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戦闘は一瞬?

小屋に戻るとリウスさんは翌日の食事の準備をしていた。

リウスさんに今お風呂であった出来事を話す。


「フェンリンですか…私も実際に見たことはないわ。でも白い狼と言うのは神の使いだと言われていますから可能性としては否定できないですよ。」

そういうと少し考えこんでいるようだった。


「そうなんですね。とりあえずフル装備で来いと言うことなので、準備をしてきます。」

そう言って準備をしにいくが、よく考えたらば装備する装備自体がほとんどない。

王都で装備していた装備は回収されたまま忘れていた。


「あぁ〜装備が…。」


今手元にある武器をみるが特別強い武器はない。

防具も簡単な皮の装備だけだ。

まぁどのみち本物のフェンリンだったらばきっと攻撃を受けただけで普通の防具は意味をなさないだろう。


ただ、こちらがやることを悟られるわけにはいかない。

できるだけ本気度を見せておくのが大事なのだ。


「これでもし戦闘になったらば一発で死ねる装備だよな。」


見るからに貧相な防具をつけていく。

ないよりはいくらかマシだ。

もちろん簡単に死ぬつもりはないし、相手が神獣だろうと魔物である以上は戦い方はある。


貧相な防具をつけ準備ができたころミルクが戻ってくる。

「マイルなんだその初期の頃の拾った防具は。フェンリン舐めてると本気で死ぬぞ。」


「いや、武器や防具類は全部回収されてたの忘れてて。今俺が使えるの入ってなかったんだよ。」


「あっ返すの忘れてたが、お前の装備とリウスさんの没収された装備、それに王都の兵士使っていた装備を適当に回収してきたからこれを使ってくれ。」


そういうとミルクは口から武器や防具を吐き出す。

兵士の武器は本当に兵士が使っている国の紋章入りの奴だが正直下っ端のものらしくそれほどいい武器ではない。

「ミルクありがとう。ってお前マジックボックス使えたのか?」


あまりに自然に吐き出すので忘れていたがそんなそぶりはまったく見せていなかった。

「あぁこれか?王都で最初に繋がった時覚えているか?あの時から少しずつ力が戻ってきている。最初に樽1個分くらいだったが、今は幌馬車くらいの大きさまではいれられると思う。これからさらに能力が戻れば入る容量も増えるし使える魔法も増えていくと思うぞ。


そんなことよりさっさと防具を変えろ。準備ができたらば行くぞ。覚悟を決めて行けよ。俺とコタロウは手出ししないが相手は伝説の神獣だからな。ワンダーウルフの上位版ぐらいに考えておけばいい。」


ワンダーウルフというのは魔の森と呼ばれた師匠が大好きな堅木というトレントの中でも特に堅い木が植えられている森があった。

その森の中に住んでいたのがワンダーウルフだった。

ワンダーウルフは体型が小柄でスピードで相手をほんろうするタイプだった。


何匹かを従魔にし銀色の翼でのサポートとして使っていたが、攻撃力が低いとあっさり従魔の解除をさせられた。今頃元気でやっていてくれればいいが。

ワンダーウルフの上位ということはかなりスピードと攻撃力はあるということだろう。


先ほどのミルクとのじゃれあいでもかなりの威圧感とスピードがあった。


「ミルクありがとう。頑張るよ。やっぱりフル装備ってことはフェンリンと戦うってことだよね?」


「あっ?もちろんだろ。コタロウの孫のサクラとお前の勝負だよ。力を見せるないと今後の関係も変わってくるからな。最悪ここに居られなくなるし。」


「いや、じゃあ次の街へ行こうか。」

別に無理して力を見せなくてもいいだろう。

怪我も治ったしわざわざ危険をおかす必要はない。


『ドン!』

ミルクは俺の腹に一撃を放つ。

冗談なのか本気なのかわからない痛さだ。


「ミルク…冗談の痛さじゃない。」


「あっ悪い。加減がまだ…まぁとにかく力を見せればいいだけだから気軽に躾てやってくれ。」


「これってどうしてもやらなくちゃダメか?」


「そうだな。やらなくてもいいが記憶への手がかりは一生手に入らないぞ。コタロウはここの番人であり、ここの森の支配者であり、マイルの記憶の番人でもあるからな。逃げて一度失った信用はもう戻らないからな。」


