第101話 救出作戦
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追うリナ。
2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまう。藤岡はリナに、ウィーン大学のサーバに侵入すれば、家族を解放するともちかけた。
一方慎吾は、藤岡に自白剤を注射された直後に心停止してしまう。
リナはハドリアンズ・ウォールをくぐり抜けたメールの暗号解読に成功。4年前、死んだと思われた父親が生きていた事を知る。
藤岡に自白剤をうたれる直前、リナは慎吾の声を聞き取った。
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第101話 救出作戦
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2012年12月21日(金)、0時37分。目黒基地内。
慎吾「カ・・・ ハァアアーーーーーー!!」
喉に詰まった何かが、一気に取れたように・・・慎吾は大きく空気を吸い込んだ。
慎吾「ハッ、ハッ、ハーハー・・・」
ベッドの上にいる慎吾。うまく呼吸をする事が出来ない。
男「深呼吸だ。息を吐くのでなく、大きく吸い込む事だけに集中しろ」
誰かの声が聞こえたが、ベッドの上で思うように体を動かせない慎吾の視界は、その人物を捉えない。
慎吾「スー・・・ ハッハァ・・・」
言われたように、深く息を吸い込むことだけに集中した。息を吐き出す事はうまく出来なかったが・・・
慎吾「スー・・・ ハァ・・・ 」
やがてそれもスムーズになる。
慎吾「 !? 」
突然慎吾の視界に男の姿が映った。
男「久しぶりだな」
黒いYシャツ、白髪交じりの眼鏡をつけた男。
慎吾「あ・・・ あなた・・・は・・・」
口がうまく動かせず、ゆっくり喋る事しか出来ない。
慎吾「リ・・・」
慎吾が各駅で追いかけていた・・・あのコートの男。大学で格闘になった時には(もっとも慎吾は一方的にやられたが)、麻酔銃も撃ってきた。
慎吾「リナ先輩の・・・」
コートではなく、動きやすそうな黒いYシャツを身につけているが、慎吾はリナの父親だと確信する。
慎吾「リナ先輩の・・・ お父さん・・・?」
言われた男は小さく笑う。
魁斗「あぁ。あの時は君の素性が分からなかったから・・・失礼した。
リナのため、雛子のため、よくここまで耐えてくれた」
そう言うとリナの父親・・・魁斗は慎吾の目の前で注射器を見せた。
魁斗「時間が余りないので手短かに。
今、君の心肺機能は通常より、かなり低下している。
この注射は、それを復活させるためのもの。
今から君の右腕にこれをうつ。いいか?」
慎吾「は・・・ はい・・・ お願い・・・ します・・・」
迷うことなく、慎吾は即答した。
魁斗「よろしい。10分程、吐き気と頭痛におそわれるが・・・
それを過ぎれば、君の心臓は正常に機能する」
言いながら魁斗は、慎吾の右腕に注射をした。
慎吾「・・・ ・・・」
何かが体を駆け巡るのがわかる。そして非常に不快な気持ちに襲われた。
魁斗「不快感はあるだろうが、痛みはない。しばらく耐えてくれ」
慎吾は無言で頷いた。
魁斗「それともう1つ。君は24時間、体を動かしてない。
急激な運動は、心臓に予想以上の負担がかかる。
動けるようになっても、24時間は無理に動いたりはするな。
全速力で走ろうものなら・・・今度は完全に心臓が止まるぞ」
再び慎吾は無言で頷いた。
慎吾「スー・・・ ハァ・・・」
嫌な感覚を追い払うように、慎吾は深呼吸を続けた。
その間、魁斗は慎吾のメディカルモニタの配線を外し、ノートパソコンを取りだすと、何かを操作し始める。
魁斗「・・・ ・・・」
そして携帯をかけた。
魁斗「私だ。予定では1時10分にそちらへ行く」
