13話
本当は間に回想話があったんですが、蛇足かなぁと思って削りました
またオリーの言葉がおかしくなってたので修正
* オリー *
高校の同級生のかっつんなら僕と違って色々無駄な知識を貯め込んでたから、こういう事態でも対処出来るんじゃないかな。ほんとになんで僕だったのか。
とりあえず、今できることを考え直そうか。自分の知識や技術を見つめ直すんだ。目標も定めないと。あとは猫たちに出来ることも含めればかなり幅が広がるかな。
というか、この猫たちがいれば出来ないことも無いだろ! くらいの気持ちでいよう。うん。
僕はひとりじゃない。こんなに頼りになる仲間がいるんだ! 猫だけど。本当にどうしようもなくなって、家にも帰れないって判明したら、ビアンコに猫にしてもらおうかな……。
噴水に座ってぼーっとしてたら、いつの間にか猫たちが背負い袋から出てきて膝に乗ってた。両手を使って二匹とも撫でてる。傍からみたら何も考えてないように見えるんだろうなぁ。
「おーい、待たせたな」
ヒューが戻ってきた。流石に今は制服を着てないな。最初に見た汚い革鎧も着てない。座って姿勢から見るとほんとデカイなこの人。
猫たちを改めて背負い袋に入れ直して立ち上がる。
「歩きながら話すぞ」
そう言って先を進むヒューを追いかけるように早足になる。
「先に行っておくが、俺には期待するな。俺が今住んでるところは定宿の無い衛士が住まわせてもらってる大部屋なんだ。無関係の人間を入れるわけにはいかない」
残念だがそれは無理だろなぁ。
「ニャるほど」
「あと、貸せる程の金も無い。俺も衛士になってまだ一週間経ってないから給料出てないしなぁ」
あぁ、そりゃ無理だろうねぇ。
「元々お金もってそうには見えニャいニャ」
「うるせえよ。で、この町にきたのも十日ほど前なんで、紹介できるツテも無い。というか、お前さんの方がよっぽど縁故があるんじゃねえかなぁ」
ヒューもここに来てまだ長くないのね
「そんな最近だったのニャ」
足を止めて僕の言葉に頷いてみせた。
「だからまぁ、とりあえず雨をしのげる場所をってなると」
東大通りから南の通りへ曲がって、さらに幾度か曲がっただろうか。ココはおそらく、ニールの南部になると思う。
だんだん周囲の建物もボロくなってきて、道端にしゃがみこんでいる人間や物乞いが多くなってきた。
「貧民街になっちまうんだよな」
えっ、正直に言うと嫌だ。今の僕が選り好みが出来る立場じゃないのはわかってはいるけどね。うぅ、あの伯爵家の綺麗な離れが懐かしいよ!
周囲に目をやると皆さんめっちゃこっちを見てる。ヒューはまだ溶け込んでる感じがする。僕は黄色人種ってこともあって凄い浮いてる気がする……。
「あー、気に入らねえよな? うん、そりゃわかるんだが。ここ以外つうと、城壁外に張り付いて住んでる難民とかの方くらいしか無いぞ」
そっちはここよりも酷えからなぁ……、あそこは俺でも嫌だわ、と。
「俺は結構気に入ったぜ? 面白そうなところじゃねえかよ」
背負い袋から上半身だけ出したカルネが、僕の肩に頭を乗せて辺りを睥睨してる。
「まだ中に入っててくれニャ。あと喋らニャいでニャ」
「あいよ」
そう言ってカルネはまた背負い袋に潜っていった。
「とりあえずこっちな。この街に転がり込んできたときに、俺がちょっと住んでたこともあるからまだましだと思うぜ」
遅れないようについていこう、と思ったら、先を進んでいたヒューが足を止めて、暗い路地の向こうを見つめている。
「今のやつ、こっちを見て逃げやがったような? いや、勘違いか?」
「どうしたニャ?」
なんでもねぇ、と言ってヒューは再び歩き出した。
連れて行かれたのは廃墟の二階の一室だった。壁の一面が派手に壊れてるし、天井から空が見える。冬はしんどうそうなところですね……。
「やっぱりまだ空いてたか。ここらの住人でも住まねえような場所だからなぁ……。ま、あくまで当座の住処ってことでな」
家具は何もない。正確に言うと壊れていないものは。部屋にあるものといえば、椅子やテーブルの破片が転がってたりするくらい。
床に背負い袋を置くと、ビアンコとカルネが這い出てくる。
「なかなか住みやすそうなところじゃねえか。俺は気に入ったぜ!」
また言ってるよ。
「住めば都とも言いますしね。私も問題ありませんよ」
君らは羨ましいな……。
「えーっと、寝具の類は全くニャし?」
ヒューからちょっと驚いたような目で見られる。
「あると思うか?」
「デスニャー」
「あぁ、水場とここらの住人が使ってる便所は教えておくわ」
そう言って部屋から出たヒューが階段を降りていく。
「あとで周りの住人に挨拶しと、うおっ」
なんだ? 急いであとを追った。猫たちもついてくる。
粗末な身なりをした男がヒューに斬りかかってた。咄嗟に転がって難を逃れるヒュー。その男の後にいたもうひとりがこちらを指差した。
「居たぞ! 二匹の猫を連れた西方人だ!」
二人だけかと思ったら後からさらに出てきた。皆手に獲物を持ってる。
「そこのヒゲは関係ねえ、目当ての西方人だけでいい!」
あ、完璧に僕がターゲットか。なんだ、誰の差金だ?
