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私(悪役令嬢)じゃなくてヒロインが婚約破棄ですか!?  作者: 足立凛


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第3話 婚約者選定パーティー 前編

 ………………なにこの状況、気まずっ!


 目の前の現実を直視したくない。未だに何故こうなったのかさっぱりである。

 とりあえずアルカイックスマイルを浮かべてふふふと愛想笑いをすると、目の前にいる相手がさっと身を引いた。



 は!?なんと失礼な!無礼千万だぞ!


 怒り狂いたいところだが、そうもいかない止むを得ない事情がある。

 そう、是非もなしなのだ!本当は嫌で嫌でたまらないのだ!

 じっとりと不満たらたらの目で見つめる。



 あぁ、恨めしや〜、恨めしや〜。


 なんで婚約者選定パーティーなのに王子と二人でお茶会になっているんだ〜。



 ◇◇



「お嬢様、よくお似合いですよ」

 着替えた私を見た開口一番に、ハンナは褒めてくれた。にっこり満面の笑み付きである。

 ……珍しい。いや、主にそう思われるハンナもどうかと思うけど!


「ありがとう」

 語尾に疑問符浮かばなかったよね?


 一応素直に礼を言って、ドレッサーを前に天然フェザーと本革を使った高級椅子に座った。顔を鏡に向ける。


 心なしかハンナ、なんかうきうきしているね……。


 目の細かい櫛で髪を梳いてもらう。

 その間もずっと上機嫌である。

 思わず鏡越しにまじまじとハンナを見てしまった。


 頭の形に沿って綺麗な光の輪が浮かび上がるぐらいまでになると、ハンナは櫛を置いた。

 器用なハンナは上の空でもするすると髪を編んでいく。


 出来栄え?もちろん、完璧に決まっているよ。


「はあぁぁぁぁぁ」

 ドデカ溜め息をついても、ハンナはそこに微塵も反応することなく手を動かし続ける。

 いや、ハンナの性格なら無視することもあるかもだけど!でもでも、今はそうじゃなくて!



 ハンナがリア充なのが問題なのだ!!!



 とある陽気で心地よい昼、探偵アメリアは聞いてしまった。



「ねぇハンナって最近、あの方の騎士といい感じなの知ってる?」

「えぇ〜、嘘でしょ!」

「ほんとほんと」

「あの優しげな茶髪の人?」

「そうよ!この前デートの約束までしたんですって!」

「いいなぁ。ハンナはやっぱ卒がないわねぇ」



 なんですと!?



 使用人専用の部屋のドアに耳をぴったりと押し当てる。

 ひんやりとした感触に眉をしかめながらもこの行動は止めない。

 漏れ出る声をなんとしてでも聞かなければ。


「なんてお名前の方でしたっけ?」

「ハーバート様よ!」

「やっぱり王宮の騎士様は品格も違うわよね」

「しかも王子様の護衛に選ばれるエリート中のエリート!」


「「きゃぁぁぁぁぁ」」


 楽しそうな歓声が聞こえてくる。

 私は今耳にしたことを信じたくなかった。


 ハンナに……ハンナに既に相手がいるなんて!!


 ハンナは伯爵家の次女である。

 本人は社交界に全く興味がなく、本心を隠す気がない物言いが長所というか短所というか。

 とりあえず、貴族だが働きたい、結婚は二の次でいいやとばかりにこちらに就職してきた。

 でも流石というべきかすごく頼りになるのだけれど!

 こんな場面にまで有能さを発揮しないでいいのである!


 はっきり言おう。

 前世喪女だった私には耳を塞ぎたい話なのである!

 なんでハンナそんな優良物件見つけちゃってるの?前世の私より年下のくせに〜!


 脳内アメリアが「キー!」とハンカチを噛んでいる。


 数十分後、ばたばたと足を動かしながら床に転がっていた私を回収しにきたハンナにパンチをかました。

 軽やかに避けられた。




 そんなこんなで私は非常に文句を言いたいのである。

 先程から主人が不審そうな目をしようがクソデカ溜め息をつこうが、ハンナがちっとも夢の世界から帰ってこないのは、あのムカつく王子の騎士に惚れているからなのだ!

 なんと嘆かわしい!ギルティだ!

 ずぶずぶと高級椅子に沈み込む。


「お嬢様、できました」

 髪のセットが終わったみたいだ。


 目の前の鏡を覗き込む。

 う〜ん、流石物語のキャラと言うべきか、顔は整っているんだよね。

 透き通るような青い瞳、ぱっちりとした二重まぶた、桜色に色づいた頬。

 前世では見慣れない銀髪にそっと触れる。

 鏡の中の少女は随分ときらきらな目をしていますねぇ。

 正直、前世の私からすると嫉妬ものの容姿だ!

 悪役だからと身構えていたけれど、所詮幼い少女である。

 今は素直そうな顔だ。悪役顔になるまでまだまだだね。安心、安心〜。


 私が顔をぺたぺたと触っている間に準備ができたみたいだ。

「さぁ、馬車に乗りますよ」

 ハンナに促されて、目的地へと出発した。


 ◇◇


 う、お腹痛い。

 緊張で痛みを感じる気がする。休みたい休みたい。


 ぐるりと辺りを見回す。

 気が遠くなるほど長いテーブルの真ん中にデーンと座っているのは、言わずもがな――――そう、王子である。

 ちらちらと隣の子を見ると、顔を綻ばせて王子と喋っている。良かったねぇ。

 そして隣が話しているということは次は私の番ということである。全然良くないねぇ。


「そうか、今日は話してくれてありがとう」

 こんな顔もできるのかと思う程にこやかに王子は言う。言われた子はぱっと頬を染めた。

 王子は私の方に向き直った。



「おい、お前」

 いや、さっきの表情からの次の瞬間言うことこれ!?

「なんですか……」

 げんなりだ。

「おい、ちょっとこっちついてこい」

 さっと席を立つ王子。

 …………へ?

「ちょ、なんなんですか」

「とにかく来い」

 ずんずんと庭の方向へと向かうと、私をほぼ置き去りにするような感じで歩いていった。

 しーんと場が静まり返る。皆の表情はまさにぽかーんだ。

「み、皆さん、少し失礼いたしますわ」

 凍りついた皆を見回し、おほほほと愛想笑いをする。

 貼り付けた笑みのまま一歩、一歩と後退りして――――ぱっと背を向け王子を追いかけにいった。


 ダッシュである!

 それもこれもあいつのせいだ。



 本当に、あの、バカがぁぁぁぁ!!



 長くなるので一旦区切りました(笑)。

 ここで少しお知らせです。今月ちょっとバタバタしており、なかなか更新できないかもしれません……!ただ、この後編はせめて今月中に出したい……!

 更新がのんびりになるかもしれませんが、気長に待ってもらえたらすごく励みになります。余裕が出てきたらまた沢山書きます!


 もし「面白いよ〜!」と思ってくださった方がいれば、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけるとものすごく嬉しいです!よろしくお願いします!

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