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序章:やはり触手! 全ては触手が解決してくれる!!

こちらでは初めての投稿です

不慣れなので何かありましたら優しく教えていただければ幸いです




序章

やはり触手! 全ては触手が解決してくれる!!






「コレだ!!」

 私、こと、リナ・アーバスノットの背後に雷が落ちた。

 物理ではない。

 閃きだ。

 私が今生きている世界が電気の通じている世界であれば、電球だって光らせていたところだ。

 だが、この世界には魔法が溢れている代わりに電気は溢れていない。

 ということで電球はなしだ。

 そして、魔法教育を受けていない私が光らせるものは蝋燭くらいしかない。

 つまり、ただの点火である。


 いや、それはいい。

 それはいいのだ。

 兎に角__


「触手! そう触手!! 触手は全てを解決してくれる!!」


 スープに入った微塵切りの触手の破片を見て私は叫んだ。

 もしも、私の両足が動いていれば、立ち上がってステップを踏んでいただろう。


 天啓だ。

 いや、私の頭脳の勝利だ。

 前世持ち万歳。

 やはり、前世の記憶。

 前世の記憶こそが勝利の鍵だった!



 私は両手で力瘤をつくるようにして天を見上げた。



 そう、触手。

 触手こそが全ての答えだったのだ。

 絵本の青い鳥のごとく、そう、答えはいつだってすぐそばにあって逆に気が付かないだけ。



「・・・・・・あー、頭、イカレられたんですか。リナお嬢様?」

 手前で同じテーブルにつき、食事をとっていた私付きの唯一のメイド、サラが心底嫌そうに聞いてきた。

 本当に嫌そうである。

 肩口で切りそろえられた栗色の髪とお揃いの瞳は今日も冷たく私を見ている。

 普段通りのクールビューティーである。

 クールすぎてつらい。

 いや、私のメイドだというのに何という目で見るんだ。

 一応、私が君の主人なのですけども。


「だとしたら、お暇をください。そして、もう二度と戻ってきませんので」

 そう言って、メイドとは名ばかりの友人、サラがスープをツツく。

 いや、私のメイドだというのに何という事を言うんだ。

 一応、私が君の主人なのですけども。


「うわ、ホントだ。触手入ってる。私これ、食感が好きじゃないんですよね。ブニブニしてて嫌。あげますね、リナお嬢様」

 そして、触手を私の皿に移してきた。

 嫌いな物を主人に押しつけるな。



 だが、そう、今は良い。

 そんなのは些末なことだ。

 それよりも、そう。



「触手だよ、サラ!」

 私は全力で叫んだ。

 そう、触手。

 触手なのだ。


「触手ですね」

 サラはスープをかき混ぜ、検分し、触手の破片を次々と私の皿へと移していく。

 本当に触手が嫌いらしい。


「つまりは、触手で何とかするべきだったんだ!!」

「はいはい、早く食べてくださいね」

 サラは興奮した私を主人にするとは思えない扱いで受け流す。

 本当にクールすぎる。

 いや、いつものことなのだけども、うん。

 いつものことなのだけどね。





 そう、実は私は人間に産まれたのは二度目である。

 これは私の記憶の中だけの事なので、証明はできない。

 だが、確かにその記憶が私の中にはあった。

 証明はできないし、嘘だと言われたらそれまで。

 そういう脆い記憶だ。

 だが、私にとっては自分という人間を形成する上でとても大切な記憶なのである。

 きっとこの記憶がなければ【私】は【私】じゃなかった。

 そういう記憶だ。


 そして、その記憶にある限りなのでその前は分からない。

 何か違うものとして生きていたのかもしれないし、やはり、人間だったのかもしれない。

 もしかすると、前回の人生が初めての生という可能性もあるわけだが。

 まあ、ともかく、二度目の人生をランウェイしている最中なのだ。


 そして、一度目の人生はこの世界で過ごしていたわけではない。

 おそらく、異世界、というものにいたのだと思う。

 何せ、文化も常識も全く違う世界だったのだ。

 国が違うでは説明ができない。


 そもそも、一度目の人生では世界に【魔法】なんてものは流通していなかった。

 発達していたのは科学の世界だった。

 この世界から見ればとんだファンタジーであるが、あの世界からすれば、此方の世界こそとんだファンタジーだろう。

 しかも、文化や文明は勿論、生きている動物だって大分様相が違うのだ。


 産まれて数年は訳がわからなすぎて、ポカンとして過ごした赤子時代である。

「全然泣かない、手の掛からない子でございました」とはナニー(お世話係)のマリアの言である。

 そうやって、数年過ごして、漸く口が発達して喋れるようになってからは、舌がまわら無すぎるし身体は思うように動かないし、大人は全く相手にしてくれない上に、身体年齢に引っ張られてよく癇癪をおこしていた。

 それでもマリアは「かわいらしかったです」と言ってくれた。

 マリア大好き。

 マリアしか勝たん。


 まぁ、ともかくだ。

 そう言う事情を抜きにしても、前世は科学とインフラが発達した世界にいた私に今生の世界は厳しかった。

 何せ、どこに行っても魔法魔法魔法。

 インフラを整える必要なんてない、なぜなら貴族は魔法が使えるから。

 庶民が困ってる?

 魔法を使えるようになればいい。

 魔法の才能がないなら?

 なら、諦めろ。

 魔法が使えないんだから、仕方がないだろう。

 ソレが嫌なら努力して、魔法を使えるようになればいいだろう。

 そんなとんでもない考えが押し通る世界である。


 そして、上にいる人間というものは総じて魔法の才能がある。

 というか、魔法の才能がない人間は上には行けない。

 魔法が使えない?

