一話 始まり
ここは自然界。自然をつかさどる神々がくらし、統治している。季節があり、穏やかで涼しい風、ゆらめく木々、美しい景色。動物たちも仲良く暮らしている。
そんな素晴らしい世界。しかし、突如、何者かに襲撃され、その平穏もいまとなってはもう失われてしまった。不気味な風が吹き、木々は燃え、動物は死ぬ。
さらには、神々までもが、力をうばわれ、洗脳され、奴らの手駒となっている…
私は幽谷深山。昆虫の神だ。なんとか、あの襲撃を生きながらえることができた。他にも、逃げてきたものはいる。だが、皆が力を奪われ、戦うことのできぬ状態だ…私も力を奪われはしたのだが、昆虫の中の、クワガタの力だけはとられずに済んだ。戦える者は私しかいない。あの平和だったこの世界を、取り戻す。
私たちの逃げた秘島には、五柱程の神が残っていた。
「では、幽谷深山、必ず平和を取り戻して見せます。」
深山は真剣な表情で言う。その瞳からはやり遂げるぞという意志を感じる。
「頼みます。我々に力がないばかりに、あなたのようなまだ若い者に任せるだなんて…不甲斐ないういですわ。」
大地の神はやりきれなさのにじんだ声で言う。
「仕方がないことなのです。それでは、行ってまいります。」
深山がこの秘島を後にしようとしたとき、
「待って!!あたしも行くわ!」
そう、耳がキーンとするような大声が飛んできた。
「鳥矢。どうしたんだ?」
(鳥矢 隼。私は正直苦手だ…何かと私にちょっかいをかけてくる。いつか食われる気がするわ。)
「深山、あたしもついて行くわ。確かに力は奪われてしまったけれど、元の目の良さは健在なんだから。」
鳥矢は自信に満ちている。
「だが…力がないじゃないか。死んでしまったらどうするんだよ。」
「鳥の神を舐めないで頂戴。速さには自信があるわ。まずはこの島から出るの。目指すは豊穣山よ!」
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「さあ、船を用意していくぞ。」
「船でいくの?あたしたちは飛べるじゃない。」
「私たちだって飛ぶのに力をつかうだろ。なにがあるかわからないんだし、できるだけ温存するんだ。それに、鳥矢はまだいいかもしれないが、私は飛ぶのがそこまで得意じゃないんだ。昆虫だからな。」
二人は船を海に出した。ここを伊吹海という。
秘島から陸地まではそれなりの距離がある。あたりは静まり返って、波の音だけが
響いている。