電話を切ると、再び慎吾の元へ寄ってきた。その手元には30cm程度の円柱形の電子機器がある。
魁斗「これは君の中に、何か仕込まれていないかを調べるものだ。
不安を感じる事は無い」
そう言うと機器のボタンを押す。
キュイーン・・・
慎吾の体から数10cm離れた場所から、その電子機器をゆっくりと掲げていく。
魁斗「・・・ ・・・」
30秒ほどで、慎吾の全身をチェックし終える。
魁斗「大丈夫。体には何も異物はない。
よかったよ。私は心臓にGPSを埋め込まれたからな。はは」
軽く笑う魁斗。
(慎吾「だ・・・だから・・・ 心臓を止める薬を・・・?」)
魁斗「しかしよく・・・ あの薬を飲んだな。
よっぽど確信があったのか・・・ あるいはただの無謀。
まぁ、こうやって生き伸びたんだから・・・結果オーライだ」
慎吾の瞼を持ち上げ、その瞳孔を確認する。
魁斗「自白剤をうたれたか・・・」
慎吾「え、えぇ・・・」
魁斗「だが君は運が良い。
あの薬で仮死状態にあったおかげで・・・
自白剤の成分は、尿と一緒に排泄されるだろう。
まさか、そこまで計算済みだったのかな?」
慎吾は首を横に振る。笑いながら魁斗は、慎吾の腕や太ももを入念に揉み始めた。
魁斗「さすが若い。うらやましいよ。
この状態なら、あと2~3分で動ける。
だが先ほど言ったように、急激な動きは避ける事を忘れるな」
魁斗はそのまま、慎吾の体をほぐし続けた。
慎吾「あ、あの・・・ リナ先輩とは・・・?」
魁斗「あぁ。連絡は取ったよ。まだ直接会ってはいないが・・・」
慎吾の頬を軽く2度叩く。
魁斗「君のおかげさ」
2分後。
慎吾「あ・・・ もう、動けます・・・」
慎吾はゆっくりとベッドから体を起こす。
魁斗「よし。すでに雛子は助けた。リナを助けて・・・
ここを脱出する」
慎吾「ど、どうやって・・・?」
魁斗「君は私の指示した場所へ行くんだ。
井上という男が、車で待機している」
慎吾「ぼ・・・ 僕もリナ先輩の元へ行きます」
魁斗「ダメだ。その体では急激な動きは出来ない。
ここは私に任せろ」
慎吾「ぼ、僕は・・・ 黒幕が藤岡さんだと突きとめ・・・
さらに目黒基地まで突きとめました。
それに・・・あなたにも近づいた。
僕なら・・・リナ先輩を助けるのに役立ちます・・・」
魁斗「・・・ ・・・」
チラリと腕時計を確認した魁斗。
魁斗「足手まといになるようなら・・・
迷わず君を置いて、娘だけを連れて行く」
深く頷いた慎吾。
慎吾「もちろんです」
魁斗「よかろう。おっと、これは君のだろう? 返しておこう」
魁斗は持っていたカバンから、拳大の石を取り出し、慎吾に渡した。
魁斗「隣の部屋にあった。リナが言うには、君にとって大事な物だとか?」
パワーストーンだ。
慎吾「あ、ありがとうございます」
久しぶりにパワーストーンを手にした慎吾。握っただけで、エネルギーが充填されるようだ。
魁斗「時間がおしている。急ぐぞ」
慎吾「はい」
・・・ ・・・。
慎吾「け、警察には・・・?」
魁斗「ここを脱出する直前に連絡する」
魁斗は左腕にカバンを担ぎ、さらに左手には携帯電話を持っている。携帯画面を確認しながら、基地地下内部の長い廊下を歩いていく。
慎吾「な、何故? 犯人がわかっているのに・・・」
後ろからついてくる慎吾。
魁斗「今、警察と関わったら・・・間違いなく長時間拘束される。
何しろ私は、死んだはずの人間だからな」
慎吾「た、確かに・・・」
魁斗「まずは娘を助ける。その後・・・」
途中で首を振る。
魁斗「まずは確実に・・・ リナを助けてからだ」
慎吾「わかりました。それにしても・・・
基地の中なのに、警備している人・・・ 全然いませんね・・・」
周りを警戒しながら、目黒基地地下の長い廊下を歩いていくが・・・誰とも遭遇する事は無い。
魁斗「今頃、外に動員をかけているはずだ。
