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猫二匹と始める異世界下水生活  作者: 友若宇兵
第二章
37/75

12話

一話分投稿ミスってたので追加になります

* オリー *



 早朝、日の出とともに、家宰さんが離れを訪ねてきた。叩き起こされて、顔を洗う暇もなく裏口から放逐される。そのことに異論はないよ。猫たちが若干機嫌を損ねてるくらいかな。


 その足で東大通りの噴水広場まで来た。屋台が無い、細い隙間の噴水のヘリに腰掛けてボーっとする。これからどうしよう。持ってるものはこちらに来るときに着てた服(洗ってもらった。汚れは完全に落ちてはいない)と、お姫様にもらった背負い袋。あとは猫たちだけだ。お金が一銭も無いのよね。


 サバイバルと一緒か。とりあえず飲水と食料と屋根を確保しないといけないんだっけ? 知り合いを頼るのはどうだろう。オータル卿なら案外頼れそうな気がする。ヒューはお金無さそうだからなぁ。昨日あったジャイオさんにいきなり泣きつくのは無理だろう。というかその場合は太陽神殿に行く可能性もあるか。あとしゅうきょうこわい。


「オリー」


 背負い袋の中からカルネが話しかけてくる。


「ニャ?」


「金持ってそうなのを襲おうぜ。俺が直接やっても良いし、兄貴に頼んでも良い」


 お前の好みに合わせるからよ、と。顔は見えないけど、ドヤ顔してるのがわかるよ……。


「その方法は、そもそも僕の好みに合わないニャ!」


「大丈夫ですよ。オリー」


 今度はビアンコだ。何が大丈夫なんだろ。こいつも人間の常識は通用しないからなぁ。


「あれからお嬢様にお願いして、サルを傷つけずに抵抗力を失わせる魔術を会得しています。死ぬ可能性も高いのですが」


 うん、そんなところだと思ったよ! だいたいそれって傷つけずにの意味間違えてるだろ? 傷を残さず殺せるって意味だろ?!


