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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第2章 リナの過去
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第49話  パートナー(2008年)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。


霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。


話は・・・ 4年前の2008年。

リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。


リナと父親の魁斗は、謎の組織に狙われる。魁斗はリナとヒロを救うため、自ら囮になり、組織に捕まってしまった。


リナは湾岸警察署で、再び覆面男らの襲撃をうける。ヒロとリナは、敵との最後の攻防に、全力で立ち向かう事を決意した。


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   第49話  パートナー(2008年)


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2008年12月11日(木)、午前3時32分。湾岸警察署、1階。


湾岸警察署、1階にある医務室・・・ベッドの上で彼はうめき声を発する。


後藤「う・・・」


秋津駅近くで、覆面男の襲撃を受けた捜査官の後藤。ひどい頭痛に襲われながらも、意識を取り戻した。


後藤「・・・ ・・・」


ベッドの上、天井を見つめながら今の状況を少しずつ理解する。


(後藤「確か・・・ 撃たれたはず・・・?」)


しかし痛みは全く感じない。


(後藤「ここは・・・? 病院・・・じゃない・・・?」)


当初病院に運ばれた後藤だが・・・ 全くの無傷。医師の話では【麻酔を撃たれただけ】だった。そこで後藤の身柄は、湾岸警察署の医務室に移された。


経緯を知らない後藤。ベッドから起き上がり、自分がいる場所が湾岸警察署だと理解する。


後藤「・・・ ・・・」


とにかく【体が無事】で、【湾岸署にいる】という2つの事実を受け入れた。革靴を履き、誰もいない医務室を出て行く。


廊下に出ると・・・ 銃を持った警察官が数名、足早に移動しているのが見えた。


後藤「?」


本来警察署にいる時、銃は保管庫に預けるはず。しかし、すれ違う連中はみな銃を持っている。不審に思った後藤は、1人の制服警官を捕まえた。


後藤「何か・・・ あったのか?」


後藤に肩を掴まれた、やや小太りの40代の男。先輩捜査官に気づいて、敬礼をする。


「後藤捜査官! 

  数分前、銃を持った覆面男数名が、署内に侵入した模様です!」


後藤「な、何だって?」


「武装連中は、7階に集中しているようです。

  署員が8階と6階から応戦しています!」


後藤「7階に・・・?」


「1階にいる者は、外に対しての警戒線を張れと指示が出ています!」


後藤「け、警察署に・・・銃を持った連中が・・・?」



・・・ ・・・。


ヒロ「Stop!」


7階の廊下を走るヒロが、後ろから着いてきたリナを左手で制止した。


リナ「て、敵!?」


ヒロ「あぁ」


前方から武器のわずかな金属音と共に、足音が近づいてくる。超人的な聴力を持つヒロだけが得られる情報だ。


ヒロは右手の部屋のドアを開けて中に入り、すぐ後ろにリナも続く。ロッカーがいくつかある小さな部屋だった。


ヒロ「更衣室のようだな・・・」


しばらくしてヒロは、足音が部屋の前を通り過ぎていったのを耳で確認する。


ヒロ「リナ。スタンガン貸してくれ。ハンドタイプの方だ」


言いながら、右手の平を上にしてリナの前に出した。何かの作戦だと感じたリナは、その手にスタンガンを置く。


バン!


スタンガンを受け取ったヒロは、直後に部屋のドアを叩いた。


リナ「な、何を!?」


ヒロ「し・・・」


人差し指を、唇の前に立て、ヒロは【音】に集中する。


(ヒロ「俺たちの目的は、敵から逃げる事ではない・・・」)


スタンガンのスイッチを入れ、耳を研ぎ澄ませるヒロ。


(ヒロ「敵を倒すことだ・・・」)


一度通り過ぎたはずの足音が、ゆっくりと戻ってくる。そして、部屋の前でピタリと立ち止まった。


足音の主はゆっくりとドアノブに手をかけ・・・静かにそれを回す。


(ヒロ「今だ・・・」)


