誓うのです
「まるで陛下を選んだ僕が、ゲテモノ喰いみたいじゃないか。やめてくれるかな」
ふんと鼻を鳴らしながら、密談の部屋を開けたのは、あざやかな青い髪とおそろいの青い瞳が愛らしい男の子だ。
華奢な手足と大きな瞳はまるで少年みたいなのに、陛下の隣に堂々と並び立つさまは、とても堂に入っている。
あわてて頭を下げるノィユと両親と皆を見渡した少年は微笑んだ。
「おもてをあげよ」
愛らしさと威厳のあふれる声に、ノィユはそうっと顔をあげる。
「……ふぅうぅん。きみがヴィルさまの伴侶ねぇえ」
殺人光線が刺さった!
……王配殿下なのに、ヴィルに『さま』がついてるよ。
こわい予感しかしない。
「名乗れ」
睥睨にふるえたノィユは、唇を開く。
「お初にお目にかかります、王配殿下。ノィユ・バチルタにございます」
胸に手をあて、深くひざを折る。
最敬礼だ。
「……月の精霊の母、陽の精霊の父、精霊の目を持つ3歳児か。
ヴィルさまは、顔面最強な、ちっちゃい男の子が大すきなんですね……!」
泣いてる。
「違う!」
ヴィルの反論が、いつになく強い!
「ノィユだから、伴侶に」
答えたヴィルが、ぎゅっとノィユの手を握ってくれる。
火照る頬で握りかえしたら、もしゃもしゃの雪の髪の向こうでほんのり微笑んでくれた。
「うわぁああん!」
王配殿下が号泣してる。
「はいはい、アォナ、落ち着いて。いちおうきみの伴侶は俺なんだからね。堂々と目の前で他の男を口説かないように」
ぽんぽん陛下にお背なを叩かれたアォナ殿下が、ぐすぐす鼻をすすった。
「……アォナ・ロベォ。ロベォ家三男」
貴族最高位のロベォ家! さすが王配殿下!
「ヴィルさまに振られて、ユィクにも振られて、仕方なくザイアと一緒になった王配だよ」
「ちょ……! 説明──!」
ザイアが泣いてる。
…………おとうちゃんの名前が出た気がするんだけど、気のせいかな…………?
「ノチェ殿とエヴィに振られたザイア陛下と、お義兄さまとユィク殿に振られたアォナさまがくっついて、それなりに楽しくお暮らしなのが我らがネメド王家です」
トートがまとめてくれた!
「だから、めちゃくちゃ王家から怨みを買ってるわけだよ、ヴァデルザ家も、ネァルガ家も、バチルタ家も。だから伴侶契約で呼び出されちゃうの。わかる?」
トートの説明が、痛いほどわかります!
両親の分までごめんなさい!
謝ろうとしたら、ザイア陛下が手をあげてくれる。
許しをもらったノィユは、ふるえそうな唇を開いた。
「ご心痛をおかけすること、誠に、誠に申しわけなく存じますが」
深く頭をさげたノィユは、息を吸う。
「僕は、ヴィルを、愛しています。
ヴィルは、僕の、伴侶です!」
断言した!
燃える頬で、ヴィルの手を握る指が、ふるえてる。
ぎゅ
ヴィルが、手を握ってくれる。
もしゃもしゃの雪の髪の向こうにのぞく耳を真っ赤にして、藍の瞳をほそめて、笑ってくれる。
ヴィルのためなら、何だってできる気がするんだ。
「借金は、僕が死ぬ気で何とかします! ヴィルに、ヴァデルザ家に、ネァルガ家に、絶対にご迷惑をおかけしません!
ですからどうか、ヴィルの伴侶となることを認めてください、お願いします!」
地につくほど頭をさげた。




