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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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101/147

第100話  慎吾の声

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追うリナ。


2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまう。藤岡はリナに、ウィーン大学のサーバに侵入すれば、家族を解放するともちかけた。


一方慎吾は、藤岡に自白剤を注射された直後に心停止してしまう。


リナは父親のセキュリティをついに突破した後、藤岡から地球上の99.999%の人間が死ぬであろうと告げられた。


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   第100話  慎吾の声


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2012年12月21日(金)、0時50分。目黒基地内。



藤岡「あの状況からどうやって・・・ 父親とコンタクトをとった?」


リナ「・・・ ・・・」


正面には藤岡。背後には、3人の銃を持った覆面男が立っている。


藤岡「強力な自白剤がある。君の彼氏は、俺に情報を渡すのを嫌い・・・

    自白剤をうたれる直前、君の父親の調合した薬を飲んだ」


藤岡はパソコンを操作しながら、ベッドで横たわる慎吾の動画を映し出す。


藤岡「死ぬつもりだったのか・・・ 

    それともあの薬が仮死状態にするものだと知って・・・


    それに賭けたのかは・・・ 今となっては不明だがな」


リナ「・・・ ・・・」


リナもその画面を見た。


藤岡「結局・・・ 心臓は止まったまま」


リナ「・・・ ・・・」


父親が言うには・・・慎吾は生きているはずだ。


藤岡「本当は君の父親も・・・ 新世界に行くはずだった。

    【He must be gone and live , or stay and die. 】


    わかるか?」


リナ「(新世界に)行って生きるか・・・

     (現世に)留(とど)まって死ぬか・・・」


藤岡「ふ・・・ 君の彼氏なら、こう応えただろう。

    シェイクスピアの一節だ・・・ とね。

 

    さて・・・ 余計な話はここまで。

    いつ・・・どうやって、父親とコンタクトをとった!?」


リナ「・・・ ・・・」


藤岡「前回、俺が尋問した時・・・

    君は羽鳥教授を死んでいると思っていた。

 

    それは脳波でチェック済み。

    ならばこの24時間以内で、コンタクトをとったはずだ」


リナ「わ・・・ 私は・・・」


少しでも時間を稼ぎたいリナだが・・・。


藤岡「言いづらそうだな?

     自白剤の準備は、1分もかからないぞ・・・?」


リナ「ヒロ先生のサイト・・・」


不意にリナが口を開いた。


リナ「そのサイトを通じて・・・ パパとコンタクトをとった・・・」


追い込まれたら、その事を話すよう・・・魁斗に言われていた。少しでも時間を稼ぐネタになるはずだと。


藤岡「何だと? 256文字のパスワードを要求するサイトの事か!?

    我々【Unknown】の情報だけでなく・・・


    そこを通せばハドリアンズ・ウォールを抜けられる・・・

    ワームホールのような場所・・・」


リナはちらりと時計を見た。


(リナ「あと5分・・・ パパ・・・ 早く・・・」)


藤岡「サイトの存在は、君の父親から直接聞いた。自白剤を使ってな。

    しかしパスワードは、自白剤を使っても聞き出せなかった。


    それはハーグリーブスがパスを設定し・・・

    教授はあえて、それを知らないようにしたからだ」


リナ「・・・ ・・・」


藤岡「万が一にも、我々にパスを知られないようにと・・・

    本人自身がパスを知らないようにしたというわけだ」


リナは時折藤岡のPCに映る慎吾の映像を見るが・・・ベッドに横たわり、全く動く気配はない。


藤岡「我々の組織から脱出した後で、おそらく・・・

    どこかに隠しておいたパスワードを取得したんだろう。


    なるほど・・・ そうして、娘とコンタクトを取れたというワケか」


(リナ「そ、そうだったんだ・・・」)


魁斗が自白剤をうたれた事、パスワードをあえて知らないようにしていた事・・・

脱出してからパスワードを取得し、自分とコンタクトを取った事・・・


藤岡の口から、リナの知らない事実が一気に出てきた。


藤岡「しかし・・・ 君のパスワードは破棄したはずだ。

    布田駅のコインロッカーと共に・・・。


    もっとも君は、パスワードの存在すら知らなかったようだが?

    なのにどうやって、パスを得た?」


リナ「覚えてた・・・」


藤岡「・・・ ほう・・・。まぁ、そういう事にしておこう。

    で? 君の父親はどこにいる?」


リナ「・・・ 羽鳥邸の近く・・・」


そう言うのも、打ち合わせ通りだ。リナの目をじっと見つめた藤岡。


藤岡「ふ・・・。相変わらず嘘だけはヘタだな。

    おおかた、打ち合わせ通りってとこか・・・」


完全にリナの嘘を見抜いた。


リナ「パパは・・・


    あんた達の計画を・・・ 止めるわ」


その言葉は・・・父親との打ち合わせにはない。思わずリナの口から出たセリフだ。


藤岡「はっはっは!」


大きな声で笑い出す藤岡。


藤岡「我々の計画を止める? 

