柚へ 〜他月の本音〜
『ここの計算どうやってするんだっけ....』
柚は二階の自室で勉強をしていた。
弟が二人、お父さんとお母さんと柚の5人家族だ。
(お父さんは、私のことが嫌いだと思う。)
お父さんは、一番最初に女の柚が産まれて、男の子を望んでいたお父さんはずっと怒っていたらしい。
その後、弟たちが産まれて機嫌は良くなったらしいが、柚とお父さんが仲良くなることはなかった。
小さい頃みんなが持ってた人形も買ってもらえなくて、ピンクとか可愛いものも買ってもらえなかった。
お母さんが内緒で、ピンクのハンカチを買ってくれたがお父さんにバレてしまって、怒られた記憶がある。
お父さんは
『なんで、女が産まれたんだ!お前なんていらなかったんだよ!』
こんなことを言われてしまった。
心配症のお母さんは、泣いてる私を必死に励まして、私のピンクのハンカチで涙を吹いてくれた。
今でも柚とお父さんは仲が良くなかった。
それに....
(彼氏がいるなんて知ったら、取り返しのつかないことになってしまう。)
『おい!柚!!』
そんなことを思っていると一階からお父さんが怒りながら二階に上がってきた。
『柚!どういうことだこれは!』
お父さんは、他月と一番最初に撮った写真を見せていた。
『友達』
『ここに[彼女]って書いてあるのはなんだ?』
『....もう!うっさいな!彼氏くらい作ったっていいでしょ!?私は女なの!好きな人くらいできるから!』
『なんだその口ごたえは!だいたい、お前は男に産まれるつもりだった。だけど、急遽女になったんだよ!男と付き合うなんて許せん!すぐに別れろ!別れるまで家には入れん!出てけ!』
『いった....』
柚は頬を叩かれた。
『早く!出てけ!』
一階に下ろされて、玄関まで押された。
弟たちとお母さんは、心配そうに見てきた。
『あーあ。追い出されちゃったじゃんか』
好きなことは、バスケだけ。あと体育とか。勉強はできる方らしいけどすきではない。
ズボンのポケットには、携帯が入っていた。
『別れるまで家に帰れないとか....。別れたくないよ....』
泣くのは好きじゃないのに、泣いてしまう。
小さい頃から泣き虫なのは変わらなかった。みんなには、見せないだけ。
行くところもなく、ただ歩いていた。
『どうすればいいんだろう。』
たどり着いたのは、近くの公園のベンチだった。
座ってLINEを開いた。
(相談するのがいいのかな。でも、誰に相談すれば....)
『柚?』
公園の入口から声が聞こえた。
振り返ると中学から一緒の優也だった。
『優也....』
『あれ?柚、泣いてるの?何かあった?』
バイト帰りだろうと思う。
『親と喧嘩しちゃって....他月と別れるまで家に入れてくれないんだ....』
『そんな、ことがあったんだね....。そのことはもう他月に言ったの?』
『まだ言ってない。別れるなんて言いたくない。』
『そんなこと知ってる(笑)僕が言ってるのは、他月に相談したら?ってこと。この5人の中で柚のことを一番理解しているのは、他月だと思うよ。』
『だよね。』
『電話するの?』
『うん。』
『そっか。じゃあ、僕は先帰るね。夜遅いから気をつけてね。ばいばい!』
『じゃーね』
優也は、カバンを肩にかけ直して行ってしまった。
柚は、携帯を開いて他月に電話した。
『もしもしー。柚?どうしたの?』
『他月....あのね』
他月の声を聞くと安心した。
『お父さんと喧嘩して....』
この先が詰まって、泣きそうになってしまった。
『どうしたの?なにかあった?』
他月は心配して聞いてきた。
『喧嘩して....家、追い出されちゃった...』
我慢ができなくてまた泣いてしまった。
『今、どこにいる?会いに行ってあげる。』
求めていたことを他月は、言ってくれた。
行ってあげようか?じゃなくて行ってあげるって言ってくれたから安心した。
『○○公園....』
『わかった。すぐ行く』
他月は、すぐに電話を切った。
『こんなに優しくしてくれたら、別れるまで家に帰れないなんて言えないじゃん....』
そして、5分後
『柚!!』
公園の入口から、息切れして走っている他月がいた。両手に2本缶ジュースを持って。
『どうしたの?喧嘩したって聞いたから』
『........』
理由を言うのが嫌だった。
『喉乾いた?オレンジジュースとリンゴジュースどっちがいい?』
『リンゴジュース....』
『はい!....親って両親?』
『ううん。お父さん』
『どんなこととか....言える?』
『た....』
『た?』
『言ったら、嫌う?』
『んなわけ(笑)』
『他月と....』
また、涙が出てきてしまった。ほんとに泣き虫。こんな性格大ッ嫌いだ。
『俺、柚を不快にすることした....んだよね。ごめん。』
『違う....』
『え?....』
『他月と別れるまで家に入れてくれない....。でも、別れたくない....』
泣きながら言ってしまった。
『....よく頑張ったね。俺に伝えてくれてありがとう。俺も別れたくない。だって、俺が決めた最高の恋のパートナーだし。そんなパートナー手放したら生きてけない(笑)』
『どうすればいいかな....』
『お父さんはなんで俺と柚を付き合わせちゃダメなの?』
『私のお父さんは、私のこと嫌いだから。男じゃなかったから。強くならなきゃいけないのに、泣き虫で弟たちとは仲良くできなくて、喧嘩してお父さんに怒られて、心配症のお母さんに心配かけちゃって。今日だって他月と付き合ってること、嘘ついて怒られて。』
『俺は、柚は柚のままがいい!』
『え?』
『泣き虫だっていい。無理して強くならなくていい。男の子ぽくなくたっていい。俺にいっぱい当たっていいし、泣いていい。俺の服でいいなら涙でびしょびしょにしても構わない。甘えたかったら甘えていい。ほしいものあったら買ってあげる。我慢しないでいい。行きたいところあったら、気が済むまで一緒に楽しもう?柚が俺にお願いあるなら俺が死ぬ前に全部叶える。柚と付き合う前にそう決めたんだ。約束は守るよ。絶対に』
『他月....』
『俺が今まで思ったこと全部言った(笑)』
他月は、こっちを見て少し笑った。
『じゃあ、お願いきいてもらっていいか....?』
『おう!どんなお願い?』
『今日、他月の家に泊まっていいですか....』
『いいぜ!今日は、お父さんとお母さんが結婚記念日で、アメリカに行っちゃったんだ。明後日?まで羽月と2人だから来ていいよ!』
羽月は、他月の弟。
『ほんとに?いいの?』
『叶えるって言っただろ?それに羽月と話したことあると思うから、接しやすいと思う!』
『うん。ありがと....』
『よし!じゃあ、行こうか!』




