ゆあ&あゆが見つけた二人の女の子 その弐 自己嫌悪
「ねぇ、ゆあちゃん今日も一緒だからね」
「うん、あゆちゃんが居れば大丈夫」
「ねぇ、ゆあちゃんあの子たちどうしたら幸せになってくれるかな?」
「うん、あゆちゃんどうしようか?」
彷徨うふたりは本谷イライザという少女と時田志衣南と言う少女の苦しみを何とかしてあげたいと思っていた。
その二人は同じ学校に通う同級生ではあるものの時田志衣南は美少女霊能者としてブレイク中であまり通学していない事からお互いを良く知らないまま過ごしていた。
本谷イライザは取り巻きだと思っていた友達たちから次第に【嘘つき】呼ばわりされるようになった。
そのきっかけがイライザが3歳の頃、生まれて初めて口にした言葉だった。
「マリーアントワネットってさぁ、パンがなければケーキを食べればいいじゃないって言ってないらしいぜ」という男子の言葉が原因だった。
ネット上でもそういう発言はしていなかったとされて、イライザの友だと言っていた者たちは一転してイライザを蔑み、嘘つきだと無視をしたり、机に大きく【嘘つき女王】などと落書きするようになった。
イライザはそれでも、自分がマリーアントワネットの生まれ変わりであることを疑わなかった。
学校の先生も親たちもやがて、イライザが嘘をついているのではないかという話し合いをしはじめていた。
「ねぇ、イライザ、もし注目されたくて言ってしまった事で困っているならお母さんもお父さんも相談に乗るからね」と両親に言われるも、イライザは本当にマリーアントワネットの生まれ変わりであることを信じてもらえず苛立ちを覚えた。
それでも、虐められても罵られてもイライザは凛とした風格で通学しつづけた。
♢♢♢
「イライザちゃん虐められ始めちゃったね。あゆちゃん」
「なんで嘘つきなんて言われちゃっても大丈夫なんだろうねゆあちゃん」
「イライザちゃんの御付きがちょっとお喋りなタイプみたいだね」と晴彦が言う。
「お喋りなてるてる坊主さんがいるの?」とゆあが聞くと、照彦が
「僕たちも前世は君たちのお父さんだって今は言えるけど、人生をクリアしようとしている間は晴子さんも照子さんも君たちに何も話しかけなかったと思うんだけど、夢の中や、ゆあにとってのあゆみたいにもう一人の自分の方が完全に御付きに情報を貰ってしまっているようなんだよね」と言う。
「晴子さんも照子さんもそういえばお話したの最期だけかもしれないね」とあゆが言う。
「じゃあ、イライザちゃんはマリーアントワネットの生まれ変わりなのは本当なのかな?」とゆあが言う。
「あ、ねぇこれってさぁ志衣南ちゃんだったら何とかできたりしないかな?」とあゆが言う。
♢♢♢
時田志衣南は疲れ果てていた。雑誌のインタビュー、バラエティー番組の霊能者対決、祖母の取ってくる仕事で勉強をする暇も与えられず学校にたまに行っても、先生に当てられることが怖かった。
「勉強したい」と祖母に告げても、そんなのいつでもできるけど、こういうのは旬が短いから今の内に稼いでおくものよと祖母がどんどん高級品で身を包み始め、いつかこの旬が過ぎたらヌード写真集でも出されそうだなとすら感じていた。
すると、時々志衣南が遭遇する双子の女の子たちがそっと話しかけてきた。
「志衣南ちゃんお願いがあるの」この手の問いに答えるのは本当はいけないって分かっているけど、この双子には迷子になった時とか助けてもらった恩がある。
疲れ果てた志衣南は交換条件ありならと話を聞いた。
同じクラスの本谷イライザという子の話だった。
その子が虐められているのを何とかできないかという話だった。
「あたし殆ど学校行ってないからその子の顔も名前も一致しないけど、虐められてるとしてどうしたらいいの?」と聞くと、双子たちは
「志衣南ちゃんならあの子のてるてる坊主たちとお話できるでしょ?」と言う。
「それならあなたたちも出来るでしょ?」と志衣南が返すと双子はウズウズしながら、
「でも、あたしたちじゃ誰にも伝えられないんだよ」と言う。そりゃそうか。
「じゃあ、あたしがイライザ?ちゃんのてるてる坊主と話が出来たら虐めって収まるの?」と双子に聞くと、
「イライザちゃんが本当にマリーアントワネットの生まれ変わりだって事を志衣南ちゃんがみんなに言ってくれたらみんなは志衣南ちゃんの事を信じるからきっと虐めなくなると思うよ」と双子は言う。
マリーアントワネットの生まれ変わりってマリーアントワネットこの世に未練ありすぎじゃない?と思ったが小さい時から変わらぬこの双子を見ているとまぁ未練あるまま人は死んでいくものなのかもねと思った。
