つよいのです
ノィユの隣で発言の許可をもらった母が、まっすぐザイア陛下を見あげる。
「ノィユとともに借金返済に向けて全力で邁進します! ヴィルさまにも、ヴァデルザ家にもネァルガ家にもご迷惑をおかけしないことを、ここにバチルタ家当主として、ノチェ・バチルタの名に懸けてご誓約いたします!」
胸に手を当てひざを折る母に続いて、父も頭をさげる。
「がんばります!」
シンプルイズベストな父に、陛下と王配殿下が笑う。
「変わらないなあ」
「僕の大すきなユィクのままだ。伴侶を持って、子どもができたら変わるのかなって思ってたけど、うれしい」
ふうわり頬を染めて微笑むアォナ殿下が、めちゃくちゃ可愛い。
「アォナさま、きれいになった」
まぶしそうに、父が目を細める。
「いやいやいや、伴侶の目の前で浮気とかおかしいから!」
ザイアの叫びにうなずいた母の剣呑な視線が、父を刺した。
「えへへへへ。やきもち、やいてくれた?」
にこにこして、めちゃくちゃうれしそうに母の腰を抱く父が、強すぎる。
「あ、あの、陛下の御前だから!」
ノィユの突っ込みに
「は! も、申しわけございません!」
あわてて低頭する両親に、ロダが肩をふるわせて笑ってる。
「しかしヴィルと精霊の瞳のノィユが結ばれるか。我が国の顔面最強伴侶だな。子どもが楽しみだ!」
にこにこしてくれるザイアに、ふんと鼻を鳴らしたアォナが突っ込む。
「15年後だよ、陛下」
「い、一刻も早く子どもができるようにがんばります……!」
想像するだけで燃える頬で拳を握ったら
「犯罪だから!」
「やめて! お兄さまを犯罪者にしないで!」
トートとエヴィに全力で止められた。
耳まで真っ赤になったヴィルが、固まってる。かわいい。
「あ、あの、あの、認可して、くださいますか……?」
そうっと聞いたノィユに、ザイアが微笑む。
「勿論。ヴィルが伴侶を持ってくれるなら、アォナの浮気の可能性がひとつ減るからな。
全く趣味に合わない縁談攻撃を悪かったよ、ヴィル。狭量な男のやきもちと思って、許してほしい」
微笑みながら、目は全然笑っていないザイアが、ヴィルに手を差しだした。
握り返すヴィルに、ザイアの笑みが深くなる。
「伴侶があるほうが燃えあがるとか、そういうのはなしで頼むよ」
地を這う低い声に、ヴィルがちいさく笑った。
「平気。ノィユに、夢中。陛下と、一緒」
「──っ」
耳まで真っ赤になったザイアが、ばっとヴィルの手を離す。
「………………え?」
耳まで真っ赤になったアォナが、ザイアを横目で見た。
「──っ!」
赤くなった顔を片手で覆ったザイアは、長い水の髪を揺らして顔をあげる。
「しゃ、借金で迷惑をかけぬとの誓約と、両人の思いを確認した。
我、ザイア・トゥナ・ネメドの名を以て、ネメド王国国王として、この伴侶契約を認可する!」
叫んだザイアが、そっとアォナを盗み見る。
「よいな、アォナ」
赤く染まったままの頬でザイアを見て、ヴィルを切なげに見つめたアォナは、こくりと小さくうなずいた。
「よいな、エヴィ」
ぎゅ、と唇を噛んだエヴィは、ノィユのちっちゃな手とヴィルのおっきな手が繋がっているのを見つめて、うつむいた。




