第二十九章 一つの気持ち
銀色と抜群のスタイルの持ち主。エミナ・エスカートとは、街で偶然出会った。彼女は暗殺者として俺の命を狙って来たが、なんやかんや何とかなった(省略)
そんな彼女は俺のピンチの時に現れて、助けてくれた。
が、奴らにやられて俺の目の前で今にも犯されそうになっている。
初めての気分だった。こんなにも不愉快な気持ちを持つのは。
サシャが殺された時もきっとこんな感じだったに違いない。けど、何かが違って感じられた。
「いやああああああああああああああああああっ!」
エミナとサシャが違うんだ。
サシャは手遅れだった。けど、エミナは違う。まだ、可能性が残っているのかもしれない。けど、俺の体は指一本も動く事が出来ないのだ。そこに、可能性などあるのか?
男の一人がズボンを下ろし、エミナに近づく。
すると、エミナは諦めたかのように抵抗をやめて、俺を見た。
「ユウ君、ごめんね。あなたを助けられなくて、せめて相手がユウ君だったらな」
エミナは微笑みながら続ける。
「大好きだよ」
ドクンッ!
大きく鼓動が鳴る。
俺は何も解っていなかった。
俺は確かに強い。それは客観的に見てもそうだ。誰にも持っていないものがあると、だから一人だと思っていた。
心の底から許したのはサシャだけだった。
その彼女が死んで、俺はこの世界に一人になったのだとずっと思っていた。
『大好きだよ』その言葉が胸に刻まれる。心の奥でジンジンと熱くなって行くのが解る。失いたくない。まだ、間に合うのなら。
俺は・・・。
「へへ、女が俺達に戦いを挑んだのが運の尽きだったな。自分の運命を呪いな」
エミナを犯す数秒のところで男の頭を掴む。
「お前らこそ、人の女に手を出したのが運の尽きだったな」
「え?」
男は何が起こったのか解らない表情をした。
「悪いが、今の俺は最高に気分が悪いんだ。手加減はなしだ!」
男を空中に投げ飛ばす。それを合図かのように、周りの男達が一斉に攻撃仕掛ける。あの男は片手剣使いだったので、剣士二人。魔道士二人が攻撃を仕掛けて来る。
魔道士の手が紫に光る。
おそらくまた毒ガス攻撃なのだろう。
予想通り紫の毒が周囲に広がる。
俺はエミナを抱えて風上に入った。
「ここなら毒もこないだろう・・・」
「ユウ君・・・」
「悪い、つらい思いさせただろう。だけど、直ぐに終わらせて来るから」
「あっ!」
エミナの言葉を聞かず奴らの前に出る。
あの片手剣使いも復帰したらしく、表情が憤怒で固められている。
「人の女に手を出して、ただで済むと思うなよ」
「うるせえ!殺っちまえ!」
「さっきまで惨めに地に顔を埋めていた男が!」
三人の男が斬り掛って来る。更に後ろから魔法の援護が来た。
「・・・・・・」
三人はフェイクのようで、魔法発動と同時に散る。後ろから巨大な炎の弾と雷が向かって来た。
「エミナを・・・泣かせるんじゃねええ!!」
右手に魔力集中させる。
「『破邪・一点』!」
炎と雷が混じり合っている魔法に向かって思いっきり殴る。アリサとは若干手加減をしていた。が、奴らに手加減など不要だ。
本気の一撃は魔道士二人の魔法を簡単に捻じ伏せ、衝撃波が二人を襲った。
「で?」
男三人は一瞬たじろいだが、直ぐに攻撃を仕掛けて来た。
先頭の二人が走って来た。が、奴らの剣を俺の剣で全て折る。
「げっ!」
「何!」
「『爆炎と連鎖』」
二人は爆発に飲み込まれた。
が、
「きゃああああああああああああっ!!」
エミナの声だった。
ちっ、三人目か!
三人目の男は憎たらしいエミナに一番最初に近づいた片手剣使いだった。
男はエミナの両手を掴んで上に上げ、素早いナイフをエミナに向けていた。
「へへ、人質がいればこっちのもんだ。おい!この女が殺されたくなかったら、その自分の剣で自分の喉を刺しな」
「つまり、自殺しろと言っているんだな?」
「ああ、そうだぜ。速くしねーとうっかり女を殺しちまうぜ」
そう言って男はエミナの頬を舐める。
「い、いや・・・」
「ほらほら」
男はナイフをチラつかせる。
「・・・下種が・・・」
「は?」
俺の剣は男のナイフがエミナを刺す前に男の腕を斬り落としていた。
「な、何で・・・」
「幻覚魔法・・・あの状況でお前の眼を盗んでやるのは難しかったが、丁度あの煙で目隠しが出来たしな・・・」
「な、なら、二人をやった後のお前は既に・・・」
「ああ、ただの幻さ」
「ああああああああああああああああああああああああっ!!」
男は叫ぶ。
「た、頼む!帝国の奴らに脅されただけなんだ!俺には家族もいるんだ!!」
そこには、さっきまでの威勢のいい男はいなかった。
そして、男の眼は真実など語っていない事を俺に知らせていた。
「悪いが、あの世で懺悔しな」
「ま、待ってくれ!」
俺は男の胸を剣で貫かせる。
「がふっ!こ、この人殺しが!」
「どっちが」
男はその命を絶命させた。
俺はその場に剣を落とし、膝を着かせた。空を見ると、空が徐々に曇り始める。
「ユウ君・・・」
振り返ると、そこには今にも泣きそうな女の子がいた。
俺は彼女に笑ってみせた。
「何て顔してんだよ?」
それは、俺の精一杯の強がりだった。
いやあ、ホント良かったですねぇ。。。




