↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
PR
102/147

第101話  救出作戦

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追うリナ。


2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまう。藤岡はリナに、ウィーン大学のサーバに侵入すれば、家族を解放するともちかけた。


一方慎吾は、藤岡に自白剤を注射された直後に心停止してしまう。


リナはハドリアンズ・ウォールをくぐり抜けたメールの暗号解読に成功。4年前、死んだと思われた父親が生きていた事を知る。


藤岡に自白剤をうたれる直前、リナは慎吾の声を聞き取った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第101話  救出作戦


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2012年12月21日(金)、0時37分。目黒基地内。



慎吾「カ・・・  ハァアアーーーーーー!!」


喉に詰まった何かが、一気に取れたように・・・慎吾は大きく空気を吸い込んだ。


慎吾「ハッ、ハッ、ハーハー・・・」


ベッドの上にいる慎吾。うまく呼吸をする事が出来ない。


男「深呼吸だ。息を吐くのでなく、大きく吸い込む事だけに集中しろ」


誰かの声が聞こえたが、ベッドの上で思うように体を動かせない慎吾の視界は、その人物を捉えない。


慎吾「スー・・・   ハッハァ・・・」


言われたように、深く息を吸い込むことだけに集中した。息を吐き出す事はうまく出来なかったが・・・


慎吾「スー・・・ ハァ・・・ 」


やがてそれもスムーズになる。


慎吾「 !? 」


突然慎吾の視界に男の姿が映った。


男「久しぶりだな」


黒いYシャツ、白髪交じりの眼鏡をつけた男。


慎吾「あ・・・ あなた・・・は・・・」


口がうまく動かせず、ゆっくり喋る事しか出来ない。


慎吾「リ・・・」


慎吾が各駅で追いかけていた・・・あのコートの男。大学で格闘になった時には(もっとも慎吾は一方的にやられたが)、麻酔銃も撃ってきた。


慎吾「リナ先輩の・・・」


コートではなく、動きやすそうな黒いYシャツを身につけているが、慎吾はリナの父親だと確信する。


慎吾「リナ先輩の・・・ お父さん・・・?」


言われた男は小さく笑う。


魁斗「あぁ。あの時は君の素性が分からなかったから・・・失礼した。

    リナのため、雛子のため、よくここまで耐えてくれた」


そう言うとリナの父親・・・魁斗は慎吾の目の前で注射器を見せた。


魁斗「時間が余りないので手短かに。

    今、君の心肺機能は通常より、かなり低下している。


    この注射は、それを復活させるためのもの。

    今から君の右腕にこれをうつ。いいか?」


慎吾「は・・・ はい・・・ お願い・・・ します・・・」


迷うことなく、慎吾は即答した。


魁斗「よろしい。10分程、吐き気と頭痛におそわれるが・・・

    それを過ぎれば、君の心臓は正常に機能する」


言いながら魁斗は、慎吾の右腕に注射をした。


慎吾「・・・ ・・・」


何かが体を駆け巡るのがわかる。そして非常に不快な気持ちに襲われた。


魁斗「不快感はあるだろうが、痛みはない。しばらく耐えてくれ」


慎吾は無言で頷いた。


魁斗「それともう1つ。君は24時間、体を動かしてない。

    急激な運動は、心臓に予想以上の負担がかかる。


    動けるようになっても、24時間は無理に動いたりはするな。

    全速力で走ろうものなら・・・今度は完全に心臓が止まるぞ」


再び慎吾は無言で頷いた。


慎吾「スー・・・ ハァ・・・」


嫌な感覚を追い払うように、慎吾は深呼吸を続けた。


その間、魁斗は慎吾のメディカルモニタの配線を外し、ノートパソコンを取りだすと、何かを操作し始める。


魁斗「・・・ ・・・」


そして携帯をかけた。


魁斗「私だ。予定では1時10分にそちらへ行く」


電話を切ると、再び慎吾の元へ寄ってきた。その手元には30cm程度の円柱形の電子機器がある。


魁斗「これは君の中に、何か仕込まれていないかを調べるものだ。

    不安を感じる事は無い」


そう言うと機器のボタンを押す。


キュイーン・・・


慎吾の体から数10cm離れた場所から、その電子機器をゆっくりと掲げていく。


魁斗「・・・ ・・・」


30秒ほどで、慎吾の全身をチェックし終える。


魁斗「大丈夫。体には何も異物はない。

    よかったよ。私は心臓にGPSを埋め込まれたからな。はは」


軽く笑う魁斗。


(慎吾「だ・・・だから・・・ 心臓を止める薬を・・・?」)


