第九話 合宿 一日目(仮)③
「————冒険者には、それぞれ得意な属性のカードというモノがある」
夜(と言っても周囲は明るいが)、夕食を食べた俺たちは、師匠からリンクの講義を受けていた。
「リンクというのは、カードと心を重ねる技術だ。故に、どうしても本人が持つ嗜好や、体質というモノがリンクに少なからず影響を及ぼす。例えば織部さんの場合は、自身の嗜好によりアンデッド系のリンクが得意になるし、逆に十七夜月さんの場合はアンデッド系とのリンクが苦手になる。またそれとは別に生まれつき持った性質によって特定の属性とのリンクが得意になることもある」
例えば俺の場合、冒険者となってからずっと女の子カードを使い続けてきたこと、また俺個人も女の子カードが好きなことから、男のカードと比べて圧倒的にシンクロなどのリンクがしやすかったりする。逆に無性のカードの方が男のカードよりもリンクしやすいくらいだ。
「この体質によってリンクが得意になることを、先天属性。個人的嗜好や特定のカードの使い込みにとってその属性が得意になっていくことを、後天属性と言う」
このうち、先天属性は生まれつきのモノなため不変、後天属性は心境の激しい変化やカードの使い込みによって範囲が変わっていくこともあるらしい。
例えば、俺のように女の子カードが得意な冒険者でも、彼女を寝取られたりなんかしてビデオレターが届いたりしたら一気に女の子カードが苦手になることもある、ということだ。
「先天属性が何かを探し出すには、今まであまり使ったことがないのに妙に使いやすいカードがあれば大抵はそれが自分の属性だ。これはリンクを使えるようになった初期であればあるほど見つけやすい。もし仮に自分の好きなカード以外に見つからないのであれば、それは幸運にも自分の先天属性と後天属性が合致している可能性が高い。マロなんかがそのタイプだね」
師匠が向けてきた視線に、俺は頷き返す。
俺は幸運にも先天属性と後天属性が合致しているタイプだった。パーティーを女の子カードに固めているのは単なるスケベ心からという訳ではないのだ。
きわめて合理的思考からなのである。
どこかから聞こえて来た『先天性のドスケベが証明されただけでは……?』というクソガキの突っ込みは無視するものとする。
ちなみに、アンナは先天属性が善、後天属性が天使・精霊系カード。織部は先天属性が悪、後天属性が悪魔・アンデッド系となっている。二人とも先天属性と後天属性が比較的似通っているタイプだ。
なお、真逆の属性の二人が友人であるように、冒険者の属性によって交友関係に影響が出てきたりすることはない。
某ゲームのアライメントとは似て非なるというわけだ。
「基本的に属性は、範囲が狭い方が、幅広いタイプよりも効果が強いと言われている。例えば、マロのように女の子カード全般に強いタイプよりも、アンデッドという特定の種族にのみ特化している織部さんの方がより得意不得意がはっきりしているわけだ。ただ、これに関してはリンク自体の才能に差があることから、はっきりとした証拠があるわけじゃない。軍や冒険者全体の傾向を見て、そんな感じがする……といった程度だね」
そこで、師匠は顔を引き締めて真剣な空気を作る。
「ここまでみんなにとって周知の情報である属性について話してきたのは、この属性が冒険者におけるリンクの最終到達地点に関係してくるからだ」
『………………』
師匠の雰囲気が変わったことで、俺たちも姿勢を正して聞く姿勢となる。
ここからは、俺も初耳の情報だった。
「冒険者が使うリンク——プライベート(民用)リンクは、シークレット(軍用)リンクから漏れたごく一部のモノだ。軍がこれらの情報流出を放置しているのは、カードを使いこんでいるうちに自然と身に着ける可能性が高いリンクだからでもある。これから話す『ユニークリンク』は、このプライベートリンクを極限まで突き詰めていった先にある、限りなくパーソナルリンクの極みに近い技だ」
パーソナルリンクの極み……。
「ユニークリンクは、実のところ僕もまだ身に着けていないリンクだ。だから情報としてしか知らないんだけど…………その効果は『冒険者自身がスキルに目覚める』リンクだと言われている」
『ッ!?』
