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4 エピローグ


 空高く昇っていく陽の光の下で、ジンに抱きかかえられながら山を下る。


「わるい、ユリア……次のときは優しくするから」


 腰にくる低音のかすれ声でジンは私の耳元に囁いた。

 私はジンに姫抱きで運ばれながら両手で顔を覆う。



 ジンの一挙一動に恐怖していたあのころの自分よ帰ってこい!!


 

 だめだ、もうすっかり絆されている!

 どうしてこうなった!!


 

 


 山の山頂からふもとにかけてジンに運ばれながら真上にのぼっていく太陽をうらめしげに見上げた。


「はあ……ユリア、愛している」


 ジンは悩ましげにため息をつきながら山を下っていく。


「これは本当に現実だろうか。夢なんじゃないか」


 ジンは顔を伏せ私の髪に顔を埋めた。


「ずっとユリアが欲しかった……」


 あんまり恥ずかしいセリフを垂れ流さないでいただきたい。

 ジンの気持ちは痛いほどわかるけれども!!


「そうだ、指輪がまだだったな。狩りにいくか」


 ぼそり、ジンが顔をあげて呟いた。


(もう順番めちゃくちゃだわ)


 顔を覆って天を仰いだ。


 


…………




 ダンッ




 ジンの槍が核を貫きゴールドダイヤモンドの破片が砕け散る。数メートルはあろうかという巨大な宝石型の魔物が一瞬にして仕留められた。


 腰を折ってその破片の中でも大き目のものを拾い上げたジンは、右目の上で光に透かせながらゴールドダイヤモンドの原石の透明度と不純物の有無を確かめた。


「ん。これなんかどうだ? ユリア」


 親指の爪ほどもあるゴールドダイヤモンドは純度が高く、まだカットもされていないというのに魅惑的な光をたたえていた。


 ジンは私の左手を優しくとって大きなゴールドダイヤの原石を薬指に当てた。


「似合うじゃないか」


 若干はにかんだ笑顔に不覚にも胸がきゅんとする。


 





カラン



 宝石商の豪奢なガラスの扉をあけて煌びやかな店内に足を踏み込む。目もくらむようなシャンデリアの照明と、ガラスケースの中で燦然と輝く大粒の宝石に目がちかちかした。



 深く腰を折った物腰の柔らかな初老の主人は仕立ての良い黒のスーツを着こなし、白い手袋をはめた手でジンから大粒のゴールドダイヤモンドをうやうやしく受け取ってほうとため息をついた。


「これは……素晴らしい。ぜひ買い取らせていただきたいですね」


 店主の言葉にジンは苦虫をつぶしたような顔になる。


「ちがう。それで指輪を作るからこれは依頼だ。買取ではない」


「これで指輪を? ご冗談でしょう。ティアラの主役になるレベルの代物ですよ」


 店主は信じられないとばかりに首をふった。


「ティアラには、しない」


 ジンはこめかみに青筋をたてた。おそらくベンジャミン王太子のことでも考えているのだろう。


「金はいくらでも出す。指輪にするんだ」


 分厚いガラスケースのカウンター越しにジンの圧がかかる。

 店主は震える手でゴールドダイヤモンドを受け取った。


「ええ、もちろん。喜んで」


 ふん、といった様子でジンはカウンターの上に金貨を積み上げた。

 一体いくら出すつもりなのか高々とタワーのように積みあがる。


「足りるか?」


 ジンの鋭い金の瞳に、宝石商の店主はぶんぶんと首を縦に振った。



…………



 出来上がった指輪は金のリングに三カラットのゴールドダイヤモンドがついたものだ。

 まるで一等星のようにまぶしく光輝いていた。



 イシュラルドの荘厳な大聖堂のステンドガラス越しに光が差す。

 神父が口上を述べる。こっそりと二人で行う式はこじんまりとした森の中だ。



 私は純白のレースで覆われて大胆なカットをされたウエディングドレスを身にまとっていた。ジンの真っ白なスーツの胸元には純白のユリが一輪さしてある。



 ジンは満足そうに目を細め、指輪を私の薬指にはめる。


「これでよし」


 私の薬指に一番星が瞬いた。






 ぎゅう!


 突然の前抱きにももう驚いたりはしない。

 そろそろくるだろうと思っていた。


「ユリア、俺は……しあわせだよ」


 ジンの言葉に熱いものがこみ上げる。

 胸が苦しい。


 私は返事のかわりにジンの腰元に腕を回して力いっぱい抱きしめたのだ。


 

最後までお読みいただきありがとうございました!



補足:初対面時ジンの胸が苦しい(せつなさ)→最終話ユリアの胸が苦しい(よろこび)逆転現象!


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