魁斗「しかしよく・・・ あの薬を飲んだな。

    よっぽど確信があったのか・・・ あるいはただの無謀。


    まぁ、こうやって生き伸びたんだから・・・結果オーライだ」


慎吾の瞼を持ち上げ、その瞳孔を確認する。


魁斗「自白剤をうたれたか・・・」


慎吾「え、えぇ・・・」


魁斗「だが君は運が良い。

    あの薬で仮死状態にあったおかげで・・・


    自白剤の成分は、尿と一緒に排泄されるだろう。

    まさか、そこまで計算済みだったのかな?」


慎吾は首を横に振る。笑いながら魁斗は、慎吾の腕や太ももを入念に揉み始めた。


魁斗「さすが若い。うらやましいよ。

    この状態なら、あと2~3分で動ける。


    だが先ほど言ったように、急激な動きは避ける事を忘れるな」


魁斗はそのまま、慎吾の体をほぐし続けた。


慎吾「あ、あの・・・ リナ先輩とは・・・?」


魁斗「あぁ。連絡は取ったよ。まだ直接会ってはいないが・・・」


慎吾の頬を軽く2度叩く。


魁斗「君のおかげさ」



2分後。


慎吾「あ・・・ もう、動けます・・・」


慎吾はゆっくりとベッドから体を起こす。


魁斗「よし。すでに雛子は助けた。リナを助けて・・・

    ここを脱出する」


慎吾「ど、どうやって・・・?」


魁斗「君は私の指示した場所へ行くんだ。

    井上という男が、車で待機している」


慎吾「ぼ・・・ 僕もリナ先輩の元へ行きます」


魁斗「ダメだ。その体では急激な動きは出来ない。

    ここは私に任せろ」


慎吾「ぼ、僕は・・・ 黒幕が藤岡さんだと突きとめ・・・

    さらに目黒基地まで突きとめました。


    それに・・・あなたにも近づいた。

    僕なら・・・リナ先輩を助けるのに役立ちます・・・」


魁斗「・・・ ・・・」


チラリと腕時計を確認した魁斗。


魁斗「足手まといになるようなら・・・

    迷わず君を置いて、娘だけを連れて行く」


深く頷いた慎吾。


慎吾「もちろんです」


魁斗「よかろう。おっと、これは君のだろう? 返しておこう」


魁斗は持っていたカバンから、拳大の石を取り出し、慎吾に渡した。


魁斗「隣の部屋にあった。リナが言うには、君にとって大事な物だとか?」


パワーストーンだ。


慎吾「あ、ありがとうございます」


久しぶりにパワーストーンを手にした慎吾。握っただけで、エネルギーが充填されるようだ。


魁斗「時間がおしている。急ぐぞ」


慎吾「はい」



・・・ ・・・。



慎吾「け、警察には・・・?」


魁斗「ここを脱出する直前に連絡する」


魁斗は左腕にカバンを担ぎ、さらに左手には携帯電話を持っている。携帯画面を確認しながら、基地地下内部の長い廊下を歩いていく。


慎吾「な、何故? 犯人がわかっているのに・・・」


後ろからついてくる慎吾。


魁斗「今、警察と関わったら・・・間違いなく長時間拘束される。

    何しろ私は、死んだはずの人間だからな」


慎吾「た、確かに・・・」


魁斗「まずは娘を助ける。その後・・・」


途中で首を振る。


魁斗「まずは確実に・・・ リナを助けてからだ」


慎吾「わかりました。それにしても・・・

    基地の中なのに、警備している人・・・ 全然いませんね・・・」


周りを警戒しながら、目黒基地地下の長い廊下を歩いていくが・・・誰とも遭遇する事は無い。


魁斗「今頃、外に動員をかけているはずだ。