その言葉はちょっとした衝撃を俺たちに齎した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。それって俺らも蓮華たちみたいに回復魔法が使えるようになるってことか?」
「ちょっと違う」
と、師匠は首を振る。
「ユニークリンクは、自分の属性のカードにカードのスキルのような効果を乗せるリンクなんだ。だから自分自身がスキルを使えるようになるのとは、少し違う。……例えば、僕が知るユニークリンクだと『自分の属性のカードの育成効率が飛躍的に上昇する』とか『自分の属性のカードなら何枚でもフルシンクロできるようになる』だとか『自分の属性カード間で、スキルを一つカード全体が共有できるようになる』とかがあるみたいだ。まあ僕も伝聞だから良くは知らないんだけどね。発動条件があるヤツとかも多いみたいだし」
なんだそりゃ、無茶苦茶だな。特に最後のなんかは、上手くすりゃアテナのアイギスが蓮華やイライザなんかも使えるようになるってことか? 霊格再帰や限界突破は? ……さすがにどんなスキルでも、ってわけじゃないように思えるが。
「ユニークリンクは、自分の属性を極限まで突き詰めていったその冒険者固有のリンクと言われている。だからユニークリンクは、一人に一つだし、自分の嗜好が大きく影響してくる。こういうユニークリンクが欲しいと思って目覚めることもできないと聞く。ここら辺もシークレットリンクから漏れた理由なんだろうね。シークレットリンクは軍全体で共有できる可能性が高いってのも条件の一つだから」
「ユニークリンク……。話には聞いたことがありましたけど……なんかますます念能〇みたいッスね」
アンナの言葉に全員が『あっ、コイツ言いやがった!』という顔をした。
師匠は気まずそうに咳払いをし。
「ま、まあ、すぐに習得できる技術でもないけど、みんな自分の属性についてはよく理解した上でリンクを使ってみて。ユニークリンクはプロでも持っているとは限らないリンクの極みの一つだけど、目覚めれば唯一無二の武器となるはずだから」
そう話を締めくくったのだった。
「さて、そろそろマッサージは良いですかね、お嬢さん」
師匠の講義が終わり、俺はずっと肩もみを続けていた彼女へとそう問いかけた。
「ふむ……まあ、今回はこれくらいで良いだろう」
ふぅ〜……。
織部の許可が下り、俺は彼女の肩から手を離すと大きく腕を回した。
もちろん俺が彼女の肩を揉んでいたのは、レースの勝者が彼女だったからだ。
俺との戦いで時間をロスしたはずのこの中二病少女は、あの後アンナに追いつき、言葉巧みに『エスケープ』を選ばせてその場に待機させることに成功したらしい。
結果、一位となった織部は、勝者の特権として俺に師匠の講義の間の肩もみを命じたのだった。
最初は罰ゲームとはいえ、後輩の肌に合法的に触れられることを内心で喜んだ俺だったが、さすがに一時間近い講義の間肩もみをし続けるのはしんどかった。
「なかなか上手かったではないか。次もその調子で頼む」
「次なんてねーんだよ」
ナチュラルにまた俺が最下位であるかのように決めつけやがって。
「そうッスよ。次に先輩に肩もみさせるのはウチッスからね!」
「お前の肩も揉まん。むしろお前らのどちらかに肩を揉ませてやる」
そんな俺たちのやり取りをみた師匠が笑う。
「レースに参加すればマロに肩を揉んでもらえるのか。こうなると僕が参加できないのが残念になってくるね」
「……………………」
さすがに師匠が参戦してくると俺が勝つとは言えなくなってくるので、俺は視線を逸らして沈黙した。
「まあ、明日は公平なレース方式じゃなくて、ウチらがその他有象無象の選手となって先輩をあの手この手で妨害する感じにしようと思ってるんで、罰ゲームもないんスけどね」
「なんだ、そうなのか……」
織部が残念そうに呟く。
俺もリベンジができなくて残念だ。
「まあ、先輩が条件を達成できなかったら罰ゲームって感じにしても良いんスけど」
「誰が飲むか、そんな一方的な条件。俺が条件を達成したらエッチな罰ゲーム有りなら乗ってやらんこともない」
「それはあり得ないんで、残念ながら罰ゲームは無し、ということで」
……………………チッ。
