第100話 慎吾の声
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追うリナ。
2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまう。藤岡はリナに、ウィーン大学のサーバに侵入すれば、家族を解放するともちかけた。
一方慎吾は、藤岡に自白剤を注射された直後に心停止してしまう。
リナは父親のセキュリティをついに突破した後、藤岡から地球上の99.999%の人間が死ぬであろうと告げられた。
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第100話 慎吾の声
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2012年12月21日(金)、0時50分。目黒基地内。
藤岡「あの状況からどうやって・・・ 父親とコンタクトをとった?」
リナ「・・・ ・・・」
正面には藤岡。背後には、3人の銃を持った覆面男が立っている。
藤岡「強力な自白剤がある。君の彼氏は、俺に情報を渡すのを嫌い・・・
自白剤をうたれる直前、君の父親の調合した薬を飲んだ」
藤岡はパソコンを操作しながら、ベッドで横たわる慎吾の動画を映し出す。
藤岡「死ぬつもりだったのか・・・
それともあの薬が仮死状態にするものだと知って・・・
それに賭けたのかは・・・ 今となっては不明だがな」
リナ「・・・ ・・・」
リナもその画面を見た。
藤岡「結局・・・ 心臓は止まったまま」
リナ「・・・ ・・・」
父親が言うには・・・慎吾は生きているはずだ。
藤岡「本当は君の父親も・・・ 新世界に行くはずだった。
【He must be gone and live , or stay and die. 】
わかるか?」
リナ「(新世界に)行って生きるか・・・
(現世に)留まって死ぬか・・・」
藤岡「ふ・・・ 君の彼氏なら、こう応えただろう。
シェイクスピアの一節だ・・・ とね。
さて・・・ 余計な話はここまで。
いつ・・・どうやって、父親とコンタクトをとった!?」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「前回、俺が尋問した時・・・
君は羽鳥教授を死んでいると思っていた。
それは脳波でチェック済み。
ならばこの24時間以内で、コンタクトをとったはずだ」
リナ「わ・・・ 私は・・・」
少しでも時間を稼ぎたいリナだが・・・。
藤岡「言いづらそうだな?
自白剤の準備は、1分もかからないぞ・・・?」
リナ「ヒロ先生のサイト・・・」
不意にリナが口を開いた。
リナ「そのサイトを通じて・・・ パパとコンタクトをとった・・・」
追い込まれたら、その事を話すよう・・・魁斗に言われていた。少しでも時間を稼ぐネタになるはずだと。
藤岡「何だと? 256文字のパスワードを要求するサイトの事か!?
我々【Unknown】の情報だけでなく・・・
そこを通せばハドリアンズ・ウォールを抜けられる・・・
ワームホールのような場所・・・」
リナはちらりと時計を見た。
(リナ「あと5分・・・ パパ・・・ 早く・・・」)
藤岡「サイトの存在は、君の父親から直接聞いた。自白剤を使ってな。
しかしパスワードは、自白剤を使っても聞き出せなかった。
それはハーグリーブスがパスを設定し・・・
教授はあえて、それを知らないようにしたからだ」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「万が一にも、我々にパスを知られないようにと・・・
本人自身がパスを知らないようにしたというわけだ」
リナは時折藤岡のPCに映る慎吾の映像を見るが・・・ベッドに横たわり、全く動く気配はない。
藤岡「我々の組織から脱出した後で、おそらく・・・
どこかに隠しておいたパスワードを取得したんだろう。
なるほど・・・ そうして、娘とコンタクトを取れたというワケか」
(リナ「そ、そうだったんだ・・・」)
魁斗が自白剤をうたれた事、パスワードをあえて知らないようにしていた事・・・
脱出してからパスワードを取得し、自分とコンタクトを取った事・・・
藤岡の口から、リナの知らない事実が一気に出てきた。
藤岡「しかし・・・ 君のパスワードは破棄したはずだ。
布田駅のコインロッカーと共に・・・。
もっとも君は、パスワードの存在すら知らなかったようだが?
なのにどうやって、パスを得た?」
リナ「覚えてた・・・」
藤岡「・・・ ほう・・・。まぁ、そういう事にしておこう。
で? 君の父親はどこにいる?」
リナ「・・・ 羽鳥邸の近く・・・」
そう言うのも、打ち合わせ通りだ。リナの目をじっと見つめた藤岡。
藤岡「ふ・・・。相変わらず嘘だけはヘタだな。
おおかた、打ち合わせ通りってとこか・・・」
完全にリナの嘘を見抜いた。
リナ「パパは・・・
あんた達の計画を・・・ 止めるわ」
その言葉は・・・父親との打ち合わせにはない。思わずリナの口から出たセリフだ。
藤岡「はっはっは!」
大きな声で笑い出す藤岡。
藤岡「我々の計画を止める?