    マスターは、頭がキレる男だからな」


慎吾「マスター?」


魁斗「藤岡の事だ。彼は私とリナがコンタクトを取ったと気づくはずだ。

    基地の外部の人間とコンタクトを取ったから・・・


    警察に通報されたと読んでいるだろう。

    こちらは裏をかいて、最少人数で忍び込んでいるというわけさ」


慎吾「・・・ はぁ・・・ 敵の裏をかくなんて・・・

    スパイみたいですね・・・」


魁斗「それはこちらのセリフだ。いいか? 君に渡した麻酔銃。

    絶対身内には撃たないでくれよ」


慎吾「は、はい・・・」


2人とも、その右手には銃が握られているが・・・実際の銃とは違い、強力な麻酔銃にすぎない。魁斗は、右手の携帯画面を見ながら・・・


魁斗「ここだ・・・」


1つの扉の前で止まった。


慎吾「ここは・・・」


ロシアンルーレットを行った部屋・・・。


魁斗「待てよ・・・」


携帯画面には、5人の熱反応をよみとって映像化した画像が映っていた。


(慎吾「サ、サーモグラフィー・・・? TVで見た事がある・・・」)


魁斗「マスターと・・・ リナ。それに3人の銃を持った連中がいる」


中の様子を確認した魁斗。


慎吾はポケットからパワーストーンを取り出し、それを握ると意識を集中する。


慎吾「・・・ ・・・」


扉の向こうに・・・確かにリナがいる。


(慎吾「そして藤岡さんも・・・」)


魁斗「まず扉の電子ロックを解除。その後で電源供給を絶つ。

    直後部屋の中は真っ暗になる。


    そして扉を開き・・・ 中の連中を麻酔銃で眠らせる。

    作戦は理解したか?」


そう言うと、魁斗はカバンの中からノートPCを取り出して操作を始めた。


慎吾「は、はい・・・ ぼ、僕も援護します・・・」


魁斗「あちらは本物の銃を持っている事を忘れるな。

    出来れば・・・」


慎吾「出来れば?」


魁斗「あぁ・・・ リナに、身を低くしてもらいたいが・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


パワーストーンを強く握りしめ、深呼吸をしながら意識を深く集中する。


(慎吾「え、江浜さんがやったように・・・」)


今は亡き日本を代表する霊能力者・江浜。彼はその霊能力で、壁を隔てた娘とテレパシーのように会話が出来た。


(慎吾「リナ先輩、聞こえますか?」)



・・・ ・・・。


リナ「 !? 」


直接リナの頭に慎吾の声が聞こえた。周りをキョロキョロ見渡すが・・・


藤岡「どうした? 何か探し物か?」



・・・ ・・・。


慎吾「・・・ ・・・」


リナからの声はキャッチ出来ないものの・・・


自分の声が、リナには届いているようだと感じた慎吾。


慎吾「あ・・・ あの、リナ先輩のお父さん。

    あと、どれぐらいで扉を開く予定ですか?」


魁斗「ジャスト40秒」


慎吾の方を向くことなく、必死にキーボードを叩いている。


慎吾「わかりました。リナ先輩に身を低くするよう、伝えます」


魁斗「 ? 」


電子ロックを解除するのに夢中になり、慎吾の言った事がイマイチ理解出来なかった。慎吾は再びパワーストーンを握り、意識を集中する。


(慎吾「こまかい説明は後回し。今、部屋の外に助けが来ています。

     30秒で部屋に侵入する準備が完了。直後、突入します。


     僕が合図を出しますから・・・合図したら、頭を低くして下さい」)


