パトリック・ブルックスの予兆
今回ちょっと短いです。
「私には、愛しい婚約者がいるんで。……というか、王妃という立場が、私の怪我の代償と、釣り合ってると本気で思ってるんですか。」
冗談じゃないですよ、とぐちぐちとヘーレーに吐き捨てるパトリック。
周りから野次(?)が聞こえてくる。
「い、愛おしいだなんて、そんな……」
最初の言葉だけを聞き、頬を赤らめ、もじもじと恥ずかしがるノエル。
「たしかに。」
怪我ごときで、王妃はちょっと重いよな。と考えて深く頷くノア。
……そして、右隣にいる幼なじみをちらりと見る。
「怪我をさせたにしても、婚約だなんて……」
アハハと苦笑いをして、頬をぽりぽりとかくカイル。
自身の言葉にハッとして、左隣の幼なじみの顔を盗み見る。
アーリヤはふーっと深く息を吐き、殺意が込められた瞳で、ヘーレーを睨んでいた。
――自分以外の男が、パトリックに求婚するのが許せないからだった。
「この私が身体を張ったんですよ?――ヘーレーの残りの人生だけじゃ安すぎますよ。」
腕を組み、ふんっと鼻息を荒くするパトリック。
「「(そっちかよ)」」
ノアとカイルが、ズルッとその場で足を滑らせる。
パトリックの言葉を聞いて、アーリヤの脳内に衝撃が走る。
嬉しそうに子供を抱くパトリックと彼女を支えるヘーレーの姿が浮かび上がったからだ。
「それって“ヘーレー王子の人生と、彼との新しい命で釣り合うので、婚約します”っていう返事かい!?パティ!!?」
「気色悪いこと言わないでください。本気で絶交しますよ?アーリヤ王子。」
涙目で、パトリックの足元に縋り付くアーリヤ。
パトリックは、嫌そうな顔で、彼を蹴る動作で追い払う。
「我はそれでも、一向に構わないが。」
「私が構うので、勘弁願います。」
ヘーレーは、きょとんと首を傾げる。
「王子って立場の人まともな奴は、いないのかもしれない……」と頭を押さえるパトリックだった。
―――
「なんだ、そんなものでいいのか?」
ヘーレーが二つ返事で「いいぞ!」と答えた。
目的だった『隣国の土地複数と出店許可証』を手に入れてほくほく顔のパトリック。
くるりとノエルに向き直り、少し嬉しそうな、ちょっとしたいたずらを思いついた子供のような笑みを浮かべた。
「ノエル、二年後の新婚旅行は、隣国でいいですよね?」
言うだけ言って、再び前を向き、るんるんと浮き足立って歩くパトリック。
カーッと顔を赤くするノエル。
「いい気になるなよ、この痴女めっ!!」
半泣きで、ノエルを指さすアーリヤ。
「アーリヤ、人に指を向けてはいけない!」
こらっ!と諌めつつも、豪快に笑うカイル。
「カイル……そういう事じゃなくて……はぁ、もういい。」
ノアは、ツッコミを放棄した。
「うんうん、仲良きことは美しき事かな!」
周囲を見渡し、ヘーレーは腰に手を当て、にぱっと笑う。
青空の向こう側で、学園の鐘が鳴った。
色々あったが、特別授業が無事に終了し日常に戻る。
―――
特別授業が終わって一ヶ月。
よく集まる身内の輪に、ヘーレーが追加された。
いつものように、アーリヤがノエルに対して「いい気になるなよっ!」と騒ぎ立てていた。
ガラッと扉が開き「朝のミーティングを始めます」とペイジ先生が教室に入ってきた。
「来月に学園内対抗、競技大会があります。チームに別れて、各種目で競い合ってもらいます。」
教室を見渡すペイジ先生。
パトリックと目が合い、にこっと笑ってから、もう一度教室を見渡す。
「優勝チームには、素敵な景品があるらしいので、頑張りましょうね、皆さん!」
はーい、と気だるげなクラスの声が重なる。
パトリックはふと、窓の外を見る。
初夏が終わり、本格的な夏が始まろうとしていた。
波乱が起きる。
そんな予兆を欠片も感じさせない――
カラッと晴れた青空だった。
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