「強盗はしないニャ。それは人間の世界だと犯罪だニャ」


 背負い袋からビアンコとカルネが這い出してくる。


「ではどうするおつもりなのです?」


「他に考えでもあるのか? 森でも近ければ俺が獲物を獲ってきても良いんだがなぁ。ここで獲って良いものっていったらネズミくらいだろ?」


「何もないならそれでいきましょう」


「この辺りもネズミは多そうだからな。腹いっぱい食わせてやるぜ」


「心遣いはありがたいニャ、でも絶対イヤだニャ!!」


 ネズミは嫌だネズミは嫌だ。


「オリー、あまり子供のように駄々をこねないでください。先程から我儘ばかり言って我々を困らせるものではないですよ」


「全くだ。せめて対案を出してくれよ。あれも嫌これも嫌じゃ何も始まらないぜ?」


「フーッ!」


 なんてこった。猫たちに諭されるとは。


「えーっと、ちょっといいかい? あんたたち何してるんで?」


 ついつい熱中してたら横から声をかけられた。あれ、ヒューだ。


「ニャにかニャ?」


「ニャにかニャ、じゃねーよ。近くを巡察してたら変な西方人が猫と話してるって通報を受けてなぁ。まさかと思ってきてみたら案の定ってところよ」


 俺だから良かったようなものを、と腰に両手を当ててため息をつくヒュー。


 全然気が付かなかったが、ちょっと離れたところに人だかりができてこちらを見守っている。やってしまった。


「これは我が家の問題です。部外者は口を挟まないでいただきましょうか」


「兄貴の言うとおりだな」


「そうは言ってもこれも職務なんでなぁ。せめて他所でやってくれねえか。てか、こんな朝早くから何があったんで?」


 この際だ、ヒューに相談してみよう。


「ちょっと聞いてもらえるかニャ?」


 反対しようとする猫たちを袋に入れ直して立ち上がる。


「あんまり時間は取れないぞ? 一応仕事中だし昨日みたいにお嬢様がいる訳じゃねえし」


 とりあえず周囲に人の居ない場所を探す。伯爵のことを他に聞かれる訳にはいかないだろうからね。市場の裏路地に入って周囲を確認しながらヒューに耳打ちした。


「伯爵が意識不明の重体ニャ。それで家宰が僕らを屋敷から追い出したニャ」


何を言い出すんだこいつはって感じで睨まれた。


「それ、俺に言うことかよ」


「理由を言わニャいとって思ったニャ」


「それでどうしたんだ?」


「家の中は家宰が仕切ってて、お姫様にも合わせてもらえニャいニャ。それでお金も行き場も無くて困ってるところニャ」


「言っておくが俺に頼られても困るぜ? 俺だって金は無いからな。オータル卿がニールにいれば違ったかもしらん」


 あの人は今フォド・ニールの方に出張ってるんだよ。とのことらしい。明日には帰ってくるとのこと。


 それを聞いてため息をついた。まぁ1,2度顔を合わせただけの傭兵を頼りにするってのもあれだ。それはわかってるんだよ。


 こちらを見ていたヒューは頭をガシガシと掻きむしると、僕から感染ったのかため息をついた。


「あーもうしょうがねえ、ちょっと今日は仕事を上がらせてもらえるよう話をつけてくる。ここで待ってろ」


 踵を返して路地から出ようとしたところで、足を止めて上半身だけ振り返った。


「これで飯喰ってな。噴水広場で待ってろ。今度は騒ぎを起こすなよ」


 硬貨を数枚投げてよこした。それを慌てて受け取る。


「ニャニャッ」


 取りこぼしたお金を拾い上げたらもうヒューの姿は無かった。




 串焼きを買って食べながら大人しくヒューを待つ。猫たちにもせがまれたので同じものを買って分けた。あんまり猫に人間の食べ物は食べさせたくないのに。で、すぐに食べ終わったから手持ち無沙汰になって考える。やっぱり仕事探さないといけないかなぁ。自分に何が出来るか考えないと。せめて大学を出てたら違ったのかもしれない。あーでも、文学部だしなぁ……。こちらの世界の文字をまず覚えないといけないかなぁ。

 

 いかに歴史や文学の知識があったとしても、それが異世界で飯のタネになるかっていうとねぇ。特に歴史の知識って、元の世界でも先生が実生活の役に立てるのは難しいって言ってたくらいだ。文学はまぁ……名作とかをパクリまくって売り出す? この世界の識字率と製紙・印刷・製本技術のレベルによるかなぁ。そこら辺ヲタのかっつんが色々言ってたのを思い出す。文化汚染を狙うにしても、相手に受容できる素地があるかどうかを見極めないといけないとかなんとか。最低限何がタブーなのかを調べてからじゃないと無理だろうとか言ってたはず。


 あぁ、オリジナルに近いもので一個面白そうなものを考えた。元の世界の歴史をこちらで小説として出す。結末は調整してこちらで受けるように書く、というのはどうかな。これなら僕でも話を作れるかも? 間違ってても誰もわからないというのも大きいよね。こちらにファンタジー小説が存在するかどうかはわかないけど、同じように受け入れられるかもしれないし。


 まぁそれは先程上げた技術上の問題と、創作関連市場の規模を調べてからじゃないと無理だよね。現状紙もペンも無い、書いても売る先も無いの無い無い尽くしだからなー。


 元手が要らないと言えば音楽もあるか。楽器と技術があればなぁ……。勿論両方なーい。終わった。歌でも歌うかなぁ。歌のみの吟遊詩人とかアリなんだろうか。おっと、語尾がダメだ。試してないからわからない。もしも歌でもニャがついたら嫌だから試したくもない。


 そんなことをツラツラと考えてたら、高校時代のことを思い出した。

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