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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第2章 リナの過去
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第42話  銃弾の雨の中で(2008年)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。


霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。


話は・・・ 4年前の2008年。

リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。


リナの父親・魁斗(かいと)は、覆面をつけた男らに誘拐されてしまう。

しかし自力で監禁場所から脱出し、ヒロに保護された。


ところが、今度はリナが捕まってしまう。

ヒロはリナを助けるため、閉鎖された港で覆面男らと銃撃戦を繰り広げていた。


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   第42話  銃弾の雨の中で(2008年)


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2008年12月11日(木)、午前0時47分。都内某所。


安田「ふぅ・・・」


ようやく安田は自宅に戻ってきた。右太ももには包帯が何重にも巻かれ、かなりの量の血がにじんでいる。


安田「っく・・・」


右足の感覚があるのかないのかさえ、わからない状態だ。


安田はヒロが指示した場所から、羽鳥魁斗を襲った3人グループの財布と携帯電話を持ち帰ってきた。


すぐにパソコンを起動し、財布に入っていたIDカードの情報を検索していく。


負傷箇所の出血により、意識朦朧(もうろう)としながらも・・・安田は、一刻も早く情報を得ようと、必死にキーボードを叩いた。


安田「・・・ ・・・」


財布の中から得られる情報を、1つ1つ丁寧にチェックしていく。


(安田「黒幕の正体を・・・何としても突きとめねば・・・」)


黒幕を突きとめる事は、羽鳥家の人間を救う事。そう信じている安田は、足の痛みに耐えつつ、ディスプレイを凝視した。


そして・・・


安田「な・・・ これ・・・は・・・」


数時間後、敵が恐ろしい計画を進めている事を突きとめる。



・・・ ・・・。


午前1時10分。都内・・・とある閉鎖された港。


ヒロ「・・・ ・・・」


31番倉庫の裏で、ヒロは壁に耳を付けている。


(ヒロ「・・・ 間違いない」)


ヒロの耳は倉庫の内側から、か細い呼吸音と鎖の音を聞きとった。リナの呼吸リズムとはだいぶ違うが・・・


(ヒロ「こんな異常な状況で・・・

     まともなリズムで呼吸する人間の方がおかしい・・・」)


その呼吸音は、リナのものだと断定する。さらにヒロの耳は、何らかの機械音も聞きとった。


(ヒロ「時限爆弾か、はたまたブービートラップか・・・」)


状況からして、鎖につながれたリナがいるはずだ。時計を見ると・・・


(ヒロ「午前1時11分か・・・」)


魁斗の事も気になるヒロは、今すぐにでも倉庫の中へ行きたいのだが・・・今一度、倉庫の周りをチェックする。


倉庫には、正面のシャッター以外に窓が数ヶ所あるだけ。しかも高さ3mの位置に。


このまま倉庫に入って、正面シャッターを敵に固められれば・・・


(ヒロ「完全に袋のネズミになってしまう」)


しばらく悩んだヒロ。


(ヒロ「失うのは惜しいが・・・」)


ヒロは腕時計を取り外し、ネジ部分を回して何かの操作をした。


(ヒロ「ここでサヨナラだ」)


腕時計にキスをしたヒロは、それを地面に落とす。


そして31番倉庫の正面シャッターから、音も立てず中に入っていった。


ヒロ「・・・ ・・・」


倉庫奥の中央・・・両腕を鎖で椅子に縛り付けられたリナの姿があった。大きな黒い布で目隠しもされている。


直接の表情は見えないが、ひどく怯え憔悴(しょうすい)しきった様子だ。


(ヒロ「15歳の少女に・・・なんてひどい事を・・・」)