「とりあえず今日の反省会としては、如何に相手のブラフを見抜いて出し抜くか、ッスね。結局、ウチも先輩もその点で小夜に上手くやられたわけッスから」
「ん……その点については、俺はもう対策がある」
「ほう……では明日お手並み拝見といこうではないか」
ニヤリと笑う織部だったが、残念ながら明日はマジで大抵の駆け引きは見抜ける自信があった。
というか、今日も本当は引っかかるはずがなかったのだ。
……あのスキルをちゃんと思い出しておけば。
「あと、神無月先輩、あのヒントはちょっとなんとかなりません……? 数式を読み解いてチェックポイントの座標を割り出すのは、ちょっと……」
勉強の苦手なアンナが師匠へと苦言を呈す。確かに、あのヒントは俺もちょっと問題があると思った。多分、キャットファイトもあんなヒントは出してこないだろうし。
「ありゃ、良いヒントだと思ったんだけどな。そうだね。じゃあ明日からは四つのヒントの点を結んだらチェックポイントがわかる方式にするよ」
「某海賊漫画のロードポーネグリフ方式ッスね。良いと思います」
「……実際、本番ではそのヒントの可能性が高いと我も思う。それなら必ず四つのヒントを集めてチェックポイントに行くことになるからな。五階層ごとにチェックポイントがあり、迷宮が26階層とすれば割とレースとしてちょうど良いのではないか?」
「問題は運営の出してくるミッションッスよね。こればっかりは正体がわからないんで、模擬レースで再現できないですし、先輩に自力でやってもらうしかないッスね」
そんな感じで反省会が終わり、カードたちは何をしているかと思い辺りを見渡してみると、何やらキッズたちがコソコソ集まって何かをしているのを発見した。
近寄って見てみると、どうやら蓮華、メア、アテナ、ジャネット(師匠のアラディア)で、なぞなぞを出し合っているようだった。
……もしかして、リドルスキルの対策だろうか?
「では問題です。世界の真ん中にいるモノとは、なんでしょうか?」
幼児向けのなぞなぞが載った本を片手にアラディアのジャネットが問いかけると、蓮華とメアが腕を組み考え始めた。
「世界の真ん中……?」
「え〜? わかんない……。世界の中心ってことだから〜……なんだろ?」
二人がうんうんと首を傾げていると、見事なドヤ顔を浮かべたアテナが答え始めた。
「ふふん、この程度、知の女神たるこのアテナにとっては余りに容易い問題です。世界の真ん中とは、人間に例えればお臍。つまり地球のへそと呼ばれるエアーズロックを指しているのでしょう。エアーズロックは、元々はアボリジニにウルルと呼ばれていた聖地。その由来は、エアーズロックが彼らの信仰する虹色の蛇の卵と信じられていたから。つまり世界の真ん中にいるモノとは、虹色の蛇、あるいはその卵です! どうです? 正解でしょう?」
「全然違う。無駄に考えすぎ」
「ッ!? ば、バカな……」
アテナが愕然として打ちひしがれていると、蓮華がポンと手を打ち、答えた。
「あ、わかった。蚊か。せ、か、い、の真ん中だから蚊だろ」
「正解」
「ヨシッ!」
「そ、そんな子供騙しのような答えが正解だというのですか!?」
「いや、これ子供向けのなぞかけだから……」
アテナのヤツ、典型的な物知りだけど頭が固い奴になってるなぁ。
「あ〜、なんでわかんなかったんだろ! ねぇねぇ、次の出してよ! 次はメアが答えるから!」
「了解。では、次の問題です」
と、微笑ましく彼女らのなぞなぞ大会を見守っていると。
『……ちなみに、私もわかってたよ、マスター。即わかった。凄いでしょ?』
彼らから十メートルは離れたところで体育座りをしていた鈴鹿から、そんなリンクが届いた。
鈴鹿……。お前、そんな離れたところから地味に心の中で参加してたのか……。
相変わらず、みんなの輪の中に入るのが苦手なんだな……。
まあ、確かにこのロリっ子集団に混じるのはハードルが高いか。
なら他の奴らと雑談でもすれば良いのに……と周囲を見渡してみると、ユウキは織部やそのカードたちと話しており、イライザもアンナやそのカードと話しているところだった。
師匠もトイレにでも行っているのか、姿が見えない。
これは……! 鈴鹿のヤツ完全に孤立してやがる……!