ヒロはONになったスタンガンをドアノブに押し当てた。


男「ぐ!?」


金属製のドアノブを通じて、スタンガンの高圧電流は反対側の男に流れていく。


男「ぐぐぐ・・・」


ドアノブから手を離したいが、筋肉が硬直し、自分の意志とは反対にドアノブを握りしめてしまう。


ヒロは5秒ほど電流を流した後、内側からドアを蹴って男に銃を向けた。しかし男は廊下に横たわり、体をビクビクと震わせ、戦闘不能状態のようだ。


ヒロ「運がいいな・・・」


男が攻撃出来る状態なら、そのまま銃を撃つつもりだったが・・・ヒロは銃を向けたまま、コートのポケットから注射器を取り出した。


男の首にそれを刺し、麻酔液を流し込む。抵抗する事無く、男は深い眠りに落ちた。


ヒロ「あと6人・・・」


部屋から出てきたリナが、不安そうに状況を確認する。


リナ「ヒロ・・・先生?」


ヒロ「大丈夫。1人倒した。だが・・・」


リナにスタンガンを返しながら、ヒロの耳は複数の【足音】を察知した。


(ヒロ「ゴム底か・・・敵の足音だ・・・」)


リナの手を握ったヒロ。


ヒロ「ついてきて!」


【足音】から遠ざかるように廊下を進んだ。


しばらく廊下を小走りに進む2人・・・。ふとヒロが気づいた。


(ヒロ「・・・。警察を見かけないな・・・」)


敵を少しずつ倒そうと移動しているヒロだが、警察との遭遇も想定して動いている。しかし・・・警察の姿はおろか、足音すら聞こえない。


(ヒロ「この階は制圧されたのか・・・ ん!?」)


ヒロの耳には、別の足音が迫っているのも聞こえた。


(ヒロ「革靴じゃなく、こちらもゴム底・・・ 敵だな」)


足音だけで敵と判断するヒロは、有利な体勢を取れる場所を探す。リナの手をひき、広い警察署の廊下を右に曲がり、左に曲がり・・・


ヒロ「・・・ ・・・」


やがてヒロは、相手がはさみ撃ちをするような形で迫ってきているのに気づいた。そしてその2人の足音は、ヒロとリナへの距離を確実に縮めてきている。


リナ「どうしたの・・・?」


ヒロが少し迷った表情を見せたので、リナも不安がる。


ヒロ「前後から敵が迫っている」


前に進んでも、後ろに戻っても敵と遭遇してしまう。部屋に身を隠そうと思ったヒロだが・・・


ヒロ「・・・ ・・・」


リナを見て、考えを変える。


2つの長い廊下が、平行に走っているこのフロア。その2つの廊下をつなぐ、5mほどの小さな廊下がいくつかある。


上から見たら「H」の形をした、真ん中の廊下だ。ヒロはリナの手をひきその小さな廊下に身を隠した。


   ■       ■

   ■       ■

 敵■       ■

 ↓■ ヒロ・リナ ■

   ■■■■■■■ 

   ■       ■

   ■       ■↑

   ■       ■敵

   ■       ■



自分1人なら、例え挟まれても先手攻撃でしのげるだろうが・・・今の状況では、敵の1人を相手にしている間に、リナが危険な目にあってしまう。


(ヒロ「だが、あの方法なら・・・」)


ヒロは【耳】を活かした作戦を思いついた。


2つのメイン廊下を繋いでいる、今いる場所には部屋がない。身を隠せる場所といえば、少しばかり凹凸のある壁の内側だけだ。


ヒロ「リナ、よく聞いて・・・」


緊迫したヒロの表情から、リナは危険な状況が迫っていると察知する。


ヒロ「今、2人の敵がこの廊下の前後から同時に迫っている。

    俺は、右側からくる男を撃つ。


    リナは左側からくる男を、そのスタンガンで撃って欲しい」


ヒロはリナの握っている、銃型の方のスタンガンを指さした。


リナ「わ、わかった・・・」


ゴクリと唾を飲み込んだリナが首を縦に振る。


ヒロ「撃つタイミングは俺が指示する。胸の高さに銃を構えておくんだ」


言われた通り、リナはヒロと背中合わせにして銃型スタンガンを構えた。背中にヒロを感じながらも、リナは不安な気持ちを抑えられない。


(リナ「も、もし私がミスったら・・・」)


今まで・・・何度かこういう場面に遭遇したが、けして慣れる事はない。


(リナ「わ、私がミスったら・・・ 死ぬ・・・?」)


ヒロ「・・・ もうすぐだ・・・」


背中からヒロの声が聞こえた。


(リナ「・・・。私が失敗したら、ヒロ先生も危ない・・・」)


彼氏の声はいつも勇気を与えてくれる。リナは1秒1秒が長く感じられたが、集中を切らさずにスタンガンを構え続けた。


ヒロ「・・・ ・・・」


ヒロの耳は、確実にこの廊下の前後に現れるであろう、男達の足音を察知している。


ヒロ「来るぞ・・・ 引き金を引く時は、迷わずに!」


小さな声でヒロはリナにアドバイスした。


ヒロ「5歩、4歩、3歩、2歩・・・。 今だ! 撃て!」


リナの視界には何も見えなかったが、合図と共に迷わず引き金をひいた。


と、同時にヒロも銃の引き金を2度ひく!