マスターは、頭がキレる男だからな」
慎吾「マスター?」
魁斗「藤岡の事だ。彼は私とリナがコンタクトを取ったと気づくはずだ。
基地の外部の人間とコンタクトを取ったから・・・
警察に通報されたと読んでいるだろう。
こちらは裏をかいて、最少人数で忍び込んでいるというわけさ」
慎吾「・・・ はぁ・・・ 敵の裏をかくなんて・・・
スパイみたいですね・・・」
魁斗「それはこちらのセリフだ。いいか? 君に渡した麻酔銃。
絶対身内には撃たないでくれよ」
慎吾「は、はい・・・」
2人とも、その右手には銃が握られているが・・・実際の銃とは違い、強力な麻酔銃にすぎない。魁斗は、右手の携帯画面を見ながら・・・
魁斗「ここだ・・・」
1つの扉の前で止まった。
慎吾「ここは・・・」
ロシアンルーレットを行った部屋・・・。
魁斗「待てよ・・・」
携帯画面には、5人の熱反応をよみとって映像化した画像が映っていた。
(慎吾「サ、サーモグラフィー・・・? TVで見た事がある・・・」)
魁斗「マスターと・・・ リナ。それに3人の銃を持った連中がいる」
中の様子を確認した魁斗。
慎吾はポケットからパワーストーンを取り出し、それを握ると意識を集中する。
慎吾「・・・ ・・・」
扉の向こうに・・・確かにリナがいる。
(慎吾「そして藤岡さんも・・・」)
魁斗「まず扉の電子ロックを解除。その後で電源供給を絶つ。
直後部屋の中は真っ暗になる。
そして扉を開き・・・ 中の連中を麻酔銃で眠らせる。
作戦は理解したか?」
そう言うと、魁斗はカバンの中からノートPCを取り出して操作を始めた。
慎吾「は、はい・・・ ぼ、僕も援護します・・・」
魁斗「あちらは本物の銃を持っている事を忘れるな。
出来れば・・・」
慎吾「出来れば?」
魁斗「あぁ・・・ リナに、身を低くしてもらいたいが・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
パワーストーンを強く握りしめ、深呼吸をしながら意識を深く集中する。
(慎吾「え、江浜さんがやったように・・・」)
今は亡き日本を代表する霊能力者・江浜。彼はその霊能力で、壁を隔てた娘とテレパシーのように会話が出来た。
(慎吾「リナ先輩、聞こえますか?」)
・・・ ・・・。
リナ「 !? 」
直接リナの頭に慎吾の声が聞こえた。周りをキョロキョロ見渡すが・・・
藤岡「どうした? 何か探し物か?」
・・・ ・・・。
慎吾「・・・ ・・・」
リナからの声はキャッチ出来ないものの・・・
自分の声が、リナには届いているようだと感じた慎吾。
慎吾「あ・・・ あの、リナ先輩のお父さん。
あと、どれぐらいで扉を開く予定ですか?」
魁斗「ジャスト40秒」
慎吾の方を向くことなく、必死にキーボードを叩いている。
慎吾「わかりました。リナ先輩に身を低くするよう、伝えます」
魁斗「 ? 」
電子ロックを解除するのに夢中になり、慎吾の言った事がイマイチ理解出来なかった。慎吾は再びパワーストーンを握り、意識を集中する。
(慎吾「こまかい説明は後回し。今、部屋の外に助けが来ています。
30秒で部屋に侵入する準備が完了。直後、突入します。
僕が合図を出しますから・・・合図したら、頭を低くして下さい」)
リナと会話は出来ず、一方通行だが・・・慎吾は確実に自分の声がリナに通じていると感じ取った。
(慎吾「あと20秒です ・・・」)
魁斗「よし、ロックは解除した。次に電源を絶つ。
君も援護を頼むぞ。麻酔銃で連中に対抗する!」
頷きながら慎吾は、リナに声を伝える。
(慎吾「あと10秒。9 8 ・・・」)
右手に麻酔銃、左手にパワーストーンを握りながら・・・
(慎吾「 2 1 今です!」)
・・・ ・・・。
リナ「・・・ ・・・」
覆面男に腕を掴まれながらも、リナは精一杯身を低くした。
ガコン!!
