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第7話 農家、卒業訓練に行く

岩国の朝は、まだひんやりと肌を刺すような空気に包まれていた。

訓練校の生徒たちは、緊張した面持ちでダンジョンの入口に集まっている。


「これが最後の実習だ。くれぐれも気を抜くな」

水城教官が静かに告げる。彼女の視線は拓海に向けられていた。

「ステータス封印は解除しない。万が一のことがあれば、私がすぐに対応する」


拓海は頷いた。能力を抑えられたまま挑むのは不安もあったが、ここで甘えてはいられない。


隣に立つレイカも緊張の色を隠せずにいる。

「拓海、私たちなら絶対乗り越えられるわ」

彼女の声に励まされ、拓海は力を振り絞った。


一方、別の日程で訓練に臨む自衛隊組の佐藤は、拓海への嫉妬を募らせていた。

「チッ……あいつだけ特別扱いかよ」

何度敗北しても、心の底から拓海を認められない。


その復讐心は、密かに仕掛けた罠に託されていた。

「これで一網打尽にしてやる」


一般覚醒者組の隊列は、慎重に足を進める。

レイカが召喚したモンスターたちが、先陣を切って敵の気配を探る。

拓海は農具で戦闘に臨みながらも、防御に徹することを意識していた。


「攻撃は最小限で、連携を崩さない」

心の中で自分に言い聞かせる。


だが、封印されたステータスは確実に重くのしかかり、体力は限界に近づいていた。


「気をつけて!」

レイカの叫びが響く。


突然、足元の地面が崩れ落ち、数名が罠に落ちてしまった。

敵も一斉に襲いかかり、混戦が始まる。


拓海は咄嗟に農具を振り回し、仲間を守ろうとする。

「誰か……罠を仕掛けた奴がいる!」


振り返ると、薄暗い影の中に佐藤の姿がちらりと見えた。


「まさか……」拓海の心に怒りが燃え上がる。


罠によって追い込まれた拓海たちだったが、レイカの召喚モンスターが敵の動きを封じる。

拓海は農具術とスキルを組み合わせ、攻撃の機会を見つけ出す。


「みんな、まとまって動け! 一気に畳みかけるぞ!」


連携が徐々に取り戻され、敵を押し返していく。


「これで終わりだ!」拓海の声に呼応し、仲間たちは力を合わせて最後の一撃を放つ。


罠を仕掛けた佐藤も退却し、ダンジョンの中ボスの元へと進む道が開けた。


「俺たちは、ここまで来たんだ。必ず最後までやり遂げる」


レイカが微笑みながら頷く。


拓海はまだ完全に自分の力を出せていないことを痛感していたが、仲間との絆と農具術を信じて前へ進む決意を新たにした。


その背後では、彼を陥れようとした者の影が、まだ消えてはいなかった。

二章クライマックスです。

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