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【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします  作者:   *  ゆるゆ
本編

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31/87

代々なのです




「覚悟のうえか?」


 ザイア陛下に問いかけられたヴィルは、もしゃもしゃの雪の髪の向こうでものすごく複雑な顔をしつつも、うなずいた。



「ノィユ、だから。伴侶に。そういう趣味、ではない、が、言われる、のは、仕方、ない」


 握られたヴィルの拳を、ノィユのちっちゃな手が包み込む。



「僕、めちゃくちゃ早くおっきくなるから! 絶対、絶対、おにあいって言われるように頑張るから──!」


 涙目で叫ぶノィユに、ヴィルの唇がほころぶ。



「ノィユは、立派な、俺の、伴侶だ」


「ヴィル──!」


 きゅう


 抱きつくのが、おひざだよ。




「ぐぅ……!」


 ちょっと面白かったらしいエヴィが、真っ赤な顔で、ぷるぷるしてる。

 真っ赤になったヴィルが、頭をなでなでしてくれる。

 によによするロダの隣で、トートと両親の目がちいさきものを見る目になって、目をまるくしたザイアが、爆笑してる。



「ははあ、なるほど、これは最高に面白い」


「面白がらないでください、陛下」


 トートの突っ込みに、空の瞳が閃いた。


「俺は面白いこと、楽しいことがすきなんだ。辛いことも哀しいことも苦しいことも、毎日容赦なくやってくる。だからこそ、日々を彩り、希望をくれる笑顔を、絶やしたくないと願うんだ」


 爽やかに空の長い髪を掻きあげるザイアに、トートの目が細くなる。


「いいこと言った風に見せかけて、ごまかした!」


「ははは!」


 楽しげに声をあげた陛下は、笑ってごまかしたらしい。


「バチルタ家は現在の債務状況の詳細を説明せよ」


 キリっとした顔になったザイアに、両親が畏まる。


「は、はい! こちらに!」


 ヴァデルザ家に説明するためにも作ってあったのだろう、現在の窮状をこまかに記した書を提出する母に、ザイアは空の瞳を細めた。


「相も変わらず、月の精霊はうるわしい。その子が伴侶を持つようになったとは、時の流れは速いな」


 さみしげに微笑むザイアに、トートは吐息する。


「陛下が振られてから、まだ3年です」


「言うなよ! 今度は言わなかったのに! 俺が振られまくりみたいじゃないか!」


「そのとおりなので」


 ふんと鼻を鳴らすトートは下ネタでいじられたことを根に持っているらしい。


 発言したそうに顔をあげた父に、ザイア陛下は軽く手を挙げた。

 許しを得た父が唇を開く。


「……平民の私を伴侶に選んでくれたために、ノチェに苦労をかけることになって、申しわけなく思っています」


 肩を落とす父ユィクに、目を見開いた母ノチェがぶんぶん首を振った。



「苦労をかけてるのは俺だから! 代々あんぽんたんなバチルタ家に来てくれるなんて、ユィクだけだよ!」


「ノチェ……!」


 いちゃらぶな両親に、ちょっと恥ずかしくなったノィユの隣で、皆の目が生温かくなってる。



「おかあさま、おとうさま、陛下の御前です!」


 あわてて突っこんだ!



「は! も、申し訳ございません……!」


 あわてて低頭する両親に、ザイアはゆるく首を振った。



「いや、陽の精霊と謳われる男と戦っただけでも、健闘したと褒めてほしいな」


 さみしげに微笑むザイアと、父ユィクを代わる代わる見つめたトートは目を細める。



「陛下の顔面は、陽の精霊とも戦えますよ。でも性格が、ちょっと……」


「ひどい──!」


 ザイアが泣いてる。







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