聖女テイラーの探索‐五
鏡の迷路を抜けて、豪華な彫刻が施されている巨大な二枚扉が、目の前に現れる。
ノアが、二枚扉の片側に手を添える。
「さっきの迷路みたいに、部屋自体に、魔法がかかっている気配はない。」
その言葉を聞いて、よかったと一息つく。
「(扉は凝った彫刻だけど、見せかけなのね)」
周りのピリついた空気に、まるで気付けなかったテイラー。
未だに名前が聞けてない黒髪の彼と、ペイジ先生が話をしていた。
――その時。
バンッ
ドゴォンッ
扉が勢いよく開き、何かが転がって壁に打ち付けられた。
そのあとに聞こえたのは、焦ったような女の子の声。
「カイル様!ご無事ですか!?」
扉の向こうから走ってきたのは、ノエルだった。
「……ノエル?」
「パディ様!?……何故、ここに?」
互いに怪我をしていないかの確認をし合う、黒髪くんとノエル。
ノエルの視線の先には、転がってるカイルと、それを見下ろしているアーリヤ。
「生きてるな、カイル?」
「おうともさ!」
……片や、甘酸っぱい雰囲気の二人。
片や、少年マンガのようなやり取りをする男子たち。
――なんだか、わたし空気じゃない!?
話の中心になるべく、話しかけようとするテイラー。
それを止めたのは、トリナだった。
「テイラーさん、野暮なことはしちゃいけねぇですよ〜?」
ほわほわとした笑顔とは裏腹に、引き剥がそうとしても、びくともしない力加減で、手首を握られる。
「お姉さんたちとお話してましょうね〜」と、トリナがテイラーを掴んだまま、ペイジ先生の近くまで、歩いていく。
いつの間にか、知らない女生徒が増えていた。
「トリナ、聖女さんを連れてきちゃったの?ちゃんと、あっちの話し合いに参加させなきゃじゃない?」
おそらく、カイルとノエルペアを引率してた先輩だろう。
「えへっ!」
「“えへっ”じゃなくて!もう……先生からも何か言ってください!」
「っと……その前に、三年のクランよ。よろしくね。」
簡単に挨拶を済ませるクラン。
話を振られたペイジ先生が、苦笑いしながらペンを口元の当てる。
「大人数での動きも見たいから、返しておいで。と言いたいんだけど……」
チラリとパトリックたちの方を見る。
戦況の確認や、対策を模索している最中だった。
「――周りの状況を的確に判断することも大事。ということで、先生たちとお話しましょうね。」
親指と人差し指で、輪っかを作るペイジ先生。
そういう事でしたら……と渋々クランは、引き下がる。
……パトリックたちの方が、何やら騒がしくなる。
どうやら、ノエルの肩に、彼が頭を預けたようだった。
「(えっ?やっぱりノエルの恋人……?でもゲームの設定だと……)」
そんなの、なかったよね?
――まあどうせ、ノエルから彼をもらうので、なんでもいいか!
“ノエルの肩より、わたしの太ももの方が良くない?”
なんて色仕掛けをすれば、彼もイチコロ!
思い立ったが吉日。
ノエルと彼の間に割り込もうとした。が、
「空気が読める読めないで、評価も変わってきますからね〜!」
トリナに肩を掴まれた。
口元だけが笑っている彼女が、テイラーを見つめていた。
せっかくのチャンスを邪魔しないでほしい!
そう思いながらも、相槌を打つ。
「確かにそうですよね!わたし、空気読むのめっちゃ得意なんで、気にしたことないですけど!」
本当のことを言ってみる。
数秒間の沈黙。
多分、「わかる〜!」ということだろう。
“無言は肯定”って、昔見たドラマで言ってたし。
つまり、問題なしってことよね!
アハハと乾いた笑い声を上げるペイジ先生。
「(本気で言ってる……?)」と心の声を、ギリギリ顔に出さなかったクラン。
「うおっ、マジか。」と心の声が、漏れ出たトリナ。
おかしな反応をする三人を、テイラーは不思議そうに見るだけだった。
―――
『浄化魔法と、回復魔法が使える聖女さんは、後方でお願いします。』
そう黒髪くんに告げられ、カイルと共にものすごいスピードでゴーレムの元まで向かって行った。
ノアとアーリヤの更に後ろで控える。
前衛で、ゴーレムの動きを撹乱している二人に向かって、大声を張り上げるノア。
「(……なんか、パッケージに書いてあった性格とイメージ違うんだよなぁ。)」
小悪魔系って設定だったはずなのに。
チラリとノアの顔を見る。
――でも、これはこれでアリ!
ノアが二人に対して文句を付けていると、アーリヤがくすくすと笑い出す。
いつもの王子様スマイルも素敵だけど、気の抜けた素の笑顔も、かっこいいなと見惚れる。
なんの話をしているのか気になって、聞き耳を立てる。
「ごめん、ごめん、昔のことを思い出しちゃって。」
ノアの口が少し緩んだ、ように見える。
ということは、幼なじみ設定はゲーム通りなのかと、確認するために二人に話しかける。
「皆さんって幼なじみなんですかぁ?」
少しだけ、空気が冷えた。
「……まあ、そうだな。」
さっきまで、あんなに楽しそうに話していたのに。
「(もしかして……)」
心臓の音がだんだん大きくなっていく。
「(照れちゃって、面と向かってお話できないタイプ!?)」
めっちゃ!わたしのこと好きじゃん!やったー!
――都合のいいこじつけをする、テイラーであった。
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