったが・・・
爆破攻撃を受けたヒロとリナは、1つ下の6階に落ちた。リナをかばうため、左肩を壊したヒロは・・・藤岡捜査官に撃たれ、致命傷をおう。
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第52話 リナが教えてくれたもの (2008年)
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2008年12月11日(木)、午前3時54分。湾岸警察署、6階。
後藤は治まる気配をみせない頭痛に襲われながらも、ようやく藤岡に追いついた。
後藤「ふじ・・・?」
藤岡の左側から声をかけようとしたが・・・
藤岡は正面に銃を向けている。その先は壁が邪魔して、後藤には見えない。瞬間、2発の銃声が鳴り響いた。ヒロの撃った銃の銃声だが、後藤にはその音の出所は見えなかった。
その銃声が鳴り響いた瞬間、後藤も反射的に身を低くする。視線の先では、藤岡が床に伏せ、そして彼が3発、発砲した姿が見えた。
後藤「藤岡!!」
・・・ ・・・。
ヒロ「Rina... It's... time to... say... good-bye...」
リナ「な、何!? 何を言ってるの!?」
ヒロ「お別れ・・・ の時だ・・・」
リナ「な・・・」
後頭部に激痛がはしるが・・・それよりも、遙かに大きな苦しみがリナの心を襲う。まるで心臓をえぐられたような感覚だ。
何が起こっているのか、理解できない・・・いや・・・リナにとっては理解したくない状況だった。
スチャ。
不意に何かの気配を感じた。
リナ「!?」
目の前で・・・藤岡捜査官がヒロに銃を向けている。眼鏡の奥の瞳は怒りに満ちたように充血していた。
藤岡「ハーグリーブス!!」
ヒロに向けて3発、発砲した直後・・・ その銃弾がヒロを仕留めたのを確信した藤岡は一気に間合いを詰め、ヒロの頭に銃口を向けていた。
藤岡「ハーグリーブス! ゲームオーバーだ!!」
直後、藤岡の体を強烈な痺れが襲う。
藤岡「!?」
ヒロに銃を向けた藤岡に対して、リナは手にしていたハンドタイプスタンガンをONにし、藤岡の足へとそれを突き刺したのだ。
リナ「ぁぁぁああ!!!」
彼氏に銃を向けた男を許さない・・・いや、そんな考えなど浮かぶ余裕は無い。
リナ「あああああ!!!」
自分の感情と行動が、何に支配されているのかわからない・・・そして、わかろうとしないまま・・・リナは涙を流しながら、ただ本能的に愛する人を守る行動に出ていた。
ダン!!
高圧電流により、藤岡の筋肉は硬直。引き金に触れていた人差し指は、そのまま引き金を引いた。しかしその弾はヒロに当たる事無く、背後の壁にめり込んだ。
藤岡「ぐ・・・ ぐ・・・」
高圧電流により、体の自由を奪われた藤岡は・・・ やがて意識が遠くなり、気を失った。覆面男ではなく、捜査官を攻撃したリナ。今の彼女にとって両者に違いなどない。
倒れた藤岡を見たリナは、すぐにヒロに声をかけた。
リナ「ヒロ先生! すぐに救急車を!!」
ついさっきヒロに渡した、母親の携帯を探そうとするリナ。そのリナの手を、ヒロが力なく握りしめた。
ヒロ「無駄だ・・・ 致命傷・・・さ・・・」
ヒロの体はすでに痛みを通り越して、感覚もなくなりつつあった。それゆえ、体が小刻みに震える。
リナ「ヒロ先生!! しっかりして!!」
リナは血が流れ出るヒロの胸を左手で押さえて、右手で頭を抱きかかえた。リナの大粒の涙が、ボロボロとヒロに降り注ぐ。
ヒロは唯一動かせる右手をリナの頬にあて、涙をぬぐった。
ヒロ「・・・ 100・・・ 」
リナ「え!?」
限りなく優しい目をしたヒロが、リナに最期の言葉をかけ始めた。
ヒロ「リナが・・・100歳になっても・・・
体重が100kgになっても・・・
ずっと愛し続ける・・・ 自信があった・・・」
リナは頬にあてたヒロの手を握り、自分の頬に力強く押しつける。
リナ「わ、私・・・ヒロ先生に・・・
これからもたくさん・・・ピアノ教えてもらわないと・・・」
ヒロは小さく首を横に振る。
ヒロ「俺が・・・ 君に教えられた・・・」
