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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
103/147

第102話  妹

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追うリナ。


2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまう。


藤岡に監禁されたリナだが、母親に届いたメールを解読。死んだと思っていた父親・魁斗が生きていた事を知った。


ヒロのサイトを通してリナとコンタクトを取った魁斗。目黒基地に侵入し、誘拐された次女雛子、そして慎吾とリナを救出する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第102話  妹


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2012年12月21日(金)、午前1時6分。目黒基地内。


暗闇の中、抱き合う父と娘。


魁斗「リナ! リナ!!」


力の限り、娘を抱きしめる。


リナ「パパ・・・」


抱きしめ返すリナ・・・涙が止まらない。熱い抱擁は1分程度続いた。


魁斗「もう少し抱きしめていたいが・・・」


魁斗はリナの両肩を前に突き出した。暗闇に目が慣れてきた魁斗は、4年ぶりに成長したリナの顔を確認する。


リナ「・・・ ・・・」


そしてリナも、4年ぶりに父親の顔を確認した。


リナ「パパ・・・」


明らかに白髪は増え、色々な修羅場をくぐり抜けたであろうその経験が、顔に出ているように思える。それでも優しい表情は4年前と何ら変わらない。


魁斗「時間がない。まずはここを出てからだ」


頷いたリナ。魁斗は娘の手を引いて、廊下を出る。


慎吾「あ、リナ先輩・・・」


廊下を出ると、慎吾が待機していた。リナは言葉より早く、慎吾を抱きしめる。


リナ「よかった・・・ 生きているとは思っていたけど・・・

    よかった・・・」


父親だけでなく、死んだかも知れないと思っていた慎吾もまた生きていた。実際それを確認出来るまで不安でしょうがなかったが・・・リナは、力強く慎吾を抱きしめた。


慎吾「あの・・・ 胸が・・・ あたってますよ・・・?」


リナ「・・・ ・・・」


そして、間違いなく【いつもの慎吾】だと確信すると、密着していた体を遠ざける。廊下の先に視線を移すと、数m先で父親の魁斗が2人を待っていた。


魁斗「ここだ。抜け道がここにある」


親指を立てて、皆が行くべき方向を指し示す。


慎吾「あ、あの・・・ 藤岡さんは・・・?」


足早に歩を進めながらも、慎吾は魁斗に質問した。


魁斗「不測の事態が生じたんだ。まずは逃げる事を考える。

    そして状況を把握しようとするだろう」


慎吾「じょ、状況を把握したら・・・?

    武装連中を引き連れて襲ってくるかも・・・」


魁斗「基地内のPC全てに、警察がこちらに向かっている情報を流した。

    実際、すでに警察には連絡済み。


    マスターは・・・ すでに基地の外さ」


慎吾「な、なるほど・・・」


リナ「マスター?」


魁斗「藤岡の事だ。組織の中ではそう呼ばれているんだ。

    中国側のスパイさ・・・ 国籍は日本だがな」


リナ「中国のスパイ・・・」


魁斗「日本の警視庁・コンピュータ犯罪捜査官として潜入し・・・

    日本のハイテク技術や、犯罪捜査に関する情報を取得。


    それらを全て中国側に横流ししている。

    7年も前からな・・・」


リナ「な・・・」


慎吾「ふ、藤岡さんが・・・」


魁斗「・・・ ・・・」


魁斗は自身の携帯画面を見ながら、足早に前に先頭を進んで行く。


リナ「パ、パパ・・・。

    この建物にも何人かは、銃を持ったヤツがいるんでしょ?」


今のところ廊下には、リナ達3人だけだが・・・いつ、銃を持った連中と遭遇するかもという不安でいっぱいだ。


魁斗「あぁ。だが・・・彼等の動きは全て携帯端末でも把握出来る」


リナ「え・・・? な、何で・・・?」


魁斗「あの連中は全て・・・

    心臓に、精巧なポジショニングシステム・・・


    すなわち、位置を把握出来る電子機器が埋め込まれているんだ」


リナ「な・・・」


魁斗「マスターの仕業さ。

    心臓が動いている限り、どこにいても位置を捉えられる。


    マスターは・・・ そういう男だ」


魁斗はリナに携帯の画面を見せた。目黒基地を上から見た地図、そして赤い点とその横にアルファベットと数字が書かれている。


(リナ「・・・ 個人の、識別番号・・・?」)


