12
迷宮イースの扉の前まできた。
迷宮には扉があって、中から魔獣が溢れないように門番みたいな人がいる。
デポプも前は門番がいたみたい。
扉の向こうは全然違う場所になってる。
イースは町の近くの崖に突然迷宮ができたんだって。
中に入ると、デポプのことしか知らないんだけど、全く違う景色になってて、石畳の洞窟みたいなところになってるって、聞いたことがある。
「イースはね、中に入ると広大な夜の森が広がっている。森の所々に遺跡もあるんだ。場所ごとに出てくる魔獣も違う。森にビタハーブが自生している。もう一つのクエスト、クルーエルホルンは森の奥にあるポータルの先にある迷宮にいる。そうそう、この迷宮の入り口をゲート、迷宮の中にある、迷宮と迷宮を繋ぐ出入り口をポータルと呼んでいるよ。モホークの地方の人たちが使っている言語をそのまま利用しているんだ。なんとなくかっこいいからね。」
ビタハーブならデポプの村にもあって、良く取りに行ってたっけ。
あまり光の当たらない場所に生えてる、迷宮にいっぱい生えてると良いな。
「ビタハーブの採取方法は見つけた時に一緒にやってみよう。」
「でも、それじゃあ。」
「一緒にやって、私の採ったものエクシルに渡さなければクエストには影響しない。横に採取が上手な人がたまたまいて、その真似をして採取するのと何も違わないだろう?」
それがありなら、そのなんたらホルンも、でも角を取らなきゃいけないからダメか。
「入ろうか。プレートを扉にかざして。」
パレントさんのプレートが光る。
ミスリルの色をそのまま、虹色にキラキラ光ってすごく綺麗。
僕もプレートをかざすけど、あんまり良い色じゃない、ミスリルと比べちゃダメか。
重そうな音を出しながら扉が向こう側に開いていって、全部は開かないで止まった。
パレントさんが扉の奥に渦を巻いて光るところ、ゲートに歩いてく。
僕もついて行ったら、一瞬で目の前の景色が変わった。
もうここは迷宮の中だ。
「さあ、ビタハーブを探そうか。なるべく出てくる魔獣はエクシルが倒すんだ、いいね?」
「うん。」
僕の腕試しが始まった。
「ビタハーブはどんなものか知っているかい?」
「うん。とったことある。」
「よし、魔獣に気を付けながら採るんだ。」
僕が前、パレントさんが後ろに続いてビタハーブを探す。
迷宮の奥に行くほど森が深くなって月の明かりが地面に届かない。
でもこういう場所にビタハーブはある。
探そう。
それにしても本当に不思議な場所だ。
どこまで森が続いているんだろ。
どこかで途切れているのかな、端っこまで行ってみたい。
風も吹いてる。
「あ。」
見つけた。
「見つけたかい?」
暗いから目を凝らしてよく見る。
やっぱりビタハーブだ。
あ、今一瞬月明かりで見えたところにも。
「私はこっちに見つけたぞ。」
パレントさんが何かを取り出した。
「本当は明かりは最低限なんだけど、良く見えないから最大光量にしておこう。」
なんだかわざとらしい、けどパレントさんが何をしたいかはわかった。
じっと観察する。
まずは、ナイフの握る部分でビタハーブの周りを掘って、土ごと抜く。
土をほぐして根っこから塊だけ取って、終わり?
「ふう、あとで根っこを水で洗わないとな。」
そう言って根元を紐で軽く縛ってさかさまに腰にかけた。
紐がない。
今までただ力いっぱい引っこ抜いてたから、あれじゃ使い物にならなかったのかな。
僕も目の前のビタハーブを同じように、ホークアイを使って採った。
紐がないときは、紐っぽいのを探そう。
「どこへ行くんだい?」
「ひもを探す。」
しまった、という声がした。
明るい場所に戻って周りを見回す。
あの木に巻きついてるやつなら紐の代わりになるかも。
上の方にホークアイの尖ってるところを当てると簡単に切れた。
地面から生えているところを切って、紐の代わりにビタハーブを軽く縛る。
よし、上手くできた。
あと9個。
「パレントさん。」
「何だい?」
「10個集めたらこれだけ持ってユニオンに納品しても良いの?」
「ああ、チーフは今日中にとしか言ってないな。分割しても問題ない。」
よし、さっさと集めるぞ。
「がんばる。」
暗い場所に急いで戻ってビタハーブを見つけて同じ方法で採っていく。
10個、揃ったぞ。
「さて、次は根を洗うぞ。夜の泉で洗えば陽の光に当たっても鮮度は保たれる。」
泉はどこだ?
