パトリック・ブルックスの結婚
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結婚式、当日。
空は二人を祝福するかのように、晴れ渡っていた。
ブルックス家領地の教会の上。
数発の号砲が打ち上がった。
「それでは、新郎の入場です!」
扉が開く。
「皆様、暖かい拍手をお願いします!」
司会者の言葉と共に、パトリックが公爵と共に歩いてきた。
本来なら、一人で歩くはずだった。
しかし公爵が、「どれだけ男のように振舞っていても、パディは私の可愛い娘だよ。」と譲らず、
パトリックが、ノエルに助けを求めても、「一緒に歩いた方が良いに決まってますよ!」と逆に公爵の援護に回ってしまった。
――ノエルを紹介した時は、懐疑的な目を向けていた、お父様。
ノエルが屋敷に慣れるにつれて、彼女を見るお父様の目が柔らかくなっていったのは、私も嬉しかった。
今では「私の可愛い自慢の娘たち」と言ってくれるほどだ。
――だから、
パトリックは、途中から公爵の手を離れ、神父の少し手前で立ち止まる。
「(――本当は、お父様と一緒に歩いて欲しかったんですけどね。)」
司会は、パトリックが扉に向いたのを確認して、従業員に合図を送る。
「続いて、新婦の入場です。」
拍手の音と共に、扉から現れたのは、メイド長と執事長に手を預けたノエルだった。
パトリックとノエル、それから公爵が選んでいたはずの純白のドレス。
いつの間にか、従者たちまで口を出していた。
――私とお父様が歩くなら、ノエルはどうなるのか。
そうパトリックが声を上げた時、真っ先に手を挙げたのがメイド長と執事長だった。
二人も当初は、ノエルに深く踏み込まず、当たり障りのない対応をしていた。
しかし、実家でのノエルの扱いを知り、あれやこれやと世話を焼くようになっていた。
メイド長なんて、実の娘のようにかわいがっていた。
そんな二人の手を離れ、ノエルがパトリックの横に並び立つ。
腕を組み、一歩、また一歩と神父の元へ向かう。
参列してくれた者たちのため息が、波のように広がった。
撮影を任せたベリー三姉妹。
小物作りを手伝ってくれていたネリエ。
無理言って呼びつけた、ペイジの顔をした“影”。
ヘーレーはさすがに、参列できなかったが、祝電を送ってくれた。
カイルは、式が始まってないのに、既に泣いていた。
それを少し引いた目で見ているノア。
――それから、
晴れやかな顔をしたアーリヤ。
パトリックとノエルは、神父の前で立ち止まる。
神父は、二人を交互に見て、口を開く。
「汝、パトリック・ブルックスは、この者を妻とし、その健やかなるときも、病めるときも――」
定番のセリフを聞き終え、参列者に聞こえるように声を出す。
「はい、誓います。」
神父は頷き、次にノエルを見た。
「汝、ノエル・ブルックスは、この者を夫とし、その健やかなるときも、病めるときも――」
心臓の鼓動のせいで、神父の言葉が聞き取りづらい。
ノエルは、緊張と嬉しさで、今にも泣き出したいのを、ぐっと我慢する。
一呼吸置き、ノエルの口が開こうとした。
――その時だった。
怒鳴り声が、扉越しに響く。
低い男の声が必死に制している。
次の瞬間――
どんっ!
衝撃と共に、扉が揺れた。
パトリックは、怯えるノエルの腰を抱き寄せた。
参列者も何事だと、扉の方を見た。
押し返す間もなく、扉が開いた。
そこにいたのは――
「ずるい、ずるい、ずるい!お姉様ばかりずるいわ!」
ぼさぼさの髪。
広く開いた胸元。
化粧は崩れ、香水と酒の匂いが、遠くからでも漂ってくる。
服装から見て、“春を売る”女性だろう。
会場にいる、ほとんどの者は首を傾げた。
『この女は、誰だ?』
そう思わなかったのは、
ただ一人。
“お姉様”と呼ばれた、ノエルだけだった。
「……エリス」
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