13話:セナの家にて……(1)
『ちょっ……萌花、今何処にいるの!?』
携帯からセナの美しく高い声が聞こえてきた。
『分かんない!! セナにむりやり車に乗せられて……』
『あっ、そういう事ね。わかった』
そういう事ってどういう事!?
そう言い返す前に強引に電話を切られた。
「天童君。一体何処に行くつもり?」
ある程度、冷静な声を保ちながら尋ねた。
「家。僕の」
……家!?
何言ってんのコイツ!?
呆れた目で見ると、セナは意地悪な笑みを浮かべた。
「もしかしたら……なんてね」
驚いて目を見開いた。
大丈夫……だよね!? コイツ、意外と紳士的だし……。
「やっぱり帰ろう! 高校生というものは健全なお付き合いをすることであり……」
そんな私を見て、セナは吹き出した。
「あははっ! 大丈夫だよ、萌花。僕はそこまで飢えてない」
セナはその後ずっと爆笑するかたちだった。
ちょっと失礼なんですけど……。
「家って一人暮らし?」
「違うよ。母と一緒に住んでるんだ」
「お母さん、家にいるの?」
「うん」
じゃあ、セナのお母さんとご対面かぁ……。
すごく綺麗なひとなんだろうなぁ……。
「ついたよ」
その車は大きい豪邸の前に止まった。
なにこれ……でかっ!?
セナってこんなに金持ちなわけ!?
「なんでそんなに驚いてんの? 行くよ」
驚くでしょ……普通。
ホワイトハウスにも見えてきた……。
「お帰りなさいませ。セナ様」
ずらっと並んだのは執事からメイドまで……。
どこの国だよ、ここ!?
「ただいま」
セナはこんな光景に驚く様子もなくにこやかに返事をした。
慣れてるんだなぁ……。
「なんか、お坊ちゃまって感じね」
「その呼び方やめよう?」
笑顔の裏にうっすらと黒いものがたちこめたので、私は急いで口をつぐんだ。
そんな私たちの前に現れたのは美しい女性。
「ただいま、セナ。こちらの方は?」
「萌花だよ。学校の友達」
セナに紹介されたので、その女性にぺこっとお辞儀をした。
「母だよ。ベラ、天童ベラ」
セナは私のそっと耳打ちをした。
しかし、ベラというこの女性は本当に美しかった。
レアに少し似ている所もあるが、色気が少しでていて……大人って感じ。
「初めまして。萌花、さん?」
にっこり微笑んだ表情はセナとレアに非常に似ている。
しかし、私はその表情には少し黒いオーラが立ちこもっていたのにも気付いた。
そんな様子にすこし悪寒が走るのだった。




