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 村の西側には、民家の軒先に看板が掛かっている程度の小さなギルドがあった。

 宿屋を出た時には天気が良かったのに、辺りはすっかり霧が立ち込めて鳥肌がたつ。


 緑の扉をノックするとどうぞと声が聞こえた。

 入ってみると中は意外にも広く、こじんまりとしながらも落ち着ける雰囲気だ。カウンターに女性がいる。


「すみません、初めて利用するんですが何か手続き必要ですか?」

「登録冒険者様ですね」

「スミマセン、落ちた村でろくな説明受けて無くて。その登録冒険者っていうのはどういう?」

「はい、それではその説明も兼ねてお教えしますね、どうぞ椅子にお掛けください。私は、担当のエマと言います」

「あ、私は笹書美穂です」


 なんか、物凄く丁寧だ。ちょっと感動する。


「どうぞ資料です。私達の世界にええと…セアセアガア…」

「美穂です」

「ミ…ミッ」

「ミッファで結構ですよ」

「申し訳ありません、出来るだけ発音したいのですが中々。ええとミッファさんが落ちてきます。これを落ち人と言います。ここまでは大丈夫でしょうか?」

「はい」

「では、何故落ちてくるかというと。次元の穴所謂(いわゆる)ワームホールから落ちてきます。この穴は此方の生き物全てが出す魔素が溜り濃度が濃くなると次元の壁に穴を開けてしまいます」

「穴…」

「はい、穴は溜まった魔素を吐き出す瞬間に閉じるのですが、そこに人や生き物がいると落ちます。これが落ち人です」

「え、もしかして落ち人ってただ運が悪いとかですか?」

「いえ、まだそこまで解明されていませんが、逆に目当の人を落とす為に穴を開けるという学者もいます」


 落ち人目当に穴が開くとか怖すぎる。そっちの説怖すぎる。


「なるほど」

「落ち人は、どの国でも喉から手が出る程欲しい人材です、かつては落ち人の取合いで戦争になったほどですし、それでは世界が滅んでしまうという事で協定が出来ました」

「協定…凄いですね」

「はい。落ち人は落ちた国の庇護を受けます。そのひとつとして登録冒険者制度です。これにより落ち人は一旦国の中枢に集められてから、再度こちらの教育や知識を学ぶ事ができます」

「それが王都に行く訳なんですね」

「はい。その通りです、ですが登録冒険者制度を悪用と言いますか、形骸化して自分達の都合がいいところだけの利益を受け取り、肝心のミッファさんのケアをしない人達がいるのも事実です」

「あぁ、それで」

「お恥ずかしい話ですが、僻地に行けば行くほどその傾向が強いです。

 なので私共のようなギルド監視委員会が比較的僻地で仮設ギルドで簡易受付けをしております。今まで苦労されたでしょう。本当に申し訳ありませんでした」

「そんな。エマさんのせいではないですから」


 頭を下げて謝罪をしてくれたエマさんに慌てる。笑顔を見せてくれたエマさんに親近感が湧く。


「実はその冒険者専用の鞄が発行されたと、王都から連絡があったのと。ムールン様からも連絡が入っておりましたから」

「ムールン様?…ああ、レオナルド」


 やっぱりレオは凄い有名人のようだ。…思いだしたら悲しくなってきた。


「そう言えば、ムールン様は」

「ええと、その、この村についた途端に護衛の契約をしていたのに何処かへ消えちゃって…」

「まぁまぁ!ツガイですね!お目出度い事です。しかもこの村にいたのですね」

「レオって凄い人なんですか?」

「それはもう。ミッファさん幸運でしたね、あまり詳しくは言えませんがムールン様は英雄ですよ」

「なるほど、凄い強かったもんな」

「ムールン様にツガイが見つかったとなると王都までは別の護衛を紹介しましょうか?」


 やっぱりレオは無理なんだな。ズキッと胸の奥が痛む。


「はい。紹介して欲しいです」

「畏まりました、手配に数日お時間かかるかもしれません」

「あ、待ってます」

「それでは手配致しますね。最後にミッファさんを冒険者ギルドに登録致しますね」

「はい」

「ギルド登録用紙を渡されていると思うので出して頂けますか?」

「はい」


 鞄から用紙を取り出してエマさんに渡した。


「はい、確かに王都ギルド発行と確認致しました。ではこちらに、必要事項の記入をお願い致します」


 記入してエマさんに渡した。


「はい、それでは適正の確認と登録の為に血を一滴頂きます。小指にチクっとします。はい、完了です」



 名前・笹書美穂

 職業・無職

 レアリティ・ノーマル

 スキル・おみくじ1、注視7、治癒5


「はい、お疲れ様でした。こちらがギルド証になります。失くさないように、お気をつけ下さいね」


 そうして渡されたのは!ほんのりと淡く光る白い石がついたピアスだった。


 


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