ヒロの耳は、リナ以外の人物が倉庫の中にいない事を伝える。ブービートラップがないか気を遣いながら、ゆっくりとリナの元へ寄っていった。


そしてリナの背後からそっと肩に手を置く。


リナ「!?」


声にならず体をびくっと震わせ、肩をすくめるリナ。ヒロは優しく声をかけた。


ヒロ「待たせたね。ミスターカイトの元へ行こうか」


これでもかというぐらいに持ち上がっていたリナの肩は、スッと力が抜けて落ちていく。


リナ「ヒ、ヒロ先生・・・?」


人の気配を全く感じなかったので・・・幻聴かと思い、聞き返すリナ。


ヒロ「あぁ、俺だ」


リナ「ヒロ先生!!!」


目隠しされた布から、涙がこぼれだした。


ヒロ「ちょっと待って。すぐはずすから・・・」


ヒロはリナの手に繋がれた鎖を確認する。


以前安田にもらった、小さな金属棒を手際よく扱い・・・

鎖をロックしている錠(じょう)を15秒程で開け、リナの手から鎖をほどいた。


そしてリナの目隠しも取る。


リナ「・・・ ・・・」


ゆっくりと閉じていた目を開くリナ。1時間半ぶりに視界が開けた。暗闇に慣れ、涙を宿した目は・・・ゆっくりと物が見え始める。


そしてその目は・・・


世界で1番会いたい人物を捉(とら)えた。この場には似つかわしくない、サングラスをかけたヒロの姿を。


言葉よりも先にお互いは抱き合う。1分ほど抱き合っただろうか・・・

まだ抱きしめたりないが、ヒロはリナを軽く突き放した。


ヒロ「続きはここを出てからだ。ミスターカイトも助け出した。

    今は安全な場所にいる」


ヒロの口から、世界で2番目に会いたい人物の名前も出てきた。


リナ「パ、パパを!?」


それを聞いたリナは、再びヒロを抱きしめる。


目の前で父親を拉致されてから・・・ 実に100時間以上。初めてリナは「父親が安全」という言葉を聞いた。


ヒロ「いいか、リナ。この倉庫の中央に、時限爆弾がしかけられている」


リナ「ば、爆弾!?」


リナが裏返った声をあげる。


ヒロ「あぁ、ほら、すぐそこに長方形のBOXが見えるだろ?

    ついさっき確認したが・・・


    この倉庫を、跡形もなく吹き飛ばすだけの火薬が仕込まれている」


リナ「時限・・・、い、いつ爆発するの?」


ヒロ「あと40分程だが、いきなり爆発する可能性もある」


リナ「す、すぐに外へ・・パパの所へ!!」


ヒロ「あぁ・・・そのつもり・・・ なんだ・・・が・・・」


突如ヒロは、人差し指を唇の前に立て「静かに」というジェスチャーをした。


ヒロ「・・・ ・・・」


倉庫の外から近づいてくる足音を・・・ヒロの耳は聞き取る。


ヒロ「敵が来てしまったようだ・・・」


リナ「え!? ど、どうしよう・・・」


ヒロは優しい笑顔をリナに見せた。


ヒロ「今まで俺は、君を守り通してきた。そうだろ?

    今回も君を守るだけさ」


そう言うと、ヒロは奥のコンテナを指さした。


ヒロ「リナは・・・しばらくあのコンテナの隙間に、身を隠して欲しい。

    必ずここを2人で出ると約束するから!」


1番奥の右側のコンテナ・・・その隙間にリナを移動させる。


ヒロ「いいか、合図するまでここを出るなよ。

    あと、声は出すな。相手に位置を悟られないように」


緊張しながら頷(うなず)くリナ。ヒロはリナと反対側のコンテナに身を隠し、静かに聞き耳を立てた。


2丁の銃を取り出し、左右の手に1つずつ握る。


(ヒロ「5人か・・・ 密室には多すぎる敵だな・・・」)


パリーン!!


突然背後のガラスが割れ、3mの高さにある窓から1人の覆面男が姿を現した。覆面男はヒロを見つけると、その高さから銃を向ける。


しかしヒロの銃は、男が現れる前から銃口をその窓に向けていた。


ヒロ「Be quiet!」

(静かにしろ!)


パーン!


わずか1発の弾丸は、銃を握る覆面男の上腕二頭筋を貫いた。男は3mの高さから落下し、頭を強打。はずみで男の銃は、奥のコンテナまで滑っていった。


倒れている男に銃を向けたヒロだが・・・ ピクリとも動かない。気を失ったようだが、打ち所が悪ければ・・・


(ヒロ「死んでいるかも・・・」)


ちらりとリナの方を見る。コンテナの影に身を隠したまま、頭を抱えている姿が見えた。


(ヒロ「人が撃たれる姿は見せたくないが・・・」)


そうもいかない状況になる。


(ヒロ「来たな・・・」)


4人の覆面男が、正面の開いたシャッターから侵入してきた。ヒロは頭を低くし、彼等に2丁の銃を構える。


ガガガガガガ!!!


入り口に立っていた1人の男が、突然マシンガンを奥に向けて乱射し始めた。


(ヒロ「ちょ・・・ あいつら、爆弾があるのを知らないのか!?

     命中したら全員吹っ飛ぶぞ!?」)


予想外の攻撃に、ヒロの計算が狂う。


(ヒロ「これもあの男の・・・計算に入っているのか・・・?」)


残り3人は倉庫奥に銃口を向け、何かを待っている。

ヒロは身を隠していたコンテナの上から一瞬顔を出し、すぐにまた身を隠した。


パンパーン! パパパーン!!