そしてその赤い点は、時間と共に動いている。


慎吾「基地の・・・ 入り口や外壁周辺に固まってますね・・・」


横から魁斗の携帯を覗き込んだ慎吾。


魁斗「あぁ。我々が今向かってるのはここ・・・」


魁斗は携帯の1点を指さす。


リナ「正面入り口? たくさん敵がいるのに?」


魁斗「いや。ここだ・・・」


魁斗は携帯の画面に触れ、指をくるりと回転させる。すると、上から見ていた地図が立体的に回転し、横から見た図になった。


魁斗「敵はここ・・・ 地上と地下1階に集中している。

    我々が行くのは、地下3階の地下通路だ。


    ここには、外へ通じる車道がある」


慎吾「ち、地下3階・・・? そんな所もあるんですか?」


魁斗「建物全体に超音波を走らせて初めてわかった。

    おそらくマスターら一部を除いて、このルートを知らないだろう」


慎吾「す、すごい・・・ それを見抜くなんて・・・」


3人は誰とも遭遇する事無く・・・ 目的地へ向かった。



・・・ ・・・。


扉の前で魁斗は立ち止まった。


魁斗「・・・ ・・・」


携帯を操作して、何かを確認する。


魁斗「大丈夫だ。トラップも無い」


リナ「ま、待って・・・ 落とし穴とか・・・ あるかも?」


魁斗「それも大丈夫。先ほども言ったが、建物自体に超音波も走らせた。

    建物自体の構造は、全て解析済み。


    落とし穴や隠し扉があれば、それも全てわかるさ」


慎吾「す、すごい・・・」


魁斗「敵もここにはいない。私に離れず着いてくるんだ」


リナ「う、うん・・・」


慎吾「はい・・・」


魁斗は扉を開け、足早に通路の右側にある階段を降りていった。すると建物の外・・・地下道路に出た。そこには大きめのバンが1台、止まっている。


リナ「い・・・ 井上さん!」


運転手の顔を見て、リナが驚いた表情を見せた。


井上「リナお嬢さま。しばらくぶりです」


魁斗「会話は車に乗ってからだ。急いで」


慎吾はバンの後ろから車に入る。


慎吾「あ・・・」


思わず声をあげた視線の先には・・・


学生服の上からコートをかけた、幼さの残る可愛らしい女の子が座っていた。


(慎吾「あのコートは・・・ リナ先輩のお父さんの・・・」)


ツインテールでくりっとした目・・・その視線は無言で慎吾を突き刺している。


慎吾「リナ先輩の・・・ 妹さん・・・ですよね?」


その顔立ちは何となくリナに似ていて、すぐに誘拐されていたリナの妹だと分かった。


雛子「・・・ ・・・」


慎吾「あ! す、すいません・・・ 僕、慎吾って言います。

    は、初めまして・・・」


リナ「雛!!」


慎吾の背中を押しのけてリナが車の中に入ってきた。


雛子「お姉ちゃん!!」


リナを見た雛子の目はさらに大きくなり、そのまま2人は抱き合った。


魁斗「よし。車を出してくれ」


助手席に座った魁斗が、運転席の井上に合図を出した。


井上「はい、旦那様」


魁斗「ルートは直接指示する。真っ直ぐ行って、200m先を右だ」


井上「了解しました」


スピードを上げ、揺れる車の中・・・ 後部座席でリナと雛子は涙を流しながら、ようやく抱擁を解いた。


リナ「ホントによかった・・・ どこかケガはない? 何かされてない?」


雛子「うん・・・。大丈夫・・・。ずっと・・・怖かったけど・・・」


脅しを受けた事もある。銃を頭にあてられた事もある。1週間以上部屋に押し込められ・・・脅しを受ける以外、誰とも会話する事を許されなかった。


誘拐されていた期間・・・ 考えていたのは絶望的な事ばかり。


まさか自分の父親に救出されるとは・・・夢にも思っていなかった。


リナ「1つ聞いていい?」


雛子「なに・・・?」


リナ「どうやって・・・ 誘拐されたの?」


雛子「・・・ ・・・」


リナ「言いたくないなら、言わなくていいわ」


雛子は首を横に振る。


雛子「ううん・・・。運転手の安田さん・・・」


リナ「安田さん・・・?」


雛子「うん。彼に・・・」



・・・ ・・・。


午前1時34分。首都高速。


猛スピードで車を走らせる藤岡の姿があった。ハンドルを握りながら携帯電話をかける。1コールで繋がった。


藤岡「今、どこにいる!?」


男「目黒基地に向かってますが?」


電話の向こうの男は、すぐに返事を返す。


藤岡「引き返せ。基地は今、警察が包囲している」


男「では、どこに?」


藤岡「女は一緒だな?」


男「えぇ。ずっと眠らせています」


藤岡「よし。では成田方向へ向かえ。細かい指示はまた後でする」


男「わかりました」


藤岡「審判の時まで22時間。女を狙う奴らもいるかもしれん。

    グランドマスターは・・・


    彼女を新世界に連れて行くと言っている。

    女は絶対手放すなよ」


男「もちろんです」


藤岡「周囲は常に警戒。

    お前も狙われる可能性がある事を忘れるな・・・ 


    安田」


安田「えぇ、マスター」




    


           (第103話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


雛子が誘拐されたその裏には・・・ 羽鳥家運転手を務める安田が関わっていた。


そしてグランドマスターと呼ばれる、別の男の存在が・・・


次回 「 第103話  グランドマスター 」

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