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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第六話

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野望と陰謀(7)

 ナクトホーンとポートデリーで反抗の狼煙が上がり、アルミナ治安維持軍基地から鎮圧戦力が出撃。それに呼応してベゼルドラナン以下の三隻が進出する中、銀色のアームドスキンはひっそりと出撃した。


「気楽っちゃ気楽なんだがよ」

 ターナ散布機(スキャッター)と速度を合わせつつ飛ぶパシュランの中でリューンはシートに背を預けている。

「現地の組織の人は戦闘用アームドスキンを持ってないようだけど、一遍に十何機を相手しなくていいんだもんね。各個撃破で十分」

「どれだけ役に立つかは分かんねえが、あっちの細かい状況を知ってるのは『解き放つ槌』とかいう連中だけだかんな」


 一時的に間借りした形の静止通信衛星がプローブに繋がって通信を維持している。

 XFi(ゼフィ)はその都度ハッキングして利用しているのでアルミナの軌道艦隊も破壊はできない。重要な通信インフラをその都度破壊していたら自分たちの首を絞める結果になる。


「本当に小さな都市じゃねえか」

 見えてきたエルハーケンは緑と湖水に囲まれ、幹線道路沿いに広がる歪な形をしている。

「住む人にとっては故郷で愛する土地だよ。けなしちゃ駄目……」

「うげ!」


 咄嗟に回避したリューンはおかしな悲鳴を上げてしまった。


   ◇      ◇      ◇


「パシュランとの通信途絶しました!」

 フィーナもただ動揺するだけでなく報告ができるくらいに成長している。

「待ちなさい。今、監視衛星の映像拾うわ」

「……はい」

 エルシが反応してくれているが不安は拭えない。


 2D投映パネルがオペレーター卓でも立ち上がり、録画映像が再生される。そこにはエルハーケンから伸びる光芒と散布機(スキャッター)が爆散する様子が捉えられていた。


「狙撃を受けているわ」

 エルシの目が細くなって冷たさを増す。

「情報が漏れていたようですわね?」

「困ったものだ。彼を送るのを伝えておいたのは事実だが、情報管理もできない組織らしい」

 教授(プロフェッサー)は溜息を一つ。

「ターナ(ミスト)はエルハーケン周辺に拡散してしまっているのだろう? 連絡が取れない以上、続行するも中止して帰投するも彼次第だな。どんな判断を下しても私は咎めはしない」


(一度受けた以上、お兄ちゃんは放り出したりはしない。きっと見殺しにはできないもん)

 リューンの性分からして続行を選ぶだろうことはフィーナには常識レベルだ。


「通信方法を模索します。同時にリアルタイムの映像を見られる静止衛星を探します。少し待っていなさい」

 エルシが元気付けるように言ってくれる。


 静止衛星軌道の監視衛星となると、諜報目的の軍事衛星。かなり高度なブロックが掛けられていてハッキングも容易ではない。


(孤立しても大丈夫だよね?)


 専用機を手に入れてからの兄は敵を寄せつけもしない。今度も無事に帰還するとフィーナは祈っていた。


   ◇      ◇      ◇


(今の狙撃、ビームカノンじゃねえか。警察機がおいそれと持ち出せるもんじゃねえぞ。軍用が居やがるな?)

 パシュランを外縁緑地帯の森の中に降ろしたリューンは、情報とは違う状況に戸惑っている。

(フィーナのナビゲートは絶望的だが、こんな時のためにエルシなら何か仕込んでるはず。どこだ?)

 彼女の抜け目の無さは認めるところである。

(これか? 通信回線。連中のか)

 森の中を歩ませつつ、2D投映コンソールの項目をタップすると交信内容が聞こえてきた。


「無線の状態悪……。これはターナ……が撒……てことだな」

 デジタル回線のためにノイズは混じらない。途切れ途切れの会話が入ってくる。

「それな……剣……てくれて……。仕掛けよ……、親方」

「たし……な。お前ら、じゅん……しろ」


(待て待て、馬鹿野郎。通信阻害されているってことは敵の状況も掴めてねえんだろ。そこで動き出してどうすんだっての!)

 少年はギョッとする。


「おい、聞こえるか、間抜けども! まだ動くんじゃねえぞ! 簡単でいいから合流地点を送れよ!」

 慌てて吠える。

「聞こえ……か? ……のは剣王の……ないか? 合りゅ……ってたけど、ど……」

「……流地……マフィ……の横……。聞こえ……か?」

「聞こえるか、ボケ! しかも地名言ったって俺に分かるわけねえじゃねえか! 簡単な地図データを送れっつってんだよ!」

 戦闘前から疲れてきた。


 何度も要請してようやく事前に入手しておいた街区地図にポイントを落とせた。狙撃を受けると市街地に流れ弾がいく。パシュランを浮かせると、低空飛行でビルの谷間を縫う。

 街は通信阻害を受けて混乱しつつある。そこへ銀色のアームドスキンが低空飛行で横切れば混乱は助長される。騒ぎが起こるのは面白くはないが、それで市民が建物内に退避してくれるのならそれもいい。


「やっとか」

 作業用アームドスキンの一団を確認して、怒りよりも安堵が先に立つ。

「お前らか? 『解き放つ槌』ってのは」

「そうだ。よく来てくれた、剣王」

 この距離なら無線も明瞭。

「少ないぞ。別動隊を作る余裕がどこあるってんだよ。集合させろ」

「いや、我らの戦力はこれで全部だ」


 その倉庫内には戦闘用アームドスキンでは見られないような扁平な上半身の作業用機体が七機並んでいる。下半身も角ばって頑丈そうだ。ただ、洗練された感じは欠片もない。


(おいおい、話が違うじゃねえかよ)


 リューンの抱いた不安感は現実となるのだった。

次回 「さすがはXFi(ゼフィ)の剣王!」

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