ヒューを追い立ててる一人以外は階段を駆け上がってきた。剣や短剣、ハンマーを持ってる。
「死ねやぁあああああああああああああああ!!!」
「お前らがな」
「下品な獣どもが。このビアンコ容赦せん!」
「猫どもが! 邪魔だァ!!」
ハンマーを振りかぶった男に向かって。ビアンコが。口から火を吹いた。先頭の人間どころか、その後に続いた男3人も炎に包まれた。
声にならない悲鳴をあげる男たち。
「うぎゃあ、熱っ、あっっつ!!」
あ、飛び火した。ヒューが転がりまわってる。
「ビアンコ、水も出すニャ! ヒューがヤバイニャ!」
面倒ですねえと言いつつも、ヒューの火を消し止めた。部屋の中を水浸しになったのは仕方ないね。襲ってきた四人の内、生きてるのは一人だけだった。ヒューの相手をしていたのが殴り倒されて気絶してる。
階段下に転がる死体をまたいで一階に降りる。
「少し火傷しちまったじゃねえか! 建物の中で火なんか使うなよ! 最悪自分たちも火にまかれる!」
「なるほど、盲点でした。次があったら気をつけますよ」
全然悪気が無さそうなので僕が代わりに謝っておく。
「ごめんニャ、よく言って聞かせるニャ。ところで今のやつらは一体何だニャ」
カルネが表を伺う。
「おい、まだ来るみたいだぞ」
「次はカルネ、お前が行きなさい」
「確かに襲いかかってきたのはあいつらだけど、こんな派手にぶっ殺すと色々問題があるんだがな……」
そう言いながらもヒューは敵が落とした剣を拾って廃墟から出た。
「懸賞金は俺んだ!!」
「西方人なんざぶっ殺してやるぜ!!」
嬉々として走り寄る男が二人。
一人が走りざまにカルネを蹴飛ばそうとして、その足を失い、派手にすっ転んでいった。
「あぁ~~?!?!」
自分に何が起きたかわからずに転がってる。
「てんめぇ~~~!!!!」
それを見ていた二人目がそのまま剣を振りかぶってカルネに狙いを定める。が、その剣が振り下ろされることはなかった。その体をカルネが駆け上がりながら、顔を引っ掻いた。カルネにしては非常に穏当な措置だなぁ。
「命は助けてやるぜ。まぁ俺らに手を出そうとした報いを受けな」
男は顔を抑えて悲鳴をあげた。
「こいつらから事情を聞くとしよう。とりあえずどこかに身を隠さないとお代わりがくるかもしれんからな」
ヒューが足を切られた男を殴って気絶させると傷口を縛り上げた。
顔を切りつけられた方はまだ痛みで喚いてる。
「少々煩いですね。こうなるのでしたら私が処理すればよかったかもしれません」
「文句言うなら次は兄貴がやれよー」
「ふたりとも周りを警戒してくれニャ?」
「一人しか運べんから、他は捨てていこう。最初に気絶させたやつだけ連れて行く。残りの二人は血を流しすぎたからな。鼻の利く亜人が居たら跡をつけられかねん」
男を担ぎ上げたヒューが、顎で行くぞと示してみせる。あ、背負い袋取ってこないと。急いで二階に上がって空の背負い袋を拾い上げ、ヒューを追う。猫たちはもう袋に入れないでそのまま自分の足でついてくる。
「おっと、これを被って顔を隠してくれ」
ヒューが男からむしり取ったフードをこちらに放って寄越した。
「猫たちも出来れば、屋根伝いで歩きながら、離れてついてきてもらえるとありがたいな。もしかしたら猫を連れた西方人っていうのが目印かもしれねえ」
可能性は高そうだ。というかそれしか無い気がする。ヒューは違うみたいだしね。早足でヒューのあとを追いながら声をかける。
「そんな人間運んでたら目立たニャいのかニャ?」
「この辺りならよくある光景だろうから大丈夫じゃねえか?」
実際そうだったらしい。誰にも見咎められることなく、少し離れた空き家を探し当てることが出来た。というかさっきの廃墟よりこっちの方が良いじゃん! ここに住もう!
「多分ここらなら大丈夫だろう。一応猫たちも人がいるか確認してくれ」
「んー、大丈夫じゃねえか?」
そこら中に人は居るんだが、どいつもこちらを気にして無さそうだ、とのこと。
「ちょっと周囲を警戒しといてくれよ」
扉を閉め、男に猿ぐつわをかましてから喝を入れた。くぐもった声をあげながら男が目を覚ます。
「これから猿ぐつわを外すが、声を上げたら殺す。質問にだけ答えろ。さもなければ殺す。お前の仲間は五人とも死んだぞ」
生きたまま、足の先からこいつらに食わせた。と猫の方を見ながら言った。いや、大人5人を猫二匹で食べるのは無理だろ。信じるわけがない。
男は怯えも顕に首をぶんぶんと音が鳴りそうなほど縦に振った。信じるの? マジで?
「お前たちは何者だ?」
「く、黒の刃だ」
それを聞いたヒューが男の右袖をまくって肩を露わにすると、そこには黒くて細長い十字の入れ墨があった。
「この都市の裏を牛耳ってるって話の盗賊結社だ」
僕の方を見て簡単に説明してくれた。それからまた男に向き直って問いかける。
「何故こいつを襲った?」
ヒューが僕の方を顎でしゃくって示す。
「殺害依頼があったんだ。猫を連れた若い西方人の男を殺せって」




