路地裏の日常
ニュクスの町の路地裏で、通りがかる人間から"場所代"を巻き上げているごろつきの男たち。
今日の稼ぎを得るべく裏通りに繰り出すが、遭遇したのは見覚えのある人物だった。
珍しく雨の降らない日が続いていた。
路地裏ではごろつきの男たちが今日のしのぎを探してぶらついていた。
「そういやあのチビ、ここ数日見かけねーな」
「ああ、あのガキか……」
捕まえたところで大した実入りはないのだが、はしっこく逃げては得意げな顔をするのが気に入らない。
男は足を止めた。
噂のチビが、角を曲がって通りに現れたところだった。ちょうどいい。
前回の分もまとめて巻き上げて……
「うわあ」
黒髪の子供が思い切り顔をゆがめて嫌そうな顔をする。
食事中だったらしく、口には干し肉を咥えていた。
「また出た」
「こら、人を指差すな」
子供がこちらを指さす手を、後ろから来た人影がつかんで下げさせる。
「げ」
呻いたのは男の仲間たちだ。
「ん?」
こちらを向いたその人物は、うっとうしい前髪を垂らして人相のよくわからない青年。今日は目立つ弓は肩にかけていなかった。武器がないなら人数でどうにかなるか、と男が勝算を計っていると。
「ああ……こないだのか」
興味なさそうに言って、青年はしゃがみ込む。何をするのかと思う間もなく、子供の足元を掬って抱え上げた。
「シン、ちょっと我慢な」
「わぁ!?ちょっ、いきなり触んな!」
「近道するぞ」
言うなり、男たちが動く前に青年が走ってきた。
一瞬身構えたが、その前に青年は跳び上がって通りの壁を蹴ると、建物の切れ目を塞ぐ板塀の上に着地する。
「急いでるんで」
と肩越しに言い置くと、そのまま塀の向こうへ姿を消した。
「ボクは荷物じゃなーい!」
と、子供の声だけが後を引いて遠ざかっていくのを、男たちは呆けた顔で見送ったのだった。