5年以上、緻密綿密を重ねて計画したプロジェクト・ノアを?」
リナ「パ、パパは・・・あなたより優秀。
絶対に・・・ その計画を止めてくれる!」
藤岡「わかってないな。ウィーン大学、そして・・・
ザルツブルグ・モーツァルテウム大学。
何故、君に両大学のサーバ侵入を課したか・・・わかるか?」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「そのサーバには・・・
我々の計画を邪魔する、唯一のDATAがあった。
だが君のおかげで・・・
俺が直接、そのDATAを破棄できたよ」
リナ「な・・・」
藤岡「君がサーバ侵入に失敗すれば・・・
直接大学にミサイルを撃ち込む予定だった。
そういう意味で君は・・・
5万人以上の命を、数日とはいえ延命した事にはなる」
リナ「・・・ 嘘よ・・・」
藤岡「嘘じゃないさ。
我々の計画は君のおかげで、完璧に遂行できるというわけさ。
さぁ・・・ 父親の居場所を・・・
吐いてもらおう。それとも自白剤を使うか?」
リナ「・・・ ・・・」
すでに午前1時は過ぎているが・・・
何も起こる気配は無い。
(リナ「パパ・・・」)
不安そうな表情を浮かべるリナ。そしてそれを見透かしたように、藤岡は声をかける。
藤岡「くっくっく。時間が気になるようだな?」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「大方、助けが来ると思っているんだろう?
言っておくが、その期待は無駄に終わるぞ」
リナ「・・・ ・・・」
藤岡「ここは基地の中。
そして我々【Unknown】の息のかかった武装連中が・・・
100名以上、銃や武器を所持して防衛しているからな。
日本の警察ごときで・・・ 難攻不落のこの基地は侵入すら出来ぬ」
リナ「・・・ ・・・」
時間的にも、精神的にも追い詰められたリナは、固まった表情を浮かべた。
藤岡「くっくっく。万策尽きたか? よかろう・・・」
藤岡は指をパチンとならした。後ろにいた覆面男が、リナの腕を掴み・・・袖をまくる。
そして藤岡は、背後の棚から小瓶と注射器を取り出した。
藤岡「強力な自白剤だ。あまり使いたくはないが・・・」
注射器を瓶に縦に突き刺し、透明の溶液を注射器へ吸い込み・・・
藤岡「羽鳥教授は・・・我々を裏切った。ウェーブが来る前に・・・
俺が殺してやる・・・ 直にこの手でな・・・」
独り言のように呟く。
リナ「・・・ ・・・」
絶体絶命を感じたリナ。だが、その時・・・
(慎吾「リナ先輩、聞こえますか?」)
リナ「 !? 」
直接リナの頭に慎吾の声が聞こえた。周りをキョロキョロ見渡すが・・・
藤岡「どうした? 何か探し物か?」
慎吾の姿など見えるはずがない。リナはすぐ横にある藤岡のPCを覗き込む。ベッドに横たわる慎吾の動画が映ったままだ。
リナ「・・・ ・・・」
(慎吾「こまかい説明は後回し。今、部屋の外に助けが来ています。
30秒で部屋に侵入する準備が完了。直後、突入します。
僕が合図を出しますから・・・合図したら、頭を低くして下さい」)
リナ「・・・ ・・・」
慎吾の声が直接頭の中でこだまする。
藤岡「まぁ、この程度だな。さて・・・
最初は嫌な感覚におそわれるが・・・
すぐに心地よくなる。何でも話したくなる気分さ」
リナ「っく・・・」
リナは少しでも時間を稼ごうと頭を回転させる。
(慎吾「あと20秒です ・・・」)
右手で注射器を握った藤岡。左手でリナの腕を掴もうとする。
リナ「なんで!!!」
突如リナは大声を出す。
藤岡「 ? 」
リナ「なんで・・・1分で侵入出来る大学のサーバに・・・
30分近くかけたか・・・わかる!?」
(慎吾「あと10秒。9 8 ・・・」)
藤岡「ほう・・・ ホントかどうか・・・
自白剤で聞いてみるさ」
藤岡はリナを掴む腕に、力を入れた。
リナ「残念だけど・・・」
腕を押さえられているリナ。座っていた椅子から、少しだけお尻を浮かせ・・・
思い切り右足のかかとで、椅子を後ろへ蹴り飛ばした。
リナ「あなたの負けよ!」
空気椅子に座った状態のリナ。全体重をお尻にかける。必然的にその身は、重力に従い床へと落ちようとする。リナの腕を掴んでいた覆面男が、慌ててリナを支えようとするが・・・
(慎吾「 2 1 今です!」)
リナ「・・・ ・・・」
覆面男に腕を掴まれながらも、リナは精一杯身を低くした。
(第101話へ続く)
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次回予告
1週間以上誘拐されていた羽鳥雛子。
そして慎吾とリナ・・・とうとう救出された。
次回 「 第101話 救出作戦 」
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