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19 健診

 ノートの書き起こしをしようと撮影した続きのページを見たら乳がんの可能性があるってわかった時の心境、治療に向けての決心、治療が始まってからの辛かった事が書いてありました。


 いやぁ~そこなのかぁ…


 直前のページで父の名前が出てきたから結婚するまでのいきさつが書いてあるのかと期待していたからちょっとがっかりしたのは確か


 現在の事は後回しにして書き起こそうかと思ったのですが、このページを書いているのは抗がん剤治療が始まり副作用が強くなっただろう時期で、その頃の母の状態は見ていられないくらいに嘔吐して、食欲がなくどんどんやつれていって、脱毛が始まり髪を引っ張ればごっそりと抜けていった時なので、ここを飛ばしてしまうはがん治療をしている皆さんに対してなんだか失礼な事をしているような気がするので、ノートに書かれている順番通りに書き起こして行きます。


 ---

「精密検査を受けられるのをお勧めします。悪性の可能性を否定するために。」


 会社の定期健康診断でマンモグラフィーの画像を見ながら先生が説明してくれた言葉の締めくくりでした。


 画像を見ながら、白く丸っぽく映っているものと、細かな白い点々があるのを指しながら

「白いのは石灰化というもので年齢を重ねるとこういった石灰化は良く見られて大きめの丸いものはあまり心配するものではないんですね。」

「石灰化?ですか、そうなんですね。」

「前回の検査はエコーをされているのですが、腫瘍の疑いだったんですね。」

「そうでした。要精密検査の判定ではなくて1年後ってなっていました。」

「そうですね、エコーでは細かい石灰化はあまり映らなくて、マンモグラフィーだと良く映るんです。あれ?前回はまだ半年くらい前だったんですね。」

「はい。前回は予約がなかなか取れなくて、年度末になっちゃってたんです。今回は予約がすぐ取れたので間が短いけどいっか!って思って来ました。」

「そうでしたか、前回から半年ほどですか…。」

「マンモグラフィーとエコーを交互に受けてきましたので、今回はマンモグラフィーを受けました。」

「そうですかぁ…。こちらに細かい白い点々があるのはわかりますか?」

「えーと、この点々ですね。」

「点々の集まりと、線状になった部分があるのはわかりますか?」

「はい。ここに集まってて、そこから点線?みたいになってますね。」

「この石灰化ですが、腫瘍が壊れた時にもおこるんです。」

「腫瘍が壊れた?ですか?」

「乳腺の中で腫瘍が増えていって乳腺は細くて狭いので大きくなりきれずに壊れて石灰化した可能性があるのです。」

「腫瘍が壊れた…。」

「精密検査を受けられるのをお勧めします。悪性の可能性を否定するために。」


 すっごく言葉を選びながら言われているのが感じ取れた。


「悪性じゃないってはっきりわかればいいんですもんね。」

「そうですね。診断結果が届きましたら、紹介状等の相談はいつでもご連絡下さい。」

「はい、すぐに連絡します。ありがとうございました。」


 我が家に帰ってすぐに、去年のといいながら半年ちょい前の健康診断の結果を探し出した。そこには


【 右乳房 腫瘍 疑い 】


 その時に乳がんのチェックの仕方をネットで見ながら触ってみたのだけど、あれ?と感じるものは見つけられなかったから、まあ疑い?だから乳腺症の名残りなんじゃない?くらいに思っていた。


 そこからたった半年程度で要精密検査に変わっちゃったんだ…。


 足元からじわじわと震えと共に崩れるような感覚が胸のあたりに上がってきた。

 涙が勝手に目ににじみ出てきてあふれて流れてきてしまう。

 恐怖というものがそんなに簡単に表現できるものではないのだけれど、その二文字でしか表現できないものに全身をすっぽりと覆いかぶさられてしまいました。


 著名人で乳がんを克服された方、治療をされながらも残念な結果だった方、ニュース画面や雑誌の書面が次々と頭の中に浮かんでは消えて流れて行った。


 これって走馬灯?

 走馬灯って自分が死ぬ直前に見るものじゃないの?やだやだ死ぬなんて縁起でもないじゃん!って冷静に考える自分もいるのに、克服された方の情報を自分の記憶の中からかき集めようとしてプチパニックを起こしている自分もいる。


 家族にどう伝えればいい?


「疑い」だからちゃんと大丈夫と太鼓判をもらいに精密検査に行ってくる。


 これなら余計な心配掛けなくていいような気がする。

 でも、結果が良くなかったら自分が落ち込んで心配をさらに掛けることになるんじゃない?


 最悪な結果があるかもしれないという可能性も含めて覚悟しておいてほしい。


 これならがんのステージによって克服できるって分かったら、小さな光でも明るい方向があるから良かった!に出来る。


 現在の日本の医学は、がんは治せる病気になってきているのだから、悲観している場合じゃないわ!

 まず、乳がんというものをちゃんと知らなければだよね。


「病は気から」


 気からとは言うものの、気でがんは消えない。

 でも、気持ちからやられていたら、がん治療という険しい難所を克服し、制覇できないじゃん!


 よぉし!ネットでマンモグラフィー画像の診断結果からがんの可能性まで調べてやるわ!

 そして、もし悪性でがん治療をしないといけないのなら、がん治療がいかなるものか理解してやるわよ!

 勝ち負けとかじゃないけど、逃げ腰にだけはなりたくないから。


 まず、マンモグラフィーの石灰化の画像で悪性の可能性の高低を分かりやすく書かれた表を掲載しているページを見つけた。


 散在性 領域性 集ぞく性 線状 区域性

 悪性の可能性

 低  ← ← ←  → → →  高


 点が集まってるものって集ぞく性だよね、それに線状もあった。

 悪性の可能性が高いんじゃん。

 そりゃ~要精密検査になるよね。


 これは、がん治療についてよーーーーーく調べて

 心構えをちゃんとしなきゃ気持ちから折れてしまいそうね…。


 涙が流れてきてしまう。

 でも弱音なんかはいていられないわ。

 気から立て直していかないと!


 今はネットでこんなにも分かりやすく説明してくれているサイトがある。

 正しい情報をかき集められる。

 自分に合った治療を選べられるくらいに治療方法を並べられる。


 私の映像記憶能力を活かすことができる。

 嫌な事も忘れられないからと自分では忌み嫌った能力なのにね

 今はこの能力があって良かったと感謝しよう。


 さあ!ここからがん克服と制覇への道の計画、設計を始めるわ!


 私の、心のインフラ整備能力を磨いてその努力の結果を実証しちゃるわい!

 ---


 母、強すぎる…。


 私たち家族へ明るく

「今日の健康診断のマンモグラフィーで悪性の可能性高し!って言われたの。でも娘のあなたたちに乳がんは治るもので怖い物ではないとわからせちゃるから心配しないで!」

 そう報告してくれたのを思い出した。


 私たちに言う前に、調べたり考えたりしていたんだ。

 とても明るく言われたから

「またまた~大袈裟に言って、労わってもらおうとしてるでしょ。」

「そう!子供が大人になったら、両親は労わるものよぉ~」

 なんて会話をしたのも思い出した。


 抗がん剤治療でヘロヘロのふらふらな状態でこれを書いていたんだと想像したら

 私も涙が流れてきた…。


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