第8話 農家、ピンチ
地面が崩れ、舞い上がる土煙。
生徒たちは必死に体勢を立て直していたが、その中で水城教官の眉間には深い皺が刻まれていた。
「……これは、自然崩落じゃない」
低くつぶやいたその声に、拓海は顔を上げる。
「人為的な仕掛け……ですか?」
「ええ。土の削り方、支えの組み方が人工的すぎる。誰かが意図的に作ったわ」
その言葉に、ざわめきが走る。
「教官、どうします? 試験は中止に……」
別の教官が提案するが、水城は険しい目で周囲を見渡す。
しかしその前に、前列にいた男子生徒が声を上げた。
「せっかくここまで来たんです! 最後までやらせてください!」
「そうだ! 中ボスまでは行ける!」
「ここで諦めたら卒業試験にならない!」
生徒たちの懇願に、水城はしばらく沈黙した後、ため息をついた。
「……わかった。だが、全員、警戒を緩めるな。何かあれば即撤退する」
中ボスとの遭遇
奥の広間へと足を踏み入れると、巨大な狼型モンスターが姿を現した。
黒く光る毛並み、獰猛な牙。
「来るぞ!」の声と共に、戦闘が始まった。
序盤は順調だった。レイカの召喚獣が前線を支え、拓海が農具術で援護する。
「いける……このまま押し切る!」
生徒たちに希望が見えたその時――
「……待っていたぜ」
岩陰から、見覚えのある自衛隊員3人が現れる。
先頭は佐藤――憎悪を隠そうともしない目で拓海を睨んでいた。
その手には、淡く紫に光る石。
拓海は息を呑んだ。
「あれ……魔晶石じゃないか!?」
佐藤はニヤリと笑い、Cランク魔晶石を中ボスの口めがけて投げつけた。
カラン、と鈍い音を立てて飲み込まれる石。
同時に、後方からレイカの悲鳴が響く。
「なにを――っ!?」
振り向くと、一般覚醒者の一人――中堅の剣士が、レイカの召喚獣の口へ同じ石を押し込んでいた。
「お前……まさか裏切ったのか!?」
次の瞬間、中ボスと召喚獣の体がまばゆい光に包まれた。
魔力の波動が広間全体を揺らし、生徒たちは膝をつく。
「全員、下がって!」
水城教官の鋭い声が響く。
「モンスターに大量の魔晶石を与えると、魔力が暴走して進化する! しかもCランク……私たちでも対応できない可能性がある!」
中ボスの毛並みは黒から深紅へと染まり、召喚獣の瞳は蒼く輝きだす。
地響きのような咆哮が広間を満たし、空気が一変した。
「まずい……このままじゃ――」
拓海は唇を噛み、目前で進化していく二体の巨影を見据えた。
ラスボスまで行かない理由は、ダンジョンを攻略してしまうと復活までに時間がかかるので、他の訓練生が困るというだけです。