 努力が足りないからだ、という奴である。

 勿論、魔法には才能がある人とない人がいる。

 けれど、貴族で魔法の才能がないと【生まれなかったもの】とされる事が多い。

 結果、やはり、貴族は魔法が使えるものばかりとなり、魔法を使えない人間の気持ちなど永遠に理解ができないわけだ。


 魔法魔法魔法魔法。


 結果、機械も工業も何もかもが発達しない世界。

 魔法がなければ何にもできない世界なのである。


 貴族生まれの私にも魔力って奴はある。

 なければ、うちの両親は産まれたばかりの私を貧民街にでも捨てていただろう。

 そういう両親なのである。

 だから、確かに私にも魔力はある。

 だが、幼い頃に歩ける両足を捨てることになった私には『両足も使い物にならない、外にもでないの分際で魔法など不要』と一切教えてもらえなかった。

 いつも私の味方をしてくれている兄だって『リナはそんな事を勉強したりする必要はないんだよ』といって何も教えてくれない。

 そうして、私は館の塔でメイドのサラと監禁生活というわけだ。



 塔からの眺めはいい。

 だが、全てが遠くて小さい。

 花の匂いは感じないし、人なんて小さすぎて判別できない。

 最近はサラと兄の顔しか見ていない。

 顔面偏差値の高い二人の顔しか見ていないので、いざ普通の人間を見たときにオークとゴブリンと人間の区別が付かないかもしれない。

 それが最近の私の恐れていることであり、最近の悪夢である。


 私だって町に出て買い物したり食事したりしたい。

 けれども、兄は随分と過保護になって「ここに居さえすれば全てから守ってあげるから、大人しくしているんだよ」と言って聞いてくれない。

 そして、両下肢がうまく動かせない私はこっそり塔を降りることができない。

 まさか、サラに「私を担いでこの塔を降りて欲しい」なんて頼めないし、頼んだらきっと殺人鬼のような瞳で見られるだろう。

 絶対に嫌だ。



 だが、そう、触手。

 触手である。

 夕食のスープに入っている触手を見て私は思いついたのだ。

 決定的なアイディア成功。




 私の中のマリー・アントワネットが囁いたのだ。

 両足が動かないなら、両足の代わりを作ればいいじゃない、と。

 あれ、これってマリー・アントワネットじゃなくて他の貴族の言葉だったっけ。

 それを汚名として着せられた気がしてきた。

 ごめんなさい、マリー・アントワネット。



 いや、気を取り直そう。



 まず、触手とはそこらへんに一杯いる下級魔法生物だ。

 そう、そこら中にいる。

 どれくらいそこら中にいるかというと、スープの具にされるくらいいる。

 そして、下級魔法生物だ。

 とても弱い。

 それくらい弱いかというと、スープの具にされるくらい弱い。

 子供に苛められる位弱いし、子供に玩具代わりにされるくらい弱いらしい。

 私は見たことがないが、サラの話によれば、赤ちゃんがなにかブン回ししていると思ったら触手だったなんて笑い話もあるらしい。

 赤ちゃんにも負けるのか。

 ちょっと可哀想である。


 まぁ、そう言うわけで、下級で扱いやすくそこまで害がない。

 最近では触手をペットとして飼っている人間もいる、というのが我が愛しのお兄さまから贈られた本にも書いてあった。

 そして、触手というのは大道芸やサーカスでも活躍する事があるらしい__サラの観に行ったサーカスでは火の輪くぐりに失敗して、触手があわやロースト触手になりかけていたらしいけど。

 まぁ、何が言いたいかといえば、つまり、だ。

 触手というのはある程度飼い慣らせるし、人間を飼い主だと判断したり芸を覚えるだけの知能があると言うことである。


 そして、そう私が知っている【インフラが整った世界】では、歩行が難しい人間は歩行補助器というものを使っていた。

 車椅子がベストだが、両手で持ってソレを支えにして歩くことができるものでも全然構わない。

 いや、寧ろ其方の方が運動にもなって、健康良いかもしれない。




 そう、そういうもの、その代わりになるものをこの世界で作ればよかったのだ。



 それこそが、触手。

 そう、触手なのだ。


 触手をなんかこう、いい感じに飼い慣らして歩行補助器の代わりをしてもらおう!

 そうして、歩けるようになれば、魔法だって教えてもらえるかもしれないし、兄も私が外に出ることだって許してくれるかもしれない。

 いやいや、歩けるようになれば兄も「リナももう立派なレディなんだね! 一人前だから、もう塔で守らなくてもいいな!」とか言っちゃって、一緒に首都に連れて行ってくれるかも!

 サラだって「じゃあ、私もお嬢様とずっと一緒にいなくてもいいですね。全部一人でできるなんて流石です」なんて言ってくれて、もしかしたらどこかのお家にお嫁さんに行って、で子供の顔とか偶に見せに来てくれちゃったりなんかするのかも!

 私に全く興味がない両親も__いや、いいな、別にそこは。

 うん、いい。


 まぁ、兎に角だ。

 私が触手で歩けるようになれば全部ハッピーになって、滅茶苦茶ハッピーエンドになるのでは!?

 これが最良のグッドエンドでしょ!



 私は期待に胸を躍らせた。

 歌いたい気分である。

 この前歌ったら、サラに頭部をヒッパタかれたので歌わないけど。

 いや、主人の頭をヒッパタくメイドって何だ。





 そう、これは私が触手を飼い慣らして、触手使い令嬢と呼ばれる事となる物語__の予定なのである。

 そうきっと、何やかんやあって、きっと触手を飼い慣らして自由を手に入れてみせる!

 私はフンスと鼻息を荒くした。






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