    5年以上、緻密綿密を重ねて計画したプロジェクト・ノアを?」


リナ「パ、パパは・・・あなたより優秀。

    絶対に・・・ その計画を止めてくれる!」


藤岡「わかってないな。ウィーン大学、そして・・・

    ザルツブルグ・モーツァルテウム大学。

    

    何故、君に両大学のサーバ侵入を課したか・・・わかるか?」


リナ「・・・ ・・・」


藤岡「そのサーバには・・・

    我々の計画を邪魔する、唯一のDATAがあった。


    だが君のおかげで・・・

    俺が直接、そのDATAを破棄できたよ」


リナ「な・・・」


藤岡「君がサーバ侵入に失敗すれば・・・

    直接大学にミサイルを撃ち込む予定だった。


    そういう意味で君は・・・

    5万人以上の命を、数日とはいえ延命した事にはなる」


リナ「・・・ 嘘よ・・・」


藤岡「嘘じゃないさ。

    我々の計画は君のおかげで、完璧に遂行できるというわけさ。


    さぁ・・・ 父親の居場所を・・・

    吐いてもらおう。それとも自白剤を使うか?」


リナ「・・・ ・・・」    


すでに午前1時は過ぎているが・・・


何も起こる気配は無い。


(リナ「パパ・・・」)


不安そうな表情を浮かべるリナ。そしてそれを見透かしたように、藤岡は声をかける。


藤岡「くっくっく。時間が気になるようだな?」


リナ「・・・ ・・・」


藤岡「大方、助けが来ると思っているんだろう?

    言っておくが、その期待は無駄に終わるぞ」


リナ「・・・ ・・・」


藤岡「ここは基地の中。

    そして我々【Unknown】の息のかかった武装連中が・・・


    100名以上、銃や武器を所持して防衛しているからな。

    日本の警察ごときで・・・ 難攻不落のこの基地は侵入すら出来ぬ」


リナ「・・・ ・・・」

     

時間的にも、精神的にも追い詰められたリナは、固まった表情を浮かべた。


藤岡「くっくっく。万策尽きたか? よかろう・・・」


藤岡は指をパチンとならした。後ろにいた覆面男が、リナの腕を掴み・・・袖をまくる。


そして藤岡は、背後の棚から小瓶と注射器を取り出した。


藤岡「強力な自白剤だ。あまり使いたくはないが・・・」


注射器を瓶に縦に突き刺し、透明の溶液を注射器へ吸い込み・・・


藤岡「羽鳥教授は・・・我々を裏切った。ウェーブが来る前に・・・

    俺が殺してやる・・・ 直(じか)にこの手でな・・・」


独り言のように呟く。


リナ「・・・ ・・・」


絶体絶命を感じたリナ。だが、その時・・・


(慎吾「リナ先輩、聞こえますか?」)


リナ「 !? 」


直接リナの頭に慎吾の声が聞こえた。周りをキョロキョロ見渡すが・・・


藤岡「どうした? 何か探し物か?」


慎吾の姿など見えるはずがない。リナはすぐ横にある藤岡のPCを覗き込む。ベッドに横たわる慎吾の動画が映ったままだ。


リナ「・・・ ・・・」


(慎吾「こまかい説明は後回し。今、部屋の外に助けが来ています。

     30秒で部屋に侵入する準備が完了。直後、突入します。


     僕が合図を出しますから・・・合図したら、頭を低くして下さい」)


リナ「・・・ ・・・」


慎吾の声が直接頭の中でこだまする。


藤岡「まぁ、この程度だな。さて・・・

    最初は嫌な感覚におそわれるが・・・


    すぐに心地よくなる。何でも話したくなる気分さ」


リナ「っく・・・」


リナは少しでも時間を稼ごうと頭を回転させる。


(慎吾「あと20秒です ・・・」)


右手で注射器を握った藤岡。左手でリナの腕を掴もうとする。


リナ「なんで!!!」


突如リナは大声を出す。


藤岡「 ? 」


リナ「なんで・・・1分で侵入出来る大学のサーバに・・・

    30分近くかけたか・・・わかる!?」


(慎吾「あと10秒。9 8 ・・・」)


藤岡「ほう・・・ ホントかどうか・・・

     自白剤で聞いてみるさ」


藤岡はリナを掴む腕に、力を入れた。


リナ「残念だけど・・・」


腕を押さえられているリナ。座っていた椅子から、少しだけお尻を浮かせ・・・


思い切り右足のかかとで、椅子を後ろへ蹴り飛ばした。


リナ「あなたの負けよ!」


空気椅子に座った状態のリナ。全体重をお尻にかける。必然的にその身は、重力に従い床へと落ちようとする。リナの腕を掴んでいた覆面男が、慌ててリナを支えようとするが・・・


(慎吾「 2 1 今です!」)


リナ「・・・ ・・・」


覆面男に腕を掴まれながらも、リナは精一杯身を低くした。





           (第101話へ続く)

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次回予告


1週間以上誘拐されていた羽鳥雛子。


そして慎吾とリナ・・・とうとう救出された。


次回 「 第101話  救出作戦 」

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