パンパン!


リナが引き金をひいた直後、覆面男がこちらに銃を構えようとする姿が視界に入った。


男「ぐぅ!?」


男はリナを見た瞬間、胸にスタンガンの銃弾を受ける。何も出来ずに、高圧電流の餌食となり・・・


バランスを崩し、廊下の壁に頭を打ち付け倒れ込んだ。


リナ「はぁ、はぁ・・・」


警察署内では、3人目の男をスタンガンで倒したリナだが・・・


引き金をひくために使うエネルギーは、余りにも膨大。撃ち終わった後は、その場に倒れ込みたいと思うほどの疲労感が襲ってくる。


自分の事に精一杯で、ヒロの撃った銃の銃声すら耳に入らなかった。


ヒロ「よくやった。相棒」


背後から肩をポンポンと叩かれたリナ。ようやく後ろを振り返ると・・・

ヒロの背中でもう1人の覆面男が倒れていた。


ヒロ「あと4人だ」


リナの銃型スタンガンを受け取ったヒロは、すぐに新しいカートリッジを装填(そうてん)する。


ヒロ「ここは狭くて危険。すぐに出るぞ」


言いながらヒロは、銃型スタンガンをリナに返した。


リナ「う、うん・・・」


落ち着く暇を与えず、ヒロはリナの手を握って小走りで移動を始めた。



・・・ ・・・。



後藤は自分の銃を持ち、6階の階段近くへ来ていた。多くの警察官が、階段で行列を作っている。


行列の後ろにいた藤岡が、後藤に気づいて声をかけた。


藤岡「源さん。起きてきて大丈夫ですか?」


まだ頭痛は治まっていない後藤が返す。


後藤「あぁ・・・。済まんな、代わりに指揮を執ってるんだろ?」


藤岡「たいした事はしてません。それにこのザマです・・・」


言いながら藤岡は、階段で右往左往している警察官に視線を合わせた。


後藤「みな階段で固まって・・・どうしたんだ?」


藤岡「エレベーターは止められ、階段の途中に爆弾が設置されてます。

    8階から7階に通じる階段にも爆弾があると情報が入りました。


    今、処理班を待っているところです」


後藤のいない間、今回の事件の指揮を執っていた藤岡は、耳についやイヤホンを抑えながら状況を説明する。


後藤「・・・。この警察署にまでテロリストが・・・。

    狙いはいったい?」


藤岡「ハーグリーブスを見たという目撃情報もあります。

    先ほど羽鳥リナを保護しましたが・・・


    直後に屋上から敵は侵入してます。

    羽鳥家を狙った襲撃と見て、間違いないでしょう」


後藤「何故、ヤツは羽鳥家にこだわるんだ!?」


後藤からしてみれば・・・当初被害者を装い、羽鳥魁斗とリナを奪ったヒロ。身代金を受け取り、リナを解放したと思ったら・・・秋津駅での大胆な襲撃。


後藤「あいつは悪魔だ・・・」


秋津駅での襲撃から、今に至るまでの情報が後藤にはない。


藤岡の端的な説明を聞く限り、執拗(しつよう)に羽鳥家の人間を狙った犯行にしか思えない。


マシンガンや爆弾といった、多くの命を奪いかねない武器で攻撃する連中・・・そしてそれを率いるヒロに、後藤は怒りを抑えきれなかった。


後藤「ハーグリーブス・・・この手で撃ち殺したい気分だ・・・」


銃を握る手に力を入れる後藤。数分後、そのハーグリーブスと対面することになる。




             (第50話へ続く)

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次回予告


7階に残った覆面連中は・・・

作戦を練って、ヒロとリナを追い詰める。


最大の危機を迎えたヒロは、自分の携帯電話を握りしめた。


そして・・・ ヒロはリナに・・・



次回 「 第50話 最大のピンチ (2008年) 」

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