顔を出した瞬間、数発の銃弾が襲ってくる。


(ヒロ「11時に1人、12時に2人、1時半に1人・・・」)


一瞬で敵の位置を把握したヒロ。

深呼吸をし、相手の足音に動きがないのを耳で確認した。


(ヒロ「1,2の・・・ 3!!」)


タイミングを見計らってコンテナの横から走り出す。2m程離れた位置にある、別のコンテナまで全力疾走した。


走りながら、狙った場所に3発の銃弾を撃ち込んだ。うち2発は命中し、1人はその場で倒れた。


もう1発も命中したはずだが、撃たれたはずの相手はすぐに応戦してきた。


(ヒロ「さすがに走りながらは、精度に欠いてしまうな・・・」)


まだ3人の覆面男らは、銃を発砲している。


ヒロ「・・・ ・・・」


ヒロは敵から見て、左へと移動していた。


敵から見て右側には・・・


時限爆弾があり、火薬に銃弾が当たった瞬間、ここにいる全員は間違いなく死んでしまうだろう。


ヒロは今いる位置で、残りの連中を倒すつもりだったが・・・

3人は突如、3方に散らばり、ゆっくりと倉庫の奥に進んできた。


足音だけで相手の位置を把握するヒロ。


(ヒロ「・・・。 戦略的に来られると、ちょっとマズいな・・・」)


右の覆面男が、仲間に何かの合図を送る。すると中央の男が、煙の出た筒を倉庫奥に投げ込んだ。


ちょうどヒロとリナの間にそれは落ちてきた。


(ヒロ「催涙弾!?」)


同時に左の男が、ヒロの方角に向け発砲する。


パンパンパン!!!


さらに合図を送った右の男は、奥まで走り、コンテナ群の中に入ってきた。3人の連係プレーに、ヒロは一瞬たじろぐ。


(ヒロ「ま、まずい!」)


ヒロ1人なら何とかできる状況だが・・・ 右奥に入ってきた男の、さらに少し奥にはリナがいる。


(ヒロ「やむを得ん!」)


パァン!!


ヒロは自分から見て左にある、ガスを放出する催涙弾を撃ち抜いた。ガスを満載した催涙弾は小さな、しかし十分威力のある爆発を起こした。


ゴォーーオン・・・


ヒロは身を固めて、爆風のダメージを最小限に抑える。右側から侵入した男は、狙い通り爆風で吹き飛ばされた。


が・・・ 


あろうことかその男は、リナの方向へ吹っ飛ばされる。そして、リナがいるコンテナのすぐ横の壁に頭を打ち付けた。


(ヒロ「し、しまった!!」)


パンパンパン!!!


残り2人の男は、ヒロの位置に向けて銃を連射してくる。


(ヒロ「く、くそ・・・」)


パンパァン!!


リナの前に吹き飛ばされた男が意識を取り戻さない事を祈りつつ、ヒロは応戦した。


何かのコンタクトを取りながら戦術的に攻撃してくる相手を、なかなか捉える事が出来ない。


(ヒロ「くそ!」)


銃弾の雨の中・・・


銃のマガジンを入れ替えたヒロは愕然とした。


(ヒロ「な・・・」)


リナの目の前にいた覆面男が・・・頭を左右に振りながら起きてきたのだ。


そしてその男は、1番奥のコンテナの隙間に隠れていたリナを見つけた。銃を握り直した男は、リナに近寄っていく。


その様子を、ヒロは反対側のコンテナの隙間から見ていた。


ヒロ「や、やめろ!!!」


ヒロの位置からは、リナは死角で見えない。


リナを狙う男を銃で撃ちたいが、そのためにはコンテナの上から自分の身を出さねばならない。それでは他の連中の銃弾の餌食になってしまう。


覆面男は、コンテナの奥に向け銃口を向ける。リナがいるはずの方向だ。


ヒロ「や・・・」


ターン!!


ヒロの言葉が言い終わる前に・・・


1発の銃声は鳴り響いた。


(ヒロ「・・・ ・・・」)


自分の歯が全て折れる程、ヒロは歯を食いしばる。


ヒロ「リ・・・」




しかし・・・


ヒロの予想とは裏腹に、リナに銃を向けた男の方が倒れた。


ヒロ「な・・・?」


そして、ヒロの視界にリナが入る。コンテナの奥に隠れていたリナは・・・


驚くべき事に、銃を右手に持っていた。その銃口からは硝煙があがっている。


(ヒロ「ま、まさか・・・」)


ついさっきまで・・・ 


極限にまで怯えていた少女の姿はそこにはない。



瞳の奥に強い意志を持った「リナ」が・・・そこにはいた。




             (第43話へ続く)

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次回予告


ヒロが最初の男を倒した時・・・

リナの目の前に、倒された男の銃が転がり落ちてきた。


激しい銃撃戦が繰り広げられる倉庫の中・・・

リナはその銃を手にしていた。



次回 「 第43話  覚  醒(2008年) 」

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