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今日も(仮)さんは作業場の部屋にいるみたい。
カイさんにそろそろ昼ご飯の時間だから様子を見に行ってやってくれと頼まれたからこっそり扉をあけて部屋の様子を伺う。
「ロッテちゃん、入っておいで。」
(仮)さんは此方を見ていないのになんで私ってわかるんだろう。
扉を開けて作業机の(仮)さんのところに近づいた。
(仮)さんは初めて会った時はカクカクぎこちなく動いていたのに今ではこんなに綺麗な宝石も作れるようになったみたい。
未だ少し手が震えることがあるけれど集中するとなんとかなるって教えてくれた。
「どう?今回は綺麗にカットできたんじゃないかな?」
(仮)さんがカットしたばかりの宝石を見せてくれた。
今は予行演習って人工石でカットの練習をしているんだって。
(仮)さんが練習している石はカットがとっても大変みたい。
上手くカットできるとダイヤモンドみたいにキラキラ輝くんだよって教えてくれた。
今、(仮)さんが見せてくれている宝石も光り輝いている。
「とっても綺麗ですね!」
ダイヤモンドを未だ見たことがないからダイヤモンドみたいですねって言えなかった。
「私、ダイヤモンドを見たことが無くって。
これってダイヤモンドくらい輝いていますか?」
(仮)さんは瞳も口元もほんわか笑って教えてくれた。
「ダイヤモンドって言うのは永遠の愛を誓う二人が持つ宝石だからね。
未だ、彼氏もいたことがないロッテちゃんが見たことないのは当たり前だよ。
贈ろうと思ったことがあるから見たことがあるけれど、それはそれは綺麗な輝きだったよ。」
(仮)さんには彼女がいるみたい。
私は(仮)さんに彼女がどんな人か聴いてみた。
「すごく強くて優しくて、それなのにちょっと脆くて。
守ってあげたくなる可愛い人だったんだ。
この宝石も彼女が欲しいって言っていた石でね、綺麗にカットしたら指輪にして贈るつもりなんだ。」
絶対に喜ぶ笑顔が見たいからね、って(仮)さんがやさしく微笑む。
ナーガちゃんの恋バナもいいけれど、(仮)さんの恋バナも素敵!
「今度彼女さんと一緒におうちに来てくださいね。」
と言ってランチを食べるためにリビングに行こうと(仮)さんを誘う。
もちろんだよ、と(仮)さんが腰をあげた。
今日のランチは、ロボ丸特製トマトのパスタ。
デザートは私の祖母ちゃん直伝のキャロットケーキなんですよ、と(仮)さんに伝えながらリビングへと向かった。
リビングにみんな勢揃いした。
食べる量が違うからトマトのパスタは大きなお皿で真ん中にドンと置いてある。
大きなミートボールの入ったトマトのパスタにみんな舌鼓を打つ。
「ロボ丸君の作るご飯はいつも最高に美味しいね!
どこかすごいところで料理の修行をしてきたのかい?」
(仮)さんがロボ丸をべた褒めしている。
ロボ丸は律儀にレシピを参照して多少アレンジをしているだけですのでたいしたことではございません、と答えている。
本当はロボットだからすごいんですよって言いたい。
でもカイさんに、ロボ丸が本当はロボットだということを(仮)さんに伝えることは禁止されている。
どこでバレるかわからないから慎重でいたいって言われたけれど(仮)さんは多分いい人な気がする。
だって彼女の話をしているときの顔がすごくやさしかった。
「僕だってねぇ、最近お料理出来るようになったから!
今度作って食べさせてあげるね!」
ワンコロがまたロボ丸に闘志を燃やしているみたい。
ワンコロの作った料理、ナーガちゃんに食べさせてあげたいな。
「ワンコロがお料理作ってくれる時、ナーガちゃんにも自慢したいから今度連れてくるね!」
ワンコロの瞳が左右に揺れて、
「大丈夫、連れて来ていいよ。
僕、ししょーのところで蛇も大丈夫になったから。」
と答えてくれた。
ワンコロ君はどんな料理が得意なの?と(仮)さんが聴いている。
私は、ナーガちゃんが喜ぶ姿が目に浮かぶようでとっても嬉しい気分になった




