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心技戦隊ドライブレンジャー  作者: 4代目ている
第1話 心技戦隊ドライブレンジャー!最悪の初変身!!

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第一章 夜の《ノクターン》

キャラクターイラスト・設定画・キービジュアルはpixivで公開しています。

小説とあわせて、ぜひビジュアルでも『心技戦隊ドライブレンジャー』をお楽しみください。

リンクは下部にあります。

 新宿・歌舞伎町の夜は、赤井満にとって、まるで自分だけが歩き方を知らない巨大な舞台のように見えた。大型ビジョンから落ちてくる赤や青の光は、少し前まで降っていた雨を薄く残した路面に滲み、客引きの声やタクシーのクラクション、酔客の笑い声、どこかの地下店舗から響く低音と混ざり合っている。二十歳になったばかりの赤井は、大学なら教室の後ろに座り、誰かに話を振られた時だけ必要なことを答えていれば一日をやり過ごせる人間だったから、誰も自分を気にしていないはずのこの街で、なぜか全員から「お前はここに慣れていない」と見抜かれているような落ち着かなさを覚えていた。


 それでも今夜、赤井はほんの少しだけいつもの自分を裏切ってみたかった。友人たちが楽しそうに大人びた店の話をするたび、興味がないふりをしながら、自分にはそういう場所へ足を運ぶ勇気がないことを気にしていた。別に無理をして酒に強くなりたいわけでも、派手な遊びを覚えたいわけでもない。ただ、怖いからという理由だけで何もしないまま二十代を過ごすのは嫌だと思い、評判の穏やかな会員制ナイトラウンジ《ノクターン》を、三日前から何度も予約画面を開いては閉じた末に、ようやく予約したのだった。


 黒地に銀文字の看板を見つけたところで、赤井は店の入口から五メートルほど離れた場所に立ち止まり、スマートフォンを確認した。予約時刻まであと三分。予約画面はもう来る途中で六回は見たのに、店名と時刻をもう一度読み直し、画面を閉じてからまた開いた。掌には薄く汗が浮き、スマートフォンを持ち替えるたびにズボンの脇でこっそり拭う。扉へ一歩近づいては、客が出てくると邪魔にならないよう慌てて半歩下がった。ここで帰れば、きっと明日の自分は「行かなかった理由」をいくつでも作れるだろう。それが分かっているからこそ、赤井は帰りたい自分と、帰ったら後悔する自分の両方に腹が立った。


「……ここまで来て無断キャンセルしたら、お店にも迷惑だよな。だから入る。入って、一杯だけ飲んで、合わなかったら帰る。それで十分だ。別に、今日一日で別人にならなくてもいいんだから」


 独り言にしては長すぎる説得を自分自身へ言い聞かせ、赤井はようやく扉を押した。扉の向こうへ一歩足を踏み入れた瞬間は、何か大きなものを乗り越えたような気がしたのに、数時間後の彼は、こんな程度のことで胸をどきどきさせていた自分を、泣きたくなるほど平和な人間だったと思い返すことになる。


     ◇


 店内は、赤井が想像していたより落ち着いていた。照明は暗すぎず、磨かれたカウンターには琥珀色の光が柔らかく反射し、ジャズの音量も隣の会話を邪魔しない程度に抑えられている。受付の女性も、初めて来た客だと一目で分かったらしい赤井を面白がることなく、慣れた笑顔でボックス席へ案内してくれた。


「初めてのご来店ですよね。緊張しているようでしたら、最初から強いお酒を選ぶ必要はありませんよ。飲みやすいものもありますし、もちろんノンアルコールでも大丈夫です」


「あ、ありがとうございます。実は、こういうお店自体が初めてで……水だけ頼んだら失礼かな、とか、注文の仕方を間違えたらどうしようとか、入口に着いてからずっとそんなことばかり考えていました」


「それなら、なおさら無理をしない方がいいですよ。ここは試験会場ではありませんから、正解の注文なんてありません。少し甘めでアルコールの弱いカクテルと、お水を一緒にお持ちしましょうか?」


 優しい口調でそう言われ、赤井はようやく自分が馬鹿にされていないことを理解した。肩から少し力が抜けたものの、膝の上に置いた両手はまだ落ち着かず、指先で何度も親指の爪を擦っている。受付の女性と目が合うたびに反射的に視線を外し、失礼だったかと思ってまた見て、今度は見つめすぎた気がしてもう一度逸らした。そんな自分が恥ずかしくなり、赤井は困ったように笑った。


「お願いします。……すみません、本当に慣れていないのが丸分かりですね」


「ええ、かなり。でも、慣れていないことを隠そうとして無理をするお客さんより、ずっと扱いやすいです」


「そこまで正直に言われるとは思いませんでした」


 受付の女性が小さく笑い、赤井もつられて笑った。入店しただけで人生が劇的に変わるわけではないらしい。今日の目標は、一時間くらいここにいて、帰る時に「来てみてよかった」と思えれば十分なのだろう。そう考えながら背もたれへ身体を預けた、その時だった。


 店の奥でガラスが砕けた。


 最初は誰かがグラスを落としただけだと思った。しかし、続いて聞こえたのは、重い家具が床を擦る音と、何か硬いものが壁へ叩きつけられたような衝撃音だった。店内を満たしていた穏やかな空気は一瞬で消え、誰かが何かを尋ねる声、スタッフが奥へ走る足音、短い悲鳴が重なったにもかかわらず、スピーカーから流れる音楽だけは状況を知らないふりをして平然と続いている。


「……何が起きたんですか?」


 赤井が立ち上がると、先ほどの受付スタッフも廊下へ顔を向けた。二度目の衝撃で奥の扉が枠ごと震え、その直後、誰かの切迫した叫びが響いた。


「全員、奥から離れて! 出口へ――」


 声は途中で途切れた。次に聞こえたのは、布が裂けるような鋭い音と、喉の奥から押し出されたような低い悲鳴だった。


 受付スタッフの顔から血の気が引く。赤井も逃げなければならないと理解したのに、身体がすぐには言うことを聞かなかった。事故、喧嘩、強盗、刃物を持った客――頭の中は必死に自分が理解できる事件の名前を並べたが、廊下の向こうから現れたものを見た瞬間、そのどれにも当てはまらないと悟った。

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『心技戦隊ドライブレンジャー』を読んでいただきありがとうございます。 レッド、ブラック、ピンクをはじめ、登場キャラクターのイラスト、設定画、キービジュアルなどをpixivで公開しています。 小説だけでは分かりにくいキャラクターの外見や装備、フェリディアの世界観もビジュアルで楽しめます。 リンクはココをクリック→pixiv:4代目ている 今後も物語の進行に合わせてイラストを追加していく予定です。
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