リナと会話は出来ず、一方通行だが・・・慎吾は確実に自分の声がリナに通じていると感じ取った。


(慎吾「あと20秒です ・・・」)


魁斗「よし、ロックは解除した。次に電源を絶つ。

    君も援護を頼むぞ。麻酔銃で連中に対抗する!」


頷きながら慎吾は、リナに声を伝える。


(慎吾「あと10秒。9 8 ・・・」)


右手に麻酔銃、左手にパワーストーンを握りながら・・・


(慎吾「 2 1 今です!」)



・・・ ・・・。


リナ「・・・ ・・・」


覆面男に腕を掴まれながらも、リナは精一杯身を低くした。


ガコン!!


直後、大きな音と共に部屋の電気が消えた。


藤岡「 な!? 」


突然の事態に、藤岡は反射的に身を低くする。


真っ暗な部屋に侵入した魁斗。サーモグラフィーを見ながら・・・背中を向けている3人の覆面男のうち、右にいる1人に狙いをつけ、迷わず引き金をひいた。


魁斗が狙った男の腰に、麻酔銃の弾が突き刺さる。


男「ぐお!?」


男「うっ!!」


その男が声をあげたのとほぼ同時に・・隣の覆面男も声をあげた。


慎吾「あ、当たった!」


左手のパワーストーンに意識を集中しつつ、右手1本で麻酔銃を撃った慎吾。奇跡的にその弾が、真ん中の覆面男の尻に直撃した。


2人の男は慌てて銃を持ち直し、暗闇の中、背後にいる何者かに向けて銃を・・・


向ける前に、即効性の麻酔が体を駆け巡る。そのまま2人の男は、重なるように倒れた。



ダダダダダ!!!


しかしその直後、マシンガンの連射音が鳴り響く。


慌てて慎吾と魁斗は身を伏せた。3名いた覆面男のうち、2人は倒したが、残りの1人が銃を扉付近に向け連射してきたのだ。


魁斗と慎吾は、近くの柱に背中をつけ、何とか銃弾の雨あられを免れる。


魁斗「マズいな・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


機関銃の連射が部屋の中を駆け巡る。その恐怖で足がすくむ慎吾。



リナ「・・・ ・・・」


何とか身を伏せたリナだが・・・ 自分の腕を掴んでいた男が扉に向け、マシンガンを連射している。


(リナ「こ、このままでは・・・」)


助けに来た慎吾達が危険と判断したリナは、横に倒れていた別の覆面男の銃を奪い取った。


(リナ「あ、安全装置は・・・?」)


暗くて銃の部位が全く分からない。


(リナ「し、仕方ない!」)


時間がないと判断したリナ。立ち上がると、その銃口を目の前に立っている覆面男の頭にあてた。


リナ「銃を降ろして! 頭ふっとばすわよ!!」


男「・・・ ・・・」


後頭部に銃口を感じた男は・・・ マシンガンの連射を止め、両手を挙げる。


(リナ「安全装置はついたまま・・・ ど、どうすれば・・・」)


不安になりながらも、けして銃口を男からそらす事は無い。


(慎吾「リナ先輩・・・」)


慎吾はパワーストーンを通じて、暗闇の向こうの状況を察知する。魁斗はすぐにサーモグラフィーを用意して、事態の把握に努めようとするが・・・


それよりも早く、慎吾は暗闇の1点に向け麻酔銃の引き金をひいた。


男「 ぐ!? 」


リナの迷いをよそに、男は小さいうめき声をあげたかと思うと・・・その場で崩れるように倒れた。


(慎吾「あ・・・当たった!!」)


魁斗「リナ!!」


サーモグラフィーを通じて、3人の男が倒れているのを確認した魁斗は、娘の名を叫んだ。


真っ暗な部屋の扉方向から・・・


リナ「パパ!!」


4年ぶりに娘の声を聞き取った。




           (第102話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


魁斗はリナらと共に、目黒基地を脱出。


逃走する藤岡は・・・ 意外な人物と連絡を取っていた。



次回 「 第102話  妹 」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。