直後、大きな音と共に部屋の電気が消えた。
藤岡「 な!? 」
突然の事態に、藤岡は反射的に身を低くする。
真っ暗な部屋に侵入した魁斗。サーモグラフィーを見ながら・・・背中を向けている3人の覆面男のうち、右にいる1人に狙いをつけ、迷わず引き金をひいた。
魁斗が狙った男の腰に、麻酔銃の弾が突き刺さる。
男「ぐお!?」
男「うっ!!」
その男が声をあげたのとほぼ同時に・・隣の覆面男も声をあげた。
慎吾「あ、当たった!」
左手のパワーストーンに意識を集中しつつ、右手1本で麻酔銃を撃った慎吾。奇跡的にその弾が、真ん中の覆面男の尻に直撃した。
2人の男は慌てて銃を持ち直し、暗闇の中、背後にいる何者かに向けて銃を・・・
向ける前に、即効性の麻酔が体を駆け巡る。そのまま2人の男は、重なるように倒れた。
ダダダダダ!!!
しかしその直後、マシンガンの連射音が鳴り響く。
慌てて慎吾と魁斗は身を伏せた。3名いた覆面男のうち、2人は倒したが、残りの1人が銃を扉付近に向け連射してきたのだ。
魁斗と慎吾は、近くの柱に背中をつけ、何とか銃弾の雨あられを免れる。
魁斗「マズいな・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
機関銃の連射が部屋の中を駆け巡る。その恐怖で足がすくむ慎吾。
リナ「・・・ ・・・」
何とか身を伏せたリナだが・・・ 自分の腕を掴んでいた男が扉に向け、マシンガンを連射している。
(リナ「こ、このままでは・・・」)
助けに来た慎吾達が危険と判断したリナは、横に倒れていた別の覆面男の銃を奪い取った。
(リナ「あ、安全装置は・・・?」)
暗くて銃の部位が全く分からない。
(リナ「し、仕方ない!」)
時間がないと判断したリナ。立ち上がると、その銃口を目の前に立っている覆面男の頭にあてた。
リナ「銃を降ろして! 頭ふっとばすわよ!!」
男「・・・ ・・・」
後頭部に銃口を感じた男は・・・ マシンガンの連射を止め、両手を挙げる。
(リナ「安全装置はついたまま・・・ ど、どうすれば・・・」)
不安になりながらも、けして銃口を男からそらす事は無い。
(慎吾「リナ先輩・・・」)
慎吾はパワーストーンを通じて、暗闇の向こうの状況を察知する。魁斗はすぐにサーモグラフィーを用意して、事態の把握に努めようとするが・・・
それよりも早く、慎吾は暗闇の1点に向け麻酔銃の引き金をひいた。
男「 ぐ!? 」
リナの迷いをよそに、男は小さいうめき声をあげたかと思うと・・・その場で崩れるように倒れた。
(慎吾「あ・・・当たった!!」)
魁斗「リナ!!」
サーモグラフィーを通じて、3人の男が倒れているのを確認した魁斗は、娘の名を叫んだ。
真っ暗な部屋の扉方向から・・・
リナ「パパ!!」
4年ぶりに娘の声を聞き取った。
(第102話へ続く)
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次回予告
魁斗はリナらと共に、目黒基地を脱出。
逃走する藤岡は・・・ 意外な人物と連絡を取っていた。
次回 「 第102話 妹 」
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