温泉に入りにいったらばここの警備員さんがやってきました。
お風呂は源泉かけながしの岩風呂だった。
自然の中にポンと整備されたお風呂があらわれる。
ここのお風呂も毎日誰かが掃除しているかのように枯れ葉すら落ちていない。
そして作りがすごい。
岩は平らに切りそろえられ、溢れた水は1カ所に集まり流れていく。
露天風呂の天井には木で屋根だけが作られ雨の日でも入れるように考慮されていた。
「すごすぎるな。いったい何人の職人が…」
「だろ。ここを作ったのは天才なのだ。それにすごく優しい人だった。ただ、ここを作ったのは人間一人だぞ。」
ミルクはすごくうれしそうに言える範囲で昔話をしてくれた。
ここを作ってくれたこと、仲間がいっぱいいたこと。
どれほど時間がたっただろうか。
身体もぽかぽかになりそろそろでようかという時、
『チャポーン』
俺とミルクではない第三の気配が急に俺の後ろにあらわれた。
これは…もしかしてリウスさんの…。
先ほどのやりとりを思い出す。
「一緒に入りますか?」
師匠。俺今日大人の階段を登るかも知れません。
俺は振り向かずに声をかけようとしたところ、
「おいっ人間。お前ここにどうやって入った。ここは選ばれた人間以外は入れないようになっているはずだ。」
えっ?俺は急いで振り返る。
そこには牛くらいの大きさの白い狼と象くらいの狼が2匹いた。
牛くらいの大きさの狼がこっちを少し威嚇しながら見ている。
「あっいや、ここに身体の療養に。」
「ここは私有地だ。今すぐでていけ。」
白狼は俺が魔物使いだからとかではなく普通に人の言葉を話している。
「うるさいな。お風呂くらいゆっくり入らせなさいよ。いぬっころが調子にのってるんじゃないよ。」
ぷかぷかと浮いていたミルクは白狼を挑発する。どうしたミルク。
そんな凶暴な暴言を吐いて。
お父さんそんな子に育てた覚えはないぞ。
「この野郎、スライム風情が我らフェンリン一族をいぬっころ呼ばわりするとは!後悔すらできな身体にしてやる!GARUUU」
フェンリンだって!?
昔絵本の中でフェンリンというものすごく強い神獣の話しがあった。
でも実際に今まで見たことはない。というか絵本以外で噂すら聞くこともなかった。
本当に目の前にいるのが神獣なのだろうか。
ただ、ものすごくキレイな白い色の毛が月夜の中で幻想的に浮かび上がっている。
ミルクとにらみ合いが続いている中で、
「きれいだな。」
それが俺の本音だった。
「スライムがこの世に生まれてきたことを後悔させてやる。」
そう言うとフェンリンはいきなり口から特大の火炎球を放ってくる。
ミルクはそれを大きな口をあけて吸収してしまった。
「いぬっころにしてはいい攻撃じゃないか。でもまだまだ甘いな。お前の火球返してやるよ。」
そう言うとミルクは先ほどフェンリンが放った球を1.5倍にして吐きだす。
こんな技を今まで使ったことはなかったはずだが力の解放というのがきっかけなのだろうか。
今までよりもあきらかない強くなっている。
フェンリンは火球を避け、
今度は肉弾戦を挑んできた。
必死に噛みつこうとしたり、爪の斬撃で切り裂こうとしたりと攻撃をしている。
だが、ミルクは完全におちょくっている。
「まだまだ若いな。そんなんでフェンリンと名乗るとは片腹痛い。負けを認めるならば服従ポーズは勘弁してやるが、まだやるならば完全に服従するまでやるぞ。」
「グルルル。スライムごときに負けを認めるなどありえない。お前に俺の本気をみせてやる。」
そう言うとフェンリンは口に多大な魔力をためはじめる。
火球などのレベルではない。
あれは俺でもわかる。確実に地形が変化するレベルのものだ。
「ミルクあれはやばい!!」
「あぁやだやだ。ガキはお遊びも本気もわからないんだから。躾がなってないぞコタロウ。」
そう言うと魔法陣を空中に作成し特大魔法を今にも放とうとしているフェンリンの顎を下から体当たりはじきあげ魔法を強制的にキャンセルさせる。
行き場を失った魔力がフェンリンの身体を切り裂き空中へと霧散した。
蹴り上げられたフェンリンは服従ポーズのようになりながら意識をなくしピクピクしている。
コタロウと呼ばれた大きなフェンリンは、
「ドラクルよ。あまりうちの孫をいじめないでやってくれ。」
そう言うと、戦っていたフェンリンに回復魔法をかけはじめた。
「ずいぶん孫には甘いんじゃないか。我とやりあった時は山二つ分は更地にしてたじゃねぇか。我はあれで大龍の育ててた酒材の木を消し炭にしたせいで10年間もあいつのために酒を人間界から集めるはめになったんだからな。」
「懐かしいな。そんなこともあった。」
フェンリンはにこやかに遠い目をしながら楽しかった頃を思い出すように微笑んでいる。
「しかし、孫に技の使いどころを教えておいた方がいいぞ。ここであのクラスの魔法をつかったらば結界が壊れてここを守っている意味がなくなる。自分で壊したらば意味がないだろ。」
「あぁそれか。こいつは、どちらかというと結界魔法が得意でな。壊しても直すつもりだったんだろ。それよりもこちらの若い人は?どこか懐かしい魔力を感じるがもしかして…。」
「さすがコタロウ。記憶はなくなっているがな。お前の考えている通りだよ。」
「そうか。私が生きているうちに…では余計なことは言えないな。初めまして。コタロウとと言います。ここの管理をしている。よろしく。」
「初めまして。マイルと言います。よろしくお願いします。」
コタロウはどこか遠くを見つめながら、
「あなたが来たらば渡すように頼まれていたものがありますので、お風呂からでたらば少し付き合ってもらっていいですか?あと今現在できるフル装備で来て下さい。場所はドラクルが知ってますので。」
コタロウの言い方はすごく優しいのだが、断ると言うことができない威圧を感じる。
「わかりました。ではちょっと着替えてきますね。ミルクはどうする?」
「俺はコタロウと少し話してから行くから先に戻っててくれ。すぐに追いつく。」
そう言ってコタロウと話し始める。
リウスさんにも話さないといけないし急いで戻ろう。
「いつまで寝ている。サクラ起きろ。」
コタロウは回復の終わりサクラと呼んだフェンリンを足でゆすり起こす。
どうやらミルクの攻撃で完全に気絶し回復されても意識が混濁しているようだ。
遠くなりつつある魔物たちの会話に耳をかたむけつつ小屋に戻りながら考える。
過去の俺はいったい何をしていたんだろう。
というか本当に俺のことなのだろうか。
なんだか未だに騙されているのではないかと思ってしまう自分がいた。
サクラ「評価ボタンとブックマークどっちを押すんだ!?」
コタロウ「オイッサクラ脅かすんじゃないよ。両方やってくれるに決まってるだろ。」
サクラ(狼だけど鬼がいる…)