…………いつものことか。
『鈴鹿、今からアンナや小夜のところを回ってくるけど……暇なら俺と一緒に行くか?』
『……その人たち、良く知らないから何話せば良いかわからないし。なんかキラキラしてて苦手……』
うーん、これは完全に処置無しですな。
俺は彼女が自分自身の脚で立ち上がってくれることをマスターとして期待して、まずはアンナの元へと向かうことにした(めんどいので見捨てた)。
鈴鹿の捨てられた子犬のような視線を背に、アンナのところへと向かうと、イライザはエルフのターニャ、ペガサスのダンジョンテイオーと話しているようだった。
「よお、珍しい組み合わせだな。何の話をしてるんだ?」
「あ、先輩。なんかイライザさんが聞きたいことがあるみたいで」
「イエス、マスター。かつて見せていただいた、ペガサスに騎乗しての三位一体の攻撃についてお伺いしていました」
「ああ……」
母山羊を良いところまで追い詰めたアレか……と思い返す。
「確かに、アレは良いコンボだったな。どういう絡繰りなんだ?」
「うーん……、先輩とは明日戦うかもしれないんであまり手の内は晒したくないんスけど……」
俺も気になって問いかけると、アンナは躊躇いつつも結局は教えてくれた。
「ま、部員を導くのも部長の役割でしょう。あれはアムドの装備化と、ダンジョンテイオーの騎獣スキル、ターニャの騎乗スキルの合わせ技ッス」
そう言って、アンナはスマホを見せて必要なスキルの詳細を教えてくれた。
亡者にも鎧……は、俺も知っているので読み飛ばすとして、重要なのはペガサスの先天スキル『天馬空を行く』とエルフの後天スキル『走り馬にも鞭』だな。
・天馬空を行く:地上を駆けるように空中を縦横無尽に走ることができる。動き続けることで、耐久力と引き換えに筋力と俊敏性が大きく向上していく。最大値(二倍)まで上昇後、直線距離での助走で、『雷鳴と雷光を運ぶ者』を使用可能。高速飛行・騎獣スキルを内包。
(騎獣:騎乗スキルを持つ乗り手のステータスに自身の攻撃力と俊敏性を加算することができる)
(雷鳴と雷光を運ぶ者:一撃に限り、ステータスを三倍とし突進攻撃を放つことができる)
・走り馬にも鞭:騎獣スキルを持つカードの耐久力を下げ、筋力と俊敏性を一時的に倍増させることができる。ただし騎獣に大きな負担が掛かる。騎乗スキルの上位スキル。
「ま、他にもいろんなスキルで補強しましたけど、軸となっているのはこの三つのスキルッスね」
うーむ……徹底的に攻撃力と機動力の強化を目指したって感じだな。
なるほど、強敵対策と言っていたが、これなら相当格上の敵にも大ダメージを与えることができるだろう。
多少脆い印象は受けるが、当たらなければ問題ない! という強い意志を感じる。その分、範囲攻撃や、対飛行攻撃には弱そう……というか実際に弱かったが。
「それで、イライザは何が聞きたかったんだ? 騎乗スキルを手に入れて、同じような事がしたかったとか?」
「イエス、マスター。騎乗スキルもですが、騎獣スキルの習得も検討しておりました」
「騎獣も……?」
俺は一瞬四つん這いにさせたイライザに跨る自分を想像して、慌てて振り払った。官能的でイケない世界の入り口が垣間見えた気がしたからだ。
「イエス、マスター。私も、一応狼へと変身することができますので、かつてのユウキのようにマスターをその背に乗せて移動できるのでは、と考えたのです」
イライザは右手だけ狼の頭へと変身させると、ワンワンと吠えさせた。
「あ、ああ……なるほど、そうか。それもできるかもな……でもそれなら素直にドラゴネットに騎獣スキルを覚えさせてイライザは騎乗スキルを覚えた方が効率も良いと思うぞ」
「イエス、マスター。では、その方針で努力致します。……少しだけ、残念ですが」
ざ、残念って何が……?
