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夜の底にて
とたとた。
軽い足音が帰ってくる。
手洗いに行っていたのであろう、シンが扉をそっと開けて部屋に戻ってきた。
足音が二歩三歩、進んで止まる。
自信のテリトリーである二段ベッドの上へと向かうはしごには足をかけずに、こちらをのぞき込む気配。
毛布がめくられてひやりと足元に冷気が入り込んでくるが、アロウは動かずに壁の方を向いたまま寝たふりを続けた。何か悪戯をする気だろうか。
するとごそごそと、シンが毛布に潜り込んできた。
右を向き、上を向き、最終的に左を向いて落ち着いたようだ。
「えへへ」
むにゃむにゃと不明瞭な言葉にならない声を漏らしながら、ぐりぐりとシンの頭が背中に押し当てられる。
アロウが何か反応すれば、途端に逃げ出すくせに。
あったかいのが好きなのに、正面からハグを返されるとこわばってしまう君を。いつか。
いつか……そんな日は来るだろうか。
アロウの目に映る世界は夜の底のように暗く、先行きが見えない。
「ふふ……あったかーい」
シンが身じろぎする。
ひんやりとした外気を感じる中、背中を中心にぬくもりがひろがっていく。
毎晩悪夢を見る。目を閉じるのは、今でも怖かった。
ほのかなぬくもりを支えにして、アロウは静かに目を閉じた。