この双子の未練がイライザというクラスメイトと関係あるのかは分からないけど、交換条件に祖母のてるてる坊主にお願いして学校に行けるようにしてほしいと言ってみた。
後々考えるともっと違う願い事があった気もしたけど疲れ果てた志衣南には今それしか浮かばなかったのだ。
双子は分かった!といい不思議と祖母が
「テレビも出すぎると飽きられちゃうって子役さんの親御さんから聞いたからしばらくお休みして学校行きなさい」と言い出した。やるなぁ双子と思った。
交換条件をクリアしてもらったのなら今度はこちらが応えなければ何かあるかもしれないからイライザって子を見に行ってみようかなと通学を始めた。
「きゃ~志衣南ちゃん久しぶり~!!どうしたの~!?」
「会いたかったよ~一緒に遊びに行こうよ~」
「インスタに写真あげていい?」
どうでもいい友達とも呼べないクラスメイトたちの声を聞き流してイライザという子を探した。
すぐに見つける事が出来た。洋風の顔立ち、とても綺麗な輝く髪の色、青みがかった瞳の色、落書きされた机に凛とした姿。
この子虐められているのに虐められている感がないけど、とにかく話をてるてる坊主たちから聞かなきゃだけど、それにはまず、あたしがこの子に話しかけなきゃか!?
え?どうしたらいいの?
志衣南はテレビに出る前は気持ち悪がられて、【嘘つき】だと言われて毛嫌いされていて、テレビに出てからは大人たちもクラスメイトも向こうからちやほやしてきたため、自分から話しかけるという方法を知らなかった。
そして、先生に当てられる恐怖もあり、勉強が追い付いていないことも不安の種だった。
そんな時に限って国語の時間に先生に漢字の読みを答えなさいと当てられてしまった。
でも、漢字は台本とかで意外とフリガナは振ってあったおかげか、意外と読めるなと一安心したが、算数や社会や理科や英語では授業そのものが何を言っているのかさっぱり分からなかった。
「勉強しなきゃ」俯いてそう呟いた時、スッとノートの束を机に置かれた。
顔をあげるとイライザがノートの束から手を離し帰宅していった。
あ、今チャンスだったんじゃないのかな。と思ったけど普通ノート全部置いていく?
イライザを追いかけようとすると有名人の友達アピールしたいクラスメイトに囲まれてイライザを見失ってしまった。
家に帰った志衣南はイライザの置いて行ったノートを開いて驚いた。
日本語と多分フランス語の両方で書かれたノートだった。
同じことが書いてあるのかな?とふと思い翻訳アプリを使って見てみたが、日本語の方は授業の内容のようで、フランス語の方はその日クラスメイトに何を言われたのかなどの苦しみが書いてあった。
これあたしに渡してよかったの?
人の日記を盗み読んでしまったようで申し訳ない気持ちになって翻訳アプリは削除した。
日本語の方のノートはきれいに纏まっていて社会は特に理解しやすかった。
算数と理科はなんとなく分からなくもないけど一人では理解するのは難しいな、英語に至ってはもう三か国語だよイライザちゃん・・・・・・と志衣南はゲンナリしてしまった。
「あたし小学校5年生で算数も理科も英語も全く理解できないじゃん。有名だからってこんなのも知らなきゃバカにされるだけだ」と自分がどんなに周りから遅れをとっているのかを知り、自分の事が嫌になった。
一方、イライザは何故自分のノートをたまにしか来ないクラスメイトに貸してあげたのかよく分からなかった。
「クラスメイトなんてマリーと違って平気で裏切るのになぜかしら?」
「でも、あの子に嫌なことを言われたことはないものね」
「有名人だから取り入ろうとしたのかしら?そうなら恥ずべきことね」
「でも、なぜかしら?あの子が気になるのかしら?」
自問自答を繰り返してイライザはふと、あの子が明日来なかったら授業のノート取れない事に気づき、ノートを明日の授業分念のため用意しておくことにした。
ノートに書いたことはすべてコピーを取るように頭の中に入っている。
元々そういうものだとイライザ本人は思っているので過去のノートに執着はなかった。勿論成績も優秀だった。でもマリーアントワネットの生まれ変わりなせいでこんなにも孤独なのかと夜な夜な自分の事が嫌になった。
「一歩すすんだね!あゆちゃん」
「そうだねきっといい方向に進むよね?ゆあちゃん」
毎度毎度の更新気まぐれですが三部作目のレンガの家と同時進行でこちらも書いて参ります。
いつもお読みくださり本当に嬉しい限りでございます。ゆあ&あゆ回もう少し続きます。




