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ダンジョン探偵  作者: 桜岡かなた
第三話 悲劇の先輩
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悲劇の先輩ep.4(仮)

翌日の放課後、急いで教室に飛び込んできたみづき。置いていかれないように急いできたんだろう。

置いていくつもりはない。…後が怖いからな。

「先輩!今日も調査っすよね?私もついていくっす!」

「もちろん、俺もついてくぜ、聡」

「ついてくるのは結構だが、前みたいに騒ぐなよ?」

…二人して、『何言ってんの?』みたいな顔をするな。前に長良警部に呆れられたのをもう忘れたのか。

鞄をつかむと、警察へ向かう。

「ところでよ、今日は白川先輩のお兄さんの装備見せてもらいに行くんだよな?」

「ああ。まずは、装備品を見せてもらうことだな。」

装備品を見ることは何とかなるかもしれない。

「『まずは』ってことは、他にも目的があるっすか?」

「できれば、パーティーメンバーから話を聞きたいってところだな。」

ただ、個人情報だ。パーティーメンバーの件は期待しないほうがいいだろう。

装備品からわかることだけでは、真相までたどりつけるとは思えない。

…とはいえ、装備品すら見せてもらえるかわからない。長良警部がいれば、話は早いんだが。

「ところでよ、白川先輩のお兄さんは事故なのか?それとも事件なのか?」

「私も気になるっす!」

「いや、今のところ、何とも言えないな。事件とも、事故ともいえない。そもそも、なんでお兄さんだけが亡くなったのかが分からない。お兄さんだけが単独行動していたならわかるんだが、単独行動する理由もわからないしな。」

一番の謎はそこだ、『なぜ、お兄さんだけ』なのか。ほかの三人が共犯であれば、お兄さんだけが死んだことには説明がつく。三人が口裏を合わせればいい。

だが、それなら説明のつかないことがある。

なぜ、遺体を入口まで連れてきたのか。

ダンジョン内に遺体を置き去りにしても、いくらでも言い訳はできる。殺害したのであれば、遺体が消えてそちらのほうが都合がいいはずだ。

「そういえば、白川先輩のお兄さんって、どれくらいすごいっすか?15階層到達って言われても、ピンとこないっす」

振り返りながら、みづきが聞いてくる。

「あそこのダンジョンの最高到達階層は15階層だ。」

「じゃあ、白川先輩のお兄さんは日本トップレベルなのか?」

関が横から口をはさむ

「そこまでではないな。あそこのダンジョンは、日本国内で見れば、たいしたことないらしいからな。」

「じゃあ、たいしたことないってことっすか?」

「扱いとしては、ここのダンジョンの15階層は、あの『新宿ダンジョン』の3~5階層くらいだといわれてるらしいからな。とはいえ、未探索の階層を探索するというのは、なかなかできることではない。だから、すごいといえばすごいが、日本トップレベルではない。ということだ。」

「ふーん」

そう言うとみづきは、さっさと前を向き歩いて行った。

…興味失くすの早いな

話しているうちに思ったよりも時間がたっていたようだ。

ふと顔をあげると警察署が見えてきた。

「おや、神坂さんに、お友達じゃないですか。どうされました?」

「長良警部、こんにちはっす!事件について聞きたいことがあるっす!」

事件じゃないから、長良警部はそれではわからんだろ…

「…事件ですか?…あぁ、この間起こった死亡事故のことですか。」

長良警部の目つきが鋭くなる。

「…神坂さん、何か新しい情報でもつかんだんですか?」

「いえ、おそらく警察がつかんでいる情報だけだと思います。ただ、亡くなった白川恒一さんの妹さんが、事件ではないかと疑っているようでして…」

「あー、あのお嬢さんですか。警察にも何度も来てましたよ」

「何度もですか?」

「ええ、『もっとちゃんと捜査してください』という苦情を言いに。昨日、一昨日とこなかったのは、納得されたからではなく、神坂さんに再調査を依頼されたからなんですね」

長良警部は少し呆れたような顔をしていた。

やはり、白川先輩は何度も警察に苦情を入れていたらしい。

「ええ。そんな感じです。できれば、恒一さんの遺品を見せていただきたいのですが、可能でしょうか?」

考え込むように目を伏せる

「…まあ、かまわないでしょう。返すものですからね。こちらです。」

長良警部をみづきが追い、関がついていく。

「…ところで、神坂さん。真実が分かったとして、それが妹さんの望む結末でなかった場合どうされますか?」

どういうことだろうか?長良警部は何かつかんでいるのだろうか?

