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たいして読まれないだろうしタイトルなくてもいいよね  作者: くろのわーる
辺境都市編

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20/37

20本目




 冒険者ギルドを出るとその足で門へと向かう。

 俺の後ろにはしっかりと肉壁が付いてきている。


 門に着くとさっき通ったばかりの俺が戻ってきたからか、怪訝けげんな顔をした門兵が視線を向けてくる。


 俺は気にすることなく、門の所で肉壁に命令する。


「肉壁、今からお前に試練を与える」


 そして、ゆっくりと門の外を指差して、続きを言うのだ。


「最近のお前からはワイルドさを感じない!よって、これより一ヶ月、外で鍛え直してこい!」


「ガウッ!!」


 肉壁と俺はわずかに見つめ合うと頷き、同時に背を向けてそれぞれの目的の為に別れるのであった。


 それを呆然と見つめる門兵達。きっと、彼らには俺達の絆を理解することは出来ないのだろう。


 正直、肉壁にはかなり厳しい戦いになると思う。

 進化したとは言え、森大狼フォレストウルフリーダーはオークが多数生息する大森林において、実力的には底辺に近い。

 しかし、俺も勝算もなく送り出した訳ではない。


 肉壁は村にいた頃、俺の弓の訓練に付き合っていたのだ。


 ・・・そう、あれは父手製の動かないまとにひたすら矢を射ることに飽きてしまった俺はもう少し実践的な訓練がしたくて、肉壁を的にして訓練を行いだしたのだ。

 さすがに通常の矢では殺しかねないので先端が丸い矢を使っていたが肉壁の痛がる様は実に面白かった。

 勿論、稀に通常の矢を混ぜて、緊張感を忘れないように追い込んでやった。


 その効果はすぐに現れて、肉壁の回避技術は見る見る向上していった。


 これは虐待ではない。今後のこともちゃんと見据えていた訓練であり、俺自身、涙ながらに心を鬼にして行った苛酷な訓練だったのだ。


 俺はふと振り返る。


 そこには強い覚悟を抱き、静かな闘志に溢れる肉壁の背中があった。


「(頑張れよ・・・)」


 肉壁の決意を感じて、俺も前へと進む。これで宿代が少しは浮く。

 従魔も泊まれる宿となると割高なのだ。




 問題がひとつ解決し、次は爺さんの依頼をかたそう。


 爺さんの家は今居る南門から北西の防壁に近い場所にある。


 俺は来た道を戻るように中心部へと大通りを歩く。

 中心部にたどり着き、司令部を通り過ぎると西へ向けて歩いて行く。すると右手側に守衛が守る創庫が目に入ってくる。


 そこで以前より考えていた事を実行してみたくなったので守衛を横目に通り過ぎ、すぐの脇道に入る。


 脇道を道半なかばまで進むと創庫の壁に背をもたれかけて、心の中で「収納」と念じる。


 収納された手応えを感じ、『無限収納インベントリ』を確認する。



・矢の束(100本)



 ビンゴッ!!一発目からお目当ての物が当たるとは運が良い。


 俺の記憶通り、この創庫には兵士達の武器や防具、防衛戦に必要な備品類が保管されている。


 この窃盗げいじゅつテクニックはゲームには当然なかったのだが『無限収納』を使っている時に思いついたのでやってみたら上手くいった。


 というわけでここにル○ンも真っ青な大怪盗が誕生した。

 ちなみにこの窃盗テクニックを使うには『アイテムボックス』ではなくて『無限収納』が必要になってくる。

 なぜなら、『アイテムボックス』は手で触れていないと収納出来ないからだ。だが『無限収納』は自身から2メートル以内であれば、触れていなくても収納が可能なのだ。


 とりあえず、今日は矢を2000本ほど、パクっていこう。

 出来ることなら他の武器防具もかっさらっていきたいところだが規格品の為、足がつくのでやめておく。


 それにしても俺だけの補給先を確保したので今後は安泰だ。


ハッハッハッ!!




 少々、道草をしてしまい時間をロスしたが有意義だったので良しとしよう。


 笑いながら歩いていれば、あら不思議。

 ダン爺さんの家に着いちゃいました。


 俺は常識として、ノックをする。


 ノックの後、すぐに返事が返ってくる。

 扉を開けて、顔を覗かせるダン爺さんにギルドから依頼を受けてきたことを告げると、奥のリビングへと通されて椅子に座らされる。


 この依頼は依頼名の通り、ダン爺さんの話し相手をするのがお仕事だ。

 ただし、とある条件を満たしている場合にのみ、レアスキルを貰うことが出来る。


「さて、今回の話し相手は子供かのぅ」


 実はこの依頼、ひとつだけ難点があるのだ。


 それは非常に爺さんの話が長いのである。しかも、最後にレアスキルが貰えるので忍耐との勝負になってくる。


 なので俺がい摘まんで話をしよう。


 ダン爺さんは若き頃より、この辺境都市で兵士として、そして凄腕の弓士として長年、活躍していたのだ。


 ここからダン爺さんは自慢の武勇伝をアホほど、ぶっこんでくる。

 当然、俺は爺さんの武勇伝など飛ばすけどな。


 そして、退役間近。


 部下を庇い、左目を負傷してしまった爺さんは弓士としての幕を閉じた。


 怪我を理由に少し早めに退役してしまった爺さんは暇を持て余して、ついに現役時代に貰った褒賞や退役金にモノを言わせて、冒険者ギルドに暇潰しの依頼を出すのだ。


 さて、ここで分かった人もいるだろう。

 このダン爺さんから貰えるレアスキルは弓士に有能なスキルになる。


 そして、とある条件とは中級職業の弓士にいており、なおかつ弓術レベルが7以上なければならない。


「ところでお主、見たところ弓をたしなんでおるな。それもなかなかの腕前のようじゃ」


 やっと、終わりが見えてきた。


「ここまでワシの話を真剣に聞いてくれたお礼にひとつプレゼントしようかの」


 ダン爺さんは俺の額に手を当てると念じ始めた。


ピコーンッ!


『スキル:鷹の目が譲渡されました』


「このスキルはきっとお主の役に立つであろう」


 最後に依頼達成のサインを貰う。


 目的のスキルも手に入れたし、ギルドで報告をしたら、今日はもう帰って寝よう。


 俺は重たい足でギルドに向かうのであった。


 ほんと、話が長くて疲れたぜ・・・。






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