と、内心でドギマギしつつ、今度はユウキと織部たちの元へと向かう。
ユウキは、織部と元土蜘蛛で現女郎蜘蛛のツッチーと話しているようだった。
「よう、ユウキ、小夜。……あとツッチー」
「マスター」「先輩か」
「おお! 北川殿! 何か我が主に御用でございますかな?」
「いや、なに話してるのかなって気になってさ」
「……じ、実は」
とユウキは気恥ずかしそうに頭を掻き、答えた。
「どうにか前みたいにマスターを乗せて移動できないかという相談をしてたんです」
「え、こっちも……?」
と俺が驚くと、ユウキは首を傾げた。
「ん? こっちも、とは?」
「あ、いや、こっちの話。……それにしても、どうして小夜に相談を?」
普通に俺に相談してくれれば良いのに、と思いつつそう問うと、ユウキは若干気まずそうに答えた。
「あ、いえ……マスターはすでにドラゴネットさんに乗っていらっしゃいますし。これはボクの我が儘なので……。織部さんに相談させてもらっていたのは、ツッチーさんが女郎蜘蛛になった後も騎獣をやっていると聞いたので」
「ユウキ……そんなの気にしなくて良いのに。……しかし、小夜はツッチーに変わらず乗ってるんだな」
「うむ、我は先輩と違って次から次へと相手を乗り換える尻軽ではないのでな」
そんな言い方ある……?
「冗談はさておき……。話を聞いた限り、ユウキさんが騎獣を出来なくなったのは、人狼化しても二足歩行のため乗り心地が悪いためと思われる。ならば、話は単純だ。純粋な狼の姿にも変身できるようになれば良い」
「うん? そんなことできるのか?」
アプリのスキル図鑑にもそんなことは書かれていないし、モンコロの試合なんかを見ても純粋な狼に変身するライカンスロープを見たことはないが。
「可能だ。二足歩行形態の方が小器用に立ち回れるため、四つ足形態に変身するメリットがあまり無いが故に使われないだけで、形態としてはしっかりと存在している。多少訓練が必要になるようだがな」
そうだったのか……。
「訓練にまごつくようなら、騎獣スキルの習得も目指しても良いかもしれない。アレには、人やカードを乗せやすいように肉体に補正をかける効果もある。現に、うちのツッチーも騎獣スキルを取得したら少しだけ骨格を変形させられるようになったからな。元々狼形態が眠っているライカンスロープなら、よりその形態を引き出しやすくなるはずだ」
なるほど……。もし騎獣スキルを習得出来たら、イライザが習得を目指している騎乗スキルとのシナジーも生まれるし、良いかもしれないな。
「しかし、騎獣スキルってどうやって習得すれば良いんだ?」
「そんなもの、とにかく乗り続けるしかないだろう」
乗り続けるって……。乗るのが難しいから騎獣スキルが欲しいんだが……。
俺はユウキと顔を見合わせ。
「とりあえず、狼形態への練習からだな」
「……はい」
そう苦笑したのだった。
【Tips】先天属性と後天属性
冒険者には、それぞれ得意なカードの属性が存在する。これは、リンクが心を繋ぐ技術であるため、マスターの体質や嗜好が影響してしまうためである。
このうち、体質などの生まれつきの理由で得意となる属性を先天属性。個人的嗜好や特定のカードの使い込みにとってその属性が得意になっていくことを、後天属性と言う。
先天属性と後天属性は、リンクのしやすさやカードの育成などに影響し、前者は変えることができないが、後者は嗜好の変化や使い込みなどによって変わる(変わってしまう)こともある。
このマスターの得意属性を極めた先にある、マスター固有のリンクも存在する。