「白川先輩が望む結末でなかったとしても、先輩が真実を望む以上私が突き止めた真実をお伝えします。」

「…そうですか」

こちらを振り返ることなく、答えてきた。

「…長良警部は、何かつかんでいらっしゃるんですか?」

「…私の口からは何とも」

やはり、警察は何か知っている。

会議室に通されると、長良警部は「こちらでお待ちください。今お持ちします。」と言って、部屋を出ていった。

「意外とすんなり見せてもらえたな」

「そうっすね…」

たしかに『返すもの』と長良警部は言っていたが、ここまですんなり見せてくれるだろうか?さっきの言葉といい、何を隠しているのか…

「ところで、先輩は何が気になってるっすか?」

「みづきは、養老さんの言っていたことを覚えているか?」

「…覚えてないっす!」

自信満々に言うことではないんだが

「聡、荷物が一つに偏っていたってやつか?」

「ああ。その偏った荷物がだれのだったのかを特定することが、この件の真相を突き止める近道かと思ってな。だから、まずはその大きいリュックが白川先輩のお兄さんのものだったか確かめたい。」

それが個人につながる動機になる可能性もある。

「それに、それ以外の痕跡が見つかるかもしれないしな」

できれば、遺留品から事故か事件かの判断ができるのが最良なんだが…

コンコンコン…カチャ

長良警部とその部下の刑事と思われる男性が複数の段ボールを部屋に運び込む。

「あれ?もう一人のえっと…川島刑事でしたっけ?はいないんですか?」

「川島は、現在他の仕事をしておりまして。」

たしかに、関の言う通り、男性は川島刑事ではなかった。

「一応、お伝えしておきますが、こちらは被害者の物ですので、破損等をしないようにお願いいたします」

「ええ。心得ております。」

早速、一つ目の段ボールを開けると、すでにどす黒く変色しているが、血がべっとりと着いた皮鎧だ。養老さんの言っていた通り、左肩から右わき腹にかけて切り裂かれている。

「長良警部、五階層に出てくるモンスターってどんなモンスターなんですか?」

「たしか、ゴブリン系だと聞いています。」

ゴブリン系であれば、剣や弓矢など道具を使って攻撃をしてくると聞く。

しかし、15階層まで潜れる探索者が真正面から斬られるだろうか?

不意打ちならわかる。だが、真正面から斬られるだろうか?

だとしたら、毒や薬物などで戦闘ができない状態だった?

「長良警部、白川恒一さんの血液検査などはしましたか?」

紙を取り出しながら長良警部が答える

「ええ。前回のこともありますからね。念入りに調べました。その結果、特に薬物や毒物は検出されませんでした。」

「ありがとうございます」

であるならば、なぜ、真正面から攻撃されたんだ?

…もしかして、装備をしていなかった?ダンジョン内で?

…例えば、剣が破損していた?確認する必要がありそうだ。

段ボールの中に剣の入った袋を見つけた。

「長良警部、この剣を鞘から抜きたいのですが、袋から出してもよろしいでしょうか?」

「でしたら、こちらをお使いください」

長良警部から手袋を渡される。

「一応、まだ証拠品ですから、指紋などはつかないようにお願いします」

「ありがとうございます」

当然といえば当然か。

手袋をはめて、袋から取り出し鞘から抜く。

…特に目立った破損箇所はない。

では、なぜだ?なぜ、攻撃を受けたんだ?

「…おい、聡!これ見ろよ」

「なんだ関」

関が段ボールごと持ってくる。

…大量の石、いや、魔石だ。

「長良警部、ここにあるのは、白川恒一さんの持ち物だけですか?」

「ええ。被害者の所有していた物だけです。」

4人チームで約3日潜って一人当たりこれだけの量?

9階層はそこまで効率がいい場所なのか?

「このリュックにすべて入っていたんですか?」

「ええ。すべてそのリュックに入っていました。」

この量の魔石をリュックにいれたら、他の必需品が入らないのではないか?

「この魔石を袋から取り出して、リュックに詰めてもよろしいですか?」

「すみません。それは勘弁していただけますか?その代わりといってはなんですが、こちらが、我々がリュックを開けた時の写真です」

…魔石しか写っていない?

次の写真も、その次の写真も…

最後の一枚まで魔石しか写っていない。

「このリュックに、他の物は入っていなかったんですか?」

「…ええ。そのリュックには、魔石しか入っておりませんでした。」

「…じゃあ、このランタンとか、ロープとかはどこに入ってたっすか?」

「そちらは、清水さんのリュックに入っていました。被害者の持ち物ということで、こちらの段ボールに一緒になっております」

自分の持ち物を他人に預けて自分は魔石だけを運んでいた?

なぜ?

「他のパーティーメンバーの方の荷物は保管してありますか?」

「ええ。こちらです。」

長良警部と部下の刑事が机の上に段ボールを置いていく。

…お兄さんの荷物に比べて段ボールの数がやけに少ないな。

「それだけですか?」

「はい。ここにあるのみです。」

お兄さんの荷物が魔石だけ。そして、他のメンバーの荷物の少なさ。

…もしかして

「お…おい、聡!急に他のメンバーの荷物をあさってどうしたんだよ」

…やはり、メンバーの持ち物の中には入っていない。

顔をあげると、長良警部が神妙な顔をしていた。

「…おそらく、神坂さんが今推察されていることは、警察がたどり着いた真実と同じものだと思います。後は…神坂さんにお任せいたします。」

「わかりました。」

おそらく、警察はすべてを知ったうえで隠しているのだろう。

そして、それを公表することはできないらしい。

「ちょっと待つっすよ!何が分かったっすか?」

「明日話すよ」

「ちょっと待つっすよー!」

背中にみづきの声を浴びながら警察署を後にした。


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