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ツガイ


 金貨が10枚貯まった。

 勿論レオにお支払いしてるし、雑費なんかも差し引いて。レオと一緒に村を3つ経由した、それでもまだまだ王都は遠いと言われてしまった。

 あの私が落ちた最初の村、辺鄙すぎるわ。


 それとこの財布のお金、実は私のお金なんだって。


「その金は大切に使った方がいいぞ」

「え?なにかあるのこれ?」

「ああ、今支給されてるのは将来ミッファがギルドに入って返す金だ、いわゆる勝手に借金させられてる」

「えっ!只でくれてる訳じゃないんだ」

「落ちた先から王都に来るのに村だと路銀すら渡せない貧しい所もあるからな。

 未来のお前の稼ぎから支給してるもんだから、貯めといてギルドに返すのでもいいし、そこは好きにしたらいいが、王都に着くのが遅くなる分、借金は増える事になる」

「こ、怖いわ」

「タダより高いものはないからな」


 全くその通りだ。

 

 そんな感じて今日ものんびりとレオと話しながら王都に向かっている。


「あぁ村が見えたな」

「やった、宿に泊まれる」

「そうだな」


 レオがおかしくなったのは、村に入って直ぐだった。


「…まさかっ!そんな」

「え?レ、レオ」


 レオが猛スピードで村の中に消えてしまった。ポカンと見送る。

 まあ、きっとご飯でも見付けたんだろうと、この時は吃驚しただけで気にしなかった。

 でも、レオは夜になっても戻ってこなかった。


「何処行っちゃったんだろう…」


 先に村の宿屋に宿泊した。

 いつも一部屋に泊まっていたから、久しぶりに一人の空間に心細い。


 悪夢を見た。

 じっとりと嫌な汗をかいている。


 結局レオは昼になっても戻らなくて、流石に心配になり宿屋の親父さんに聞いてみた。


「すみません」

「なんだい?」

「あの。護衛を頼んでいた人が、何処かに行って戻らない時って何処に相談したらいいんでしょうか」

「その護衛ってのは獣人かい?」

「はい、見た目は黒い熊で…」

「あぁいや、護衛中なのに獣人がどっかいっちまう理由はひとつだけさ」

「え?」

「この村にその獣人のツガイがいたんだろうよ」

「ツガイ…?」

「姉ちゃん落ち人かい。この世界の獣人には生まれた瞬間から決まった相手がいるのさ。見つかるかどうかは別だけどな、そんな獣人の本能の相手が見つかったら、死ぬまでツガウからツガイっていうのさ」

「一生つがう…」

「ま、今は蜜月ってやつだろ。早くて1週間長くて1ヶ月は出て来ないな。それが獣人の本能だからなぁ」

「…1ヶ月。あの教えて頂いてありがとうございます」


 呆然としながら、親父さんに今日も泊まると告げて部屋に戻った。

 

 ツガイ。


 頭がグラグラして胸が痛い。そんなまさか、いつの間に?

 レオに恋してると気が付いた瞬間に失恋していた。最速失恋なんてあまりにも酷い。

 その日はひっそりと死んでしまった自分の恋心の為に引きこもった。



 次の日もレオは姿を見せなかった。しっかりと旅仕度をして、世話になった親父さんにお礼を言う。


「昨日食事持ってきて貰ってありがとうございます、助かりました」

「なに、気にするな。誰だってそんな時はあるさ。気分は良くなったか?」

「はい。お陰様でなんとか」

「そうか」

「それで、この村に護衛の仕事をしてる人は居ますか?」

「あぁ。それなら村の西に小さいがギルドがあるんだ。そこで聞いてみな」

「行ってみます。あとこれ良かったどうぞ」

「なんだいこれ!凄いな。器用だな姉ちゃん。ありがとうよ」


 宿屋の精算をして、親父さんに折り鶴を渡し西にあるギルドへ向かう。

 レオとは契約書はあるけど、この状態だと流石に仕事をして欲しいなんて言えない。待ってても仕方ないと昨日自分に折り合いをつけた。


 溜息をついて前を向いた。

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