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キッチンでロボ丸が調理をしている。
俺たちはリビングでゆっくりとつまみをつつきながらお酒を楽しむ。
畜ぺんはビール。
ゴクゴク音を鳴らして飲んでいる。
すごく美味しそうに口元を拭っている。
ロッテはオレンジジュース。
先日ロボ丸に栄養のある飲み物をと注意されていたので選んだのだろう。
ロボ丸母さんは本当にしっかりしている。
ワンコロは回復薬。
先日回復薬を味見して気に入ったらしい。
商品がどんどん少なくなるのでロボ丸が嘆いていた。
そのため最近は回復薬の原料を確保するためだけにロッテを連れて森の中に入っているらしい。
綿毛は何も飲まず、何も食べずにフワフワ浮いている。
一番いい子かもしれない。
そもそもケサランが何も食べずにいるところを見るとワンコロも何も食べなくても大丈夫な気がしてならない。
「仲良くなったことだし、なんて呼べばいいですか?」
ロッテが畜ぺんに尋ねた。
『おすきにどうぞ』
『むかしのなまえはおいてきた
おそらにとんでいったけどもどってくることはない』
『でもあえてよばれるなら2896で』
ロッテとワンコロが頭をかしげながら読む。
「にー はち きゅう ろく ちゃん?」
ロボ丸が美味しそうなつまみを持ってやってきた。
「数字ヲ読ムト長イノデ、28様デヨロシイデスカ?」
その手に持っているのは何かの鳥肉だろうか。
共食いになるからやめなさい。
ロッテが手を叩いて満面の笑みで畜ぺんに問いかける。
「ロボ丸は頭がいいね!
ぺんぎんさんのことはこれから28ちゃんって呼んでもいい?」
ロッテは英語が苦手なのかおなかの文字が読めないのか?
Swallow’sって書いてあるぞ。
『いいとも』
畜ぺん改め28様が親指を立てながらフリップで答える。
先生は意外に心広いのな。
ロボ丸が、つまみを皆に勧める。
「先日、ロッテ様ガ取ッテ来ラレタ魔鳥ガイイ感ジニ熟成シマシタノデ
ソチラヲ、ヤキトリニシテミマシタ。
ワンコロ様の御指示通リ、魔物ニシテハ食ベラレナイ所ハ骨ダケデシタ。
イロイロナ部位ヲ串打チシマシテ、炭火デ焼キ上ゲマシタ。
味付ケハタレト塩ノ2種類デス。
ドウゾお召シ上ガリクダサイ。」
待て、ロボ丸。
共食いだぞ。精霊と魔物だから界は違うが。
恐る恐る先生を横目で見る。
『うまい!
うであげたね!
るーびーおかわり!』
先生。それでいいのか?
いや、先生は心が広い、心が広い。
ロボ丸が申し訳なさそうに畜ぺん先生に答える。
「申シ訳ゴザイマセン。
ビールハ今オ飲ミニナラレタモノデ最後ニナリマス。」
畜ぺん先生は急に立ち上がると被っていた青いキャップを床に投げ捨てた。
そしてそのままプリプリ怒った感じで戸口から出て行った。
あっけに取られた俺たちは、ただただ茫然としていた。
我に返ったロボ丸が俺たちに謝る。
「大事ナオ客様ニ失礼ヲシテ大変申シ訳ゴザイマセンデシタ。」
皆が口々に謝る。
なんか嵐みたいだったな。
俺は、夢か現実かわからぬような時間を不思議な仲間たちと過ごしている中で忘れていた何かを思い出した。
畜ペン先生。ありがとう。
後日、畜ペン先生はアルコール度数の高い酒を持って再訪した。