そこまで言われるとやるしかない。

それに俺が記憶を戻すことでミルクが強くなるのならば、リリアを探すのにも役立つし。


「わかった。それじゃあ行くか。」

そう言って小屋を出ようとすると、


「マイルさん私も行ってもよろしいですか?」

リウスが声をかけてきた。

目が少し心配してウルウルしている。

可愛いな。


「えっと…はい。大丈夫ですけど私の恥ずかしい姿を見せることになってしまうかも知れませんが。」


「大丈夫ですよ。私はマイルさんのどんな姿も見ておきたいので。」

少し寂しそうな笑顔を浮かべながら俺の目をまっすぐみる。


まっまぶしすぎる。

俺はすぐに目をそらしてしまった。


「リウスさんに応援されたらば負けるわけにはいきませんね。でも、まともな試合にならないかも知れないですががっかりしないでくださいね。」


「がっかりなんてしませんよ。私しっかり応援しますね。」


そして俺達はミルクの案内で少し開けた山の上の平野にきた。

向こうにはコタロウとサクラ、それ以外にも数十匹の群れがいた。


コタロウが1歩前にでる。

「マイルさんいきなり呼び出して悪かったな。風呂上がりで悪いんだが、ここでみんなにあなたの力を見せてもらいたい。非常に簡単なことだ。


ここにいるサクラは孫の中でも一番能力がある。こいつをお前の力で服従させるか倒すことで力を示して欲しい。ドラクル戦闘中の助言は無しだからな。」


あっなんて言うかこういう人たちがいた気がする。

確か師匠は自分の事を棚にあげて脳筋とか戦闘狂とかって言っていた。

はぁこういう人たちって自分たちルールがあるから大変だってよく言ってたけな。


コタロウから声をかけられたミルクは、

「ふん。別にマイルに今更助言など必要ない。勝負は一瞬でつく。むしろそこのいぬっころが負けた時の言い訳をしないようによく言い聞かせておくんだな。」

と相変わらずサクラを挑発していた。


「族長、さっきは本気をだせなかっただけで、今度は油断はしない。ひょろいオッサンだろうと全力で倒してやるよ。」


コタロウはサクラに

「油断をするなよサクラ。殺す気で行け。むしろ殺してもいい。力がないものはここを使う資格はないからな。手こずるなよ。一瞬で決めろ。」

とかなり過激なことを言っている。

殺すとかそこまでする必要はないだろ。


「族長言われなくてもわかっていますよ。」


そう言うと、お互いに距離を保ちにらめあう。

「ミルクさんマイルさんは大丈夫でしょうか?」

リウスが心配そうに抱っこしたミルクに聞く。


「大丈夫ですよ。マイルは俺と一緒に旅をしてたんですから。」

ミルクはまったく勝つことを疑っていないように俺の方をまっすぐ見ている。

俺も期待に応えなければなるまい。


「それでは始め!」

コタロウの声と同時に緊張感が一気に高まる。

勝負は一瞬。


サクラが攻撃態勢に入ろうとした瞬間、サクラの足元に魔法陣が浮かび上がる。

魔法陣からは何本もの鎖が飛び出しサクラを拘束し始める。


『ガシャン。ガシャン。ガシャン…。』

魔法陣から鎖が飛び出した鎖はサクラを拘束し身動きがとれない。


サクラは暴れながらなんとか鎖を切ろうとしているが暴れれば暴れるほど鎖が身体に巻き付き、そして全身を覆った次の瞬間。1本の首輪になりサクラの首に巻き付く。


「動くなサクラ!」

俺がそういうとサクラは身動き一つできない。


「キサマ俺に何をした!!」

話しはできるが1歩もうごけない。

かなり焦って言うようだ。

魔法を使おうとしているようだが発動もしない。


「何をって強制的に魔物を服従させる魔法をかけただけだよ。コタロウさんも言ってたでしょ。服従させるか倒すことで力を示せって。」


「こんな…こんな姑息な手で恥ずかしくないのか。」

サクラは納得がいかないという顔でコタロウを見ている。


「あれれ?勝負に姑息も何もないようなコタロウ?我はわざわざヒントをやったんだぞ。勝負は一瞬だって。」

ミルクは相変わらずサクラを小馬鹿にしたように挑発を繰り返していた。


「この鎖を外せ!もう一度だ!もう一度!勝負をさせろ!」

ちょっと可哀想な気もするが勝負は勝負だ。


コタロウが

「勝者マイル!」

そう名をあげるとぐったりとした感じで頭をさげるサクラ。

「あぁこんな人間にまで負けるとは情けない。」

そう言っているとそこに追い打ちをかけるようにコタロウが、


「マイルさん、そのままサクラを従魔にしてやってくれ。その子は群れでは強くはなった。でも世間を知らなさすぎる。私も若い時に旅にでてさらに強くなれた。だから頼む。」


それを聞いたサクラは絶望したような顔でいる。

「長老!何を言うんですか!俺はこんなのにはやられていない。確かに勝負には負けたが従魔だなんて。」


「わかりました。それじゃあ。これに耐えられたらば従魔にはしないであげますよ。」

俺がそういうと、

「わかった。なんでも受け入れよう。だがお前の従魔にだけはならない。」

きりっとした顔で完全否定をしてきた。


「頑張ってくださいね。それじゃあ仰向けに転がって。」

俺はサクラに命じ仰向けにした状態で腹をなでる。思った以上にモフモフしている。

これはいい。

非常にいい。

冬の寒い日に一緒に寝たらば離れられなくなりそうだ。


「やめろ!これ以上はずかしめるな!」

サクラは何か言っているようだが聞こえない。


「リウスさんものすごく手触りいいですよ。ミルクも。」


「そうなんですね。モフモフいいですね。」


「仕方がないな。マイルがそこまで言うならば俺もモフモフしてやるか。」

二人は完全にモフモフ狩人の目をしている。


「辞めてくれ、一族のまでそんなあられもない姿を…ワオーン。」

それからサクラは3人からモフモフされ続けた。

しばらくすると

「もうお嫁にいけない。」

と言っていたサクラの姿があった。

あっ女の子だったんだ。

でもサクラもモフモフされる気持ちよさに目覚めたのか従魔になるなってくれた。

とりあえず卑怯な方法かも知れないが勝てて良かった。

サクラ「私をモフモフしたければブックマーク登録と評価をするのよ。」

ミルク「モフモフ狩人の力を!」

そして二人はモフモフの絆が芽生えるのだった。

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