明るみに戻って走る。
あ、あれかな?
うわあ・・・。
-
エクシルが言葉を失った泉。
そこは迷宮の月に照らされ、静かな水面に月が歪むことなく映し出されている。
一見すると、あまりにも静かで波が立たないため、周りの闇に溶けて水を湛えていることに気が付かないほどだ。
エクシルは下に浮かぶ月を見て、ここが泉であることに気がついた。
あまりの月の美しさにしばらく言葉を失い、見惚れてしまった。
そんなエクシルのことをパレントは感心したように優しく見守っている。
-
「さて、根元を洗ってっと。よし。土が落ちればあとは逆さまにしたまま納品だ。鮮度は落ちにくくなっているだけだから、急がねば。」
もうちょっとうまく演技ができないのかな。
パレントさんと英雄ごっことかしても楽しくなさそう。
根元を濡らして洗って、よし。
「エクシル、行けるかい?」
「うん、すぐに出る。」
走ってゲートに向かう。
来た道は覚えてる。
誰にも会わずにゲート前に着くことができた。
早く早く。
後ろも振り返らずにゲートに入った。
すぐに目の前の世界が変わる。
「エクシル、急ごう。」
僕たちは急いでユニオンに向かった。
太陽はいつの間にか真上に来ている。
ユニオンの受付は朝よりも空いていて人がいない。
受付に駆け込んで納品をする。
「お預かりします。」
朝とは別の受付の人にビタハーブを渡した。
「確かに10束、お二人分お預かりしました。プレートをお預かりします。それにしても、状態が良いですね。」
パレントさんと顔を見合わせる。
「お待たせしました。おめでとうございます。クエスト達成です。報酬はこちらになります。今回状態が非常に良かったので、報酬を追加して1ガルドです。どうぞ。」
やった!500ジルバが1ガルド!すごい!
「プレートをお戻しいたします。それでは次のクエストも、お待ちしています。」
パレントさんが僕のプレートも受け取ってくれた。
「さあ、ここからが本番だ。クルーエルホルンの雄の角5本の納品。頭部に角があって、そう簡単には取れないよ。完全にクルーエルホルンを殺してから、ホルンの頭部を解体して角を取るんだ。無理だと思ったら逃げてもいいからね。」
「逃げても意味ない。」
「そうか・・・。もう正午になる。急いでイースに戻ってポータルを目指すよ。私が先行するからついてくるように。」
「うん。」
二人並んで、走ってユニオンを出る姿をラグドはカウンターの奥から見ていた。
「きゃ。・・・チーフ驚かさないでください。そんなところに立ってないであっちで座って仕事してください。ただでさえ顔が怖いんですから。もう。」
ラグドは受付嬢の言葉に余計に顔を険しくしながら、無言でユニオンの出入り口を見ていた。
-
イースに戻ったらすぐにパレントさんが走り始めた、僕がついていけるぎりぎりのスピードで。
イースのゲートを入ってすぐのところにはいっぱいの人がいたけど、採取した場所、泉を越えたあたりから全然人を見かけなくなった。
泉からまたしばらく夜の森の中を走っていると、森を抜けて草原に出た。
草原の先に何か見える。
あれがポータルかな?
だんだん見えてきた。
ゲートは地面に立って渦を巻いているように見えるけど、ポータルは地面に横になって何かが回ってる。
ポータルの前に立ち止まる。
「エクシル!」
呼ばれた僕は振り返る。
そこには、よく知った顔の男の子と女の子と、まったく知らない男の人が立っていた。
エクシル(所持金:19ガルド700ジルバ)
種族:人間
武器:ホークアイ
属性:無 (色赤?)
才能:融合、学習
覚えた技
・シールドブロウ?
パレント
種族:エルフ
武器:剣 (ナイフ)
属性:色黒
才能:?
魔法
・リカバー