リナ「な、何を・・・?」
ニコッと笑ったヒロ。
ヒロ「恋と・・・ 愛の違い・・・」
体をブルブルと震わせながらも、ヒロは声を絞り出す。
リナ「え・・・?」
リナの左手・・・ヒロの胸に置いたその手から、弱々しいヒロの鼓動が伝わってきた。
ヒロ「愛というものを・・・ 知ってるつもりだった・・・」
心なしか、ヒロの鼓動が弱くなりつつある。
ヒロ「君と出会って・・・ 本当に人を愛する事を・・・
教えてもらった・・・」
リナ「わ、私・・・ 私には・・・」
首を横に振るリナ。ヒロはただただ、優しい目でリナを見つめている。
ヒロ「・・・ 俺と・・・ 君の想い出の中に・・・
真実はある・・・」
体の震えが徐々に小さくなっていく。そして・・・
リナ「いや! いやよ!! 死ぬなんてありえない!!」
ヒロの体の震えがピタリと止まった。
ヒロ「愛するリナ・・・ 100年後に・・・ あ・・・」
言葉の途中で・・・静かにヒロの目が閉じた。
リナ「ま・・・ 目を開けてよ、ヒロ先生・・・
ねぇ、開けてってば!」
ヒロを目覚めさせようと必死に体を揺さぶるリナ。涙でヒロの顔が見えない。
リナ「ヒロ・・・ 先生・・・?」
ヒロの胸に置いていたリナの手。ヒロが目を閉じても、しばらくは弱々しい鼓動を感じ取っていたが・・・
やがてその鼓動も、静かに止まった。
リナ「ヒロ先生ーーー!!!」
・・・ ・・・。
後藤がヒロとリナの前に現れた時には・・・
すでにヒロが息絶えた後だった。倒れている藤岡を見て、すぐに首筋に手をあてる。
(後藤「脈はある・・・」)
携帯を手にすると、どこかへかけた。
後藤「こちら後藤だ。7階で捜査官が倒れている。
至急、救護班を現場に! それと・・・」
後藤の視線は、大量の出血をして動かないヒロに移る。
後藤「いや、また連絡する」
電話を切った後藤は、ヒロの横で泣き叫ぶリナをしばらく見ていた。
後藤からしてみれば・・・ここに羽鳥リナがいる事が不思議だ。秋津駅で覆面男等の襲撃を受け、後藤はリナを連れて逃げようとした。
しかし・・・ 後藤は覆面男等に囲まれ・・・撃たれた。麻酔銃だったため、命に別状はなかったが・・・
今の今まで、リナを奪われた・・・ あるいはリナは殺されたのかと思っていた。
(後藤「どういう経緯で、ここにいるかはわからないが・・・」)
泣きじゃくるリナの横から、後藤はヒロの脈をとる。
(後藤「死んでいる・・・」)
ふと、リナの頭から大量の出血をしているのが見えた。7階から落ちた際の傷だが、もちろん後藤は知らない。
後藤「羽鳥リナ・・・くん。この状況は後で聞くとして・・・。
まずはあなたを病院に連れて行かなくては。
頭から大量の血が・・・」
リナ「・・・ ・・・」
リナは一瞬だけ、後藤を睨んだ。しかしすぐにヒロを強く強く抱きしめた。
後藤「リナ・・・くん?」
聞く耳をもたない様子のリナ。
後藤「・・・ ・・・」
リナの様子を見る限り・・・
(後藤「容疑者のハーグリーブスが死んで・・・
悲しんでいる・・・?」)
そう思った後藤は、言い方を変えた。
後藤「リナくん・・・。今、急いで病院に行けば・・・
その男の命も助かるかも・・・」
後藤は嘘をついている事を自覚している。
リナ「!?」
その言葉に反応を見せたリナ。くるりと振り返ると、後藤を睨み付ける。
リナ「ほ、本当に!?」
後藤「100%とは言えないが・・・可能性は・・・」
数秒ほど迷いを見せたリナは・・・
後藤「急いで病院へ・・・ 行くね?」
後藤の申し出に、静かに首を縦に振った。
(第53話へ続く)
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次回予告
病院でMRI検査を受けるリナ。
別の部屋では・・・ ヒロ・ハーグリーブスの死亡が確認された。
後日、リナのパソコンに届いたメール。
それは、死んだヒロからのメールだった。
次回 「 第53話 最期の言葉(2008年) 」
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