パトリック・ブルックスの出産
ノアと医者の定期検診で、お腹の子はおそらく男の子だろうと告げられていた。
パトリックも『よくお腹を蹴られるし、元気な子なんだろうな』と優しくお腹を撫でた。
―――
パトリックは、みんなに「男の子らしいです」と報告すると、
「男の子でも、女の子でも、パディとお腹の子が無事でいてくれたら、それでいいよ。」
公爵は、優しくパトリックの頭を抱きしめた。
「弟……!」
先日まで、『向こうの家に返されるのでは』と怯えていたアレクシス。
パトリックとの会話で、“返されることはない”と安心したおかげか、家族として心の距離が近づいていた。
――パトリックたちの子を『弟』と呼ぶほどに。
「ジュジュねぇ、あかちゃに『おはよ』いえるよ!」
パトリックたちも、お腹に子どもがいるかどうかわからない時点で、「オルジュはお姉ちゃんになる」と、言っていたオルジュ。
メイドたちから「まさか、本当にお姉ちゃんになるなんて……」という話を聞いて、とパトリックは驚いてしまった。
そして、一番の気がかりだったヴィタ。
ヴィタも、子どもができることを喜んでくれていた。
しかしヴィタが、この屋敷に来た事情を思い出すと、胸の奥が少しだけざわついてしまう。
「ヴィタね、」
ヴィタは、もじもじとしながら、ちらちらとパトリックのお腹を見ていた。
「……この子の、お姉ちゃんになりたいな。」
意志の強い青い瞳が、パトリックのお腹に向けられた。
その時ノエルがしゃがみ、ヴィタの肩をそっと抱いた。
「ヴィタはもう、この子のお姉ちゃんですよ。」
ヴィタは、ぱぁと顔を輝かせ「本当に!?」と嬉しそうに笑っていた。
オルジュも「ジュジュも!ジュジュもっ!!」と大はしゃぎで続いた。
「アレクシスお兄様……アレクシスは長いからアレックスお兄様かな……」
アレクシスは、もう産まれてくる子になんと呼ばせるかを考えていた。
パトリックは、ほっと息をつき、お腹を撫でる。
自分でも知らず知らずの内に、気を張っていたらしい。
『早く、会いに来てください。』
パトリックは、お腹の子を思いながら、再びお腹を撫でた。
――すると、お腹をぽこんと、蹴られた感覚がした。
―――
みんなに赤子の性別を報告してから、パトリックのつわりが、より一層酷くなっていった。
前まで苦手だった酸味の強いトマトと、レモン味のソルベぐらいしか、口に入れられない。
パトリックの様子を見て、ヴィタは「おとーさまと赤ちゃん平気?」と毎回、聞くようになっていた。
アレクシスも、何かできることはないかと、料理長の元で手伝いをしていた。
オルジュは普段と変わらない様子だったが、パトリックの真似をしているのか、ソルベしか食べなくなっていた。
―――
酷いつわりが、ようやっと終わりを迎えた。
パトリックは安定期に入った。
「食べたかったものが食べられるとは、なんて素晴らしい!」
ずっと食べたくても食べられなかった好物を、ほどほどに食べていた。
――その姿を見て、料理長も満面の笑顔だった。
―――
妊娠を告げられてから、四十週になった頃。
パトリックは、あまりの激痛で目を覚ました。
……そして、少し違和感のある排泄感。
横で寝ていたノエルは、身動きが激しくなったパトリックに気づいて、起き上がった。
「……パディ様?体調が優れませんか?」
パトリックを見ると真っ青な顔に、玉のような汗。
そして、極めつけ。
「……多分、産まれます……」
その言葉を聞き、ノエルは慌てて廊下に出た。
ノエルは、すうっと息を吸い、腹から声を出した。
「大至急!産婆とノア様を呼んでくださいっ!!」
ノエルが生きてる中で、一番の大声だったが、パトリックにそれを指摘する余裕はなかった。
オルジュが、自分のことを『ジュジュ』って呼んでるのは、自分の名前を発音できないオルジュ用にヴィタが考えました。
ていう、話を入れられませんでした。
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