21-1
目の前に刀を構えたワンコロがいる。
最近、手足だけだが人間と同じ形に変身というか変形できるようになった。
始めは手だけを人の形にして刀を握っていたが、足も人間と同じ方がしっかり踏み込めるようで両手足を変形できるようになった。
刀は振り方だけでなく足さばきも重要だ。
俺は、武御名方様の見せてくれるお手本の動きにトントントンと|リズムを付けて身体に覚え込ませるように|イメージする。
ワンコロみたいに見ただけでなんでも真似できるチートさを俺は持ち合わせていない。
だからなんども|イメージして、|イメージが形になったら体を動かす。
勿論最初から上手くいかないから何度も鏡をみて動きを修正する。
形ができたら鏡を見なくても同じ動きが出来るようにまた何度でも繰り返す。
同じ動きを繰り返しているはずなのに切り裂けない所がある。
空気の動きが邪魔してほんの数ミリ|ぶ《》れてしまう。
空気の層が阻んでほんの数ミリ|ず《》れてしまう。
行き詰まった俺は座禅を組んでいた。
本当は気持ちを落ち着かせなきゃいけないのに、ワンコロとの差が広がっていくようで気持ちが焦る。
向こうは天才だから俺の壁すら壁になっていないのだろう。
心臓の辺りがぞわぞわする。
じりじりと胃の底がいたくなる。
焦れば焦るほど集中できない俺に、武御名方様がお声を掛けてくださった。
「焦るなと言って落ち着くものでもあるまい。
こういうときは何時もと違ったことをしてみるとわかることもあるだろう。
一度、得物を変えてみたらどうだ。
私の動きは刀の動き、剣とは違う。
私はお前からヒヒイロカネの刀をもらったからな。
私の使わなくなった刀をお前に譲ろう。
普通の刀だが私の神気を浴びて神器となっている。
そんなに悪いものでもなかろう。」
と武御名方様は一振りの刀を手渡してくれた。
「守りたいものを守れなかったことが曾てあってな、同じ思いをさせたくないのだよ。
その腕輪は恋人からの贈り物だろう?
恋愛運上昇の加護がついておる。
愛する者を守れてこそ、一人前の男だからな!」
と、ロッテからもらったバングルを見ながら武御名方様が大笑いされた。
ロッテが俺に彼女がいないことを哀れに感じただけだと思うんだけれど、妹弟子(仮)を大事に思っていることには変わりない。
特に否定することもなく、俺はありがたく武御名方様の刀を受け取った。




